クジラ夜の街
朝について
2025年11月26日に“クジラ夜の街”がメジャー3rdフル・アルバム『ひかりあそび』をリリース。今作は、名前のとおり“光”をモチーフにしており、ジャケットや歌詞カードにはたくさんのこだわりが詰め込まれています。さらに、新たなアーティスト写真は、真っ白な衣装の4人を色とりどりの光が照らし、ファンタジーでありながらロック・バンドでもある彼等を象徴するようなビジュアルに。
さて、今日のうたでは“クジラ夜の街”の宮崎一晴による歌詞エッセイを3週連続でお届け。最終回は、収録曲「 新聞配達少年 」にまつわるお話です。なかなか夜、眠ることができずに朝を迎えてしまう。ひとりだけ“昨日”に取り残された気持ちになる。そんなあなたへ…。ぜひ歌詞とあわせて、エッセイを受け取ってください。
かすかな車輪の音と
知らん小鳥の囀り
薄い水色の光がカーテン隙間から漏れ入り
寝室の闇が滲んで
朝の到来をかんじる
あの瞬間が本当に嫌いです。
だいたいの場合
そこに立ち会っている(寝そべっている)のは
一睡もできなかった自分なので。
仕事柄
ライブやイベントの日以外は
そんなに早く起きる必要がないから
一晩中起きていたって問題はないんだけど
要・不要に紐づく嫌悪感とは別に
シンプル、
すごい置いてかれた気持ちになるんですよ。
眠れないまま朝を迎えるのって
こう、俺だけ昨日のままみたいな感じがして。
睡眠が下手になったのは
高校を卒業してから。
コロナ禍とかもかぶって
規則正しい生活が終了、
日中外に出ないから
夜は全く疲れてない、
目を瞑っても全く入眠できない、
したら
布団をかぶる→考え事をする
みたいな変な癖がついちゃった。
ベッドに寝転ぶと
条件反射で脳がフル回転する
あまりに不器用な生物に成り果ててしまった。
パブロフ!
そっから5年経った今も
寝室が一番集中できる場所なのは
変わってないのです。
このエッセイだって、布団かぶって書いている。
本当に毎夜、考えまくってる。
考えても答えの出ないことばかり
考えあぐねている。
眠るための方法を考えて
眠れなかった時もある。
ベタに羊を数えてみたら
いつのまにかニュージーランドで牧場を営むための幾つかのステップについて考え耽っていたこともある。
なんか発電できちゃうかもってくらい
脳みそが動いてる。
体は微動だにしないのに。
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『眠れぬ夜に嫌気がさして
深夜0時、少年は窓から飛び立った!』
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10代の頃書いた
「夜間飛行少年」という曲の前口上。
最近改めて読んだら
ちょっとムカついてしまった。
この少年は空を飛べるらしいけど俺は飛べない。
ベッドに張り付けられたまま
迫り来る朝に怯えるしかない。
眩い光に包まれて
気絶するように眠る瞬間を待つしかないのだ。
そんであと0時に寝つけんくらいで無闇に飛んでいかないでほしい。
人が本当に焦りだす時間は
3時40分を超えたあたりからだよ。少年。
今、自分に必要なのは
慰めや鼓舞じゃない。
開き直ることだ、と思った。
そうして
「新聞配達少年」という曲を書き始めました。
朝刊が届けられる時間
“昨日”に取り残されている自分へ向けて
『眠れないならばそれでいい、この夜は僕のもんだ』
という歌詞を書きました。
今の自分が、眠れぬ夜を歌うなら
きっとこうだろう、という解釈で。
考えることが生きることだとしたら。
生きるために考えるんだとしたら。
僕達が眠れなかった夜は
僕達が生きようとした証なのだと。
俺がまだ起きているのは
俺がまだ生きているということなのだと。
<クジラ夜の街・宮崎一晴>
◆紹介曲「 新聞配達少年 」 作詞:宮崎一晴 作曲:宮崎一晴
◆メジャー3rdフル・アルバム『ひかりあそび』
2025年11月26日発売
<収録曲>
1. 有明の詩
2. スターダスト・ジャーニー
3. ハッピーエンド
4. 嵐の夜のプリンセス
5. ひかるひかる
6. 憑依(Interlude)
7. 夕霊
8. REAL FANTASY
9. 星は何にも喋らない
10. 新聞配達少年