LIVE REPORT

Wienners ライヴレポート

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【Wienners ライヴレポート】 『SUPER THANKS, ULTRA JOY TOUR 2018』 2018年12月20日 at 渋谷CLUB QUATTRO

2018年12月20日@渋谷CLUB QUATTRO

撮影:星野健太/取材:帆苅智之

2019.01.05

結成10周年となった2018年。4thアルバム『TEN』の発表とそのレコ発ツアーで全国を回り、充実した活動を展開したと言えるWienners。このツアーはリスナー、オーディエンスを含めてバンドに関わった全ての人たちへ、改めて感謝の意を表そうと企画されたという。結論から言えば、このタイミングで再び全国ツアー、しかもワンマンツアーを行なったのは大正解であったと思う。2019年の活動を見通せるばかりか、これからのWiennersの礎になるのではと思うほどに、バンドのビルドアップをまざまざと見せつけられた。2018年のフィナーレに相応しい素晴らしいライヴステージだった。

開演時間が若干遅かったとは言え、ど平日もど平日。師が走り回る年末であり、しかもクリスマス直前という、決して好条件とは言えない公演日ながら、オープンすると早くも場内はパンパン。フロアーに向かってスタッフが“まだお客さんがいらっしゃいますので、もう一歩前へお進みください”と促す声が、どこか誇らしく感じたのは筆者だけだろうか。Tシャツに着替える時間もなかったのだろうか。ネクタイ姿のサラリーマンっぽい人もチラホラ見受けられた。その姿を見るだけで滾るものがあった。月末、年末のくそ忙しい最中、よくぞ、よくぞ、ここにやって来た。あなた方の選択は間違ってない!

演奏もビッシビシ決まれば、それに呼応するオーディエンスのレスポンスもビッシビシ決まる。2曲目「Cult pop suicide」のあとだったと思うが(もしかすると3曲目「TRADITIONAL」だったかもしれないけど、興奮して覚えてない。いずれにしても序盤も序盤だったが)、玉屋2060%(Vo&Gu)が“今日はイケるんじゃないの!?”と口にしたのは、心からの想いであっただろう。客席後方で観ていても、会場内の空気が完全にアッパーになっていたことが肌感覚で分かるほどだった。観客の期待、その熱気を、ステージの面々が受け止め切れずに持て余しているような感覚。長年ライヴ取材をしてきたが、こういう空気はそうあるもんじゃない。具体名を出して恐縮だが、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTやELLEGARDENの初期~中期に感じた空気だ。「恋のバングラビート」後、∴560∵(Ba&Cho)が言った“俺たちは今テンションが上がっている!”との台詞には“もうちょっと気の利いたMCができないものかね?”と苦笑いだったが、彼もまた冒頭の玉屋と同様にアガっていたということだろう。その衒いのない言葉に彼の人間性が感じられてとても良かった。

2018年夏の全国ツアーをベースにしつつ、さらに盛り上がるように工夫を凝らしていたセットリストにも注目した。例えば、序盤で「TRADITIONAL」から「レスキューレンジャー」を経て「恋のバングラビート」というアップチューンで攻める流れは前回同様だが、「Cult pop suicide」から「TRADITIONAL」へと移り、「レスキューレンジャー」のあとに「ジュリアナ ディスコ ゾンビーズ」を入れる構成にマイナーチェンジ。火に油を注ぐ感じ(?)というか、そのグイグイとドライヴしていく様子は間違いなく前回以上の熱量だった。まさに“ULTRA JOY”が表れていたと思う。

中盤に披露されたメドレー(M13〜M19)は工夫の最たるもの。さまざまなリズム、フレーズで彩られているWiennersサウンドだが、歌にしてもギターにしてもキーボードにしても、基本その旋律はポップである。しかも、ご存知通り一曲一曲のタイムが短い。だから、メドレー形式でつないでも違和感がないというか、妙な組曲のようにはならないのだ。多くの楽曲を聴いてほしいという配慮から立案されたメドレーであったのだろうが、これが案外Wiennersの本質を示しているようであって、そこは再発見でもあった。

アンコールでKOZO(Dr)が語った玉屋との昔話や、物怖じしない感じのアサミサエ(Vo&Key&Sampler)のコメントもとても良かったし、振り返ってみると、4人とも終始笑顔で演奏していた画が思い浮かぶ。“日本のミュージックシーンをぶっ潰してやりましょう!”と玉屋は叫んだ。やや物騒なその物言いは差っ引くとしても、その意気込みは十分すぎるほどに善しである。この日のライヴを観る限り、この熱狂はまだまだ広がって不思議ではないし、何よりもこの日の彼らのパフォーマンスとそれを求め受け止めるオーディエンスとの交歓を見せつけられると、Wiennersが切り開く新しいミュージックシーンをぜひ見てみたいと思った。2018年も最後にして、いいものを観せてもらった。

撮影:星野健太/取材:帆苅智之

Wienners

ウィーナーズ:2009年初頭、玉屋2060%を中心に吉祥寺弁天通りにて結成。パンク畑出身の瞬発力と鋭さを持ちつつも、どこかやさしくて懐かしい香りを放つ男女ツインヴォーカルの4人組ロックバンド。予測不可能だけど体が反応してしまう展開、奇想天外かつキャッチーなメロディーで他に類を見ない音楽性とユーモアを武器にさまざまなシーン、世代、カルチャーを節操なく縦断し続けている。

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