俳優業では自分の体に執着していられないからこそ…。“五感”をテーマにした最新EP!

 2026年1月14日に“菅田将暉”がEP『SENSATION CIRCLE』をリリース。今作は、“五感”をテーマに制作された全6曲入りのセルフプロデュース作品。五感に“第六感”を加える形で、円環的に構成されております。インタビューでは、とくに自身が敏感である“嗅覚”を軸に描かれた「骸骨は踊る」や、音から言葉のイメージが広がっていった“聴覚”の楽曲「universe」の歌詞制作について詳しくお話を伺いました。さらに、これまであまり使ってこなかった<君>というワードへの意識の変化や、俳優として多様な役を演じるなかで生まれる感覚、体との向き合い方についても語っていただきました。今作とあわせて、菅田将暉の歌詞トークをお楽しみください。
(取材・文 / 井出美緒)
骸骨は踊る作詞・作曲:菅田将暉
編曲:タイヘイ、越智俊介、西田修大、工藤拓人(オノマトペル)
骸骨は踊る 骸骨は踊る 誰かが来ても寂しくないように
骸骨は踊る 骸骨は踊る 最期の記憶はタイヤの焦げた匂い
楽園を去って オーイェイ 怪物になって オーイェイ
痛みはないよ 至らないよ 刺激はもういらないよ
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僕はこれまで<君>というワードをあまり使ってこなかった。

―― 人生でいちばん最初に、音楽に心を動かされた記憶というと何を思い出しますか?

撮影現場で、フジファブリックさんの「茜色の夕日」を聴いたときですね。当時、北九州で映画を撮っていて、その作品で共演した篠原ゆき子さんが教えてくれた曲なんです。基本的に日中のシーンばかりだったので、日が暮れてくると撮影が終わる。そのときの夕日が毎日すごく綺麗で。まさに茜色というか。その夕日をみんなで眺めているときに「茜色の夕日」を流してくれて。その状況に歌がぴったりと重なって、心を揺さぶられました。

―― 役者になる前は、ご自身にとって歌というものはそんなに近い存在ではなかったのでしょうか。

小さい頃にずっとピアノをやっていたので、音楽自体は好きだったと思います。だけど、まさか自分が歌うようになるとは思っていなかったし、歌詞やメロディーでグッとくるような経験もなかったです。言葉の面でも、別にポエムや日記を書いていたタイプではありませんでした。音楽活動を始めて、自分で曲づくりもするようになって、初めて歌詞というものを書きました。それが「ゆらゆら」という曲です。

―― 歌詞面で影響を受けたアーティストはいらっしゃいますか?

フジファブリック、andymori、小山田壮平、石崎ひゅーい、くるり、などなど。もともと自分が好きで聴いていた音楽からは、やはり影響を受けていると思います。

―― 菅田さんは本当に様々な役を演じられていますが、そのなかでご自身の感情がわからなくなってきたり、役の感情に影響を受けたりすることはないですか?

どうなんだろう…。自分と役の境目って、ずっとわからないんですよね。時には、自分に戻ってこられないような瞬間はあります。もう感情とかじゃなく、存在そのものがよくわからなくなるというか。まあそれは次の作品に行くたびに、パレットが新しくなるような感覚になるので大丈夫なんですけど。

でも、役の感情に影響されることはあまりないです。どちらかというと、素の自分の感情が役に出ることのほうがあるかもしれません。もちろん絶対に劇中の役の感情で言葉や表情が動いているわけですが、完全に自分ではないわけではなくて。自分が生きてきた引き出しから紡がれているところも大きい気がします。

―― 何かの役として歌詞を書くこともあるのでしょうか。

あります、あります。今回のEPは、それぞれの曲を一緒に作ったバンドメンバーを、主人公みたいな“担当者”だと思っていて。だから、自分の気持ちというより、その“担当者”の気持ちになりきって書いたところはあると思います。それは役と同じで、多少はボク自身が混ざっているでしょうけれど。

―― たとえば、4曲目「I’m in shock!!」の“担当者”は<バイト>をしていますし。

そうなんですよ。自分が主体だったら、僕はバイトをした経験がないので、こういう歌詞は書けなかったと思います。この曲の担当者の人物像やシーンを想像しながら、曲を作っているところがあるのかもしれません。

―― 歌詞面で“菅田将暉らしさ”が確立されたと感じたタイミングはありますか?

いや、ないです。毎度、「これでいいのかなぁ?」と思いながらやっています。

―― ご自身で、“菅田将暉らしい歌詞”の特徴を言語化するとしたらいかがですか?

まず、自分にとって嘘がないもの。あと、あまり歌詞にしないような言葉を、あえて入れているところもあります。そのアーティストからしか聴いたことのない言葉の羅列とか、限定的な状況とか、具体的なワードとか、ドキッとするじゃないですか。僕自身そういう音楽が好きなので。もうひとつ、自分がライブで歌うことを想定しているのも大きいかもしれません。石崎ひゅーいくんにも言われたんですけど、僕の歌詞は「脚本に似ている」って。

―― なるほど。舞台上で演じるひとがいて成立するというか。

そうそう。歌って初めて、意味が伝わるような歌詞にしていることもありますし。脚本も歌詞も、もちろんそれだけでも完成しているし、おもしろい。だけど、演者が言葉を発したり、その前にお客さんがいたりすることで、ニュアンスが変わる。そういう歌詞を意識している気がします。だから、ひとりで作るというより、作っていくなかで誰かとバチッとハマるような瞬間に、いちばん楽しさを感じるかもしれません。

―― 歌詞面や価値観で、変わってきた面はありますか?

バンドメンバーに言われて気づいたんですけど、僕はこれまで<君>というワードをあまり使ってこなかったんです。自分の作詞曲で。特定の他者に歌うものが少ないということもありますし、そもそも使い方がわからなくて。「“君”って誰だ?」みたいな感覚で。だからこそ、今作では意図的にたくさん使ってみました。使い始めると、よくもわるくも便利です。メロディーに乗せやすいし、聴き手が勝手に想像してくれる部分が増える。

―― もしかしたら、これまで菅田さんがラブソングを書かれることも少なかったのかもしれないですね。

そうなんですよね。名ラブソングの多くに<君>が使われているじゃないですか。高校時代、友だちとカラオケへ行くと、みんなそれぞれの<君>に対して歌うわけですよ。携帯を目の前に立てて、振られた元カノの写メに対して泣きながら歌う奴もいれば、好きなアイドルの画像に対して熱唱する奴もいて(笑)。今思うと、<君>って聴き手の軸になる視覚的なワードなんだろうなと。僕にとってはずっと不思議な言葉だったんです。

―― どういったところを不思議に感じていたのですか?

日常生活でなかなか使わないじゃないですか。僕らの年齢だと、役のセリフでさえも使わないんです。上司が部下を呼ぶときとか、特殊な状況では使われるかもしれないけれど。でも曲のなかでは<君>って、当たり前に出てくるのが不思議で。

―― EPタイトルの『SENSATION CIRCLE』という言葉には、どのようにたどり着いたのでしょうか。

まず、「五感をテーマに作りたい」とずっと思っていたんです。でも、作り始めていくと、五感というものが一作品にするにはあまりに広すぎた。そういう反省もあり、五感そのものを指す言葉ではなく、自分の感覚の範囲みたいなものをタイトルにしようと。それで調べてみたら、自分の感じられるものごとの範囲を表す「感覚圏」という言葉を見つけて。その「感覚圏」を英語に当てはめて、いろいろ議論した結果、このタイトルになりました。

―― そもそも「五感をテーマに作りたい」というマインドになってきた理由というと?

役者業は他人の人生を演じますが、音楽業はどこまでも自己満足なものでありたいと思っているんです。だからいつもアルバム制作のときには、自分の好きなものや嫌いなものをテーマに置くんです。それで2025年の4月ぐらいに、「なんとなく今回は五感だな」という話はしていて。単純に僕を含め、バンドメンバーが5人いたので、ちょうどいいなとも思いましたし(笑)。

あと、実をいうと、メンバーのひとりの耳の調子が悪い時期だったというのも大きいんです。もしかしたら、次のライブに出られるかどうかもわからなかった。だからこそ、「じゃあ聴覚に特化した曲を作ってみようか」というところがスタートして。そこから「五感」というテーマにつながっていったという流れもあります。

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