チャンチキおけさ氷川きよし | 氷川きよし | 門井八郎 | 長津義司 | | 月がわびしい 露地裏の 屋台の酒の ほろ苦さ 知らぬ同志が 小皿叩いて チャンチキおけさ おけさ切なや やるせなや 一人残した あのむすめ 達者でいてか お袋は すまぬ すまぬと 詫びて今夜も チャンチキおけさ おけさおけさで 身をせめる 故郷を出る時 持って来た 大きな夢を さかずきに そっと浮べて もらすため息 チャンチキおけさ おけさ涙で くもる月 |
十三夜野中さおり | 野中さおり | 石松秋二 | 長津義司 | | 河岸(かし)の柳の 行きずりに ふと見合せる 顔と顔 立止まり 懐しいやら 嬉しやら 青い月夜の 十三夜 夢の昔よ 別れては 面影ばかり 遠い人 話すにも 何から話す 振袖(ふりそで)を 抱いて泣きたい 十三夜 空を千鳥が 飛んでいる 今更泣いて なんとしょう さよならと こよない言葉 かけました 青い月夜の 十三夜 |
ふるさとの燈台天童よしみ | 天童よしみ | 清水みのる | 長津義司 | | 真帆片帆(まほかたほ) 唄をのせて通う ふるさとの 小島よ 燈台の岬よ 白砂に 残る思い出の いまも仄かに さざなみは さざなみは 胸をゆするよ 漁火の 遠く近くゆるる はるかなる 小島よ 燈台のわが家よ なつかしき 父のまた母の 膝はゆりかご いつの日も いつの日も 夢をさそうよ 歳ふりて 星に月に偲ぶ むらさきの 小島よ 燈台のあかりよ そよかぜの あまき調べにも おもいあふれて 流れくる 流れくる あつき涙よ |
チャンチキおけさTemiyan. | Temiyan. | 門井八郎 | 長津義司 | | 月がわびしい 路地裏の 屋台の酒の ほろ苦さ 知らぬ同士が 小皿叩いて チャンチキおけさ おけさ せつなや やるせなや ひとり残した あの娘 達者で居てか おふくろは すまぬすまぬと 詫びて今夜も チャンチキおけさ おけさ おけさで 身をせめる 故郷(くに)を出る時 もって来た 大きな夢を 盃に そっと浮べて もらす溜息 チャンチキおけさ おけさ泪で 曇る月 |
玄海ブルースちあきなおみ | ちあきなおみ | 大高ひさを | 長津義司 | | 情け知らずと わらわば笑え ひとにゃ見せない 男の泪 どうせ俺らは 玄海灘の 波に浮寝の かもめ鳥 紅い灯(ほ)かげの グラスに浮ぶ 影が切ない 夜更けのキャバレー 酔うて歌えど 晴れない胸は ドラよお前が 知るばかり 嵐吹きまく 玄海越えて 男船乗り 往く道ゃひとつ 雲の切れ間に キラリと光る 星がたよりの 人生さ |
大利根月夜 田端義夫 | 田端義夫 | 藤田まさと | 長津義司 | | あれを御覧と 指差すかたに 利根の流れを ながれ月 昔 笑うて 眺めた月も 今日は今日は 涙の顔で見る 愚痴じゃなけれど 世が世であれば 殿の招きの 月見酒 男 平手と もてはやされて 今じゃ今じゃ 浮世を三度笠 もとをただせば 侍そだち 腕は自慢の 千葉仕込み 何が不足で 大利根ぐらし 故郷(くに)じゃ故郷(くに)じゃ 妹が待つものを |
玄海ブルース 田端義夫 | 田端義夫 | 大高ひさを | 長津義司 | | 情け知らずと わらわば笑え ひとにゃ見せない 男の泪 どうせ俺らは 玄海灘の 波に浮寝の かもめ鳥 紅い灯かげの グラスに浮ぶ 影が切ない 夜更けのキャバレー 酔うて歌えど 晴れない胸は ドラよお前が 知るばかり 嵐吹きまく 玄海越えて 男船乗り 往く道ゃひとつ 雲の切間(きれま)に キラリと光る 星がたよりの 人生さ |
ふるさとの燈台 田端義夫 | 田端義夫 | 清水みのる | 長津義司 | | 真帆片帆 歌をのせて通う ふるさとの小島よ 燈台の岬よ 白砂に 残る思い出の いまも仄(ほの)かに さざなみは さざなみは 胸をゆするよ 漁火(いさりび)の 遠く近くゆるゝ はるかなる小島よ 燈台のわが家よ なつかしき 父のまた母の 膝はゆりかご いつの日も いつの日も 夢をさそうよ 歳ふりて 星に月にしのぶ むらさきの小島よ 燈台の灯よ そよ風の 甘き調べにも 想いあふれて 流れくる 流れくる 熱き泪よ |
別れ出船田端義夫 | 田端義夫 | 大高ひさを | 長津義司 | | 情け知らずの 銅羅の音に 泣いて泣かせる 磯千鳥 乙女椿も ほろり散る 青い月夜の 名残り船 肩を抱きよせ ひとしずく 胸に涙の しみのあと きいてくれるな その先は 海の男の 生きる道 消えてせつない 泡沫(うたかた)も こんど椿の 咲く日まで 島よあの娘よ さようなら 別れ出船に 残す唄 |
元禄名槍譜 俵星玄蕃神野美伽 | 神野美伽 | 北村桃児 | 長津義司 | | 槍は錆びても 此(こ)の名は錆びぬ 男玄蕃の 心意気 赤穂浪士の かげとなり 尽す誠は 槍一筋に 香る誉れの 元禄桜 姿そば屋に やつしてまでも 忍ぶ杉野よ せつなかろ 今宵名残に 見ておけよ 俵崩の 極意の一と手 これが餞(はなむ)け 男の心 涙をためて振り返る そば屋の姿を呼びとめて せめて名前を聞かせろよと 口まで出たがそうじゃない 云わぬが花よ人生は 逢うて別れる運命とか 思い直して俵星 独りしみじみ呑みながら 時を過した真夜中に 心隅田の川風を 流れてひびく勇ましさ 一打ち二打ち三流れ あれは確かに確かにあれは 山鹿流儀の陣太鼓 「時に元禄十五年十二月十四日、 江戸の夜風をふるわせて、響くは山鹿流儀の陣太鼓、 しかも一打ち二打ち三流れ、思わずハッと立ち上り、 耳を澄ませて太鼓を数え 「おう、正しく赤穂浪士の討ち入りじゃ」 助太刀するは此の時ぞ、 もしやその中にひるま別れたあのそば屋が 居りはせぬか、名前はなんと今一度、 逢うて別れが告げたいものと、けいこ襦袢(じゅばん)に身を固めて、 段小倉の袴、股立ち高く取り上げ、 白綾たたんで後ろ鉢巻眼のつる如く、なげしにかかるは先祖伝来 俵弾正鍛えたる九尺の手槍を右の手に、 切戸を開けて一足表に踏み出せば、 天は幽暗地は凱々たる白雪を蹴立てて行手は松阪町…」 吉良の屋敷に来て見れば、今、討ち入りは真最中、 総大将の内蔵之助。見つけて駆け寄る俵星が、 天下無双のこの槍で、お助太刀をば致そうぞ、 云われた時に大石は深き御恩はこの通り、厚く御礼を申します。 されども此処は此のままに、 槍を納めて御引上げ下さるならば有り難し、 かかる折りも一人の浪士が雪をけたてて サク、サク、サク、サク、サク、サク、サク 『先生』『おうッ、そば屋か』 いや、いや、いや、いや、襟に書かれた名前こそ、 まことは杉野の十兵次殿、わしが教えたあの極意、 命惜しむな名おこそ惜しめ、立派な働き祈りますぞ、 さらばさらばと右左。赤穂浪士に邪魔する奴は何人(なんびと)たりとも 通さんぞ、橋のたもとで石突き突いて、槍の玄蕃は仁王立ち… 打てや響けや 山鹿の太鼓 月も夜空に 冴え渡る 夢と聞きつつ 両国の 橋のたもとで 雪ふみしめた 槍に玄蕃の 涙が光る |
還らぬ白衣東海林太郎 | 東海林太郎 | 石松秋二 | 長津義司 | | つわもの達は 銃をとり 君は担架と 弾丸の中 愛の天使は 赤十字 真白い腕(かいな) 血に染めて あわれ黒髪 還らぬ白衣(びゃくえ) 病院船の 揺れる燈に 乳房おさえて 呼子鳥 愛の天使は 赤十字 みくにのために 母の身を 海の果て行き 帰らぬ白衣 サルビアの花 ほろと散る 野戦病舎の夜の窓 愛の天使は 赤十字 看護(みと)るその身を 看護られて 純情(まこと)捧げて 還らぬ白衣 女は弱し 弱けれど 紺の制服 健気にも 愛の天使は 赤十字 召された君が 勲(いさおし)を とわに讃えん 還らぬ白衣 |
霧の港の灯がうるむ東海林太郎 | 東海林太郎 | 東條寿三郎 | 長津義司 | | 霞む港よ 思い出よ 名残り切なく 振り返りゃ 胸に津軽の 灯が見える あゝ 霧の港の 灯がうるむ さらば函館 青い灯よ 恋は夜毎に 燃えるもの リラの葉かげで 見つめてた やさしあの目が 忘られぬ あゝ 霧の港の 灯がうるむ さらばまた逢う その日まで アカシヤ並木の 鈴の音よ 馬車にゆられて 札幌の 月に唄った わが姿 あゝ 霧の港の 灯がうるむ さらば函館 青い灯よ |
銀座尾張町東海林太郎 | 東海林太郎 | 藤田まさと | 長津義司 | | 昔おもえば なつかし恋し 粋な手厘に 秘め模様 かわいかわいと ほめはやされて 花の銀座を 初島田 それもひととき 一夜の想い つもる月日や 年の数 ごらん今宵も 柳の街に つむじ曲りの お月さま ゆれる瓦斯等 ちるちる柳 肌につめたい 風のこえ 忘れましょうよ 昔のことは うわさばかりの 尾張町 |
築地明石町東海林太郎 | 東海林太郎 | 藤田まさと | 長津義司 | | 河岸(かし)の小舟に ゆらゆら灯(あか)り 誰を待つ身の 花の眉 すねた夜風を 袂(たもと)に抱いて 憎くや今宵も 明石町 「想い出って、なぜこんなに悲しいのでしょう。 あたしまた今夜も、知らず知らずの間に、ここ へ来てしまったのよ。女って弱いものだわ。 過ぎ去った昔のことばかり思って泣いている んですもの。でも、これが女よ、笑わないで、 笑わないでちょうだいね。そして成功なすった お姿を、一日も早く見せて下さいね。」 ほんに想えば 昨日のことは 今宵泣けとの 謎かしら 泣いてみたとて 詮(せん)ないけれど 女ごころの なんとしょう 「早いものね。もうあれから三年経ってしまっ たんですもの。あなたが立派に成功なさる日ま で、きっと待っていますと、お誓いしたあたし… …、でも、それがみんな夢だったのね。変わっ たわ、あなたがお変りになったと同じように、 あたしもすっかり変わってしまいましたわ。皮肉 じゃないのよ。いいえ、あたしはこれが一番い いお互いの道だと思っていますの。あたし生 れ変わった気持で、これからの世の中を強く 強く、きっと生き抜いてみせますわ。」 情けひとつで 浮世が住めりゃ なんで泣きましょ 都鳥 水の流れに 想いを捨てる これも義理ゆえ 運命(さだめ)ゆえ |
チャンチキおけさ清水博正 | 清水博正 | 門井八郎 | 長津義司 | 長津義司 | 月がわびしい 露地裏の 屋台の酒の ほろにがさ 知らぬ同士が 小皿叩いて チャンチキおけさ おけさせつなや やるせなや 一人残した あの娘 達者で居てか おふくろは すまぬすまぬと 詫びて今夜も チャンチキおけさ おけさ おけさで 身をせめる 故郷(くに)を出る時 もって来た 大きな夢を 盃に そっと浮べて もらす溜息 チャンチキおけさ おけさ泪で 曇る月 |
ふるさとの燈台清水博正 | 清水博正 | 清水みのる | 長津義司 | | 真帆片帆(まほかたほ) 歌をのせて通う ふるさとの 小島よ 燈台の岬よ 白浜に 残る思い出の いまも仄かに さざなみは さざなみは 胸をゆするよ 漁火の 遠く近くゆるゝ はるかなる 小島よ 燈台のわが家よ なつかしき 父のまた母の 膝はゆりかご いつの日も いつの日も 夢をさそうよ 歳(とし)ふりて 星に月にしのぶ むらさきの 小島よ 燈台の灯(あかり)よ そよ風の 甘き調べにも 想いあふれて 流れくる 流れくる 熱き泪よ |
大利根月夜島津亜矢 | 島津亜矢 | 藤田まさと | 長津義司 | 山田年秋 | 「あゝ鐘が鳴る あれは生命(いのち)の送り鐘か 今宵は八月十三夜(や) 抜いちゃいけねえ 義理が絡んだ白刃を抜けば 利根が三途の川になる」 あれを御覧と 指差す方に 利根の流れを ながれ月 昔笑うて ながめた月も 今日は 今日は涙の 顔で見る 「侍がなんだ やくざがどうした 人が住む世の裏街道 命ひとつを手土産に ここまで落ちた平手造酒 いいってことよ どんなに愚痴ってみても 昔にかえる 風は吹かねえって ことなんだ」 愚痴じゃないけれど 世が世であれば 殿のまねきの 月見酒 男 平手と もてはやされて 今じゃ 今じゃ浮世を 三度笠 もとをたゞせば 侍育ち 腕は自慢の 千葉仕込み 何が不足で 大利根ぐらし 故郷(くに)じゃ故郷じゃ妹が 待つものを |
大利根無情島津亜矢 | 島津亜矢 | 猪又良 | 長津義司 | 池多孝春 | 利根の利根の川風 よしきりの 声が冷たく 身をせめる これが浮世か 見てはいけない 西空見れば 江戸へ江戸へひと刷毛 あかね雲 「佐原囃子が聴えてくらあ想い出すなア…、 御玉ヶ池の千葉道場か、うふ…。 平手造酒も、今じゃやくざの用心棒、 人生裏街道の枯落葉か。」 義理の義理の夜風に さらされて 月よお前も 泣きたかろ こゝろみだれて 抜いたすすきを 奥歯で噛んだ 男男泪の 落し差し 「止めて下さるな、妙心殿。 落ちぶれ果てゝも 平手は武士じゃ 男の散りぎわは知って居り申す、 行かねばならぬそこをどいて下され、 行かねばならぬのだ。」 瞼瞼ぬらして 大利根の 水に流した 夢いくつ 息をころして 地獄まいりの 冷酒のめば 鐘が鐘が鳴る鳴る 妙円寺 |
元禄名槍譜 俵星玄蕃 島津亜矢 | 島津亜矢 | 北村桃児 | 長津義司 | | 槍は錆びても 此の名は錆びぬ 男玄蕃の 心意気 赤穂浪士の かげとなり 尽す誠は 槍一筋に 香る誉れの 元禄桜 姿そば屋に やつしてまでも 忍ぶ杉野よ せつなかろ 今宵名残りに 見ておけよ 俵崩しの 極意の一手 これが餞(はなむ)け 男の心 涙をためて振り返る そば屋の姿を呼びとめて せめて名前を聞かせろよと 口まで出たがそうじゃない 云わぬが花よ人生は 逢うて別れる運命とか 思い直して俵星 独りしみじみ呑みながら 時を過ごした真夜中に 心隅田の川風を 流れてひびく勇ましさ 一打ち二打ち三流れ あれは確かに確かにあれは 山鹿流儀の陣太鼓。 「時に元禄十五年十二月十四日、 江戸の夜風をふるわせて、 響くは山鹿流儀の陣太鼓、しかも一打ち二打ち 三流れ、思わずハッと立ち上がり、 耳を澄ませて太鼓を数え、おう、 正しく赤穂浪士の討ち入りじゃ、 助太刀するは此の時ぞ、 もしやその中にひるま別れた あのそば屋が居りわせぬか、 名前はなんと今一度、 逢うて別れが告げたいものと、 けいこ襦袢(じゅんばん)に身を固めて、 段小倉の袴、股立ち高く取り上げし 白綾たたんで後ろ鉢巻き眼のつる如く、 なげしにかかるは先祖伝来、 俵弾正鍛えたる九尺の手槍を右の手に、 切戸を開けて一足表に踏み出せば、 天は幽暗地は凱々たる白雪を 蹴立てて行く手は松坂町…」 吉良の屋敷に来て見れば、 今、討ち入りは真最中、 総大将の内蔵之助(くらのすけ)。 見つけて駆け寄る俵星が、 天下無双のこの槍で、 お助太刀をば致そうぞ、 云われた時に大石は 深き御恩はこの通り、 厚く御礼を申します。 されども此処は此のままに、 槍を納めて御引上げ下さるならば有難し、 かかる折しも一人の浪士が雪をけたてて サク、サク、サク、サク、 サク、サク、サク、――、 『先生』 『おうッ、そば屋か』 いや、いや、いや、いや、 襟に書かれた名前こそ、 まことは杉野の十兵次殿、 わしが教えたあの極意、 命惜しむな名をこそ惜しめ、 立派な働き祈りますぞよ、 さらばさらばと右左。 赤穂浪士に邪魔する奴は何人(なにびと) たりとも通さんぞ、 橋のたもとで石突き突いて、 槍の玄蕃は仁王立ち。 打てや響けや 山鹿の太鼓 月も夜空に 冴え渡る 夢と聞きつつ 両国の 橋のたもとで 雪ふみしめた 槍に玄蕃の 涙が光る |
豪商一代 紀伊国屋文左衛門島津亜矢 | 島津亜矢 | 北村桃児 | 長津義司 | | 惚れた仕事に 命をかけて 散るも華だよ 男なら 怒濤逆巻く 嵐の中を 目指すは遙か 江戸の空 花の文左の みかん船 肝の太さと 度胸の良さに 勇み集まる 十二人 力合せて 乗り出す船は これも故郷の 人の為 征くぞ夜明けの 和歌の浦 浜辺に送る妻や子が、別れを惜 しんで呼ぶ声も風に悲しく千切 れとぶ、まして文左の新妻は、今 年十九のいじらしさ、 せめても一度もう一度、背伸びし ながら手を振れど、雨と嵐にさ えぎられ、かすむ良人(おっと)の後ろ影、 これが別れになりゃせぬか、女心 の切なさよ。 「白装束に身を固め、梵天丸に乗り 移った文左衛門。 時に承応元年十月二十六日の朝ま だき。此の時、遥か街道に駒のいな なき、蹄の音は、連銭芦毛に鞭打っ て、パッ、パッ、パッパッパッパー。 馬上の人は誰あろう、歌に名高き玉 津島明神の神官、高松河内。可愛い 娘の婿どのが、今朝の船出の餞けと、 二日二夜は寝もやらず、神に祈願を こめました。 海上安全守りの御幣、背中にしっか りとくくりつけ、嵐の中を歯を喰いし ばり親の心の有り難さ。婿どのイヤ 待ったと駆けつけた。」 涙で受取る文左衛門。 未練心を断つように、波切丸を 抜き放ち、切ったとも綱、大碇は、 しぶきを上げて海中へ、ザ、ザ、ザ、 さぶん――。 眺めて驚く船頭に、せくな騒ぐ な此の船は、神の守りの宝船じゃ。 張れよ白帆を巻き上げよ、船は 忽ち海原へ、疾風の如く乗り出す。 寄せくる波は山の様、嵐はさな がら息の根を、止めんばかりの凄 まじさ、舳(へさき)に立った文左衛門は、 両の眼をらんらんと、刀を頭上 に振りかざし、無事に江戸まで、 八大竜王守らせ給えと念じつつ、 熊野の沖や志摩の海、遠州相模 の荒灘も、男一代名をかけて、乗 り切る文左のみかん船。 沖の暗いのに白帆がサー見ゆる あれは紀の国ヤレコノコレワイノサ みかん船じゃエー 八重の汐路に 広がる歌が 海の男の 夢を呼ぶ 花のお江戸は もうすぐ近い 豪商一代 紀伊国屋 百万両の 船が行く |
出世佐渡情話島津亜矢 | 島津亜矢 | 北村桃児 | 長津義司 | 池多孝春 | お国訛(なま)りを嗤(わら)われて なんど楽屋で泣いたやら 浮かぶふるさと あの山小川 飾る錦が男の誓い 今宵 血を吐く寒稽古(かんげいこ) 泣いて別れたあの人に 熱い想いを通わせて 島の娘の黒髪恋し 唄うおけさも米若ぶしに 乗せて出世の 佐渡情話 佐渡へ佐渡へと草木もなびく 佐渡は居よいか住みよいか 唄で知られた 佐渡ヶ島 寄せては返す浪の音 立つや鴎か群千鳥 浜の小岩に佇(たたず)んで 若き男女の語り合い 晴れの舞台に七彩(いろ)の 夢を呼ぶよな名調子 恋の四十九里 たらいの舟も 今は昔よ お光と吾作 涙 輝やく 金屏風(びょうぶ) |
チャンチキおけさ島津亜矢 | 島津亜矢 | 門井八郎 | 長津義司 | 池多孝春 | 月がわびしい 露地裏の 屋台の酒の ほろ苦さ 知らぬ同士が 小皿叩いて チャンチキおけさ おけさせつなや やるせなや ひとり残した あの娘 達者で居てか おふくろは すまぬすまぬと 詫びて今夜も チャンチキおけさ おけさ おけさで 身をせめる 故郷(くに)を出る時 持って来た 大きな夢を 盃に そっと浮べて もらす溜息 チャンチキおけさ おけさ泪で 曇る月 |
桃中軒雲右ヱ門島津亜矢 | 島津亜矢 | 藤田まさと | 長津義司 | 池多孝春 | 芸道一代 男のいのち… 意地と情けの からみ合い たとえ形は 女夫(みょうと)で居ても 芸のためなら 死ぬ覚悟 泣いて鬼にも 泣いて鬼にも 仇敵(かたき)にも 艱難辛苦 その甲斐あって… 晴れの花道 都入り 泣くなお浜よ 涙は不吉 天下無双の 幕びらき かげの三すじも かげの三すじも 意地で弾け 花は桜木 山なら富士よ… 浪花ぶしなら 桃中軒 雲をつらぬく あの紋どころ 女房あれ見よ 大幟(のぼ)り 二つ巴に 二つ巴に… 春の風 |
国分寺音頭市町村歌 | 市町村歌 | 門井八郎 | 長津義司 | | ハアー月のむさしの 昔を今に うけて栄える 文化都市 トコ ヨイヨイの 国分寺 (ソレ) 富士も見とれる 晴れ姿 ヨイショ ヨイショ ヨイショ 晴れ姿 ハアー住めばうれしや あなたとわたし 色もほんのり 紅の橋 トコ ヨイヨイの 国分寺 (ソレ) 花の都の となり組 ヨイショ ヨイショ ヨイショ となり組 ハアー見たか聞いたか 御存知ないか 市民繁昌の 合言葉 トコ ヨイヨイの 国分寺 (ソレ) かわす笑顔に 春の風 ヨイショ ヨイショ ヨイショ 春の風 ハアー 一葉松の木の 真姿(ますがた)池で 紅(べに)の化粧すりゃ 恋ケ窪 トコ ヨイヨイの 国分寺 (ソレ) 古い歴史の 夢のあと ヨイショ ヨイショ ヨイショ 夢のあと ハアー街の広場で 工場の庭で 歌がはづめば 気もはづむ トコ ヨイヨイの 国分寺 (ソレ) 空にゃ黄金(こがね)の 丸い月 ヨイショ ヨイショ ヨイショ 丸い月 |
大利根無情椎名佐千子 | 椎名佐千子 | 猪又良 | 長津義司 | 杉山ユカリ | 利根の利根の川風 よしきりの 声が冷たく 身をせめる これが浮世か 見てはいけない 西空見れば 江戸へ江戸へひと刷毛(はけ) あかね雲 「佐原囃子が聴こえてくらあ 想い出すなア…、御玉ヶ池の千葉道場か、 ふふ…。 平手造酒も、今じゃやくざの用心棒、人生裏街道の枯落葉か」 義理の義理の夜風に さらされて 月よお前も 泣きたかろ こゝろみだれて 抜いたすすきを 奥歯で噛んだ 男男泪(なみだ)の 落し差し 「止めて下さるな、妙心殿。落ちぶれ果てても平手は武士じゃ。 男の散りぎわだけは知って居り申す。行かねばならぬ。 そこをどいて下され、行かねばならぬのだ」 瞼(まぶた)瞼ぬらして 大利根の 水に流した 夢いくつ 息をころして 地獄まいりの 冷酒のめば 鐘が鐘が鳴る鳴る 妙円寺 |
千葉県東金市立東金中学校校歌校歌 | 校歌 | 白鳥省吾 | 長津義司 | | 緑と光 いっぱいの 学びの園に 伸びてゆく 明るい希望 広い道 太平洋の遠潮に みのり豊かな ふるさとよ われらの東金中学校 日本の誇り さくら花 徽章としては万葉に 歌へる槙に 栄あり 力を協せ 日に月に 進む世界に 窓ひらく 幸ある東金中学校 |
紅い燃ゆる地平線楠木繁夫 | 楠木繁夫 | 島田磬也 | 長津義司 | | 逢えば別れる 空の雲 若い二人の 呼び交す 愛の谺の かなしみが いつかは結ぶ 青春の夢 霧の都を 彷よえば 揺れてうるむか 街の灯も 忘れられない 君ゆえに 男の胸も すすり泣く 春はまた来る 人の世も 花と小鳥の めぐり逢い 明日の光に ほのぼのと 紅い燃ゆる 地平線 |
玄海ブルース木村徹二 | 木村徹二 | 大高ひさを | 長津義司 | 蔦将包 | 情け知らずと 嘲笑(わら)わばわらえ ひとにゃ見せない 男の涙 どうせ俺らは 玄界灘の 波に浮き寝の かもめ鳥 紅い灯かげの グラスに浮かぶ 影がせつない 夜更けのキャバレー 酔うて唄えど 晴れない胸は 銅羅(ドラ)よお前が 知るばかり 嵐吹きまく 玄海越えて 男船乗り 住く道ちゃひとつ 雲の切れ間に キラリと光る 星がたよりの 人生さ |
連絡船の唄君夕子 | 君夕子 | 大高ひさを | 長津義司 | | 思い切れない 未練のテープ 切れてせつない 女の恋ごころ 汽笛ひと声 汽笛ひと声 涙の波止場に わたし一人を 捨ててゆく 連絡船よ 霧の海峡の 航海燈は いつか港に 返って来るものを 返るあてない 返るあてない 恋ゆえ身を焦く わたし一人を 捨てて行く 連絡船よ |
大利根月夜北島三郎 | 北島三郎 | 藤田まさと | 長津義司 | 萩敏郎 | あれを御覧と 指差すかたに 利根の流れを ながれ月 昔笑うて 眺めた月も 今日は今日は 涙の顔で見る 愚痴じゃなけれど 世が世であれば 殿の招きの 月見酒 男平手と もてはやされて 今じゃ今じゃ 浮世を三度笠 もとをただせば 侍そだち 腕は自慢の 千葉仕込み 何が不足で 大利根ぐらし 故郷(くに)じゃ故郷じゃ 妹が待つものを |
ふるさとの燈台北島三郎 | 北島三郎 | 清水みのる | 長津義司 | 池多孝春 | 真帆片帆 唄をのせて通う ふるさとの小島よ 燈台の岬よ 白砂に 残る思い出の いまも仄(ほの)かに さざなみは さざなみは 胸をゆするよ 漁火(いさりび)の 遠く近くゆるる はるかなる小島よ 燈台のわが家よ なつかしき 父のまた母の 膝はゆりかご いつの日も いつの日も 夢をさそうよ 歳ふりて 星に月に偲ぶ むらさきの小島よ 燈台の灯(あかり)よ そよ風の 甘き調べにも 想いあふれて 流れくる 流れくる 熱き泪よ |
山鳩の唄菊池章子 | 菊池章子 | 田中千恵子 | 長津義司 | | ほろろ ほろほろ あの鳩は 今も昔も 山の唄 若いあの日の あなたは何処に 月の荒野か 海の果て 「あなた…あなたは 何処でお聞きになっていらっしゃるかしら 今日は朝から山鳩が啼いているんですよ。 小さい子どもたちを連れて あなたをお送りしたあの日と、 まるで同じように」 経てば短い 十年は 夢の浮世の 破れ傘 荒れた両手に 頬すりよせて 父の無い子と 泣きました 「子どもたちは立派に成人してくれました。 ありがたいと思っています。 悲しい戦争の思い出も、 もう遠いことなんですね。 あなた、安心なさって下さいね。 母ひとり子ども三人、力を合わせて みんなで幸福になって参りますわ」 母と呼ばれて ひとすじを 強く生きたも あなたゆえ 紅も忘れた 悲しい妻に やがて 希望の夜明けです |
大利根月夜川中美幸 | 川中美幸 | 藤田まさと | 長津義司 | 伊戸のりお | あれを御覧と 指差すかたに 利根の流れを ながれ月 昔笑うて 眺めた月も 今日は今日は 涙の顔で見る 愚痴じゃなけれど 世が世であれば 殿の招きの 月見酒 男平手と もてはやされて 今じゃ今じゃ 浮世を三度笠 もとをただせば 侍そだち 腕は自慢の 千葉仕込み 何が不足で 大利根ぐらし 故郷(くに)じゃ故郷じゃ 妹が待つものを |
十三夜 小笠原美都子 | 小笠原美都子 | 石松秋二 | 長津義司 | 長津義司 | 河岸の柳の 行きずりに ふと見合せる 顔と顔 立止り 懐しいやら 嬉しやら 青い月夜の 十三夜 夢よ昔よ 別れては 面影ばかり 遠い人 話すにも 何から話す 振袖を 抱いて泣きたい 十三夜 空を千鳥が 飛んでいる 今更泣いてなんとしょう さようならと こよない言葉 かけました 青い月夜の 十三夜 |
僕の恋愛設計図榎本健一 | 榎本健一 | 島田磬也 | 長津義司 | | 好きだからとてイチャイチャと 色気のぼせりゃ よしなさい 恋の手管はただひとつ 好きな人ほど好かぬふり ラランラ ララララ 僕の恋愛設計図 いつも彼女と会うたびに 愛の言葉を目で言って じっと心を掴んだら それで万事はOKさ ラランラ ララララ 僕の恋愛設計図 野暮なレターで袖をひく ちょいとその手は古臭い 知らぬ顔すりゃ彼女から 焦れて想いをなびかせる ラランラ ララララ 僕の恋愛設計図 月の光に事寄せて 君にささやくローマンス 頬を真っ赤にバラのよに 染めてうなずきゃシメたもの ラランラ ララララ 僕の恋愛設計図 |
大利根月夜五木ひろし | 五木ひろし | 藤田まさと | 長津義司 | | あれをご覧と 指さす方に 利根の流れを ながれ月 昔笑うて 眺めた月も 今日は 今日は涙の 顔で見る 愚痴じゃなけれど 世が世であれば 殿のまねきの 月見酒 男平手と もてはやされて 今じゃ 今じゃ浮世を 三度笠 もとをただせば 侍育ち 腕は自慢の 千葉仕込み 何が不足で 大利根ぐらし 故郷じゃ 故郷じゃ妹が 待つものを |
君忘れじのブルース石原裕次郎 | 石原裕次郎 | 大高ひさを | 長津義司 | | 雨ふれば 雨に泣き 風ふけば 風に泣き そっと夜更けの 窓をあけて 歌う女の 心は一つ あゝ せつなくも せつなくも 君を忘れじのブルースよ 面かげを 抱きしめて 狂おしの いく夜ごと どうせ帰らぬ 人と知れど 女ごころは 命も夢も あゝ とこしえに とこしえに 君を忘れじのブルースよ |
勝負道石原裕次郎 | 石原裕次郎 | 藤本義一 | 長津義司 | 長津義司 | なんぼ阿呆でも 生命はあるで そんじょそこらの 生命やないで 勝負の道は 二つにひとつ 勝って笑おか 負けても笑う 男の涙は 男の恥や なんぼ阿呆でも こころはあるで そんじょそこらの こころやないで 小春とおれは二人で一人 捨っておかんで 忘れはせんで 女の情は 女の仇や なんぼ阿呆でも 意気地はあるで そんじょそこらの 意気地やないで 王将かけて とことんやるで 振った駒にも たましいやどる いばらの血汐は いばらの花や |
君忘れじのブルース淡谷のり子 | 淡谷のり子 | 大高ひさを | 長津義司 | | 雨ふれば 雨に泣き 風ふけば 風に泣き そっと夜更けの 窓をあけて 歌う女の 心は一つ ああ せつなくも せつなくも 君を忘れじの ブルースよ 面かげを 抱きしめて 狂おしの いく夜ごと どうせ帰らぬ 人と知れど 女ごころは 命も夢も ああ せつなくも せつなくも 君を忘れじの ブルースよ 君を忘れじの ブルースよ |
長篇歌謡浪曲 十三夜天津羽衣 | 天津羽衣 | 石松秋二 | 長津義司 | | 河岸の柳の ゆきずりに ふと見合せる 顔と顔 立ち止まり なつかしいやら 嬉しやら 青い月夜の 十三夜 「下らない事を云って何時までめそめそ泣いているんだいね、 お雪、幾ら気の長い私だって終いにゃ腹を立てるよ」 「お母さん それだけは それだけは堪忍して その代り、他の事ならなんでも聞きます」 「判らない子だねえ本当に、私しゃね お前の為を思って 云ってるんだよ、何時まで半玉(おしゃく)でいられるもんじゃア なしそれにゃ良い機会じゃないか。鶴田の旦那に 可愛がって貰ったら、襟(えり)変(か)へどころか一生お小遣いにも 困らないし、 お前の親達だってそれこそ大扇(うちわ)で暮らせるんだよ」 「お内儀さん、それじゃ家の親達もそれを 承知だと云ったんでしょう?」 「―そりゃアま、未だ聞いちゃいないけどさ、お父つあんは あの通りの永患(わずら)いでおッ母さん独りの手内職じゃ どうにも成りゃしないだろう、考えても御覧親孝行を されて怒る親ァ有りゃしない、ほんの僅かの辛抱だし、 女はみんな黙って通る道なんだよ」 お白粉つけて紅差して、 銀のかんざしゆらゆら 笑えば弾(はず)むぽっくりに 何の苦労も無い様な、 花の半玉の愛らしさ、 けれども裏を覗(のぞ)いたら こんなみにくいからくりが 有って泣かせる夜の街 「―可哀想に、お雪ちゃん」 「あ、染香姐さん」 「…又あの欲張りお内儀が、阿漕(あこぎ)な金儲けを 仕様と云うんだろ、今まで幾人の女達が同じ手で 泣かされて来たか…あ、そうそう、ほら、 何時だったかの、東京の学生さんがお雪ちゃんに、 会い度いって云ってるよ」 「でも、姐さん―」 「構うもんか、お内儀は私が誤魔化しとくから、 さ、直ぐにお行き、柳の河岸の船着場だよ―」 桜の花には来だ早い 風が冷たい春の夜 そっと抜け出て裏街を 行けば柳の河岸通り、 土堤を背にした船着場、 薄い灯りにたたずんで 待っているのかあの人は、 会えば別れが悲しかろ、 啜り泣くよな川の音 「…あら、こんな所へしゃがみ込んで、 どうしたのお雪ちゃん、可哀想にねえ」 初恋は破れ易いと誰が云う 一年前にお座敷でたった一回会ったきり 二本貰った絵葉書に 抱いて温(ぬく)めた想い出も 消してゆきましょ今日限り 「お雪ちゃんそれじゃアせめてさよならを」 「いいえお姐さん、もう何も云わないで」 空を千鳥が飛んでいる 今更泣いて 何としょう さようならと こよない言葉 かけました 青い月夜の 十三夜 |