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【ライヴレポート】 『No Big Deal NIGHT ~No Big Deal Records 10th Anniversary Party~』 2022年2月27日 at SHIBUYA Spotify O-EAST

2022年02月27日@

撮影:かい、清水 舞、白石達也、ひの、ヤオタケシ

2022.03.09

ロックレーベル・No Big Deal Recordsが2022年2月で創立10周年を迎え、それを記念したライヴイベント『No Big Deal NIGHT 〜No Big Deal Records 10th Anniversary Party〜』を、2月27日にSpotify O-EASTにて開催。会場にはメインの“ Big Deal Stage”とサブの“No Big Deal Stage”が用意され、今やレーベルのリーダー的存在である04 Limited Sazabysをはじめ、Wienners、reGretGirl、INNOSENT in FORMALら計12組のバンドが出演した。

■ ORCALAND ■

オープニングアクトとして出演したのは、2月14日に『No Big Deal Records 10th Anniversary Audition』でのグランプリ獲得が発表されたばかりの3ピースバンド・ORCALAND。「3. 2. 1」で大塚祥輝(Vo&Gu)が大きく振りかぶるような力いっぱいの歌声を響かせ、観客の視線を一気に集める。ベース&ドラムの跳ねるリズムが緊張感をほぐしていく「ボーイミーツガール」、本音と夢を綴った「やってらんねえ」で走り抜け、たったの3曲ではあるが、その中で一音一音を全力投球する姿に、バンドのありあまる気合いを感じた。大塚の“前説のつもりはない。あなたの心を掴みに来ました”という言葉のとおり、本イベントはORCALANDが始まりの音を鳴らしたと言っていいくらい、3人がステージを去ってからも会場には熱気が残っていたように思う。

取材:千々和香苗

■ Bye-Bye-Handの方程式 ■

メインステージのトップバッターを務めたBye-Bye-Handの方程式。汐田泰輝(Vo&Gu)の“大きいステージでもやることは変わらない。でも、大きいほうがワクワクする”という言葉もあったが、見慣れないO-EASTの景色に新鮮味を感じつつ、何より楽しんでいるのが伝わってきた。軽やかなメロディーを奏でるギターソロが印象的な「midnight parade」で始まり、《東京タワーあの街は/僕の愛する街に変わったな》と歌う「romance tower」にはリリックの節々にロマンがあふれ、全員でサビを歌い上げる「ロックンロール・スーパーノヴァ」ではがむしゃらな人間臭さが垣間見える。“スーパーノヴァ”や“宇宙”など言葉選びが壮大な曲も多いが、ライヴでは彼らが持っている生々しい情熱が広がっていた。バンドの初期衝動が詰まったパンキッシュな「あの子と宇宙に夢中な僕ら」には純粋さゆえの無敵感があり、背伸びをせずに歩み続ける姿が目に焼きついた。

取材:千々和香苗

■ 藍色アポロ ■

レーベル名の“No Big Deal=大したことない”という単語をふたつに分け、“Big Deal=大ごと”をメインステージ、“No Big Deal=大したことない”をサブステージとしている本ライヴ。サブの“No Big Deal Stage”に立ち、そのネーミングに“めっちゃ腹立つ!”と噛みついた藍色アポロは、“みなさんの目で判断してください”と意気込んだ。1曲目の「カゲロウ37°C」は爽快なサウンドが駆け巡り、《いつだって何か足りないものを/探しているんだって思う》と歌うナガイレン(Vo&Gu)のヴォーカルがハングリー精神を覗かせつつ、ほど良い脱力感もあるのが癖になる。きめ細かなドラムとメロディアスなギターアルペジオで彩る「その白さ」、青臭さが滲み出る「young boy to you」や、「色褪せる」の滑らかなベースと歌メロなど、じんわりと惹かれるポイントがいくつもあったが、その流れをひっくり返すように、ラストの「限界高速」では思い切りロックサウンドを鳴らしたのも痛快。藍色アポロの独特な緩急に引き込まれた。

取材:千々和香苗

■ INNOSENT in FORMAL ■

“まだ時間に余裕があるみたいなので、僕が最近覚えたウェーブをやりましょう!”

ぽおるすみす(Vo)の突拍子もない提案で、リハーサル中にフロアーの左から右にかけて挨拶代わりのウェーブを完成させ、始まる前からマイペースだったINNOSENT in FORMAL。そこで何となく縮まった距離感はライヴが始まると開放感に変わり、「No.1」のヒップホップ、ガレージロックを思わせる自由なミクスチャーサウンドに観客も自然と身体が揺れる。ライヴ中盤には“ステージに立ってほしい”というラブコールに応えて、活動休止中のTHE PINBALLSからギタリストの中屋智裕が参加。「Smoke on the Water」(Deep Purple)や「Back in Black」(AC/DC)など、ロックリフが連なる「Jackin' Rock Beats」をプレイし、アッパーなムードに睨みきかせるようなヒリつきも加わった。さらに、シャウトが響く「Junkie's never enough」でひとたびフロアーを盛り上げると、ラストは歯がゆい気持ちを吐露した「思うまま」をしっとり届ける。ぽおるは“思うがままに生きたほうがいいと思いますよ。No Big Dealは思うがままにやらせてくれるレーベルです”と言ったあとに“...情緒不安定なINNOSENT in FORMALでした”とはぐらかしていたが、マイペースなだけでなく、仲間やレーベルに対しての情味がある憎い魅力が詰まったステージだった。

取材:千々和香苗

■ peeto ■

3月16日にリリースする1stミニアルバム『Virgin』の収録曲「Hit&Run」でまずは小気味良いリズムを刻み、会場をリラックスムードに変えたpeeto。野田択也(Vo&Gu)の甘くハスキーな歌声が昼下がりのようなあたたかさを生み出す「FADE OUT」は、ギターのカッティングも心地良く、グルービーなリズム隊とのアンサンブルが楽しい。その場でセッションするように始まった「Bible」ではファンキーなサウンドにフロアーの熱量もどんどん上がっていく。ギラリと光るギターやメロディアスなベースソロなど、それぞれの観せ場に心が弾み、手をあげて酔いしれる観客も。メンバーの合唱も印象的な「WORLD」は《明日どうなるか分からない だから今日は笑っていたい/笑えれば全部OKなんじゃない?》という歌詞も相まって、忙しない毎日で不安を抱える気持ちを励ますような包容力も感じた。また、サビの広がりが壮大な「LOVE YOU BABY」はスラップやギターリフでピリリとさせる2番の展開も絶妙。誰もが溶け込めるような柔らかな雰囲気と、そこから一歩引き寄せるアレンジに魅了された。

取材:千々和香苗

■ PLOT SCRAPS ■

スペイシーな打ち込みから始まるオープニングSE「My FRAGMENTS」で始まったPLOT SCRAPS。前半を「一等星」「Teardrop」とアップテンポなロックナンバーで畳みかけ、前のめりにリードしながらも、どっしりと支えるリズム隊と、内に秘めた情熱があふれる陶山良太のヴォーカルに心が弾んだ。公衆電話をテーマにロマンスを描いたシティポップテイストの「Telephone Box」はフロアーをクールダウンさせつつ、レトロ感のあるアレンジが心地良く響く。「リブラ」は一見シンプルなアプローチのポップロックかと思えば、間奏のリズムにひと癖があり、スッと入ってくるようで入ってこないその天邪鬼さが、より夢中にさせるのだと痛感。エモーショナルな「告白」はライヴを白熱させるようなパンチのあるサウンドだが、歌声には儚い印象もあり、冷たさと熱さが混在した魅力に引き込まれる。最新アルバム『My FRAGMENTS+』を引っ提げた4月からの『My FRAGMENTS+ TOUR 2022』ではどのように観客を吸い寄せていくのか注目したい。

取材:千々和香苗

■ Daijiro Nakagawa ■

サポートメンバーの体調不良によって、出演がキャンセルになったJYOCHOの代打を務めたのは、そのJYOCHOの中心メンバー、だいじろー(Gu)...Daijiro Nakagawa。

““明日、代打でいける?”と昨日、マネージャーから連絡が来て、緊急で出演することになりました。絶対ミスれへん状況(笑)。精いっぱいやらせてもらいます”

そんなふうに言いながら披露したのは、「voyager」他、19年にリリースした1stソロアルバム『in my opinion』からの3曲に、まだタイトルがついていない新曲(?)を加えた計4曲。いずれもノスタルジックな美しいメロディーを持つトラッドフォーキーなアコースティックギターによるインストナンバーだが、アクロバティックとも言えるテクニックを織りまぜるギタープレイはプログレ、あるいはポストロックとしても楽しめるものだった。そして、ラストの無題曲は“ギターをシバいて帰りたいと思います”という予告どおりタッピング、スラップに加え、ボディを叩くスラム奏法も披露。存分にギターを鳴らして、和みと緊張が入り混じる、夢現とも言える不思議な時間を締め括った。

取材:山口智男

■ reGretGirl ■

“後輩が入って、いつの間にか中堅になっていたけど、それはバンドが続いてるってこと。でも、気持ちは一番年下。No Big Dealの鉄砲玉、reGretGirlです”(平部雅洋/Vo&Gu)

結成から8年目を迎えたバンドの気概を、そんなふうに言葉にしたreGretGirlはバンドが知られるきっかけになった「ホワイトアウト」から熱度満点の演奏で観客の気持ちをグイグイと引っ張っていった。バンドが掲げるのはセンチメンタルギターロックだが、エモいだけに終始せず、ダンサブルな「Shunari」があったり、ロックンロールの「ロードイン」があったり、ロックバラードの「デイドリーム」があったりと、曲ごとに趣向を凝らしたアレンジで楽しませるところがいい。観客も手を振ったり、手拍子したり、じっと聴きいったりと、曲ごとに相応しいリアクションを返しながら盛り上がる。どしっとしたリズムが印象的な「スプリング」では、ブルージーな魅力も滲ませた。そして、アップテンポの演奏で駆け抜けたラストの「ピアス」では、アンセミックなサビのメロディーに観客の拳が一斉に挙がったのだった。

取材:山口智男

■ 鉄風東京 ■

出演バンドからの注目も高かったのは、No Big Dealが迎えたニューカマーだからということももちろんだが、ライヴハウスシーンにおける評判によるところも大きかったんじゃないか。新人を品定めしようと見守る先輩たちの目を意識していたのかいないのか、18年結成の仙台の4人組ロックバンド、鉄風東京はフィードバックノイズから1曲目の「Yellow Youth」になだれ込むと、いきなり爆音を炸裂させた。

“No Big Dealにお世話になります。そのぶん、音楽で返します!”(大黒峻吾/Vo&Gu)

迸る激情と楽器と取っ組み合うような演奏は、まさにエモコア。しかし、それだけというわけではなさそうだ。大黒と実はテクニカルなプレイも織りまぜるシマヌキ(Gu)のギターが絡み合う「外灯とアパート」ではポストロック風のアンサンブルやダンサブルなリズムが“おやっ?”と思わせたし、「遥か鳥は大空を征く」では泣きメロの絶叫に観客が思わず、グッと握りしめた拳をあげた。“音楽で救われたから、音楽で救いたい!”と大黒が叫んで、「遥か鳥は大空を征く」から間髪入れずに繋げたラストの「21km」では、あふれ出る思いを即興で言葉にした大黒の熱演に大きな拍手が沸き起こった。

■ Wienners ■

“みんな、元気なの? 俺たち、ありあまってるんだけど! No Big Dealの最終兵器、Wiennersです!!”(玉屋2060%/Vo&Gu)

さすが最終兵器を自負するだけのことはある。1曲目の「恋のバングラビート」からフロアーを一気に盛り上げていった。イベントの開演からすでに5時間半。そろそろスタミナが途切れかけてきた観客Wiennersが喝を入れるように“踊れ! 踊れ!”“まだまだいこうぜ!”と声をあげながら、次々と繰り出すキャッチーなサビを持つエネルギッシュなダンスパンクナンバーに気持ちをリフレッシュ、そしてスタミナを取り戻していった。

“No Big Dealはバンドと一緒に夢を見てくれるレーベルです。コロナ禍の真っ只中にメジャーレーベルから『BURST POP ISLAND』という俺たちのアルバムをぶっ放して、喜怒哀楽に揺れた俺たちの気持ちを届けてくれました。これだけ仲間がいるんだから無敵ですよね!”(玉屋)

玉屋とアサミサエ(Vo&Key)がラップをかけ合うダンスポップナンバー「FAR EAST DISCO」でフロアーを揺らしたWiennersがラストナンバーに選んだのがアンセミックなロックンロールの「UNITY」。完全燃焼を目指すバンドの渾身の演奏に観客全員が飛び跳ね、タイトルどおり会場に大きな一体感が生まれた。

取材:山口智男

■ SHIFT_CONTROL ■

“体力を全部、奪ってやりたいと思います!”(アサノチャンジ/Vo&Gu)

サブステージとはいえ、トリ前に抜擢されたSHIFT_CONTROLは昨年11月から3rdミニアルバム『inVisible』を引っ提げて全国を回ってきただけあって、1曲目の「バーンアウト」から振りきった演奏を見せつけ、観客に拳をあげさせた。オーディションを経て2019年にNo Big Dealに所属して以来、リリースを重ねながらエモーショナルでテクニカルなロックサウンドに加え、キャッチーな訴求力も身につけてきた彼ら。前述したツアーを通してさらなる自信をものにしたことは、ポップな魅力を大胆に打ち出した「アイウォンチュー」を演奏する前にアサノが言った言葉からも明らかだった。

“この曲をこんなにたくさんの人の前で演奏することが夢でした! 跳んでいこう!”

曲が持つエモさを際立たせるようにハイトーンボイスで歌うアサノ、印象的なフレーズを閃かせながら一心不乱にギターをかき鳴らす岡村耕介(Gu)、ベースと格闘するように重低音を響かせる宮崎良太(Ba)、手数の多いプレイでリズムを支えるくまおかりお(Dr)ーー渾身の演奏を繰り広げるバンドが放つ熱が見る見るフロアーの最後列まで伝わっていった。

“今日、巡り合ったみんなとまた必ず再会したい!”(アサノ)

最後を飾った「かまうな」では岡村がサブステージを飛び出して、メインステージでギターソロを弾き、くまおかは最後列の観客にアピールするようにドラムを鳴らした。会場の広さに感激する一方で、そんなパフォーマンスは、バンドンの向こう意気に加え、サブステージは今のSHIFT_CONTROLにはもはや小さいと思わせる勢いも印象づけたのだった。

取材:山口智男

■ 04 Limited Sazabys ■

“気がついたら俺たちがレーベルの一番の古株になってた。時を経たねぇ”(GEN/Vo&Ba)と月日が流れる早さに驚きが若干入り混じる感嘆の声を上げながら、04 Limited Sazabys(以下フォーリミ)は堂々とトリに相応しいステージを見せてくれた。“堂々”という言葉をつけ加えたのは、メロディックパンクというバンドの芯にある音楽性こそ変わらないものの、アリーナをはじめ、数々の大舞台を経験してきた現在の彼らのパフォーマンスに貫禄すら感じられたからだ。

観客の手拍子が迎える中、“いける? まだ遊べる?とGENが声をあげ、なだれ込んだ「Remember」、そこから間髪入れずにつなげ、“ハイ! ハイ!”と観客を煽るRYU-TA(Gu&Cho)に応えて観客が飛び跳ねた「monolith」をはじめ、No Big Deal Records在籍時の、つまりインディーズ時代の楽曲を多めに選んだセットリストは、インディーズ時代からのファンを歓ばせたと思うが、そういう曲を演奏しても無駄も隙もないのが今のフォーリミだ。極めてタイトな演奏は楽曲やアンサンブルの魅力をしっかりと伝えながら、観客の記憶に聴き応えとしてはっきりとした印象を焼きつけたはず。その意味ではGENのみならず、HIROKAZ(Gu)、RYU-TA、KOUHEI(Dr&Cho)それぞれに魅せるプレイがある「Alien」が一番の観どころだったかもしれない。

“No Big Dealのエースストライカー、04 Limited Sazabysです!”と言ったGENの言葉にも説得力がある。リリース当時、2ビートのメロディックパンクに回帰したサウンドが鮮烈だった「My HERO」から一転、ちょっとテンポを落として「Now here, No where」「midnight cruising」の2曲をじっくりと聴かせた後半戦。そこからさらに一転、“この状況は歯痒いけどやるしかないし、これしかやることがない。困難から逃れる術として音楽があってほしいし、その音楽に俺たちがなりたい”(GEN)と言ってから、前進するのみという想いとともにラストスパートをかけるように「Feel」「Terminal」をたたみかけた展開は、まさにドラマチックという言葉がぴったりだった。

“レーベルイベントやレーベルツアーに憧れる世代だから、レーベルのバンドとバチバチできるって最高だと思いました”(RYU-TA)

“13年に所属してからずっと伸び伸びと支えてもらって感謝してます。いろいろな種類のバンドがいるこのレーベルを一緒に守っていきましょう”(GEN)

アンコールは「Squall」と「message」の2曲を披露。「message」は1分ちょっとの正調メロディックパンクナンバーだが、新たな出発を連想させるこの曲ほど、大団円を飾るに打ってつけの曲はなかったと思う。

取材:山口智男

撮影:かい、清水 舞、白石達也、ひの、ヤオタケシ

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

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  2. 2

    2. ボーイミーツガール

  3. 3

    3. やってらんねえ

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