LIVE REPORT

INORAN ライヴレポート

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【INORAN ライヴレポート】 『INORAN TOUR BACK TO THE ROCK'N ROLL 2022』 2022年9月29日 at LIQUIDROOM

2022年09月29日@LIQUIDROOM

撮影:Yoshifumi Shimizu/取材:大前多恵

2022.10.13

ソロアーティストとして25周年のアニバーサリーイヤーを迎えているINORANが、自身の誕生日当日である9月29日にライヴを開催。“BACK TO THE ROCK’N ROLL 2022”と銘打ったツアーの一環として行なわれた公演で、タイトルどおりINORANが直近の約10年で築き上げてきたロックンロールサウンドに光を当てたセットリスト。LIQUIDROOMに詰めかけたオーディエンスに加え、CS生放送で全国各地のファンが見守った。

バンドメンバーのu:zo(Ba)、Ryo Yamagata(Dr)、Yukio Murata(Gu)に続いてINORANが登場、1曲目の「One Big Blue」からテンションは最高潮、爆音で飛ばしていく。足元のスピーカーに乗りギターを掻き毟り、弾けんばかりの笑顔を見せながら、ステージから身を乗り出すようにプレイする。“今日はひとりひとりの魂を、“ここ”で受け止めて帰るので”と胸元を両手で押さえて語る、そのMCからも想いが迸る。

「Awaking in myself」「Rightaway」ではオーディエンスがジャンプを繰り返し、歓声こそ禁じられているものの、コロナ禍以前の熱狂を思い起こさせた。ライヴハウスのフロアーが、ようやくここまで戻ってきた――そんな実感に胸が熱くなる。INORANはギターを背中に回し、頻繁にハンドマイクで熱唱。ヴォーカリストでありギタリストであり、アジテーターとしても抜群の存在感をステージで示していく。明るく会場を盛り上げたあとに放った「Selfless」の気怠くセクシーな歌唱、地底を這うような艶めかしいグルーブは、歳を重ねた今のINORANだからこそ生み出し得たものだろう。

FAKE?のカバー「LEMONTUNE」を披露し終えたタイミングで、u:zoが「HAPPY BIRTHDAY」を歌い始めケーキが運び込まれると、誕生祝いのセレモニーがスタート。INORANは“今日誕生日を迎えられて本当にハッピー”と微笑み、太陽の周りの公転回数で年齢をカウントするSUGIZO(LUNA SEA、X JAPAN他)の発言を引用し、“52周目に入るランデブーのスタートにみんなでこうやって会えて...何があっても俺、53周目を目指して頑張るから、これからもよろしくお願いします!”と高らかに宣言した。

「Beautiful Now」「raize」と連打したミディアム曲では、INORANのヴォーカルのパワフルさがかえって際立つのも不思議だった。“次にやる2曲は“揺らぎ”を楽しんでください”と呼びかけ、まずは三連のリズムに歯切れ良いカッティングを絡ませていくインストゥルメンタル「HOME」を放つと、後光に包み込まれるような照明も相まって、幻想的なムードに。続いて、至高のメロディーを誇る「Long Time Comin」では、内なる想いをそっと独白するような、深い歌声を響かせた。ツアータイトルに“ロックンロール”を打ち出しつつも、激しさ一辺倒ではなくこうした柔らかさ、静けさを織り込むことで、ライヴ全体に深い陰影が生まれていた。

バンドメンバーへの感謝とリスペクトを語る言葉にも、いつにもまして力がこもる。海外在住で“久しぶりに日本に帰ってきてくれた”Ryoのビートを土台とし、“こいつしかあり得ない”u:zoのベースが絡まり、“俺の想像を超えた”Yukio Murataのギターが重なって生まれる、INORANバンド固有のサウンドとグルーブ。身体を震わせるほどの音圧、爆音ではあるのだが、INORANの歌がしっかりと耳と心に届いてくるミックス手腕も至高。色気漂うリヴァーブも随所に効いていて、ただ激しいだけではなく、終始心地良いサウンドに酔うことができる、大人のライヴ空間でもあった。

「Don’t you worry」のシンガロングを想定したパートでは、オーディエンスに“心の声で歌ってくれ!”と呼びかけるINORAN。終盤を迎えてもパワーは衰えるどころか漲っていき、高いジャンプを何度も見せ、アグレッシブなパフォーマンスでフロアを引っ張っていく。「Thank you」ではステージ左右を行き来し、前傾姿勢でファンに語りかけるようにして渾身の歌唱。明るいオレンジの光の中始まった「Rise Again」では、大きなストロークでギターを掻き鳴らしてシャウト。終盤は声を涸らし、メロディーを解体しアレンジしながら歌唱。何にも縛られることのない自由で解放的なムードが広がり、心が明るく、軽くなっていく。

誕生日当日に行なわれた記念ライヴではあったが、“日付じゃなくて、こうやって集まってもらって、音に埋もれて一緒に過ごせたことが嬉しい”とINORAN。25年の歩みを振り返り、“ずっと大切にしたいと思ってるんで、みんなも何かあったら“ここ”に来てくれ!”と叫んだ。ラストはブルーのひんやりとした光に照らされながら「All We Are」を放ち、情感のこもったギターリフを爪弾き、深く心に染み渡る歌声を響かせる。INORANが突如グッと姿勢を低くした瞬間、力強いサビへと突入。オーディエンスも渾身の力を込めた手の動きで、想いをステージへと届けていた。INORANは曲中、マイクを通さず“みんなの心の声を聴かせてくれ!”と凄みのある低音ヴォイスで叫び、ファンはそれに応えた。その光景に照明の数値では説明のつかない圧倒的な明るさ、眩しさを感じ、目を細めてしまう。パンデミックの中、いっときは消えそうになりながらINORANはもちろん、さまざまなアーティストと音楽ファン、携わる人々が懸命に守り続けてきたライヴ空間という灯火。眩い光の世界がそこには広がっていた。

掻き回し、メンバー全員が激しく音を打ち鳴らしたあと、4人でラインナップすると“今日、俺たちと一緒にいるってことを選んでくれて、本当にどうもありがとう!”とオフマイクで叫んだINORAN。誕生日を祝うというよりは、ライヴ空間を守りたいという使命感のような、ピュアな想いが伝わってくる2時間だった。INORANの音楽人としての矜持とパワーを全身で浴び、奥底から力が湧いてくるのを感じられるステージ。またこの場所に帰ってきたい――そう思わせる、中毒性と魅力に満ちていた。

撮影:Yoshifumi Shimizu/取材:大前多恵

INORAN

イノラン:国内にとどまらず、世界に活動の場を拡げるLUNA SEAのギタリスト。1997年よりソロ活動を開始、現在迄にフルアルバム10枚以上をリリースする等精力的な活動を行なっている。LUNA SEA、ソロの他にもTourbillon、Muddy Apes等多岐に渡るプロジェクトで音楽活動を鋭意展開中。ソロ活動20周年を迎えた17年8月にセルフカバーベストアルバム『INTENSE/MELLOW』を、LUNA SEAが活動30周年を迎えた19年8月にはオリジナルフルアルバム『2019』を発表。そして、20年9月に『Libertine Dreams』、21年2月に『Between The World And Me』、同年10月に『ANY DAY NOW』と三部作となるアルバムをリリース。

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. 1

    SE

  2. 6

    05. Rightaway

  3. 10

    09. Beautiful Now

  4. 12

    11. HOME

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