LIVE REPORT

『LUNATIC FEST.』 ライブレポート

『LUNATIC FEST.』

LUNA SEA、BUCK-TICK、D'ERLANGER、GLAY、[Alexandros]、MUCC、KA.F.KA、AION、minus(-)、ROTTENGRAFFTY、凛として時雨、LUNACY(Opening Act)

2015年06月28日@幕張メッセ 1~4ホール

取材:清水素子

2015.07.12

幕張メッセにて2日間にわたり行なわれた『LUNATIC FEST.』。初日の6月27日(土)には“ロックの地層みたいなものをココで見せたい”というRYUICHI(LUNA SEA/Vo)の名言があったが、翌28日もまた、幅広い世代とジャンルが互いのベストアクトを披露し合いって、この数十年に日本のロックシーンが為した発展を詳らかにする、実に刺激的な1日となった。

オープニングアクトは初日と同じくLUNACY。床を揺るがす「FATE」の大ジャンプで2日目の狼煙をあげると、CD未発表曲「SUSPICIOUS」後半の幻想パートから一瞬にして「SHADE」で暴力的に駆け抜ける、その彼ららしい激烈なギャップに思わずニヤリ。おまけに弦楽器隊が弦上を滑らす手の動きも音も美しく、衝動と熟練を併せ持つ“21世紀のLUNACY”を見事に提示してみせた。

3曲を演奏し切って“楽しんで帰ってくれ!”と颯爽と立ち去ったLUNACYの潔き精神を受け継ぐかのように、凛として時雨はモニターを一切使わず音のみで勝負。男女ツインで交互に畳み掛ける脳天を劈くようなハイトーンヴォーカル、自虐と自嘲を滲ませたリリックが生むカオスの渦は狂気ではなく“正気じゃない”と言いたくなるヤバさで、それがゆえに唯一穏やかな声で告げられた“ここから歴史が始まると思います”の言葉が真実味を帯びる。対照的に、ROTTENGRAFFTYも同じツインヴォーカルながら、ピュアで熱いメッセージを全力で放ってポジティブなパワーを全開に。“奇跡は待ってるだけじゃ起こりません。奇跡は自分で掴み取れ!”とJ(LUNA SEA/Ba)を迎えて「THIS WORLD」を演奏するさまは、まさしく有言実行そのものだった。歌謡曲レベルのキャッチーな旋律を強靭なロックサウンドで届ける彼らからminus(−)へと続くと、生音からエレクトロへはたまた世界は一変。90年代、LUNA SEAとBUCK-TICKともに『L.S.B.』ツアーを回ったSOFT BALLETのメンバーふたりにより結成されたユニットで、鍵盤を叩きながらサイケなダンスチューンをエフェクトヴォーカルで歌い上げる森岡賢の、その軽やかな身のこなしは当時を彷彿させるものだ。もちろん時代が進んだぶん楽曲はグッと洗練され、人間の本能に遺伝子レベルで訴えかけてフロアを揺らす一方、不動の藤井麻輝は無表情で機材に対峙。この“静と動”の対比こそ彼ら最大の魅力に違いない。ここからLUNA SEAとの関係がさらに深いアーティストが続き、次にJが過去にローディーを務めていたAIONが登場。全曲新曲という豪気なメニューで豪快なメタルサウンドを轟かせ、“幕張メッセという空間が俺の心をどんどんクレイジーにしている。俺たちのために声を出してくれないか!?”と痛快な爆走で駆け抜けた。そして、SUGIZO(LUNA SEA/Gu)が師と仰ぐ土屋昌巳(Gu)によるプロジェクト・K.A.F.K.Aは、ヴォーカルのISSAYがタクトを振る耽美の世界。蝶ネクタイで黒のロングジャケットを広げる彼の姿はヴァンパイアの如しで、その妖しの香りをウエノコウジ(Ba)、森岡賢(Key)、宮上元克(Ds)という凄腕ミュージシャン陣が増幅させる。ラストはSUGIZOも加わり、KA.F.KA.結成に刺激を与えたというJoy Divisionの「Transmission」をカバーして、ゴージャスすぎる時間を楽しませてくれた。

一転、リスペクトを露わにしたのが後輩バンドのMUCC。生音のヘヴィネス、ダンサブルなエレクトロ、和情緒の滲むメロディーを飲み込んで咀嚼した最新型のMUCCを提示しながら、“ここにいる全員の顔覚えて帰るからな!”と95年の東京ドーム公演でRYUICHIが放った伝説のMCを借用。しかし、“全員の顔を覚えて帰るのは無理だ! なので、代わりに今日ここにいるみなさんにMUCCを覚えて帰ってもらおうと思います”とつなげる逹瑯(Vo)の話術も見事だ。ライヴ定番の「蘭鋳」でも全オーディエンスを座らせ、“みんなやさしい! 僕も人にやさしくしようと思います”と言った途端、“全員死刑!”と3カウントでジャンプさせる等、人心を掴む術に長けたステージングで初見の人々にも強いインパクトを残す。[Alexandros]はソリッドなギターを軸としたバンドサウンドを軽快に鳴らしながら、ヒリヒリとした傷跡を残すようなプレイでじょじょに場内を侵食。爽快に突き抜ける「Stimulator」からオーディエンスを惹き込み、ラストの「ワタリドリ」では会場全体を乗らせてしまう手腕に、今の彼らが持つ勢いが如実に表れていた。

そして、LUNA SEAへのリスペクトを最も目に見えるかたちで示し、次の世代へと歴史をつなぐという本フェスの趣旨を、最も端的に体現していたのはGLAYかもしれない。手拍子と歓声に迎えられて「HEAVY GAUGE」からライヴをスタートさせると、“身体で感じられる曲ばかり選んできました”との言葉通り、「誘惑」「口唇」等のヒット曲を次々投下。TERU(Vo)は密かにフェス初日にも会場を訪れたことを告白し、“(X JAPANの)YOSHIKIさんの涙はヤバいよね。俺も大泣きしてしまいました”と語る彼らもまた、インディーズ時代はExtasy Records所属だったのだ。さらに“LUNA SEAの影響を色濃く受けた曲”と「月に祈る」をメロディックに贈り、上京直後に1stアルバム『LUNA SEA』を聴いてすぐさま虜になったというHISASHI(Gu)のたっての希望で、“そのアルバムの中から1曲やらせてもらいます。この狂った夜に...エナメルの夜に”と、なんと「SHADE」をカバー! 彼らの性質が表れた実直なプレイにHISASHIのギターソロも良い狂いっぷりで、嬉しいサプライズに歓声をあげるオーディエンスの目は釘付けに。続いて、切れ味鋭いサウンド&ヴォーカルに妖しい香りを纏わせて、危険な音の罠を仕掛けたのがD’ERLANGER。パンキッシュな「SADISTIC EMOTION」やキャッチーな「LULLABY」を矢継ぎ早に披露し、ヘヴィかつ小気味良いビートとロマンティックな旋律で客席を酔わせたところで、kyo(Vo)が“ゲストを呼ぼうかな。名前言わなくても分かってると思うから、みんなで呼ぼう”と語ると、客席からは“INORAN!”の大合唱が起きる。ステージに上がったINORANは敬愛する瀧川一郎(Gu)の前に跪き、「LA VIE EN ROSE」をともにセッション。その少年のような笑顔が、彼がキッズに還ったことを示していた。

2日目のトリ前という重要なポジションを担ったのはBUCK-TICK。モニターにサイバーな映像が流れる「THEME OF B-T」から場内は異世界へと誘われ、ミラーボールが回る「独壇場Beauty」をグリッターに放つ狭間に、櫻井敦司(Vo)は“LUNATIC!”と叫ぶ。もちろんフェス名に引っ掛けてのものであろうが、“狂人”“狂気じみた”といった本来の英単語の意味も引っ掛けているようにしか思えなかったほど、彼らのステージには日常とかけ離れた匂いがした。ヤガミトールのタイトなドラムが正確に4つ打ちを刻む「メランコリア -ELECTRIA- 」、ファンタジックな物語を暴発寸前の緊張感漲った音で紡ぐ「ONCE UPON A TIME」、今井寿(Gu)が無表情でエスニックなコーラスを入れる「Django!!! -眩惑のジャンゴ-」と、矢継ぎ早に畳み掛けられるダンサブルなビートに目も心も眩む。陶酔の中でJが呼び込まれ、BUCK-TICK初期の名曲「ICONOCLASM」を櫻井とのツインヴォーカル&ベースで披露する一幕も。センターに立つJの前に、彼がリスペクトする今井がしゃがみ込んでの2ショットには、ひときわ大きな歓声が沸いた。フロアを揺らし、躍動と享楽を纏ったステージの最後には、しかし、まるで異なる彼らの顔が。儚きものを追い求める無情を悲痛に綴る「形而上 流星」、櫻井の女声のようなハイトーンや今井の鳴らす不穏な音に底知れ怖れが芽生える「無題」と、BUCK-TICKの底知れぬ深淵を覗かせるディープな2曲から身に迫る虚無は、それまでの煌びやかさのぶんだけオーディエンスを叩きのめし、彼らだけが持つ孤高の美学を突き付けた。

ついに迎えたラストアクト、大トリLUNA SEAの登場を告げたのは、初日と同じく「月光」。しかし、今度は途中で途切れることなく5人をステージに迎え入れ、終幕を挟んで13年振りとなる最新アルバム『A WILL』でも幕開けを飾る「Anthem of Light」が、光あふれるサウンドと自然に沸き起こる大合唱で、25周年のフィナーレをスタートさせる。その後も「TONIGHT」「DESIRE」「TRUE BLUE」と往年のヒットシングルを連発。さらに地を這うように低くうねる「FACE TO FACE」から、SUGIZOがバイオリン弦を軋ませて流麗な三拍子を紡ぐ「Providence」と、LUNA SEAのディープサイドを代表する流れも取り込んで、いわゆる“美味しいところ取り”なメニューでマニアから初見者までを魅了する。もちろん、万事が問題なかったわけではない。主催者の責任を果たすべく、2日間切れ目なくステージに上がった彼らの消耗は相当なもので、特にRYUICHIの喉は最早限界点に。それでも時にメロディーをアレンジしながら、甘く深みある歌でしっかり“聴かせる”彼のプロ根性は凄まじく、特にSUGIZOがコーラスで、INORANが表情でエモーショナルに支えたバラード「I for you」は珠玉の一品に。時にはオーディエンスの助けも借りつつ、会場が一体となって作り上げるライヴに、RYUICHIは“やっぱり音楽はやり続けないとダメだなって。LUNA SEAもみんなとともに歩くよ”と何よりも嬉しい言葉を聞かせてくれた。そして前日に続き、この日もHIDEのナンバーをプレイ。hide with Spread Beaverの「ROCKET DIVE」をパッショネイトにかき鳴らしながら、揃って空を指差すSUGIZOとJの姿に胸が熱くなり、“いや、絶対来てるよ、HIDEさん。HIDEさんの曲を歌うと、すげぇ背中を押してもらってる気がするんだよね”というRYUICHIの台詞に納得させられる。LUNA SEA飛躍のきっかけを作ったHIDEの存在なくして、やはり『LUNATIC FEST.』は成立しないのだ。

アンコールではGLAY、MUCCら出演バンドも参加して「BELIEVE」をセッション。TERU、逹瑯、NOBUYA(ROTTENGRAFFTY)と、LUNA SEAへのリスペクト篤い後輩ヴォーカリストたちの合唱は素晴らしく熱く、ギターソロを弾くHISASHIをSUGIZOが煽る場面も。“魂のバトンをどんどん次の世代に、さらに次の世代に繋いでいって、日本のロックシーンを世界に誇れる最高のカルチャーにしようぜ!”と彼が語った通り、『LUNATIC FEST.』の目的は単にLUNA SEAの25周年を祝うのみならず、彼らが受け継ぎ育てたロックの遺伝子を後世に伝えることなのだ。最後にLUNA SEAから贈られたのは「WISH」。そのクライマックス、オーディエンスの大合唱からラスト一音を真矢(Dr)が叩くまでの、いつにも増して長い数秒間は、空前絶後のフェスが終わってしまうことを惜しむ彼らの気持ちの表れだったろう。しかし、シーンの歴史のみならず、LUNA SEAの歴史もまだまだ終わらない。“最高の狂気”はこれからも続いていくのだ。

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