Teen FlickFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 嘘っぱちだったあの青い恋の映画は、 月日を無為な憧れに溶かしてしまった。 レンズで見据えて捉えた世界は すぐそばにある現実と瞬時に食い違いだして、 あなたの小指に絡みついている不気味に赤い糸はどこへ繋がっているの? うそぶくように、欺くように、 いまも枯れてはくれないアネモネ。 いつでもスロウに回り出すストーリー―― そんな幻と、弱い羽の音。 拾ったコンパスじゃ辿り着きはしなかった、 ブランケットのいちばん深くのユートピア。 天の川で星を積み上げて、ずっとあなたは運命の眩さに気を取られている。 伏線めかしたささやき声だけが頭のなかに響いて、この夢は醒めていくの? 裏切るように、抗うように、 いちどだけ掠めあった手と手。 軋む不条理、転がるストーリー―― やがて見つめあうためだけの目。 あなたに包まって眠る夜を探している―― この指の糸は繋がらないままでも。 星座の導き、風に舞って飛んだメロディ、ネオンの灯の揺らぎ―― 混ざり合ってあなたに届け! |
繋ぐ日の青For Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | あれが空で、あれが海と、はじめて知ったみたいでさ、 あなたとならなにもかもが不思議なくらい鮮やかで新しい。 バニラの街を走り抜けた色めく風を捕まえたら、 後ろ髪がなびき出すから、 ねえ、見ていて。 あなたは今日も生きていて、それだけで嬉しくなって、 あなたにはまだ見えない心の青を繋ぐの。 胸に咲いた歪つな花は、その息やその言葉を吸い込んで育ってゆくよ。 秘密まみれで汚れた手を重ねて知った脆い強さ。 その涙の清らかさを怖いくらいまっすぐに信じてる。 変わろうとも変えようともわかろうともわからせようともせず、 見つめていたいよ。 それじゃダメかな? わたしは今日も生きていて、それだけで切なくなって、 晒せどもまだ冷めない微熱に身をゆだねるの。 わたしだけの痛みになってくれるような甘い明日をまぶたの裏側で見るよ。 あなたは今日も生きていて、それだけで嬉しくなって、 あなたにはまだ見えない心の青を繋ぐの。 胸に咲いた歪つな花は、その息やその言葉を吸い込んで染まってしまうよ。 わたしは今日も生きていて、それだけで切なくなって、 晒せどもまだ冷めない微熱に身をゆだねるの。 わたしだけの痛みになってここにいて! あなたとなら間違えてしまってもいいよ。 |
Chewing Gum USAFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 整然と金言を並べて、飾り立てたガラスの天井。 陶然と仰ぐ青空は本物かどうかもわからない。 痙攣とサイレン、それから神様の代わりのテレヴィジョン。 喧伝する商品すべてが緩やかな安楽死。 噛みつぶして、飽きて、吐き捨てて、繰り返す。 がらんどうの喜びだけが脳を満たしては、また抜け落ちてゆく。 漫然と手を動かすだけ――月曜日から金曜日まで。 雄弁家がそそのかすままに捨て去るアイデンティティ。 噛みつぶして、飽きて、吐き捨てて、繰り返す。 味気ない哀しみさえも飼い馴らすだけで日々は過ぎてゆく。 証言台から注射器まで、案内列は曲がりくねる。 青年の最期の辛苦は言うまでもなく合法。 噛みつぶして、飽きて、吐き捨てて、繰り返す。 がらんどうの人形だけが残される。 噛みつぶして、飽きて、吐き捨てて、繰り返す。 味気ない命の群れを飼い馴らすだけで金が増えてゆく。 |
スロウボートのゆくえFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 心の岸辺を発つ日はいつだってこんなふうに、 とめどない寂寥の風が旗を翻していた。 小麦の穂が鳴らした頼りないリズムで、 ささやかに祝福をしよう――僕らの舟出を。 涙の川をスロウボートは進む。 愛が照らしているあの大きな街へ。 限りあるストーリーから逃れようとしても、 いつかは命の果てが大口で僕らを喰らうんだ。 愛は戦いだった――手に入れたり手放したり。 目を逸らすな、その血の跡から花が咲くまでは。 夜明けの空をスロウボートは進む。 赤・白・青のたなびく彼方まで。 |
SnoWish; LemonadeFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | ああ、君を取り巻くすべてが杞憂でありますように。 打ち捨てられた舟のように怠惰にやり過ごす日々。 いつも誰かに言い訳をしてばかり。 校舎の片隅にできた仮設のエデンで、僕らがあくびをしていられるのも、 あと少し。 「ねえ、まるで夏の雪」とあどけなく微笑んだ君が頬張る、 儚く涼やかなデザート。 そう、虚ろな互いを認め合ういとまのあとにも、 そんな取るに足らない詩情を胸のなかに抱いててよ。 ああ、君を取り巻くすべてが杞憂でありますように。 僕らの重ねる冗談すべてほんとうになればいいな。 壁に貼られた絵葉書で海岸行きを想像しても、 結局どこへも行けやしないとわかってる。 曖昧にしたがる笑顔は君の悪い癖。 でも見とれてしまうのはあきらめか、それとも……? もういろんなことが最後になってゆくけれど、 こんな他愛のない想いは打ち明けたら続くかな。 窓に透る風、夏色の光画、君の声。 過ごした時間の意味を知るのは、いつもずっとあとで。 ああ、君を取り巻くすべてが杞憂でありますように。 僕らの重ねる冗談すべてほんとうになればいいな。 窓に降る白いかけらを指差しはしゃぐ君が見たいな。 ねえ、ましてやそれが7月ならば――なんて、夢の見すぎ? |
スターライトエイプリルブルー | エイプリルブルー | 船底春希 | 管梓 | | 偽物の星を纏って踊る君 眩しくて羨ましいんだよ きっと今日はうまく笑えないな 恋をした それだけ? ああ、もうずっと足りないから ああ、今せめて歌って欲しいよ ああ、ただありふれた嘘でもいいから 花束に目もくれずに踊る君 真似してみてもどこ吹く風だね 昨日より色っぽく映るな すれ違いの数だけ ああ、ただ朝はやってくるけど ああ、まだほんのちょっと切ないや ああ、でもちょっとずつぬるくなってくの いつの間に欲張りになっちゃったんだ? 追いかける 君だけ ああ、もうシアワセだって欲しいし ああ、でもずっと切なくいたいよ ああ、まだ踊らせて嘘だらけでも |
Just Like FirefliesFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | ハイウェイを夜闇が包んで、僕らは少し自由になれたみたい。 盗んだ白い車で砂漠を抜け出して、海へ向かう。 名もなき灯りたちが、近づいては離れていく―― まるで蛍みたいに。 聡明なふりに慣れたら、幸せのネクタイも結べるのかな。 そうしたら大人の王国が大口で僕らを食らうのかな。 誰もが自分だけの在りかの目を探してる―― まるで蛍みたいに。 夜の終わりも怖くない場所がないことが怖かっただけ。 ハイウェイを朝日が照らして、僕らは少し自由になれたかな。 気づいたらみんな眠っていて、煙草をすり消して独りごちる。 「まるで蛍みたいだ」 |
Just for a NightFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 不意に静寂が街をよぎったとき、 僕らはたしかになにかのはじまりを感じていた。 それがなんなのかは僕にはわからず、言葉にすることもできなかった。 ただそっと息をひそめ、みんなと目を見合わせて、うなずくばかりだった。 華やかさを競うようにひしめきあうネオンも、行き交う群衆も、 ぜんぶが透明な嘘のフィルター越しにあるみたいで、 不安で叫びだしたくなるような、 でもこの静けさを破ってはいけないような、そんな気持ちにさせられた。 「僕らが大人たちを追い越したのさ」 ひとりがそう言って笑いだして、みんな彼のほうを見た。 「この街で生きていると、そういう瞬間が訪れるものさ。 たぶんぜんぶ光と音と若さゆえの加速度のしわざだと思う。 そのあいだ僕らはギターを持たないロック・スターで、 国を持たない大統領で、ロケットを持たない宇宙飛行士で、 とにかく無敵の存在なんだ。 そして今夜だけ僕らは、誰にも知られずに永遠の命を手に入れるのさ」 |
City LimitsFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | We're out of the city limits Our bottles running dry And on the bridge we're sitting, There's no one passing by The distant highway roaring Will never take us far So you go do your dreaming Of girls and classic cars And sure, the birds are pretty They shine in the moonbeams But never trust the big birds They're never what they seem And she was all I needed The water and the air But don't you go look for her 'Cause she will not be there |
Sister CarrieFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 連なってるテールライトを夕闇に溶かした君の涙が乾ききるまでのあいだ、 じゃれあった日々が胸によみがえるような優しいメロディを探してみたけど、 ないな。 Sister Carrie 葉桜の頃、海岸線を君の歩幅で測ってた。 Sister Carrie 枕とマシュマロ――なにを願ってもずっと前に 答えは出ていたんだろう。 街の灯りが助手席を照らして、遠くで響いたベースボールのナイター。 預けた想いをぬるい風が持ち去った。 なにもない僕はその行き先をじっと、じっと、見つめていた。 Sister Carrie 色あせてゆくのも朽ち果ててゆくのもみんな同じだと 笑ってた。 Sister Carrie 朝の傷跡――なにを嘆いてもきっと愛に焦がれて 生きてたいんだろう。 |
Shady Lane SherbetFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 咲いた向日葵に架けて、水しぶきと陽光の一瞬の虹。 サイダー色に君を染めて、気づけばふと、衝動と逡巡の恋。 日陰へ誘う言葉、仕掛けがいらないのなら、 シェイディ・レイン・シャーベットに、ぜんぶ託すんだ。 シャイな口先でくれたかわいい嘘、ストローと戯れる指。 ライトなセリフに隠れた淡い意地も、ストロボに射抜かれるように。 日陰で占う言葉、ふざけては笑う僕ら。 シェイディ・レイン・シャーベットを、ちょっと融かすんだ。 |
The First Time (Is The Last Time)For Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | I remember autumn days When the two of us would gaze at the skyline In and out our words would fade As the browning foliage swayed, and we felt fine And all the world was mine Those days have long since passed As they say, good things don't last But still, after all these years There's this echo in my ears “Say welcome to love This is your first time And it's your last time So you better be wise Say welcome to life This is your first time And it's your last time So you fall or you fly” May the jangles and the chimes forever ring out For love and for life In the pocket of my jeans Are the pieces of our dreams and our future You and me at seventeen Straight out of a movie scene, feeling so sure But we were amateurs Those days have long since passed Left behind amidst the grass Even so, the thought of you Springs to mind out of the blue “Say welcome to love This is your first time And it's your last time So you better be wise Say welcome to life This is your first time And it's your last time So you fall or you fly” May the jangles and the chimes forever ring out For love and for life Sipping coffee on a Sunday At the park we used to stroll Maybe you'd be coming my way And the words I'd say, you'll know “Say welcome to love This is your first time And it's your last time So you better be wise Say welcome to life This is your first time And it's your last time So you fall or you fly” May the jangles and the chimes forever ring out Oh, let the jangles and the chimes forever ring out For love and for life |
サンデーエイプリルブルー | エイプリルブルー | 船底春希 | 管梓 | | いい子なんかじゃないの 我慢なんてニガテなの 君が思うよりもずっと 昨日また恋しちゃって 君のこと忘れちゃって わたしどうかしてたみたい もう全部捨てたら 子どもみたいに 君と見つめ合えるかな 名前を呼んで頬寄せても まだ夢ならば醒めないで 呼ぶ声に目が覚めた ひとしずくこぼれ落ちた ぎゅっと握ったはずなのに パジャマと夢を脱いで 君のこと思い出して わたしどうかしてるみたい でも 並んだ影が遠くなったって あの日の続きの今日だ 澄み渡る目で こんな未来さえ きっと見ていたのでしょう 忘れたくなくって いっそ恨んじゃうの ごめんね まだ「好き」と「嫌い」を繰り返してる 君にも聞こえてるかな いつの日かきっとからっぽになったら もう一度会いに来て その日まで待っててね |
Subway Station RevelationFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 人混みのなかで置き場さえも見失いそうな心ひとつだけ提げて、 手ぶらで飛び乗ってしまえよ。 「会いたい」を告げる閃光のなかへ! 搦めとられては立ちすくんで、 無駄になりそうな日々の詩編たちが散らかされた、広告の街を急ぐよ。 トンネルの闇を超音速で! 終末だとしてもかまわないし、 擦り傷を増やしてもどうでもいい。 今を生きていると思いたいだけ。 君と生きていると思いたいだけ。 (永遠みたいな一瞬が、火を灯せばはじまる) |
櫻の園For Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 木漏れてプールめいた歩道に降る花の影にも似て、 希望は諦めを含むと知る君とのマーチ、静かに。 傾斜の先で見下ろしたひらひらは、 海底都市に漂うマリン・スノーのよう。 黙れば儚く見えそうな人ほどいたずらに笑うから、 離れた寂寥と不在の波が愛着をつのらせる。 透き通ってゆく声に縁取られて、 春の暮らしが青白く染まったら……? 重なりあって、 生まれ変わって、 無垢なままで愛しあって生きてゆける魔法なんてなくて、 それでも愛を、 暮らしの哀を、 港の藍を、 知らないそぶりなどできない。 傾斜を降りて見上げたひらひらは、 恋人たちに降りそそぐ記憶のよう。 今日という日の言葉や仕草だって、 過ぎ去りし日の誰かの繰り返しだ。 そんな僕もいつか、 そんな君もいつか、 失うだけ? |
SirensFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | Windows, open curtains, morning Whatever's been stolen was never hers to begin with Watching as the wind blows Open eyes beholding remnants of the fire A stillborn revolution Sea change? You see a change I don't see Your alphabet, I don't speak It breezes away in indifference I just want to stay alive standing in the sunrise Knowing that I won't freak out in the wild for good riddance The sirens call for me, but I refuse 'Cause what I do is all for me to choose I won't rely on booze to drown the blues The sirens call for me, but I refuse Courage, gilded blue and yellow I doubt you'd ever felt hope the way I feel in my own heart Tell me all your stories of your trials and glories Of the souls that you sold You'll never penetrate my art |
Ghost Town PolaroidsFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | Say hello. 夢の街の輪郭が融ける夜明け。 それは1991年。 カルミアの庭で君を写した写真。ペパーミント色のスカートが揺れた。 白い指がなぞる静かな体温、やさしさのためのやさしさ。 あどけないままに薄れてくだけの皮膜に想いを閉ざしてみても、 いつかは誰もいなくなると知っていた。 Walk alone. 月明かりが秒針を絡めとる夜。 いまは1999年。 水のないプールを満たす君の声の幻聴に溺れていたいな。 水銀を食べて育った花はプロム・クイーンの夢を見てる。 僕らはみなずっとサタデイ・ナイトに踊ってる亡霊みたいだ―― とっくに誰もいなくなっているのに。 |
KodiakFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 白い夜を越えて、顔のない月を仰いで、雪のなかをゆく。 利口でなんかいられない悲哀すら色がつくまで、旅はまだ続く。 捨てられた祈りをくべて灯した道のりの果てには、 屑のきらめきがあると、声高く響かせろよエコー。 ひどい冬を終えて、花のない時をまたいで、意味を目指してゆく。 不凍でなんかいられない慈愛すら抱えたままで、地平へと進む。 秘められた昨日の夢を晒した風が吹く先には、 希望の嵐が待つと、声高く響かせろよエコー。 いつかどうせ朽ちるだけ。 そんなもんだって知ったって、 乗りこなして悪ふざけ。 捨てられた祈りをくべて灯した道のりの果てにも、続きがある。 秘められた昨日の夢を晒した風が吹く先には、 希望の嵐が待つと、声高く響かせろよエコー。 |
CrystalFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 少しだけ肌寒い24時ちょっと過ぎ、ときどき思い返してみたりするの。 この手には入らないものだらけの世界で、君を見つけてしまった、 透き通る夜のこと。 スピーカーを震わすビート。 その隙間からほんとは囁いてみたい言葉があったんだ。 「冷めた色の摩天楼街の片隅で、それでもどうにか心を満たしてよ」 そんなふうに言い出せないな……。 だって、僕が君を見るように君は僕を見ているの? 窓の向こう側の知らない街の灯が、眠る君をたやすく隠してしまう。 瓶に差した花の茜色がゆらいで、眠れぬ夜に君の目や髪や声を想う。 ヘッドフォンを外した瞬間が静かすぎて、 想像以上に大きいため息に気づく。 会いたいな。 いつかは打ち明けられるかな。 そんなひとときを夢見ているけれど、理想と現実は遠いな……。 だって、僕が君を見るように君は僕を見ているの? |
Can Little Birds Remember?For Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | Fly by my window Sing a song to me, my bird I'll breathe your every word In the night lights, you will shine so white And the poetry we share will slowly fill the air Street sign oracles start to rearrange 'Cause magic lies within your almond eyes I sometimes wished that the world would never change But eternity is every moment, so I guess I'll let it slide We are alive and beautiful Harmonizing in the lull When our season's gone Would you just carry on? Can little birds remember every song? Blowing candles and fireworks in the rain Can't justify the pain of my longing for belonging to you You stole my breath a hundred times And now I want yours too By the time these polaroids start to fade away Will broken hearts be ready to set sail? With your tender touch and the things we said today Forgettance is another subject that I'll never cease to fail We are alive and beautiful Harmonizing in the lull When our season's gone Would you just carry on? Can little birds remember every song? |
君にして春を想うFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 終わりの季節に始まったありふれた恋の筋書きが、 冴えない夢とうつつの狭間で鳴っている。 冷えきったココアを飲み干して、 物憂いふりしてうそぶいた君の耳に触れる日を、 ただ想っている。 「ブルーを舞う連中の隊列を醒めた目で横切って、 危うさと美しさをきっと誰よりも知っていたいね」 淡い色の希み。 魔法とは呼べやしないような、子どもだましの日なたでもいいかな。 桜の手がかりさえも見せない風に揺らいで、君の名は綺麗だったな。 ふわりと浮かんで飛んでいった糸くずのような我愛イ尓。 言えないままの響きさえ甘く丸い。 気まぐれな言葉ににじんだ狂おしいゲームの予感を、 猫のようにとりとめもなく抱いていたい。 レコードに針を落として閉じた目に蘇る、光さえ遮るほどの光は、 君と同じ姿の幻。 降りしきれ、刹那の憧憬! さざ波を打つ鮮明すぎるコード。 頼りないばかりの僕が優しくなれたらどうか、ここへ来て笑い飛ばせよ。 魔法とは呼べやしないような、子どもだましの日なたでもいいかな。 桜の手がかりさえも見せない君に揺らいで、世界はただ、 綺麗だったな。 |
Girl's SearchlightFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | ほつれた夜の残り香を辿っても、 それぞれの孤独を重ねるには少し足りなくて、 歌われやしない歌に似た感傷に包まれたあなたの体温も忘れちゃうのかな。 いろはにほへど散ることを知る―― 2月の雨のあとで。 さようならサーチライト。 あなたの形の美しい闇を抱いたまま生きてゆく。 静かに照らした白い指先はそっと祈るように愛を裂いてくれ。 古ぼけた部屋。 その窓をよぎるのは、いまよりも少しあどけないあなたに見えた。 あさきゆめみしいつかの暮らし、かすれゆく言葉の果て。 憧れはサテライト。 あなたの周りを定めのままに巡り続けるけれど、 いずれ費やした命を燃やしたらそっと舞い戻って、海に降るよ。 ふたりの不甲斐ないすべてを潮汐のせいにして、 明日が奪い去ってゆくのはあの夜の「その先」だ! さようならサーチライト。 あなたの形の美しい闇を抱いたまま生きてゆく。 静かに照らした白い指先はそっと祈るように愛に咲いてくれ。 |
OrcaFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 透明でまだ名前のない夜明けを呼ぶように、在りたい。 忘却と罪を巡っては、あたらしい心で愛し合いたいだけ。 完璧な眠りは知らないままで、始まりも終わりも持たない波は深い青。 水面が形を歪めて、それでもなお見失わないもの。 暁光を越えたその先で、まだあなたは待ち続けている。 |
EmmaFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 痛いほどに澄んでいる夜の深みが密かに、言葉なき言葉で満ちてゆく。 あなたの好きなものを僕だけに教えてよ。 ひとつでも、いくつでも、全部でも、知っていたい。 「その手の温みに触れたい、 紅差す頬に見とれたい、 おんなじように息を呑みたい……」 そんな想いは言えなくて、 許されていない気がして、 見つめる先であなたの髪が銀河になっていた。 誰もいない遊園地――観覧車もカルーセルもふたりきりの、夢の中。 北の果てに降り積もる早すぎる雪を見たいな。 まっさらなあなたをまっさらな闇から見つけ出したい。 無理やりにでも連れ去りたい、 ずっと遠くへ逃げ出したい、 海辺の街でキスをしたい……。 「明日はどうしよう」なんて、 なにも思わない振りして、ゆだねて欲しいな。 朝になって、目を覚ますまでは。 |
EstuaryFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 照らした陽を指で遊んで、忘れかけた歌を口ずさむ。 流れ着いた陸の果てで、彼女はきっと夏をくゆらせて、誰かを待つ。 アイス・キャンディの欠片が、溶け出す前の夢のよう。 ありふれた日のアイロニー。 痛みを知った――痛みを知って、そこから息をしはじめた。 鉛色の命を抱いたおぼつかない鳥が飛び立てば、 向こう髪を空に透かして、防波堤で砂を噛みしめて、裾を濡らす。 少女性を紐解いては、潤んだ目で、濁す口で、描いたフィクション。 遠く鳴るジムノペディ。 冷たい手で、竦む足で、水平線をたぐって夜を引き寄せた。 灯台はただ揺れるケーキ・キャンドル。 「今日も、誰かのバースデイ」 シーグラスの欠片が、形にならない形を成した夢のよう。 吹いて消して帰る哀の火。 痛みを知った――痛みを知って、そこから息をしはじめた。 痛みを知って。 |
Echo ParkFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 積み上げた言葉じゃいまはまだ届きそうな気がしなくて、ため息。 恋とはもう呼べないようなレンズで、蒸発する時間をただとどめたくて。 窓辺の蔦に搦めとられて、焦燥感に滲んだ景色も水泡のなか。 嘘みたいにこぼれ落ちて、青みたいにつめたく濁っていく、 その声のいちばん綺麗な周波数を探ってみたい。 いま、投げ出す花を溶かした雨も止んで、 街並みはあなたの日々にそっと音楽を添えている。 曖昧な隙間に潜んでいる終わりの季節の気配も、いまはわかるよ。 いつかあなたを汚す奴らの指先さえ掠めない、限られた世界のなか、 夢みたいに美しくて、赤みたいに頬に滲んでいく、 その愛の36℃半に手を伸ばしてみたい。 いま、近づく明日が想いを逸らせて、 額縁に飾れない表情をずっと探している。 |
エイプリルブルーエイプリルブルー | エイプリルブルー | 船底春希 | 管梓 | | 花は咲く 当たり前を知る 人の気も知らないで 近道は内緒にしててね 遠回りしたいだけ 切なさは醒めない 繰り返す春に君を探してた 生まれた日のこと思い出せるから 見つけちゃったらきっと 一人きりよりずっと独りかな 焦がれることさえも 色めくことさえも まだ後ろめたいのかも 花が散る美しさを知る君のこと知りたいよ 歓びも醒めない 繰り返す春に君を探してた さよならの前にもう一度会えたら 確かめるようにそっと 忘れないようにぎゅっと 焼きつけよう 波を打つ視線を 震える指先を ただ見つめていたいだけ その目に映るのはわたしじゃなくていいよ どうか綺麗なままでいて 繰り返す春のどこかで迷っても わたしをとりまくすべての季節が 切実であって、と切実に願うよこれからも どんなに怖くたって確かな不確かささえ愛しちゃうんだから |
運命の人エイプリルブルー | エイプリルブルー | 船底春希 | 管梓 | | ゆれるろうそくの灯は 誰かの心まで映してるみたい 目の奥の正しさだって 見つめるほどにまたわからなくなるの 一番優しいキスをしよう 長い眠りから覚めるように 大丈夫よ 煙が目にしみてるだけ 一番優しいキスをしよう 終わりさえ食べ尽くしたいから 暗い部屋に鍵をかけて ここから出なくちゃ 夜明けより前に 結ばれる運命だって背負えたらよかったのにね 運命の人 一番優しいキスをしよう 閉じていたページ開くように バースデイケーキの味は忘れちゃったけど どんな言葉を話しただとか どんなふうに手を振っただとか せめて今日の日だけは 抱きしめてようか 忘れないように 記憶の中だけで愛し合おう 思い出す数さえ減ったけど わかるでしょう 一番優しいキスをしよう ほかの誰にも渡さないから 呪いみたいな恋を全部君にあげよう いいでしょう |
Interdependence Day (Part I)For Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 僕らは静脈を委ね合って、濁った血を交わしてハイになった。 17歳の7月、退屈な僕らのそれは愛に似ていた。 死にたがりは死ねずに歳を取って、恐怖心にすがって生き残った。 ブロックバスターとコークとピザと“I love you”―― ありふれた祝祭だ。 破裂した空へ駆け出した君の背中を追いかけていた―― 眩さと煙に酔いしれながら。 遠い戦争の幻が、極彩色で駆け巡るんだ。 いっそなにもかも終わればいいのに。 バスケットボール・コートに立つ君ひとりだけが天使だった―― 褪せたアスファルトを旋回しながら。 赤い血潮、白い素肌と、青い虹彩のミス・アメリカ。 プラスチックに包まれて眠るだけ。 |
イノセンスエイプリルブルー | エイプリルブルー | 船底春希 | 管梓 | | 君の瞳はとりとめのない青 覗いたらあの海も見えるの? 話したいことはとっくのとうにないよ だけどきっとそばにいてあげるよ サッドエンドだって知ってたって響く恋がやまない ふいに触れたくなって汚れた手伸ばすけどやっぱ違う! ひっこめてひとりぼっち眠れない夜に祈りを 君の耳にはいつも流れる白 重ねたら心まで聴こえるの? 話したいことが本当はあるんだよ 呆れて、笑って、そばにいてほしいよ サッドエンドだって知ってたって響く恋がやまない 足跡たどってどこまで歩けるかな なんだかくすぐったくて「届くかも」って見上げたら にじむ月の色 話したいことは思い出せそうにないよ その時まで二人でいようよ サッドエンドだって知ってたって響く恋がやまない 隠す手をどけて知らない顔見せてよ ほんのちょっとためらって汚れた手をつないだら 解ける君の糸 |
UndulateFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 惑う時間の膜の向こう、テレビの奥のほうで宇宙旅行。 羅列された悪と不幸を飾ろうとしてポケットに入れ、持ち帰る。 型落ちの現実は青く滲んでまん丸い。 僕より先に老いてゆく君に会いたいな――地上管制。 意味を剥がされた表象。 無理のない方向へ思考はフロウ。 視線と執着と焦燥を巡る波は、水のない海を満たすよう。 火星の歌声が遠く響いて胸が騒いだ。 僕より先に老いてゆく君に会いたいな――地上管制。 |
Underwater GirlFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 息継ぎをしたなら最後、あとはただ沈むだけさ―― 君の目を満たす海へ、君がいない僕の未来へ。 手を伸ばす光はそっと指をすり抜けていく、ずっと。 見つけたはずの答えもとうに消えない疑問符だ。 アクアノートのように揺らぐ横顔が遠くて冷たくて綺麗だ―― 忘れるかな? 失せてゆく感覚はまだ君を探しているけれど、 指先も波打つ髪もいつしか誰かのものになった。 確かめたい言葉はぜんぶ。伝わらない言葉もぜんぶ。 綺麗なままで集めても汚れてしまうから。 その影が溶けて僕ははじめてこの世の叶わなさを知るんだ―― 眩むほどに。 アクアノートのように揺らぐ横顔が遠くて冷たくて綺麗で、 ずるいな。 その影が溶けて僕ははじめてこの世の叶わなさを知るんだ―― 眩むほどに。 幸い、後悔――ねえ、もうどうでもいいの。 愛憎、好き嫌い――それすらなんでもいいの。 |
アフターダークFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 融けてゆく日の名残りが窓にやけに赤く、 街の灯が夜を待ちわびながらともりだすよ。 切りすぎた髪先がくすぐったくて、 なんだか誰かに見せたくて、 あてもなく部屋を飛び出せば、 甘ったるい憂鬱が肺を満たして、 忘れたいことも思い出して、 金木犀の季節だと知るの。 夜しか逢えない君に逢いにゆく。 夢しか見てない目のやわらかさだけを信じてるの。 君しか知らないわたしを教えて。 愛しかいらない、とか、くだらない嘘を束の間わかちあうの。 群青が濃紺に差しかかる通りを抜け、 澄んでゆく呼吸の数で距離を測ってるよ。 いろんなリズムが折り重なって、 思い思いにすれ違って、 なんとなくグルーヴを編み出せば、 足取りの軽さに拍車がかかって、 鼻歌なんか歌ったりして、 両腕を広げて風を感じるの。 ようよう深くなりゆく night time 街を彩り弾ける high time に幸いを祈る aventure その共犯者なら I got you ようよう深くなりゆく night time 街を彩り弾ける high time 小さなシンフォニーが絡まる都会の after dark |
AfterFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | どうして雨は止んでしまうのかなって、君との雨宿りのたびに考えてた。 通り過ぎたスコール、微熱を奪うことなく―― そんな日々もいまは昔? どうしてもかすらない視線の先で、君は違う誰かを想い描いてるの? 飲み干したスコール、べたつく甘さと温度。 わたしの白昼夢はまだ覚めちゃいないのに。 揃いのミサンガはわたしの願いを叶えずすり切れて、 空転する時間を静かに物語ってる。 いまだって手を伸ばすのに、 君が君じゃない錯覚がなに食わぬふりをさせるの。 教室に忘れた詩編にも似た手紙の、フレーズがほつれて注ぐような、 追憶のスコール、ひとりきり思い出す―― そんな君じゃないとわかってる。 はじめて交わした言葉をいつしか忘れていたように、 長くて緩やかな終わりが続いていたのかな。 感傷と上手く折り合えずにいるのはわたしのほうなのに、 すっと笑ってみせるから、 もどかしいな……。 ねえ? 許したふりがたやすいのは、 茜射す光の角度が強がりも悲哀も絵に変えてしまうから。 許せないままでいるのはさ、きっと君のことだけじゃない。 湿った歩道の風に吹かれて、想うの。 |
朝エイプリルブルー | エイプリルブルー | 船底春希 | 管梓 | | もう少しだけ、と止まりそうになる足 右肘をつつく 笑顔がくすぐったいなぁ いつもよりちょっと低くて甘い声がこだまするの 目をこすって「今日は晴れるかな」なんて 交わらない一日を思う 過ぎてみたらありふれてる朝だった 居ないはずのあなたが居ただけ |
曖昧で美しい僕たちの王国For Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 辻褄合わせでは片づかない感傷がほころび出した頃も、 君をずっと知っていた。 衣更着に挟んだ栞をさらう風。 言葉も形もない心になれたらいいのにな。 戻りたいような、忘れたいような、 遠のく日々も花の雨だ。 祈りのうちに重ねた手は、 なにかを伝えられたのかな。 白い城壁があり、汚したい欲がある。 口にさえしなければ怯えることもない。 曖昧で美しい僕たちの王国だ。 辿り着く果てのない十字路で戸惑うことがすべて。 戻れないことは、忘れないことか。 手離す愛は知らないまま。 すがれば崩れてしまうのも、 綺麗な過ちになるかな。 優しくなれないことが怖くて、 必要とされないことが怖くて、 それでも呼び続けるのは、 君の四季にいたいだけ。 戻りたいような、忘れたいような、 遠のく日々も花の雨だ。 祈りのうちに重ねた手は、 ほどかないままでいて。 戻りたい距離と、忘れたい瑕疵の、 後ろめたくも美しい国。 その声のありのままに触れて、 いつかは繋がりあえるかな。 |