4種の「つまらない」を解説、解体、そして弁解していこうと思います。

 2022年5月25日に“ヒトリエ”がニューシングル「風、花」をリリースしました。さらに、6月22日には約1年4か月ぶりのニューアルバム『PHARMACY』をリリース!2カ月連続でのリリースとなります。シングルタイトル曲「風、花」は、テレビアニメ『ダンス・ダンス・ダンスール』エンディングテーマ曲。ドラムのゆーまおが作曲、ボーカル・ギターのシノダが作詞を手掛けた1曲となっております。
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放つ“ヒトリエ”による歌詞エッセイを2カ月連続でお届け。今回は【後編】です。執筆はシノダが担当。綴っていただいたのは、アルバム『PHARMACY』の作詞にまつわるお話。改めて歌詞を見直したところ、10曲中4曲に出てきたとあるワードと、そのワードを使った意図とは…。今作と併せて、このエッセイをお楽しみください!



『PHARMACY』
という新しいアルバムが出ました。
なので、これを読む前に一旦聴いてきて下さい。
一旦聴いて、その印象、感動を胸に抱いた状態で読んで頂けると幸いです。
要はネタバレ注意みたいなことです。
 
前作のアルバム『REAMP』は3人だけでキリキリしながら作った、言うなればかなりファイトしたアルバムだったので、今回はなるべくストレスの無い制作をモットーに挑んだ次第です。おかげでレコーディングの全工程を何一つ滞らすことなく、かつ高品質なアルバムを作ることに成功したことは自分にとっても、バンドにとっても大きな成長だったように思います。
 
基本的に僕の作詞は世を儚んだりとか自身の良くない部分、澱みのようなものを剥き出しながら書くことが多いのですが、なにぶん前回のREAMPでそれをかなりやり尽くしたといいますか、良い歌詞が書けた手応えはあるものの、反動で僕の中の澱みがカラッカラに枯れ果ててしまい、こいつは参ったな、一体何書きゃいーんだと悩むことが今回は多かったように思います。
 
それに付け加え、前回のアルバムではcurved edge、YUBIKIRI、イメージと三曲連続でMVを発表していったわけですがその三曲全ての歌詞に靴が登場するというミスとも言い難い何かをしてしまったので、そっからはなるべく靴の話題は避けるようにしています。
 
そして今回のアルバムが完成して改めて歌詞を全部見直したところ、10曲中4曲「つまらない」って書いちゃってる事実に衝突しました。
 
え、靴より悪化してない???
ストレスの無い制作、ということは精神への加圧を軽減することも意味するわけですが
圧緩めるとこんなことになんの???と
かなり驚いています。
確かにここ数年は某ウィルスの影響もあってつまらない思いをすることが増えたようにも感じますが、にしても10曲中4曲もやってしまうのはマジでただの見落としでしかなく、
もっと他に言い方いっぱいあっただろお前、何が作詞だよと己を恥じて止まない次第です。
何なら前作『REAMP』で最後に作詞した曲「tat」のサビの歌詞が<つまらない漫画の話>だったので、もうその段階でつまらない渋滞の布石は打たれていたように思います。
(これはイガラシくんに言われて気付きました)
 
まーでもこういうことは
よくある話なんだろうな~的な、
いっぱい歌詞を書いていると絶対に躓く小石みたいなもんだってのは頭では理解しているんですけど
歌詞、メロディ、ギターフレーズ、展開等々どの分野においても
「またこの人同じことやってるわ草」みたいなこと言いたがる人って少なからずいて、
僕なんかまさにそのタイプなので(最悪)
そんな僕の標的が僕自身に向くというケースが
今回で2回目なので、
るろうに剣心の相良佐之助の
「一度見た技を二度喰らうのは三流のやることだろ」という台詞が重くのしかかりますね。
 
まあウダウダ言っててもアレなんで
PHARMACYに点在する
4種の「つまらない」をそれぞれ
解説、解体、そして弁解していこうと思います。
 
 
つまらないパレード見せつけられて
笑顔になる子供達
 
これ一曲目の1Aの部分なので初っ端から
あ~やっちゃったなって感じなんですが
「同調出来ない」「押し付けがましい」
「そもそも欲して無い」
的なニュアンスで使われたつまらないですね。
大人達がよかれと思って始めた何かを内心全然面白くねーなと思いながらもここで喜んどかないと性格が歪んでるとか言われるので致し方無く喜んだフリをする、みたいな最悪の構図を端的に描写する為にはやっぱ「つまらない」という言葉は避けられなかったように思います。
 
4曲目「Neon Beauty
 
つまらない話を聞きながらそれに齧りつく
 
これは前段の<くだらない心を燃やした熱でパンを焼く>
が良く書けてるため、そこから綺麗に韻を踏むことも考慮すると<つまらない>を超えるワードは見当たらないように思います。
あとパン食ってる時に聞こえてくる話なんて大体つまらないじゃないですか(そんなことはない)
 
 
“何でつまんないことばかり言うの”
“何でつまんないことばかり起きんの”
“みんなつまんないことばかり言うよ”
“ずっとつまんない世界なんでしょう”
 
と、前代未聞のつまんない祭りが開催されてますが、ステレオジュブナイルはロックンロール賛歌であり、世の中がつまらなければつまらないほどロックは輝くものなので、このワードを回避すると楽曲の崩壊を招くことになります。なのでこれは適切な作詞行為だったと言えるでしょう。
 
9曲目「strawberry
 
つまらない季節が過ぎたら優しい街へ行こう
 
これに関してはちょっと
<つまらない季節>からの<優しい街>と、漠然に次ぐ漠然のコンボが決まっちゃってて比喩もへったくれも無い感じですがこれ書いてる時は脳が焦げ付くような音や匂いがしてたのをよく覚えています。
たぶんですけど、
「コロナ落ち着いたら飯でも行きましょう」
みたいなことを言いたくて書いたんだと思います。
これはもうちょい何とかなったかもしれません。
 
まあでもPHARMACY聴いて頂ければ決して手を抜いてこうなったわけではないことがわかって頂けると思うので、次からはなるべく靴の話は控え、あんまつまんないとか言わないように気をつけようと思いました。
 
おしまいです。

<ヒトリエ・シノダ>