とた
オリーブの葉から受け取ったもの
2026年9月16日に“とた”が新曲「オリーブ」をリリースしました。10月9日に劇場公開される映画『どこよりも遠い場所にいる君へ』の主題歌として書き下ろされた楽曲となっております。
今日のうたではそんな“とた”による歌詞エッセイをお届けします。綴っていただいたのは、新曲「 オリーブ 」にまつわるお話です。初めての映画主題歌の制作で、改めて向き合った“ピアノ”という存在。主人公との共通点を探すなかで、音楽を通して受け取ったものは…。
映画『どこよりも遠い場所にいる君へ』の主題歌として「オリーブ」という曲を書き下ろさせてもらった。正直言うと、私にとって初めての映画主題歌で、大きな嬉しさと同時に自分の中で勝手にハードルを上げてしまって、もがきながら作る日々だった。この曲はきっと、私がピアノをやっていなかったら完成していなかったと思う。
私が生まれてはじめて触った楽器はピアノだった。幼い頃は母がいつも弾いているのを隣で真似して、小学生になったらレッスンに通わせてもらった。だんだん音を繋ぐペダルにも足が届くようになって、私はその時の感情を即興で旋律にするようになっていた。
楽しい日もめんどくさい日も辞めたくて泣き叫んでた日も、ピアノの前に座ってた。
ピアノは誰でも音を出せるくらい簡単で、それなのに弾く人や感情に合わせて不思議なくらい違う音が鳴るから難しくて面白い楽器だと思う。
難航する曲作りでピアノに触れながら、主人公の和希と向き合って共通点を探せば、やっぱりそのひとつはピアノだった。白紙の譜面の前では自分でも気付けないぐらい素直になってしまう。その踏み込んだ音を和希も知ってると思った。
そして、もうひとつが「オリーブ」だった。私は「再生」や「希望」、「平和」のイメージが浮かぶ。
受け取ったその葉を想えば、モノクロの鍵盤から色のついた音が鳴った。
まだ何も書いていない譜面には五本の線が並んでいて、それは便箋みたいだった。
慎重になりすぎて足を止めているよりも、鍵盤の上で指を走らせるほうが私らしく進めると気付くのに時間がかかった。だけど今となっては、それも含めてオリーブの葉から受け取ったものだと思う。
この「オリーブ」という曲が映画館で流れて、何色になって届くのか楽しみです。
<とた>
◆紹介曲「 オリーブ 」 作詞:とた 作曲:とた