LIVE REPORT

reGretGirl ライヴレポート

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【reGretGirl ライヴレポート】 『忘れたくないワンマンツアー “Life goes on”』 2022年1月27日 at Spotify O-EAST

2022年01月27日@Spotify O-EAST

撮影:白石達也/取材:石角友香

2022.02.01

昨年12月29日(ソングライターである平部雅洋(Vo&Gu)の誕生日!)にリリースした新作『生活e.p.』で再び失恋ソングに的を絞ったreGretGirl。だが、それは20代前半のそれとは違う、タイトルどおり生活と分かち難い今の平部の生活と分かち難い恋愛から生まれた新曲たちだ。平部の決意表明的なMCで“恋愛に振り回される生活をして、生活の中に恋愛がある”という主旨の発言をしていたとおり、もはや恋愛や失恋はreGretGirlの十八番というより生き様だ。“それでも人生は続く”という意味のツアータイトルはコロナ禍におけるバンド活動も指すだろうが、同時に“失恋しても人生は続く”という意味合いにとれた。それがreGretGirlというバンドの強みなのだ。

感染者の急激な拡大で配信も急遽、実施することになったツアーファイナルのこの日。筆者は昨年3月に同会場で行なわれたメジャーデビューアルバム『カーテンコール』以来に観たのだが、まずギターとキーボードのサポートメンバーが本編全てでバックアップすることによって、音源の再現性が高まる曲と、ライヴアレンジで新たな魅力を増す楽曲が両方あることに気づけた。また、ギター2本でありつつ、むしろソロは平部が弾くことも多く、彼の自由度がさらに増している側面も強い。

オープナーは意外にもスローな「イズミフチュウ」。未練はあるものの衝動的な別れではないこの曲。平部の地元の固有名詞を冠したこの曲は今より若い時期の恋ではあるけれど、『生活e.p.』とどこか地続きだ。静かに聴き入るフロアーに続いてアッパーな「ルート26」を投下。この曲も馴染み深い国道がタイトル。パーソナルな記憶の描写だが、聴く人それぞれの思い出の駅や生活道路があるだろう。アレンジ面では「ルート26」にオルガンが加わることでオーセンティックなロックンロールテイストが増すことが判明。「二色浜」までは固有の場所を想起させる選曲で通した。

『生活e.p.』の中からの最初の披露は「シャンプー」。十九川宗裕(Ba)のコーラスが曲に風のような感触を加えているのがいい。ずいぶん大人になった恋愛と失恋の描写は生活感の細部にも現れていて、バンドとともに成長してきたファンの心理にもリンクする部分があったんじゃないだろうか。恋人と同じシャンプーを使うという、ギリギリ若い感性、香りという最強の記憶装置。心を削られるような失恋ソングとはまた違う、淡々とした描写。だが、後悔の念がギターの残響と重なる気がした。洒脱な16ビートのギターカッティングや、サポートギタリストとユニゾンのフレーズを弾くシーンなどアレンジも楽しめた。

続く「ロードイン」はその名のとおりの商店街がある新曲。これも『生活e.p.』収録曲だ。生活空間の中にある商店街の居酒屋、ふたりで飲んだお酒、阪和線の遅延。そんな具体的な内容が積み重なって、自分ごとと重なる人も多いのだろう。パワーコードで押していくのが、もしかしたら再会できるかもしれないほんの少しの期待感にハマる。です・ます調が新鮮な「LDK」。繊細なアルペジオから始まり、大きなグルーブに膨らんでいくさまが5人体制のライヴの進化を感じさせる。生活感の随所に料理とか洗濯とか、その役割分担とか、そこから発生するずれやすれ違いは微笑ましいレベル。だからこそリアルでもある。

その空気もアカペラで始まった「デイドリーム」で絶望的な孤独を描く。自分に対する後悔なのか、はっきりした理由のない別れに対する未練か、平部の叫びに近い絶唱、そして“僕の知らない誰かと”のさまざまな妄想が胸苦しいくだりは何度聴いても情けないほど本当のことで、フロアーが凍りついたように聴き入っていた。ライヴという場でさまざまな年齢や時期の失恋ソングが並列されることによって、一曲一曲では異なる温度感や情景を持つ内容がひとりの人間の経験、つまり人生として実感できるということ。これが平部が半ば恒常的に失恋ソングを書く理由なのだなと思えた。

後半に再度、新曲「オールディーズ」をセットしていたのだが、これは前作『カーテンコール』収録の「Longdays」のUKロック路線をさらにオリジナルに消化した印象。オーセンティックなリズムを刻む前田将司(Dr)を始め、メンバーのプレーヤーとしてのレンジが拡張された曲だと言えるだろう。音源でのストリングスはギター2本とキーボードでライヴアレンジ。加えてリズム隊も大きな演奏で音源とは異なりながらもイメージは確かに伝えていた。

急遽決定した配信に関して平部は感染を恐れる人も当然いるであろうことから踏み切ったと話していた。そして、“先が見えないコロナももう2年。異常事態ですよ。ライヴ以外に何ができるかなぁって思う。reGretGirlは背中を押すような曲はありませんが、泣きたいときは泣けばいいって隣で寄り添う、そういう曲はあります”と、今、この場に足を運べないファンにもreGretGirlの曲が少しでも助けになればという想いを伝えていた。

ラスト2曲は歌詞の切なさと少しの可笑しみも飲み込んで、ライヴという場所ならではの熱量に変換される「ホワイトアウト」、そしてよりにもよって誕生日にふられてしまう主人公が目に映るもの、心に浮かぶことを言い散らかすような「12月29日」。アッパーなギターロックにオルガンがいいバランスで加味され、普遍性のあるロックンロールナンバーに育ってきた印象を残して、5人はステージを去っていった。

アンコールはメンバー3人のみ。配信も終了し、実は緊張していたのか、いい意味で丁寧な演奏よりテンション重視の爆発力。2年振りの全国ツアーを完遂した歓びがあふれていた。なお、3月23日にはこの日のライヴ音源を配信リリースすることも決定している。

撮影:白石達也/取材:石角友香

reGretGirl

リグレットガール:大阪を中心に活動中。切なく女々しい歌詞とキャッチーなメロディーが特徴の次世代センチメンタル3ピースギターロックバンド。2017年12月にリリースした全国デビューミニアルバム『my』の収録曲「ホワイトアウト」がアプリ“Tik Tok”で多数使用されるなど、若者を中心に爆発的に浸透している。

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