『唇ワンマンJAPAN TOUR 2015 ~おまたせBKW!! 9ヵ所行脚でエリア拡大、改めまして「ジ」オーラルシガレッツです!の巻~』

2015年07月14日@Zepp DiverCity Tokyo

撮影:Viola Kam (V’z Twinkle Photography)/取材:高良美咲

2015.08.03

“失ったものより得たもののほうが多かった”。本編が終わり、再びステージに戻ってきた時、山中拓也(Vo&Gu)がファンに向けた言葉は意外にも前向きであった。全9カ所というバンド史上最大のワンマンツアーのセミファイナル東京公演は、絆と決意を見せ、さらなるリベンジを誓った一夜になった。

ライヴのスタートを告げるお馴染みの手拍子も息ぴったりに決まり、山中の“かかってこいよ!”という言葉を合図に爆発的な口火を切る。絶対的に高揚感を誘うテンポの良さだけではなく、不思議な雰囲気を生み出す「ハロウィンの余韻」、山中がキーボードも務めた「リメイクセンス」など、さまざまな角度から全体の士気を高める。オーラルと言えばファルセットを織り交ぜた伸びのよいヴォーカルが印象的だが、この日は喉の調子が良くなく、歌いづらそうなのが目にとってみれた。それでも必死に歌い続ける山中であったが、ついに6曲目「自動販売機の男」が終わるところで崩れるようにしゃがみ込んでしまい、ステージが暗転、袖にはけてしまった。客席から心配の声があがる中、残った3人が山中の様子を心配しつつも、オーディエンスを相手にツアーについて振り返りつつ雑談。機転を利かせたゆるいトークでそれぞれのキャラを発揮し会場を沸かせたのであった。

心配の声と温かい拍手に迎えられ戻ってきた山中は“聴きづらいかもしれへんけど、一生懸命歌うからさ”と語り、急遽セットリストを変更し、まさに全身全霊のキラーチューン祭りを届けた。「大魔王参上」で一気に先ほどまでの熱気を取り戻すと、“どうしても聴かせたかった新曲”と、ライヴ・フェス会場限定&配信シングルの「カンタンナコト」を披露。バンドはサポートをするという意気込みからか、いつも以上に殺気立った演奏で、一方の山中は時々ふらふらしながらも全力でギターをかき鳴らし、声を張り上げる。人間味がここまであふれているステージはなかなかないだろう。キラーチューン祭りということで、ライヴでは定番のアッパーな曲で、これでもかと手をゆるめず攻め続ける。客席から上がる大合唱に、多くの人がこれを待っていたということを肌で感じていた。そして、歓声に応えるようにラスト「エイミー」ではギター一本で弾き語る場面も。最後にステージに倒れ込むほどぼろぼろになるまで歌い続ける山中もだが、そんな山中を信頼し、演奏で支えた3人がオーディエンスに向かって深々とお辞儀をする姿は、ここに集まった人の背中を押してくれる希望に変わっていた。

万全の状態で公演に挑めなかった悔しい気持ちからか、涙を浮かべて声を詰まらせる場面もあった。しかし、ライヴを続行したバンドの“伝えたい”という意志、この日集まったオーディエンスとバンドの気持ちが通い合っていたのは事実で、4人の口から出たのが謝りの言葉よりも感謝の気持ちが多かったのは、今日の公演によってさらにオーディエンスとの絆がさらに深まったからだと思う。全力のパフォーマンスを尽くした後も鳴り止まない拍手に、アンコールに応えることはできなかったが、思いの丈を語った最後の“また絶対リベンジさせてもらってもいいですか?”という言葉を信じて、このZepp DiverCity Tokyoのステージに再び立つ日を待っている。

本公演の3日後、7月17日に大阪・なんばHatchで行なわれたツアーファイナルは予定通りに開催され、大盛況を収めたとのこと。リベンジを果たす日もそう遠くないようだ。