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hide with Spread Beaver ライヴレポート

hide with Spread Beaver ライヴレポート

【hide with Spread Beaver ライヴレポート】 『hide Memorial Day 2023 “hide with Spread Beaver appear!! in YOKOHAMA”』 2023年5月2日 at 神奈川県民ホール

2023年05月02日@神奈川県民ホール

写真提供:(c)HEADWAX ORGANIZATION CO.,LTD. / Photo by KAZUKO TANAKA(CAPS) /取材:土内 昇

2023.05.04

“また春が来ました。
雲の上のhideとの二元中継ライヴ。
hideちゃんとの再会を楽しんでほしいと思います。
今日という日をみんなが笑顔で過ごせることを願っております”
――I.N.A.

hideにとってソロデビュー30周年であり、旅立って25回目の春、25年振りにhide with Spread Beaverのワンマンライヴが大阪と横浜で開催された。これは昨年夏に公開され、12月にBlu-ray&DVD化された映画『TELL ME 〜hideと見た景色~』を観た多くのファンから寄せられた“ライヴを観たい”という切望に応えて実施されたもので、その横浜公演は5月2日というメモリアルな日に神奈川県民ホールにて行なわれた。

hide with Spread Beaverとしてイベント出演はあったが、前述のとおり25年振りのワンマン。フロントマンであるhide不在という前代未聞の状況で行なわれた前回のツアー『hide with Spread Beaver -hide with Spread Beaver appear!! “1998 TRIBAL Ja,Zoo”』を体験している者としては、どうしてもその時の記憶が蘇る。hide with Spread Beaverのメンバー、“お助け怪人”として参加したPATA(Gu/X JAPAN)、同ツアーを敢行したスタッフたちの決意や覚悟、それぞれの想いを受け取ったと同時に、“hideはいない”という現実を突きつけられたライヴだった。それから25年という月日を経てのワンマンというセット。果たして今回はどうなるのか? さまざまな想いを胸に会場に入ると、ステージ中央に立てられ、ピンスポを当てられたイエローハートギターが出迎えてくれる。それはhideの分身のようで、胸を高ぶらせて席に着く観客の姿を嬉しそうに眺めているようにも思えた。

オンタイムに客電が落ちると、まずはアコギを抱えたZEPPET STOREの木村世治がオープニングアクトとして登場する。『1998 TRIBAL Ja,Zoo』の際はZEPPET STOREでステージに立ったが今回は木村ソロ。hideとの呑みの席でのエピソードも含め、そのhideが絶賛したやさしい歌声と、流麗なメロディーを会場に響かせる。それを観客はじっと聴き入っていたことは言うまでもない。それは雲の上と二元中継されているhideも同じだろう。

演奏を終えた木村がステージをあとにするとオープニングムービー『hide Memorial History』がスタート。そこでメッセージされたのは本公演は“追悼ではなく、その先の未来”のためのものだということ。そんな映像終わりで流れたSEは、hide with Spread Beaver名義のアルバム『Ja,Zoo』の幕開けと同じく「SPREAD BEAVER」。声出しがOKということもあり、大歓声とクラップが場内に響き渡り、いよいよ始まるショーへの観客の一触即発の高揚感が伝わってくる。そして、キラーチューン「ROCKET DIVE」のイントロダクションに爆発! hideのライヴをリアルタイムで体験した世代、映像の中でのhideしか知らない世代、それぞれがそれぞれの想いを解放させ、声をあげ、拳を突き上げ、のっけから大合唱状態に。ステージ中央に設置された大型LEDビジョンの中でhide(Vo&Gu)が歌い、ステージ上ではKIYOSHI(Gu)、K.A.Z(Gu)、CHIROLYN(Ba)、JOE(Dr)、D.I.E.(Key)、I.N.A.(Com&Per)と7人の怪人たちが溌溂とプレイ。まだ1曲目なのに間奏でD.I.E.がショルダーキーボードを抱えてステージ前に出てきているし、2曲目にしてKIYOSHIはイラストレーターの韮沢 靖がデザインした変形ギター“ベルゼブブ”を掻き鳴らし、客席はいきなりクライマックスを迎えたかのような盛り上がりようだ。

7月27日に豊洲PITでの追加公演が控えているので詳細は控えつつレポートしていくと、その後もスペクタクルかつエキサイティングなライヴが繰り広げられていく。特筆したいのは、まずは雲の上のhideとつなぐ映像。1stツアー『hide -hide FIRST SOLO TOUR '94 HIDE OUR PSYCHOMMUNITY ~hideの部屋へようこそ~』と2ndツアー『hide solo tour 1996 -PSYENCE A GO GO-』の映像をメインに構成されているのだが、要所要所で入るMCが“やっちゃってくださいな、お客さん〜”や“遊びたりねぇーよ~”など、リアルタイムで聞いているかのように観客を煽り、本編と第二部の幕間の映像も当時の楽屋裏のメンバーを映し出し、フロントマイクに立つ姿はなくとも観客ひとりひとりの意識の中にhideを降臨させていた。それは歌声も同じ。もとは25年以上前のライヴでの歌唱音源である。それを今の時代に聴いても遜色がない精度にまで高めているのはI.N.A.の職人技だ。

“俺たち、hide with Spread Beaverは確かに脇役だ。
脇役だけどよ、俺たちにしかできないからな。
俺たち、hide with Spread BeaverとPATA、hideがいないとできないんだ。
ロックンロールするよー!”
――KIYOSHI

“お助け怪人”ことPATAが登場したのは4曲目。hide with Spread Beaverのメンバーではないのだが、他のhideを含めて7人の怪人たちとは明らかに違うオーラを放つ彼の存在は、もはやそこにいるのが自然すぎる。KIYOSHIが言うように、メンバーでなくとも一員なのだ。「CELEBRATION」のグラムロック的なイントロはPATAのリフが必至だし、「HURRY GO ROUND」では主軸のアコギを弾いていたし、ぽっちゃりになったロザンナ(CHIROLYNが25年振りに女装)とhideがデュエットする「LEMONed I Scream」で一瞬だったがボックスステップを踏んだのは自分的ハイライトだったことも付け加えておきたい。
それともうひとつ。「限界破裂」ではマッドなナースが登場するのだが、2ndソロツアーの映像とリンクしているのも観どころだ。1996年と2023年という時間軸を超越しているこその演出だと言える。そういう意味では、パフォーマーの面々もhide with Spread Beaverの一員である。

今回のトピックスも紹介しておこう。前回のツアーでは怪人たち6人がバンド内オーディションをして、各メンバーがヴォーカルをとるナンバーが存在したが、本公演では新たなhideのリップシンク映像も加わって、ほぼ全曲がhideのヴォーカルとなっている。ちなみにhideの歌唱映像がなく、D.I.E.が大好きだと公言してしていた「FISH SCRATCH FEVER」はD.I.E.&KIYOSHIが歌っていた。また、前回のツアーでCHIROLYNのヴォーカルで披露された未発表曲「CO-GAL」がボーカロイド技術をもとにI.N.A.のプロデュースワークによって完成した「子 ギャル」として発表されたが、それも再現され、最新のAI技術を駆使してリップシンク映像も作られていた。さらに『Ja,Zoo』ではhideの実弟でありパーソナルマネージャーである松本裕士氏のナレーションで収録された「PINK CLOUD ASSEMBLY」が、「子 ギャル」同様にhideの音声データを組み合わせたバージョンで初披露されたのだった。つまり、本公演は単なるライヴではなく、さまざまな技術を駆使して実現したライヴであり、そこにも職人のI.N.A.を筆頭に、それだけ裏方で携わっている“一員”がいるということだ。

“次がラストだー。
後悔しねぇように楽しんで帰れよー。
hide、いくよー!”
――CHIROLYN

その言葉を合図にオーラスの「TELL ME」イントロダクションが奏でられ、ステージから一斉に放たれた金テープが宙を舞う。メインヴォーカルはhideだが、それに負けないだけの歌声を張り上げる観客。ひとりひとりが自分の歌を、自分のために歌っているのだ。そんなヴォーカリストたちを支える怪人たちのバンドサウンドは、強固で躍動的なグルーブで会場を揺るがし、どこまで突き抜けていきそうな爽快なスケープを描いていく。ステージ上も、客席も、雲の上も、感情のメーターを振り切って、最高の笑顔を咲かせての大団円。そう、ここにはバンドメンバーはもちろん、“脇役”などいない。ちなみに、KIYOSHIもライヴ翌日に“25年という時を経てSpread Beaverがhideが望んだ「バンド」って言うものになれたかなと...思います”とツイートしていた。

メンバーが去ったステージの中央には残されたhideの分身であるイエローハートギター。終演後、ギターケースにしまわれ、そのケースを持って舞台袖に捌けていったのはスタッフやクルーではなく、松本裕士氏だった。それは演出などではない。ある意味でドラマとも言える、今回のhide with Spread Beaverの再始動を実現させた想いの象徴ではないだろうか。そして、残すは7月の豊洲PITでの追加公演。そこではSpread Beaverがhideの望んだバンドというものになっていることが実証され、それを誰よりも雲の上のhideが感じるに違いない。前回のツアーでは“hideはいない”という現実を突きつけられたが、今回のツアーでは“hideはいる”と言わないまでも、“hideのバンドがある”と誰もが実感するはずだ。

写真提供:(c)HEADWAX ORGANIZATION CO.,LTD. / Photo by KAZUKO TANAKA(CAPS)
/取材:土内 昇

※追加公演を控えているため、セットリストの公表を控えさせていただきます。

hide with Spread Beaver

ヒデ・ウィズ・スプレッドビーバー:hide(Vocal&Guitar)、KIYOSHI(Guitar)、KAZ(Guitar)、CHIROLYN(Bass)、JOE(Drums)、D.I.E.(Keybord)、I.N.A.(Computer&Percussion)で構成された”7人の怪人たち”によるこのバンドは、1997年12月31日にX JAPANが解散ライヴを行なった翌朝、1998年元旦の朝日新聞で『hide with Spread Beaver 起動』の全面広告を掲載し活動をスタート。この年、3枚のシングルとフルアルバムのリリース、それを引っさげてのツアーなど、年末まで綿密なスケジュールが組まれていたが、98年5月2日にhideが不慮の事故により急逝。葬儀には約5万人のファンが集まり突然の別れに多くの若者が涙し、社会現象になった。混乱の中、hide with Spread Beaverのメンバーであり、hide全ての楽曲の共同プロデューサーであるI.N.A.を中心にバンドメンバー、そして盟友:PATAをはじめとする多くの仲間たちの協力により、制作途中だった3rdアルバム『Ja,Zoo』を完成させ、全国ツアー『hide with Spread Beaver appear!!”1998 TRIBAL Ja,Zoo”』を決行。このツアーはhideという主宰者が不在の前代未聞の状況の中、スクリーンに上映されるhideの映像と歌声に合わせてバンドがライヴ演奏する、いわゆる”二元中継”という当時の最先端技術を駆使した画期的なスタイルで行なわれ、全12会場・14公演、5万人を動員し、hideの歴史に刻まれる激動のツアーとなった。

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