過去の私だったら、こんな風に考えられていなかったと思います。

 2022年6月15日に“ねんね”がミニアルバム『白色矮星』をデジタルリリース!全7曲のうち6曲は、ねんねが作詞作曲。もう1曲は、ねんねが活動を始めた初期より才能を見出していたみきとPによる書き下ろし楽曲です。ミニアルバムのタイトルは“太陽のような恒星が最後に残す天体”のことであり、自分達が生きた証はきっと無くならない、そうであってほしいなという願いを込めて命名されました。
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“ねんね”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回は第2弾です。前作とは違った方法で歌入れをした今作。レコーディングの際、感じた気持ちとは…。そして収録曲「口約束」「こはくのなか」にまつわるお話を綴っていただきました。ぜひ、歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください。



皆さまこんにちは、ねんねです。歌詞エッセイ第二弾となります。
 
第一弾では6月15日(水)にデジタルリリースさせて頂くミニアルバム『白色矮星』から、先行配信済みの「曖昧信仰」「旅人の森」「隣り合わせ」の3曲のお話をさせて頂きました。読んで頂けましたでしょうか…!
 
ミニアルバム『白色矮星』が昨日デジタルリリースとなりました!嬉しいです!前作『幻影旅行』は自分の部屋で歌入れをしていましたが、今回は全曲スタジオで録音させて頂いたので新鮮でした。スタジオレコーディングはほぼ初めての経験で、しかも憧れの方々を前にして歌わねばならない状況に大混乱でした。手汗が止まりませんでした…。
 
いつもは自宅にてひとりで黙々と歌を歌っており、この方法は自分の世界に浸れますし、納得がいくまで自分のペースで録り直すことができるので、細部までこだわることができて満足度が高くなるのですが、スタジオとなると時間も限られており…。緊張で上手く歌えない場面もあり、悔しい気持ちになりました。
 
あとはあれですね、自分では表現できていたと思っていたテイクが、聴き手には伝わりにくかったり。力を抜いて歌えていたと思ったら、「もっといけそう?」と言われてしまったり。自分が良いと思う歌い方と、聴き手に伝わる歌い方とでは全く違うのだと学びがありました。家ではもっと歌えたかもしれない…と落ち込みながら帰る日もありました。
 
しかし、だいぶナルシストなので、自分の歌声を聴いて、「いや!歌えてるわ!早く皆さまに聴いてもらいたい!!」とすぐ立ち直りました。もちろん悔しさはあります。でも悩んでいてもしょうがないというか、悩むくらいならスタジオレコーディングでの学びを活かせるように歌い続けるしかないよな~と思ったといいますか。この悔しさは前向きな悔しさです。メソメソはしてません。だってこの日の帰りにお寿司買って食べてすごく元気出たし。
 
過去の私だったら、こんな風に考えられていなかったと思います。もっとしっかり落ち込んで、夜悲しくなって、気の許せる友人に泣きついていたと思います。でももう大丈夫です。なぜなら今は私の歌を楽しみにしてくださる方々が沢山いて、私も楽しく音楽ができて、歌えてハッピーだからです。これはもう、私ひとりの活動ではないです。ゆっくりでも成長していくしか道はないのだと思ったら、悔しさも受け入れられました。
 
さて、スタジオレコーディングの話はこの辺にして、皆さまが『白色矮星』を楽しめるよう、今回は収録曲「口約束」「こはくのなか」の2曲について書いていきます。よろしくお願い致します。
 
まず「口約束」から。
 
この曲は自己中心的な感情を描いたものです。『白色矮星』収録曲の中でも1番苦しみや悲しみが表現されていると思います。
 
孤独に押しつぶされそうなあなたに、もし私が手を差し伸べることができたなら。でも、その差し伸べた手は本当にあなたのためになるのか。救いたいと思うこの気持ちは、本当に相手のためになるのか。そんな曲です。
 
そしてこちらの曲、シナリオアートのハヤシコウスケさんが編曲をしてくださっています。本当に嬉しいです。私はマックもない、ミスドもない、タワレコもないような田舎で暮らしていて、音楽もボーカロイドやその時に流行っていた曲しか聴いていませんでした。
 
当時、離れて暮らしていた姉が長期休暇で帰省した際に、「これいいよ」といって聴かせてくれたバンドの中にシナリオアートの曲があったのでした。
 
アニソンやボカロ、J-POPしか聴いてこなかった私は、シナリオアートのアルバム『night walking』を聴いたとき、優しくてどこか寂しくて、でもキラキラしていてこんなにワクワクしている曲があるんだ…!と衝撃を受けました。それは遊園地に来たような、そんな高揚感に包まれました。それからずっと好きなバンドであり、憧れでもありました。
 
ハヤシさんに編曲をしてくださっただけで嬉しいというのに、シナリオアートの皆さんが演奏してくださることになり、こんなに光栄なことはないと、家に帰って嬉しくて泣きました。
 
後半にかけて盛り上がっていくこの曲は、自分の言動に不確かな確信を抱くような、視野が狭くなって独りよがりな考えになっていくような、そんな感情の起伏が感じられると思います。ダークな世界観を是非お楽しみ頂けたら嬉しいです。
 
続いて「こはくのなか」ですが、こちらは過去を振り返り、今を見つめ直すような曲となっています。
 
皆さまは琥珀を覗いたことがあるでしょうか。柔らかい暖色が視界を包んでくれるのですが、光に当てるとキラキラ光って綺麗です。琥珀には虫入りのものもあって、虫たちは綺麗な形のまま閉じ込められています。綺麗なだけではない、自然の残酷さを感じられる琥珀が大好きです。
 
悲しかった出来事も、苦しかった出来事も、嬉しかった出来事も、次第に記憶が薄れていって思い出が美化されていくことが、なんとなく琥珀に似ているなと思ったのです。
 
今日までの人生も、明日からの日々も、全部忘れないように。
自分が生きてきた証を、琥珀に閉じ込めて、
ふと思い出したいときに覗きこめるようにしておきたいな、と。
綺麗ごとに聞こえてしまうでしょうか。
 
「口約束」と「こはくのなか」は、どちらも少し寂しい曲ですが、自分の中で葛藤する気持ちと向き合うような、生きているからこそ生まれる感情を表現しました。
 
既に曲を聴いてくださった方も、エッセイを先に読んでくださった方も、記事と合わせてお楽しみいただけたら嬉しいです。
 
おっと、こちらもうすぐ深夜1時になりそうです。この時間帯は何となく気鬱になりますね。泣きつかれて寝るのもいいけれど、あたたかい飲み物を飲んでから寝るのも気持ちが落ち着くのでオススメですよ。
 
それでは、ミニアルバム『白色矮星』をどうぞよろしくお願いいたします。
この作品がどうか皆さまの心を癒せますように。願っています。

<ねんね>