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【ライヴレポート】 『LUNATIC FEST. 2018』 2018年6月24日 at 千葉・幕張メッセ

2018年06月24日@千葉・幕張メッセ

2018.07.07

6月23日と24日の2日間にわたり幕張メッセにおいて開催された“史上最狂のロックフェス”第二弾『LUNATIC FEST. 2018』。計4万人越えの動員を記録し、今回も大成功となった。コラボあり、カバーありと盛り上がった初日同様、最終日もMOTHER STAGEとMOON STAGEにて11組のバンド/アーティストが熱演! 同フェスならではのスペシャルが満載の刺激的かつ感動的な一夜となったーー。

■ LUNACY ■

最終日となる2日目の幕を開けたのは、前日と同じくLUNACY。長いエクステを三つ編みにしたSUGIZO(Gu)や赤いウィッグの真矢(Dr)を筆頭に、通常のLUNA SEAとは趣の異なるムードと出で立ちでMOON STAGEに現れた5人は、“今日もとばしていこうぜ!”というRYUICHI(Vo)の号令からJ(Ba)の邪悪なベースフレーズを皮切りに「CHESS」を投下する。狂気に満ちたギターソロに加え、ジャンルを超えた経験で芝居心を培ってきたRYUICHIの多彩な表現力が、当時とは比べものにならないほど深い闇へとオーディエンスを惹き込む。さらに圧巻だったのが幻の未CD化曲「SUSPICIOUS」からの流れ。衝動的な演奏を高速で畳み掛けると、ステージに満ちるスモークの中でINORANの美しいアルペジオがダークにうねる「SEARCH FOR REASON」へとシームレスで曲をつなぐ。それぞれ無駄なアクションもなく、持ち場でじっと紡ぐ音は妖しく絡み合い、破滅の予感を醸した末に声量も感情も突き抜けたRYUICHIのシャウトが爆発。これほどマニアックな難曲を結成間もない段階で作り上げていた彼らのセンスに震撼する一方、それを今の彼らの豊かな力量によって完成形として目撃することのできる幸運に感謝せずにはいられなかった。
text by 清水素子

■ THE ORAL CIGARETTES ■

LUNACYライヴ終了後、対向のMOTHER STAGEの幕を切って落としたのはTHE ORAL CIGARETTES。登場するなり“ずっと出たかったんです、このフェス! 俺らのこと、初めましての人たくさんいると思う。でも、今日出たかった想いを全部俺らの言葉に...あなたたちに伝えていくのでよろしくお願いします!”と叫んだ山中拓也(Vo&Gu)は、1曲目の「カンタンナコト」から“頭振るよ!”と場内を煽動。どこか捻れた癖のあるアッパーチューンを次々放ちながら、踊り狂う客席に“みなさん、あったかすぎ!”と礼を言う。一方で“今日初めて出会った人もこれから長い付き合いになるかもしれないので、よろしくお願いします!の意味を込めて”と贈った「トナリアウ」等、ストレートに心を動かす楽曲を併せ持つのも魅力的。そして、“俺ら普段、こことは別の畑でやってるんですけど、最初に聴いて育ったのがこっちの界隈なんです。だから、今いる場所に若干違和感を感じつつ、少しでも間を取れる音楽がやりたくて...やっとみなさんの場所に一歩踏み出せたような気がして、今日はほんとに嬉しいです”と涙ぐみながら率直に打ち明けた山中に場内からは大きな拍手が沸いた。誰かの夢が叶った瞬間を目撃できた感動が渦巻く中、自由に躍動する彼らのステージは感謝と喜びにあふれて、観る者の心をグッと掴んでみせた。
text by 清水素子

■ OLDCODEX ■

準備の整ったMOON STAGEには『LUNATIC FEST.』のトレードマークでもある髑髏のアートが。気合入れの声を轟かせて姿を現したOLDCODEXは一見、普通の5人組バンドだが、その正体はTa_2(Vo)曰く “ライヴペイントと音楽をドッキングさせた、ちょっと珍しいバンド”である。クリアーな声質で血管がぶち切れそうな凄まじいヴォーカルを放つTa_2と楽器陣が鳴らすラウドなミクスチャーロックをBGMに、ステージ上のキャンバスに赤く、白く、黒く、想いのままに色を塗り重ねていくYORKE.の役割は作詞者でありペインター。確かに異色な構成かもしれないが、自らが書き綴った言葉が音となって放たれる中で、その世界を視覚化しているだけと考えれば必然的なスタイルでもある。クライマックスでは彼らがピンチだった時にひとりの先輩が手を差し伸べてくれたことを語り、“今日はその人に書いてもらった曲を一緒にやってもいいですか!”とINORANを招聘。Ta_2と向き合って「HEAVEN」を演奏するINORANの背中にスプレーでペイントしたYORKE.は、さらに彼に寄り添ってシャウトし、髑髏のアートに“Thank you INORAN”と記して、文字通りアーティスティックに魅せてくれた。そして、最後は“テレビアニメ『Butlers』OPテーマ”と紹介して、パワフルに突き抜ける「Growth Arrow」をドロップ。偏見視されやすいシーンの住人であることをあえてさらした彼らの矜持に、結成当初のLUNA SEAと同じスピリッツを感じて胸が熱くなったのは筆者だけではないだろう。
text by 清水素子

■ lynch. ■

3年前の『LUNATIC FEST.』開催時から“本当に出たかった”と悔しさを語り、ついに願いを叶えたlynch.のステージは、ファンとしてのリスペクトとアーティストとしての野心が見事に同居したものとなった。美しい旋律と凶悪な重低音を同居させた「EVOKE」で自らの音楽性を提示すると、いきなりLUNA SEAの「SLAVE」をカバー! 演奏のみならず、本家のライヴに則ってアレンジされた葉月(Vo)のヴォーカルであり、サビで重ねられる悠介(Gu)のコーラスなど、細部にわたるまでの高い完成度で場内のSLAVEたちを驚かせる。さらに“LUNA SEAでロックに目覚めた者として、ここに立てたことを誇りに思います。だけど、今日は思い出を作りに来たわけではありません。ここにいる全員の心を奪いに来ました!”とJを呼び込み、彼が音源制作に参加した「TRIGGER feat. J」を6人で披露。ベースソロでバンドの一員のようにしっくりと弾きこなすJが、制作時にはバンドを離れていた明徳(Ba)と向き合ってベースを奏でるさまは実に感慨深いものだった。また、“SLAVEのみなさん、年下の男は嫌いですか? 今日は僕たちと浮気してみませんか?”と代表曲「pulse_」を投入し、“全員でSEXしようぜ!”のキメ台詞と客席から沸く“ヤリタイ!”の大合唱で、まんまと忘れられない記憶を植え付ける場面も。LUNA SEAを軸に自分たちの持ち味を存分に発揮しながら、“絶対ワンマンでこの景色見てやるからな!”と宣言した彼らの大胆さに今後も期待だ。
text by 清水素子

■ MUCC ■

7月25日発売のニューシングル「時限爆弾」からの「TIMER」で幕開け。背後のスクリーンにはカウンドダウンが表示され、怪しげな静けさと緊張感が漂う中、一刻一刻とMUCCのダークな世界観へと引き込まれていく。ドラムを合図に始まった「G.G.」では逹瑯(Vo)が不敵な笑みを浮かべて“かかってこい!”と煽ると、リズミカルなイントロにフロアーが揺れ、ブレイクダウンのヘドバンで徐々に熱気を帯びてきたところにアップテンポの「KILLEЯ」を投下! さらに会場がヒートアップする中、間奏ではミヤ(Gu)がLUNA SEAの「ROSIER」をキメ込むサプライズも飛び出す。MUCCに完全に支配された空気感の中での「ハイデ」で逹瑯の艶やかな歌声と壮大なメロディーに心が打たれたのも束の間、“こんな多幸感に満たされた雰囲気で終わるはずがねぇだろ!”のひと言で「蘭鋳」が轟き、さらにテンションが上昇。お決まりの観客を全員座らせる儀式も行ない、彼らに操られるようにラストの新曲「生と死と君」へ。逹瑯のシャウトが心を締め付ける“FREE SKY LIVE DEAD”の文字がスクリーンに映し出され、定番曲のようなシンガロングが起きた時はその一体感に圧倒された。MUCCの貫禄をまじまじと魅せつけられた時間だった。
text by千々和香苗

■ 大黒摩季 ■

颯爽とステージに上がった大黒摩季は観客との掛け合いを見せながら、のっけっから「熱くなれ」「チョット」とヒット曲を連発!(もちろんバックバンドのドラマーは真矢) “『スラムダンク』のあの歌です。みんな覚えてる?”と言って始まった「あなただけ見つめてる」ではサビ前のキメで大黒にスポットライトが集まる堂々のパフォーマンスを魅せ、その後もイントロが鳴るたびに歓声が沸き、フロアーでは拳があがったりとさすがの反応だった。また、バンドメンバー紹介で“みんなもっと欲しがってあげて!”と真矢を煽る、馴染みのあるふたりならではの場面も。90年代から第一線で活躍してきた大黒とLUNA SEAだから、当時はお互いに忙しくてライヴも観に行けなかったと話していたが、2017年にはLUNA SEAのアルバム『LUV』に大黒がコーラスで参加したりと今だからこそのタッグが実現している。春畑道哉(TUBE)がアレンジを担当し、真矢をドラムに指名したという新曲「Because...you」もまたそのひとつだ。そして、「夏が来る」「いちばん近くにいてね」とラテン調のナンバーを畳み掛け、『仮面ライダーオーズ/OOO』主題歌「Anything Goes!」で若い観客も焚き付けると、“記念にこの曲を”と始まったのは「ら・ら・ら」。真矢に“お互いこれからもやっていこうね”と叫ぶ姿も感慨深かった。サビでは鳥肌が立つくらいの大合唱が起き、彼女のパワフルなステージによってまさに“世代を超えた”瞬間を目の当たりにした。
text by千々和香苗

■ AA= ■

ベートーヴェンの「歓喜の歌」をリミックスしたSEをバックにまずは上田剛士(Vo&Pro&Syn)が登場。大黒摩季のステージについて“大合唱楽しかったね”と投げかけながら、フランクな佇まいでシンセサイザーを操作しビートを刻む。何度も指差しながら密集した観客を煽る上田に呼応し、覚醒するように歓声が沸き立つフロアーの光景は、すでにAA=に身を任せているようだった。バンドメンバーが加わり「2010 DIGitoTALism」でスタートすると、そこからノンストップで爆音が発生! ラウド、エレクトロ、ハードコアを合致させたような迫力のサウンドが響き、白川貴善(Vo)のドスの効いたヴォーカルが雷のように落とされ、開始早々に最高潮の熱量が充満。「posi-JUMPER」で爽快なメロディーが突き抜け、金子ノブアキの全てを叩き割るようなドラミングが響く「GREED...」の急展開に夢中になっていると、爆音から《夢を見たんだ》と歌うサビに開ける「The Klock」の時には、ここが『ルナフェス』の会場であることも、幕張メッセであることも忘れてしまう境地に達していた。「FREEDOM」ではギターで参加したJが観客さながらの最高な笑顔で登場してきたのも印象深く、彼らのステージがあの場にいた人々の身も心もかっさらっていたのは言うまでもないだろう。
text by千々和香苗

■ BRAHMAN ■

ギターが唸りを上げて始まった1曲目「初期衝動」からSUGIZOが登場し、演奏後にはTOSHI-LOW(Vo)が“一瞬にしてジャンルの壁なんてぶち壊せるんだ”と両腕を突き上げて叫ぶ。以降も衝動を詰め込んだ熱いナンバーを次々に炸裂させ、イントロで歓声があがった「AFTER-SENSATION」ではMAKOTO(Ba)が膝から崩れ落ち、TOSHI-LOWはダイブしてフロアーの中で歌い続けた。そのまま観客に支えられて“宝塚(歌劇団)に『北斗の拳』のキャラが出てたら嫌じゃん”と、今回のラインナップの中でBRAHMANがアウェイな存在であることに自ら触れて笑いが起こる場面もあったが、それに続けて語ったことーーSUGIZOに酔っぱらった勢いでBRAHMANが参加するプロジェクト『東北ライブハウス大作戦』で誕生したライヴハウス、石巻 BLUE RESISTANCEに行ってくれないかと話した時にふたつ返事で答えてくれたこと、さらに後日X JAPANが訪れてくれたこと。マイクなしで声を荒げ“言葉に一体何の意味がある”と叫ぶTOSHI-LOWは何よりも真っ直ぐだったが、彼もまた約束を果たすために『LUNATIC FEST. 2018』のステージに立ち、行動で示していた。そして、披露されたのは「満月の夕」。再びSUGIZOがバイオリンで参加した同曲を誰もが噛み締めるように聴き入っていた。最後は「真善美」で力強いビートを繰り出し《一度きりの意味を お前が問う番だ》とマイクを叩き付けて終幕。魂が込められたこの日のライヴを、誰ひとり残さず胸に刻んだはずだ。
text by千々和香苗

■ LOUDNESS ■

“史上最狂のロックフェス”にレジェンド降臨! 鈴木“あんぱん”政行が療養中のためドラムはサポートメンバーとはいえ、Ra:INの西田竜一(ex.NOVELA〜VIENNA〜ACTION!)が叩くのだから申し分ない。二井原実(Vo)の強烈なシャウト、そして高崎晃(Gu)の重厚なリフが炸裂し、フロアーにいくつものメロイックサインが突き上げられた1曲目「SOUL ON FIRE」から、ヘヴィなサウンドと高崎の超絶プレイが会場を圧倒する。同曲は今年1月に世界同時発売された最新アルバム『RISE TO GLORY -8118-』からのナンバーであり、その屈強なバンドグルーブに、“伝説”であっても“現役”であることをまざまざと実感。二井原が轟かせるハイトーン、高崎が魅せる神業的なギター、山下昌良がボディーブローの如く響かせる重心の低いベース...世界のメタルフリークを唸らせるのも納得の衝撃度がそこには宿っていた。また、「CRAZY NIGHTS」「IN THE MIRROR」など80年代のキラーチューンを連続投下し、往年のファンを沸かせる場面も。特に「BLACK WINDOW」はTAIJI(X JAPAN)在籍時のナンバーだけに、胸の奥が熱くなった者も少なくないはずだ。そして、ラストはメロディックなハイスピードナンバー「S.D.I.」。“火に油を注ぐ”とはこのことを言うのだろう。メタルファンたちが陣取るフロアーが爆発的に燃え上がった。
text by 土内 昇

■ YOSHIKI ■

並外れた攻撃性と美しい叙情性ーーYOSHIKIという人間を構成するふたつの要素のうち、後者をフィーチャーしたあまりにも貴重なステージを、“切っても切れない仲”と語る後輩のフェスで彼は提示してくれた。クリスタルピアノとともにせり上がり、LUNA SEAライヴの開幕SEでもある「MOONLIGHT SONATA(月光)」を弦楽四重奏団と届ける心憎い演出で幕開けると、場内のモニターに映画『WE ARE X』やhide没後20年を機に制作されたドキュメンタリー『HURRY GO ROUND』の映像が。そして、後者の制作時に新たに発見されたhideのヴォーカルトラックをバックにYOSHIKIが「HURRY GO ROUND」を奏でるという時空を超えたコラボレーションを、会場中は静まり返ってジッと見守る。その後も綺羅星の如くゴージャスな場面が続き、「SAY ANYTHING」ではSUGIZOがバイオリンで、さらに昨日出演したGLAYのTERUがヴォーカルで参加。TERUは“hideさんに届けましょう”と合唱を誘い、演奏を終えると3人でハグして初の組み合わせを祝福した。また、ヴォーカルにアシュリー・ナイトを迎えた「MIRACLE」ではロックフェスでクラシックという挑戦をなし、オペラにおいてもYOSHIKI作と分かる美旋律で、イタリア語の歌詞通り“奇跡”の到来を感じさせる。事実、その後はクラシックアレンジの「紅」をRYUICHIが歌うという奇跡のサプライズも! 情感あふれる彼の熱唱は、YOSHIKIの流麗なピアノと相まって新たな「紅」の世界を創造し、万雷の拍手を呼んだ。

そんな珠玉の場面で酔わせながらも、愛らしい天然ぶりと自由すぎる言動で笑いを誘うのが、YOSHIKIのズルいところ。MCではSUGIZOとTERUを呼び戻したのに加え、MUCCの逹瑯とミヤを招き、逹瑯を“中学の時の自分に教えてやりたい!”と感激させれば、急に“お腹空いた”と言い出して、真矢に天雷軒のラーメンを持ってこさせる場面も。さらに場内からのリクエストで「X」をセッションすることを独断し、SUGIZOとミヤのギターをバックにしたアコースティックアレンジでXジャンプの渦を呼んで、RYUICHIと“上出来!”と喜び合う。アットホームな空気に“やっぱり仲間っていいね”と呟くと、今は亡きhideとTAIJIへの想いを語り、“ふたりには今も心の中で励まされています”と、彼らに向けて「WITHOUT YOU」を心込めてプレイする。大作「ART OF LIFE」を披露したあとは、“なんで今、生きて存在しているんだろう? そんなことばっかり考えて生きてきました。素晴らしい仲間と、みんなと同じ時間を共有できて光栄です。Xとしても次はアルバムを引っ提げて戻って来るんで、一緒に頑張ろうね”と赤裸々な想いを吐露。そして、ラストの「ENDLESS RAIN」で会場中に大合唱させて、厳かで温かい時間を締め括る。“Xという言葉は無限の可能性っていう意味。不可能なことなんて何もないっていう意味で付けたから、これからも頑張っていくぞ!”と花道を一周し、“WE ARE X!”のコール&レスポンスを浴びた彼の瞳には、どんな荒波にも屈しない闘士の煌めきが宿っていた。
text by 清水素子

■ LUNA SEA ■

3年振り2度目の『LUNATIC FEST.』も最後のアクト。前日と同じく「月光」のSEで各メンバーが定位置に着くと、これまで何度もライヴの冒頭を飾ってきた「LOVELESS」のイントロに場内のSLAVEたちから“おおーっ!”と感嘆の声があがる。眩い七色の光の中、INORANのアコースティックギターが始まりを告げ、SUGIZOのトリプルネックが唸り、その合間を縫うようにJのベースがうねる、その宝石箱をぶちまけたような目くるめくサウンドスケープに場内は熱狂。予想を裏切り期待に応える見事な幕開けは、クリアーなRYUICHIのヴォーカルと切れ味抜群な真矢のドラミングを伴って、観る者の鼓動を加速度的に速めてゆく。そして、“お前ら盛り上がっていこうぜ! いくぞ!”とRYUICHIが叫んで真矢のシンバルが鳴った瞬間、SLAVEたちの誰もが確信した通り「ROSIER」へ。曲頭で爆発する音玉も当然のように受け止めると、花道へと飛び出す弦楽器隊や絶好調の喉で歌声を轟かせるRYUICHIに煽られて、狂乱の度合いを高めてゆく。

“みんなのお陰でめちゃめちゃ刺激的な二日間を過ごさせてもらってます。みんなが馴れ合いじゃなくて本気でやってくれてるのがすごく伝わってきて、気持ちがキュンとするっていうかね...いいね、フェスって”と語って続けられたメジャー第一弾作「Déjàvu」も初日よりいっそう尖った印象に。曲終わりにJと真矢がアイコンタクトを交わして続けた「誓い文」ではハンドクラップが自然発生し、同じ時代を生きる人々へと向けたリリックと相まって、30年近くの時を経てもなおつながる想いで胸を熱くさせる。また、アルバムツアーを踏襲して現在の等身大なLUNA SEAを見せた初日に対し、この日のメニューでは彼らのマニアックな面を詳らかにしてくれたのも嬉しいところ。舞台に炎が噴き上がり作曲者であるJのゴリゴリなベースプレイに歓声があがる「Sweetest Coma Again」に、後のシーンに多大な影響を与えたSUGIZOの付点八分のディレイが幻想的な景色を描く「IN SILENCE」と、真逆の世界観を披露して彼らが持つ引き出しの多彩さを改めて証明する。その極め付けとも言えるのが「Providence」で、SUGIZOのバイオリンからRYUICHIが三拍子を指揮して生む幽玄な世界観はSLAVEにはお馴染みなれど、ロックバンドとしては規格外。間違いなくLUNA SEAにしか為し得ないパフォーマンスだ。

そして、トドメとばかり、赤のロングジャケットに身を包んだYOSHIKIがピアノで「Forever Love」を弾きながらせり上がって、なんと「I for You」をピアノ演奏! そこに寄り添うRYUICHIのヴォーカルも、いつにも増してエモーショナルなものとなり、バンドインしてからは間奏のギターソロをYOSHIKIがゴージャスなピアノプレイで担う今日だけのアレンジも。30年の付き合いでもLUNA SEAとYOSHIKIのセッションは初めてということで、RYUICHIが“めちゃめちゃ興奮しました”と感激を露わにすれば、YOSHIKIも“X JAPANは僕の人生なんだけど、LUNA SEAの歴史も僕の人生のひとつなんで”と応えて、両者の絆を再確認させた。

LUNA SEAメンバー全員とハグしてYOSHIKIがステージ下に去ると、最高のコラボレーションに力を得た5人は一瞬にも思える体感速度で待望のライヴチューンを次々に投下。繊細にして豪快なフレーズワークが冴える最新作「BLACK AND BLUE」で現代に対する壮大な問題提起をオーディエンスとの大合唱で高らかに謳い上げると、「PRECIOUS...」では互いに迸る感情を交歓しながら向き合い、センターに集う彼らの姿に思わず“ここは天国か!?”と問いたくなってしまったほど。この曲が歌うように人間誰しもが“あの時には戻れない”。だが、戻れない時を積み重ねることで、さらに厚く、熱い絆の物語を作り上げることができるのだと、結成から29年を経てなお少年のようにステージを駆ける彼らが教えてくれたような気がした。「TONIGHT」のイントロフレーズをかき鳴らしたINORANに至っては、次々にメンバーのもとへと駆け寄り、ブレイクに“幕張もっといこうぜ!”とシャウト! ステージの上も下も尋常でない高ぶりのまま、ラストの「WISH」へと突き抜けて、去り際にJは笑顔でデビルサインを掲げてみせる。その瞬間、会場の心は確かにひとつだった。

この日もアンコールにはイエローハートを携えたYOSHIKIを筆頭に参加バンドの面々、さらに初日に参加していたDIR EN GREYの薫(Gu)とShinya(Dr)と、遊びに来ていたSIAM SHADEの栄喜(Vo)まで加わって「STORM」をセッション。YOSHIKIの“気合入れていくぞ!”の号令から栄喜にlynch.の葉月、大黒摩季らが歌い繋いでの大合唱大会となり、なぜかYUKKE(MUCC/Ba)までがスタンドマイクで熱唱(笑)。ドラム台ではダブル“シンヤ”が並ぶ夢のセッションを終え、RYUICHIから12月22日と23日にさいたまスーパーアリーナで今年もクリスマスライヴが行なわれることが告知されると、場内からは大歓声が沸き起こる。記念撮影を終えるとINORANとSUGIZOは舞台を下りて客席へと突っ込み、最後にSUGIZOは“ありがとう!”とマイクレスで叫んで一礼し、オーディエンスの声をしまい込むように胸を叩いた。

大興奮のフェスを最高の形で締め括った「STORM」だが、1年間の活動休止期間を経て98年にリリースされた当時はその輝かしさゆえに、決して全てのSLAVEたちが諸手を挙げて歓迎した曲ではなかった。それはかつてなくシンプルなバラードとして世に放たれた「I for You」も然りである。しかし、そんな2曲にこんな素晴らしい未来が待っていると、20年前の自分たちに自慢してやりたいーーそう終演後に語っていたひとりのSLAVEの言葉には、心の底から首肯するほかなかった。どんな道も自らの力によって、輝かしい未来へと変えてきた彼らが迎える来年の結成30周年。そこで目撃できるであろう景色に、今から期待が止まらない。
text by 清水素子

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  1. 2

    2. SUSPICIOUS

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