LIVE REPORT

『LUNATIC FEST.』 ライブレポート

『LUNATIC FEST.』

LUNA SEA、X JAPAN、DEAD END、DIR EN GREY、Fear, and Loathing in Las Vegas、SIAM SHADE、LADIES ROOM、coldrain、TOKYO YANKEES、the telephones、9mm Parabellum Bullet、LUNACY(Opening Act)

2015年06月27日@幕張メッセ 1~4ホール

取材:清水素子

2015.07.12

結成25周年を迎え、昨年5月の国立代々木競技場を皮切りとする全国ツアーを、今年3月の大阪城ホールで締め括ったLUNA SEA。アニバーサリー・アクトの最終章として行なわれた『LUNATIC FEST.』は、世代やジャンルを超えた“仲間”たちを2日間で20組招き、大きな月のオブジェの下、幕張メッセのホール1~3をブチ抜いて設置した3つのステージで開催。分刻みのスケジュールで多彩かつ最高峰のロックアクトが畳み掛けられるという、まさに“最狂にして最高”のロックフェスとなった。

その火蓋を切って落としたオープニングアクトはLUNACY。結成直後のわずかな期間だけ名乗っていたバンド名で現れた主催者は、LUNA SEAとは異なる濃いメイクと攻撃的な出で立ちで、「CHESS」を始めとするインディーズ時代の初期曲を衝動のままにブッ放す。しかし、猛り狂うサウンドに挟み込まれる透き通ったアルペジオや、激しさと美しさを行き来する曲展開に、すでに卓越したセンスがくっきり。当時の彼らがシーンに与えたインパクトの大きさを想像させた。

以降、新旧の世代がホールを灼熱の空間に。“俺たちの武器はリスペクト!”と斬り込み隊長を買って出た9mm Parabellum Bulletは、硬軟併せ持つ独自のスタイルでオーディエンスを飲み込み、なんと中盤にはJ(LUNA SEA/Ba)とともに「Cold Edge」をプレイ。ベースバトルを仕掛けるJに真っ向から挑む後輩の姿には、大きなクラップが沸いた。the telephonesは石毛輝(Vo)の“こういうフェスでディスコ!と叫んでもらうことは、とても意味のあることだと思います”との言葉通り、無条件に身体を揺らすディスコチューンを次々投下。岡本伸明(Key)は客席フロアーに降りて走り回り、石毛は曲中に“I Love LUNA SEA!”と叫んで、この場に立てた喜びを表す。重鎮世代も負けてはいない。インディーズ時代、LUNA SEAが所属していたExtasy Recordsの先輩であるTOKYO YANKEESも、yoshinuma(Vo&Ba)とNORI(Gu)が交互にタフなヴォーカルを放って、音の爆風で場内を席巻。ラストの「HOLLYWOOD HEARTBREAKER」では、なんとX JAPANのPATA(Gu)がゲスト参加して、久々の共演に笑みをこぼした。壮麗なダークネスとエモーショナルな咆哮で場の空気をさらったのはcoldrain。“ラインナップ見たら分かるだろ? 今日の『LUNATIC FEST.』が日本で一番ヘドバンできるフェスだと思うよ!”とMasato(Vo)が煽れば、客席にヘッドバンギングと合唱の嵐が吹き荒れる。歴史を築いてきたLUNA SEAへの熱きリスペクトを表した彼らに、Extasy Recordsの先輩・LADIES ROOMが続く流れも『LUNATIC FEST.』ならでは。グラマラスなビジュアルでSEX PISTOLSの「Anarchy in the U.K.」から古き良き香りを漂わせたステージにRYUICHI(LUNA SEA/Vo)も登場して、“HIDEさんと初めて会った時にHIDEさんが歌っていた曲”という河島英五の「酒と泪と男と女」を披露。ロックフェスを一瞬にして酒場へと変えるRYUICI節や、さすがである。

ここで現れたのがメジャーデビュー20周年を控えるSIAM SHADE。淳士のドラムヘッドには真矢とのツーショットが輝き、リスペクトを露わにワイルドかつテクニカルに攻め立てると“なんてカッコ良いんだ!”と真矢(LUNA SEA/Dr)がステージに。“あの有名な曲を横で聴いていたいんだよ”とねだり、栄喜(Vo)が真矢の耳元に囁きかけるように「1/3の純情な感情」を歌い始めた途端、真矢が続きを歌い出すという微笑ましいやり取りも見られた。続くFear, and Loathing in Las Vegasは“この2日間を通して、俺らが一番若い”とMC。LUNA SEAと同い年というSo(Vo)とMinami(Vo&Key)の繰り出す高低対照的なツインヴォーカル、そしてヘヴィとポップが目まぐるしく行き来するサウンドで、ヘドバンとダンスの双方を楽しませるのは新世代ならではのミクスチャーセンスであろう。そして、この日最も芸術的なコラボレーションを魅せたのがDIR EN GREY。ショッキングな映像をバックに重厚に研ぎ澄まされたプレイ、美と醜を一瞬で切り替える京(Vo)の卓越した表現力で人間が持つ“業”を抉り出すステージは圧巻のひと言だ。ToshiyaのベースにはJの直筆によるあの文言が書き込まれ、さらに中盤の暗転から照明が上がるとSUGIZO(LUNA SEA/Gu&Violin)の姿が! なめらかに張り詰めた彼のバイオリンソロに、DIE(Gu)のアコギから5人の音が加わって奏でられたのは「空谷の跫音」。無数のキャンドルが映し出されたモニターをバックに広がる、そのシリアスに切迫した音世界はあまりにも痛々しく、そして美しいレクイエムのように心に響いた。続いては、RYUICHIが多大なる影響を受けたことでも知られるDEAD END。1曲目「I Want Your Love」から孤高かつ強烈な存在感とデカダンなムードを振り撒いた。中でも素肌にジャケットを纏ったMORRIE(Vo)の放つ妖艶なオーラは圧倒的! SUGIZOのアコースティックギターをバックに、MORRIEと「SERAFINE」をデュエットしたRYUICHIが“幸せです”と感慨深げに呟いたのも当然だろう。

初日のクライマックスに現れたのは、Extasy Recordsの主宰であるYOSHIKI率いるX JAPAN。待ち切れない人々の“We Are X!”コールを受けて、白いコートを羽織ったYOSHIKI(Dr&Piano)がドラム台に立って腕で“X”の文字を作るとフロアは沸騰。幕開けの「JADE」からスモーク柱と炎があがり、TOSHI(Vo)の心震わすハイトーンヴォーカルと激烈なサウンドが天上へと駆け上っていく。ド派手な演出は彼らの十八番で、切ないピアノ旋律と爆裂ドラムが数珠つなぎされるドラマチックな展開に、ダメ押しとばかり「紅」では銀テープが。さらに、現在制作中のアルバム収録曲のために“この場でレコーディングを再開します”と、YOSHIKIの弾くピアノを伴奏にオーディエンスの合唱を公開レコーディングして、忘れられない思い出をプレゼントしてくれる。また、ピアノでLUNA SEAの「PRECIOUS...」を一瞬だけ奏でたり、HIDE(Gu)が打ち上げにLUNA SEAの面々を連れてきた時の思い出話をしたりと、YOSHIKI曰く“僕たちの大親友”への心憎い気遣いも。“20数年経って一緒に音が出せるのは素敵なことだなって。ここに集まってるバンドって、みんないろんなことを経験してココに来てるんで...これからもX JAPAN共々みんな見守ってあげてください”と涙ぐむYOSHIKIをSUGIZOが抱き寄せたシーンでは、その場の誰もが目頭を熱くしたことだろう。万感の想いを籠めた珠玉のバラード「ENDLESS RAIN」に、ラストの「X」では3万人のXジャンプが! 中央のモニターでは映像中のHIDEが“飛べ飛べ飛べ飛べ!”と連呼してスモーク柱が噴き上がり、左右のモニターには“In Memory of HIDE/TAIJI”の文字が映し出されて、感動と狂乱のステージを締め括った。

そして、大トリはもちろん主催のLUNA SEA。彼らのライヴSEとしてはお馴染みのベートーベン「月光」が荘重に流れると、突如音が途切れて「LOVELESS」のイントロに替わる衝撃的なオープニングに、フロアからはどよめきと歓喜の声が沸き上がる。SUGIZOのトリプルネックにINORAN(Gu)のアコースティックギターが織りなす幻想的な旋律、床ごと身体を突き上げるようなJのベースラインに真矢のタイトなドラミングが築く分厚いボトムが渾然一体となり、RYUICHIの艶やかな歌声を伴って場内の熱を徐々に高めていくさまに心臓は高鳴るばかりだ。一転、爆発音が鳴って豪快に疾走した果てに大合唱が沸き起こる定番曲「Dejavu」、25年のキャリアが活きた熟練のグルーブに酔う「Rouge」と新旧の曲を織り交ぜて、昨年から続くツアーの、そして25周年の集大成を描き上げていく。「gravity」「Sweetest Coma Again」とダウナーな中盤に到ると、オープニングアクトにゲスト出演と酷使してきたRYUICHIの声は枯れ気味に。それでも彼は“すごく気持ち良いよ”と微笑み、掠れ声のまま絶唱した「I for you」では、楽器隊からも彼を支えようという強烈な“気”がエモーショナルに伝わってくる。そして、奇跡は起きた。“本当は一緒にココに立ちたくて、今日は来れなかった人も...いや、違うな。きっと今夜、この会場に、このステージに来てくれていると思います”とhide with Spread Beaverの「ピンクスパイダー」を歌い出した途端、そのヴォーカルは一気に伸びやかに! “HIDEさんと一緒に歌うという夢が叶えられました。HIDEさんのおかげでYOSHIKIさんに出会って、シーンのひとつの柱を担わせてもらって。すごく幸せだったなぁと感謝してます”との言葉に、3万人の心が温かな愛で満たされる。その後も「STORM」「TIME IS DEAD」「ROSIER」と畳み掛けられる人気曲には、ツアーを経て高まった一体感が明らかに表れて、頭を振り、飛び跳ねるオーディエンスの幸福感も絶頂へ。アンコールでは出演バンドの面々を呼び込んで、TOSHI、MORRIE、栄喜らとともに「PRECIOUS...」を歌うという、ここでしか有り得ない“夢の共演”に場内は沸きかえる。さらにYOSHIKIの手には、なんとHIDEの愛器・イエローハートまで! 最後はLUNA SEAライヴのラストを飾り続けてきた「WISH」を5人のみで届けて、盟友たちの宴は幕を閉じた。

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