2022年5月11日に“Luby Sparks”が4年ぶりのニューアルバム『Search + Destroy』をリリースしました。今作はUKのAndy Savoursを共同プロデューサーに迎え、2021年の1年をかけてじっくり制作。曲作りもメンバー全員で行いました。先行シングル「One Last Girl」「Honey」などを含む全10曲が収録されております。また、6月4日(土)にはバンド初のワンマン・ライブ『Search + Destroy Live』を東京・渋谷WWW Xにて開催!
さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“Luby Sparks”のベーシスト/ボーカル・Natsuki Katoによる歌詞エッセイをお届け!綴っていただいたのは、自身の作曲・作詞プロセスについてのお話です。どのように楽曲の欠片が生まれ、そして育っていくのか、その過程を明かしてくださいました。ぜひ、今作の歌詞と併せてお楽しみください。
歌詞を書くことは苦しい。僕はアコギ片手に弾き語り、公園で鳥のさえずりを聴いてメロディーを思い浮かべ、タバコ吸いながら一枚の紙にペンを走らせ思いのままに歌詞を綴る、そんなボブ・ディラン(あくまでイメージ)みたいな天才タイプの音楽家ではない。僕の作曲・作詞プロセスは至って地味だ。
こんな曲が書きたいと思う曲たちをひたすら聴き込み、一人部屋に籠もってPCの前でLogicのプロジェクトにトラックをいくつも録音、数日かけて完成させた勢いのまま深夜のテンションでメンバーへデモをシェアするも、反応の薄さにしょぼくれながら翌朝冷静に聴き直して大口を後悔しながら手直し。
バックトラックがほぼ完璧に仕上がったところで次にメロディー作り。オケを何度も流しながら、文章になってない“何か英語風の言語”でメロディーを何パターンか上乗せし、「これだ!」となるものが出た時にやっと歌詞の創作へ移ることが出来る。
そう、PC上にWordを立ち上げ歌詞を書く頃にはもうその楽曲はほぼ完成していて息をしているのだ。でもそれ自身が持つストーリーを語るための言葉がない。だから詞を与える。僕にとって作詞とは最後の仕上げ作業。水槽も魚も揃っている、あとは水を入れるだけといったところであろうか。
しかしあと一歩で一つの作品が出来上がるのにその一歩がとてつもなく大きい。そんな歯痒さが自分を苦しめる。さらに、英語話者ではないが、「源流を辿れば英語圏で生まれたロックという音楽には英語の語感が一番合う」という信念のもと英語で歌詞を書くことを決めているために、英和辞典を立ち上げ入れ込みたい単語とそれに母音が近い単語を探し、韻を踏むことと意味を紐付けして物語を紡いでいく、とてつもなく地味な作詞スタイルなのだ。
そんな苦しみも詞が完成した暁にはたちまち消え去る。無口だった楽曲が歌詞を得てストーリーを語り出すあの瞬間の喜びは何にも変えがたい。創作過程はドラマチックでも華やかでもないし、ノーベル文学賞も取れない。けれどきっと僕は地道な作業を経た先で達成感を得る、そういうタイプの音楽家なのだろう。水を得た魚は美しい。その姿を見るために何度でも苦しみながら曲を書き詞を書くのだ。
今日もまたWordの目の前で英和辞典サイト片手に、果てしない白を広げる名も無き文書1と向き合う。
<Luby Sparks・Natsuki Kato>
◆2ndアルバム『Search + Destroy』
2022年5月11日発売
<収録曲>
01. Start Again
02. Depression
03. Honey
04. Callin’ You
05. Crushing
06. Lovebites
07. Don’t Own Me
08. Closer
09. One Last Girl
10. Search + Destroy