仮タイトルは「キラーピアス」だった。

KEYTALK
仮タイトルは「キラーピアス」だった。
2021年8月25日に“KEYTALK”がニューアルバム『ACTION!』をリリースしました。既発配信シングル3曲に加えて、バンド初期作品に回帰したセルフプロデュースの新曲が多数収録された、まさに原点回帰の意欲作。アルバムタイトルには、バンドとしての初期衝動を今一度奮い起こすべく、強い想いが込められております。その想いを伝える様々な音色を耳にしたとき、きっとリスナー自身にも様々な「ACTION!」が起こるはず…! さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“KEYTALK”の首藤義勝による歌詞エッセイをお届けします。綴っていただいたのは、作詞に苦戦したという収録曲「 大脱走 」のお話です。この曲の仮タイトルの意外な由来とは。そして歌詞を書くことの醍醐味とは…。是非、今作と併せてエッセイをお楽しみください。 ~歌詞エッセイ:「 大脱走 」~ ありがたいことに歌ネットさんから歌詞にまつわるコラムの依頼がきた。 元々書き物は好きで、以前も別媒体でコラムを連載させてもらっていたのだが、例えば漫喫でバイトしてた時代に客席から唸り声が聞こえた話だとか、TSUTAYAでムカデ人間2のDVDを借りたけど怖くて観れずにそのまま返却した話だとか、おおよそ音楽と関係ないことばかり書いていたら終わってしまった。それ以来初めてのコラムだ。 アルバム『ACTION!』収録曲の作詞も佳境に入るなか、全然歌詞が書けない曲があった。のちに「 大脱走 」と名付けることになる曲だ。この曲の仮タイトルは「キラーピアス」だった。キラーピアスというのは、ドラクエに出てくる武器の名前だ。特に深い理由はなく、その時ドラクエ5をやっていたのと響きがカッコいいから付けた。 ちなみに「 愛文 」の仮タイトルは「ビアンカ」だった。ビアンカというのは、ドラクエ5で主人公と結婚するかもしれないヒロインのうちの1人だ。ドラクエ5で仮タイトルを決めまくりだ。結局「愛文」の歌詞は若干ドラクエ5に引っ張られた内容になった。そんな感じで仮タイトルは重要だったり、全然重要じゃなかったりする。 作詞というのは大体の場合、すでにメロディーが完成している状態で書く。この「キラーピアス(仮)」に関してはサビの「たーたったー、たーたったー」の歌詞がとにかく重要で、そこさえ決まればもう書けたも同然といったところだった。 ただ僕はそういうパターンほど書けないタイプだった。プレッシャーに弱いから重要な箇所ほど筆が止まってしまうのだ。「たーたったー、たーたったー」のメロディーが、呪文のように脳内をかけずりまわって頭を抱える日々が続いていた。 そんななか、メンバーの武正がスタジオで「たーたったー」のメロディに勝手に歌詞をつけて「もういっちょ~…もういっちょ~…」と歌い始めた。武正は、以前から作詞する前のメロディーに勝手に変な歌詞をつけて作詞者を混乱させてくる癖があった。 しかもその時すでに「 もういっちょ 」という別の曲が存在していたりで、もうややこしくて完全に訳がわからなくなっていた。あれは本当にやめて欲しい。 そんなわけで紆余曲折あったが、その後ひょんなことからヒントを得て「キラーピアス(仮)」は「大脱走」として完成し世に送り出すことが出来た。 僕はどちらかというと作詞は苦手で、時間もかかってしまう方だ。楽しいですかと聞かれたら答えに詰まってしまう。ただ、メロディーにピタッと言葉がハマる瞬間は、何事にも耐えがたい爽快感がある。脳汁が出るというやつだ。 これを読んでくれている方の中で、今まで人生において作詞をしたことがあるよという人は少ないと思うけど、とても面白くて奥深い作業なのでおすすめしたいです。気が向いたら歌詞、書いてみてください。 それではまた! <KEYTALK・首藤義勝> ◆紹介曲「 大脱走 」 作詞:首藤義勝 作曲:首藤義勝 ◆ニューアルバム『ACTION!』 2021年8月25日発売 <収録曲> 1 宴はヨイヨイ恋しぐれ 2 サンライズ 3 大脱走 4 ラグエモーション 5 FACTION 6 流線ノスタルジック 7 もういっちょ 8 不死鳥 9 Orion 10 あなたは十六夜 11 愛文 12 照れ隠し