スターライトエイプリルブルー | エイプリルブルー | 船底春希 | 管梓 | | 偽物の星を纏って踊る君 眩しくて羨ましいんだよ きっと今日はうまく笑えないな 恋をした それだけ? ああ、もうずっと足りないから ああ、今せめて歌って欲しいよ ああ、ただありふれた嘘でもいいから 花束に目もくれずに踊る君 真似してみてもどこ吹く風だね 昨日より色っぽく映るな すれ違いの数だけ ああ、ただ朝はやってくるけど ああ、まだほんのちょっと切ないや ああ、でもちょっとずつぬるくなってくの いつの間に欲張りになっちゃったんだ? 追いかける 君だけ ああ、もうシアワセだって欲しいし ああ、でもずっと切なくいたいよ ああ、まだ踊らせて嘘だらけでも |
SnoWish; LemonadeFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | ああ、君を取り巻くすべてが杞憂でありますように。 打ち捨てられた舟のように怠惰にやり過ごす日々。 いつも誰かに言い訳をしてばかり。 校舎の片隅にできた仮設のエデンで、僕らがあくびをしていられるのも、 あと少し。 「ねえ、まるで夏の雪」とあどけなく微笑んだ君が頬張る、 儚く涼やかなデザート。 そう、虚ろな互いを認め合ういとまのあとにも、 そんな取るに足らない詩情を胸のなかに抱いててよ。 ああ、君を取り巻くすべてが杞憂でありますように。 僕らの重ねる冗談すべてほんとうになればいいな。 壁に貼られた絵葉書で海岸行きを想像しても、 結局どこへも行けやしないとわかってる。 曖昧にしたがる笑顔は君の悪い癖。 でも見とれてしまうのはあきらめか、それとも……? もういろんなことが最後になってゆくけれど、 こんな他愛のない想いは打ち明けたら続くかな。 窓に透る風、夏色の光画、君の声。 過ごした時間の意味を知るのは、いつもずっとあとで。 ああ、君を取り巻くすべてが杞憂でありますように。 僕らの重ねる冗談すべてほんとうになればいいな。 窓に降る白いかけらを指差しはしゃぐ君が見たいな。 ねえ、ましてやそれが7月ならば――なんて、夢の見すぎ? |
スロウボートのゆくえFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 心の岸辺を発つ日はいつだってこんなふうに、 とめどない寂寥の風が旗を翻していた。 小麦の穂が鳴らした頼りないリズムで、 ささやかに祝福をしよう――僕らの舟出を。 涙の川をスロウボートは進む。 愛が照らしているあの大きな街へ。 限りあるストーリーから逃れようとしても、 いつかは命の果てが大口で僕らを喰らうんだ。 愛は戦いだった――手に入れたり手放したり。 目を逸らすな、その血の跡から花が咲くまでは。 夜明けの空をスロウボートは進む。 赤・白・青のたなびく彼方まで。 |
Chewing Gum USAFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 整然と金言を並べて、飾り立てたガラスの天井。 陶然と仰ぐ青空は本物かどうかもわからない。 痙攣とサイレン、それから神様の代わりのテレヴィジョン。 喧伝する商品すべてが緩やかな安楽死。 噛みつぶして、飽きて、吐き捨てて、繰り返す。 がらんどうの喜びだけが脳を満たしては、また抜け落ちてゆく。 漫然と手を動かすだけ――月曜日から金曜日まで。 雄弁家がそそのかすままに捨て去るアイデンティティ。 噛みつぶして、飽きて、吐き捨てて、繰り返す。 味気ない哀しみさえも飼い馴らすだけで日々は過ぎてゆく。 証言台から注射器まで、案内列は曲がりくねる。 青年の最期の辛苦は言うまでもなく合法。 噛みつぶして、飽きて、吐き捨てて、繰り返す。 がらんどうの人形だけが残される。 噛みつぶして、飽きて、吐き捨てて、繰り返す。 味気ない命の群れを飼い馴らすだけで金が増えてゆく。 |
繋ぐ日の青For Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | あれが空で、あれが海と、はじめて知ったみたいでさ、 あなたとならなにもかもが不思議なくらい鮮やかで新しい。 バニラの街を走り抜けた色めく風を捕まえたら、 後ろ髪がなびき出すから、 ねえ、見ていて。 あなたは今日も生きていて、それだけで嬉しくなって、 あなたにはまだ見えない心の青を繋ぐの。 胸に咲いた歪つな花は、その息やその言葉を吸い込んで育ってゆくよ。 秘密まみれで汚れた手を重ねて知った脆い強さ。 その涙の清らかさを怖いくらいまっすぐに信じてる。 変わろうとも変えようともわかろうともわからせようともせず、 見つめていたいよ。 それじゃダメかな? わたしは今日も生きていて、それだけで切なくなって、 晒せどもまだ冷めない微熱に身をゆだねるの。 わたしだけの痛みになってくれるような甘い明日をまぶたの裏側で見るよ。 あなたは今日も生きていて、それだけで嬉しくなって、 あなたにはまだ見えない心の青を繋ぐの。 胸に咲いた歪つな花は、その息やその言葉を吸い込んで染まってしまうよ。 わたしは今日も生きていて、それだけで切なくなって、 晒せどもまだ冷めない微熱に身をゆだねるの。 わたしだけの痛みになってここにいて! あなたとなら間違えてしまってもいいよ。 |
Teen FlickFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 嘘っぱちだったあの青い恋の映画は、 月日を無為な憧れに溶かしてしまった。 レンズで見据えて捉えた世界は すぐそばにある現実と瞬時に食い違いだして、 あなたの小指に絡みついている不気味に赤い糸はどこへ繋がっているの? うそぶくように、欺くように、 いまも枯れてはくれないアネモネ。 いつでもスロウに回り出すストーリー―― そんな幻と、弱い羽の音。 拾ったコンパスじゃ辿り着きはしなかった、 ブランケットのいちばん深くのユートピア。 天の川で星を積み上げて、ずっとあなたは運命の眩さに気を取られている。 伏線めかしたささやき声だけが頭のなかに響いて、この夢は醒めていくの? 裏切るように、抗うように、 いちどだけ掠めあった手と手。 軋む不条理、転がるストーリー―― やがて見つめあうためだけの目。 あなたに包まって眠る夜を探している―― この指の糸は繋がらないままでも。 星座の導き、風に舞って飛んだメロディ、ネオンの灯の揺らぎ―― 混ざり合ってあなたに届け! |
Theme for“he(r)art”For Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 君に出会った――取り返しようのないくらい。 幻でもなく、間違いでもなく、たしかに。 「東京」と名づけてみたこんな1200万の孤独の群れのただなかで。 光害の夜に君の秘密を浮かべて、 勝手につくった星座に焦がれても、 意味はないの? 求めてるのはハートだけ。 差し出せるのはアートだけ。 君がくれた歌たちを歌い続けてる。 求めてるのはハートだけ。 差し出せるのはアートだけ――そうでしょう? |
Desert BloomFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | See me bloom where the sand's a golden blanket See no gloom as we ride into the sunset Phoenix fades to a blur in a movie backdrop We fix gaze way ahead 'cause we'll never back off Bleeding skies will be pleasing the eye as they melt away Where the wind blows, we'll save our troubles for another day Hear that song? California is calling for us To come along in the season's gentle chorus Through the lens, you're America's favorite daughter Mercedes bends twisting minds as you walk on water Sugar highs will be fueling our dreams as we get away Smash the past, 'cause we know rock'n'roll is here to stay |
DedicationFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 静かに揺れるカーテンから床に零れる月の水面。 沈むみたいに息をひそめ、君が話した海の記憶。 拾い集めた言葉を繋げたら、いつかは君をぜんぶ知れるのかな。 積もり積もった感傷もやがてどうか、綺麗な形にして渡せるかな。 藍色に燃える星も、 透き通る夢の花も、 声もなく歌う鳥も、 その傷を憂う風も、 すべて君のために。 |
TOKYO WILL FIND YOUFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | ココアの香りの幸福な朝も、 死にたいあまり泣きそうな夜も、 帰り着くのはいつも同じ、 東京というやさしくつめたい街でした。 誰もがハートを見つけてなくして、 映画を観返すように繰り返す。 飽きもしないで続いてゆくのは、 正しくて綺麗な証なのでしょう。 感性の色はブルーとグレイ。 愛おしいものを着重ねる季節。 冷ややかな空が薄らぐ頃、 見つけだしてあげるよ。 |
Dream Baby Dream (Theme for Ethernity)For Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | ベイビー、まだどこへも行かないで。 ベイビー、ただわたしとまどろんで。 光の素粒子と、優しい波音。 愛と自由の見果てぬ夢も、この腕と胸のなかに。 (たとえ夢でしかなかったとしても) |
渚にてFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | この休暇を終えたら、ちゃんと大人になろうね。 昨日とは違う神様、昨日とは違うアイロニー。 誰もが通る定めをたどるべき瞬間が僕らにも訪れたって、 それだけのことなんだよ。 歌のありかを知る君は、気づけばずっと先でくるくる踊る。 すみれ色の声を焼ける陽にさらした――晴れ空に取り繕った嘘に笑って。 いつも舌をもつれさせる3単語の台詞があって、 寄せては返す波のようにありふれていた物語。 素知らぬ顔して忍び寄る月。 なんとなく夜は懐かしい匂いで、 移ろうあれやこれやそれが、わけもなくちょっと怖くなったりする。 ひとくち飲み残したラムネのぬるさに似た、 甘ったるい風に吹かれる横顔に、泣きたくなる。 愛に満たされすぎたら、苦しいくらいすべてがきれいに見えた、星の浜辺。 得体の知れないロマンにだまされ続ける時間を終えられるかな……? いつか灰色をした街でVHSを巻き戻したって、 二度と戻らないふたりがいまここにいる―― 渚にて。 ふだん通りに朝がきて、 なにも変わってない気がして、 でも、会わなくなって、会えなくなって、 交わす言葉も薄れていって、 「友達」のまま友達じゃなくなっていくけれど、 この休暇を終えたら、ちゃんと大人になるんだっけ。 さあ、帰ろうか――まだ眠たいけれど、 |
NatalieFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 長い映画の最後の安堵のように、ただ君はそこで待っていてよ。 くだらないことだとしても、君のいる街まで行こうと決めたんだよ。 術はもうなんでもいい。 君へたどり着けばいい。 海の冷たさを、 地平の虚ろさを、 君と知ってみたいだけ。 ため息より儚い光華をソーダ水の縁でにじませながら、 エチュードの日々を歩く君の明日を照らす歌を口ずさむよ。 誰も知らなくていい。 君に届くだけでいい。 空の深さすら、 夕日の赤さすら、 君をふちどりたいだけ。 綴る言葉を追い越すような速さで過ぎゆく、夏を彩る花を。 術はもうなんでもいい。 君へたどり着けばいい。 海の冷たさを、 地平の虚ろさを、 君と知ってみたいだけ。 君を知ってみたいだけ。 |
ハッピーアイスクリームFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | あなたの在りかたに想いを馳せるわたしは綺麗でいられるかしら。 融け落ちても夢は甘いままで、真昼の月をねだり続けてる。 預けた未来が茨の向こうで手招きした。 意地悪な夜に苛まれて、 誰もが誰かにため息をつかせてる。 突然のベルに揺さぶられて、 まともになれないラブユーが膨らんだ。 気まぐれな天使は曖昧を愛し、 口元を汚すデザートを食べ尽くす。 恋するあなたは横顔ばかり―― 遠い稲妻に夢中だ。 そのうち隣を見てくれるような光り方を見つけてやる。 信じきれぬような言葉を集め、 素敵な首輪でおのずから繋がれた。 映画のようにはいかなくても、 それなりのストーリーで進めたらいいのにな。 未知の美しさを教えてくれたら、 苺の香りの歌をしたためるのだ。 恋するあなたは横顔ばかり―― それでも見つめてたいや。 輝ききらない希望もいつか特別な季節になる。 |
花とか猫とかエイプリルブルー | エイプリルブルー | 船底春希 | 管梓 | | 君の足音が栞になった もう一度孤独を知る旅だった わかってるわ そんなにたくさんいらないよ 今だけ君だけ全部欲しいだけ 一番こわいこととか 一番きもちいいこととか 花とか猫とか雲とか波とか頬を切る風だとか 君と眠るたび新しくなれたらよかったな どこにも行けないまま確かめ合うの 開いたら最後 終わりに向かってるって知っている 目を閉じてそっと流れていくだけ 一番こわいこととか 一番きもちいいこととか 花とか猫とか雲とか波とかあの子の涙だとか 二度とない冬 花とか猫とか雲とか波とか来なかった夏だとか |
ハル、ヨル、メグル。For Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 眠れない夜。 持て余した眠れなさに酔いしれて、 窓からそっと抜け出したら風の匂いも君の季節で。 誰にも伝えきれない青い記憶のトーチで照らした、 宇宙の隅っこを探ってる―― 愛されるような理由を求めて。 泣きじゃくる君に困らされて、ときめいてどうかしちゃった! いまはただ君を笑わせる言葉が欲しい。 重ねた手や撫でた髪、突然の優しいささやきでさえも、 幻だったと恐れては泣きたいくらいに想いが巡って、 花の降る坂道を駆け上がったって海とサーチライトが消えない! 街の灯が眩いこんな夜も毎度最初で最後とわかってる。 |
HalationFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 曖昧を抱いて生きる僕らは、いつのまにかここにいてさ、 人一倍サイダーのガラス瓶を空け、胸のもやを晴らそうとしていた。 海鳥の声が重なって生まれた歌のようには、 いまの僕は笑えなくて、髪を撫でつけた。 光に融けてゆくイメージのなか、君を見てる―― なんにも変わんないのになにか違う笑顔の、かなわない君を。 夕立にでもなりやしないか、淡く期待してみたんだ。 言葉少ない僕らの沈黙を紛らせれば、それでよかったのにな。 臨海線のホームのベンチは錆びついて、 昔書いた君と僕の名前なんて消えちゃうだろうね。 そして天を仰いだ君に滲む、季節の終わり。 「いつかまた会えるさ」 お決まりでも信じきりたいと思った。 |
Her Sarah Records CollectionFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 退屈に満ちた街の退屈な女の子の、 取り立てて語ることもないような恋の話。 ひそかな憧れ。 「旧校舎の図書室に通いすぎる男の子。 かったるい目をして、どんな物語を夢見るんだろ」 いつか手を取り、ふたりで埃くさい部屋に小説を置き去りにして、 走り出したとき、口をついたメロディ―― たぶんそれは、水色のきらめき。 いつも同じ日々に、代わり映えない景色―― それもいま変わってゆくから。 霞と花の先、ふいに流れるメロディ。 たぶんそれは、彼女の心のなかのコレクションにもうあるんだ。 サラ・レコーズのコレクションと、 彼女の大切な想い出。 サラ・レコーズのコレクションと、 夏に恋するあの感じ。 |
First RegretsFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | さようなら。 この窓のどんな景色さえも、僕らには優しかったね。 雪を待つ12月、白い息で走る坂道と、消えない痛み。 ノートの隙間に隠した気持ちぜんぶここから風に放してやる。 そして最初のひとひらが舞う灰の空を仰ぐ君に、 変わらず手を振る――僕らがゼロになる前に。 はじめての後悔を君に捧げよう。 冷めたコーヒー缶、揺れるぶらんこ。 いつだっけ、この狭い公園が世界のすべてだと思えたのは。 ねえ、あの日あのとき伝えたことにひとつとして偽りはないから。 いつか最後のひとひらが舞う朝に僕に出会う君は、 変わらず笑って――僕らがゼロになっても。 はじめての後悔を君に捧げよう。 |
Favourite BlueFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 愛してるのは、冷たいからです。 プールサイドのテレパシーで、きっとハートは「青」を知りました。 乱れ髪の季節なので、終始ほつれ気味の未来に息を切らして、 汗を拭うんです。 いつも君は光と影が織りなす淡いイメージの先で、 遠く見えるのはたぶん、曖昧な表情に眩んだ想いのディスタンス。 どうかそこで待ってて――はやる気持ちが追いつくまで。 ふつふつと弾けだすソーダの泡、かきあげる髪の塩素の匂い。 ねえ、夏のはじめは水のいたずら。 大したことない仕草さえもシネマチックに映えだす日々です。 流れ出した新たなメロディ。 半透明の生活にガム・シロップを溶かし込んで、 ふたりきりで飲み干したいな。 いつか君の幻想と真実を赤いペンで答え合わせして、 浮かび上がる姿を知りたいと願っては、日射しのほうへ手を伸ばす。 どうか笑わないで、こんな言葉を聞いてくれるかな。 くるくると巻き回すフィルムには、どんなふたりが映るんだろうな。 ねえ、のぼせあがるほど求めてる、 風も色も声の音も涼やかに染め上がればいい! どうかそこで待ってて――はやる気持ちが追いつくまで。 ふつふつと弾けだすソーダの泡、かきあげる髪の塩素の匂い。 ねえ、夏のはじめは水のいたずら。 冷たいから……! |
FriendsFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 駐車場の壁に書き殴られたメッセージ――愛と平和のやつ。 剥がれ落ちそうな言葉を素通りして、それぞれの朝を急いでゆく。 いつから僕らこんなふう? 繋いだはずの手もいまは遠く白飛びして。 記憶のなかのフレンズ、夏の日の匂いだ―― 幼い僕らは全問正解だった。 鈍色の電車で退屈してるのかい? あのプレイリストの歌はいまもきっと続いてるよ。 タイム・カプセルに埋もれたままの夢を摩天楼が見下ろす。 探そうともせずに寝ぼけた目をこじ開けるように、 苦いコーヒーで今日をやり過ごす。 死ぬまで僕らこんなふう? 腐してた世界にいまはもう身を任せて。 記憶のなかのフレンズ、遠のく陽炎だ―― 理由もなくただ一生懸命だった。 海をよぎるとき、その目が向く先は? あのプレイリストの歌はいまもきっと、 次のサビを待ってる―― 高鳴るビート、重なる声を、眩みそうなほど。 耳をふさいでたのは誰かじゃなく僕らだった。 押すべきボタンはすぐそこだろ? 記憶のなかのフレンズ、夏の日の匂いだ―― 幼い僕らは全問正解だった。 鈍色の電車で退屈してるのかい? あのプレイリストの歌はいまもきっと、これからもずっと続いてるよ。 |
FloorFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 夜を泳ぐように生きて、 つめたい灯りを受けて、 同じ色をした息が消えてゆく雨の果て。 ありふれた歌が鳴るなか、 見つけたあなたの姿は光と影のまやかし。 つたない言葉を探してはうつむくばかり。 呼吸のしかたさえも忘れそう――少しだけ待って。 折り重なる雑音に溺れて悪酔いしてるわたしの耳に、 そっとあなたの声だけ教えて。 アイス・キューブが溶けるまで黙ったまま、 あなたのその踵が跳ねた床の上。 誰かが捨てた吸い殻が灰になるのを見つめてた。 想いは綺麗なあやまち? 気のないそぶりをしないでと願ってみても、 なにも伝わるはずはないとわかってるけど……。 わたしの知らないビートにずっと夢中なせいで、 あなたの心にいつまでも近づけやしないよ。 繰り返されるダンス・ミュージックに ジャスト・チューン・インして踊り明かせたら、 繰り返されるダンス・ミュージックはもういらないはずだと思ってた―― だけどそれは違って、どうも隙間が埋まらないや……。 カクテル色の光線のなか、 揺れるあなたとわかちあえない切なささえも甘くて苦い。 ピント外れの幻でも愛してるから、 胸の奥に焼きついたままどうか消えないでいて。 |
Frozen BeachFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 出来の悪い恋のお話は終わり――出来の悪い恋の歌を道連れに。 心もとなげな色がよく似合うふたりにふさわしい日和。 国道沿いに海へすり抜ける―― 過ぎ去りし日々のパラソルだけ、 置き忘れられてゆくためにあるみたいな海へ。 点を結んだ僕の過ち、線を引かれた君の哀しみ、 詰め込んだ瓶は水平線まで。 両腕を広げて抱き寄せた風は、ここにないなにかを探しているよう。 「ひとり」を知る季節、白い時間のなかで、かもめの行方を見つめる。 ホルガはフィルムを残したままうっすら埃を被っている。 街に降るわずかな雪にもほんの少し似てる。 僕らの最後を閉じ込めたら、どんなに寂しい笑顔さえも、綺麗なはずだよ。 忘れないでいい? 国道沿いに海から離れる―― いつかの夏の問いかけはまだ、 不思議なくらいに心に染みついているけれど、 「スノウドームを逆さまにして何回だって繰り返しても、 戻りはしないから」 それが答えだよ。 |
BleachersFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 遠くの明滅、煙るアフターグロウ、 袖を通して使い果たした涼風。 非在のブリーチャーズ。 不透なユースは融けてスプライトを薄めた。 偉大なドリーマー、視界の収差。 君の正しさは触れも、悟れもしない。 散瞳に染みてゆく花の姿を忘れた頃に、 言葉以前の声でその美しさを伝えたいと願っている。 |
ヘヴンリイFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 甘いだけの星が巡って、夜に歌うソングバーズ―― ただ重なりあうために生まれたみたい。 誰もがためらいながらほんとうは知っている、 愛すべき光の網、海に煌めいて。 ジュークボックスに託した熱が醒めないままでいる君を、 静かに濡らす慈愛の雨。 髪先にくすぶる匂い、ビートに揺らいで、 視線を交わす刹那、弾ぜたデイジー・チェイン。 その手に触れるたび、 その目に見つめられるたび、 澄みきる星空もいずれは雨を呼ぶと知る。 その身を寄せるたび、 その匂いに近づくたび、 雨の煙る果てに月は確かにあって、 君はそこから来たと知る。 |
ベイビーブルーエイプリルブルー | エイプリルブルー | 船底春希 | 管梓 | | ベイビーブルー、君はどこへ こんな夜誰と眠るの あぁベイビーブルー、僕はここで歌う こんな夜も ベイビーブルー、君がどうして こんな夜頭よぎるの ねぇベイビーブルー、僕はここで歌う こんな夜だから こぼれ落ちそうな月から 鼻をかすめる匂いよみがえるようだよ あの夜のことなんて忘れていいから できるだけ優しい場所にいてよ、ベイビー 君の名前は呼べないから せめて聴いておくれよ こんな僕の歌を ベイビーブルー、フライデーナイト もう重ならないビート ひとりきり彷徨うエモーション くすぐる甘い匂いが、また もう重ならないビート ひとりきり彷徨うエモーション もう一度なぞるメロディー 声にならないアイミスユー 思い出すのはブルーだけれど 今はできるだけ優しい目をしていてよ、ベイビー 君の名前は呼べないから せめて聴いておくれよ こんな僕の歌を ベイビーブルー、フライデーナイト もう重ならないビート ひとりきり彷徨うエモーション 叫ぶようになぞるメロディー 声にならないアイミスユー |
放物線For Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 流れるためだけに時間は存在するよ―― この街はいつでもそんなふうでしょう。 君が忘れてった薄荷煙草の煙が冷ややかな深夜に紛れてゆく。 見上げた空には星は映らなくて、丸すぎる月がきれいごとよりきれいで、 いつだってどこだって、死にたいくらいあたしはあたしだ。 その自覚にただ苛まされてみたって、何ひとつ、誰ひとり、 救ってはくれやしないから。 君にとってもあたしはただの通過点って、 わかってるよ。 モノローグ続きのつまんない映画のよう――語るべき中身もないくせにさ。 すり切れそうな愛をアルコールに溶かして、 わかりあえないってうそぶいてた。 落ちるところまで落ちるのはたやすくて、その浅はかさも君は 見透かしてるようで、 傷ついて傷つけて、心細さばかり競ってる――瑪瑙のような目を ぎらぎら光らせて。 さめざめと混ぜこぜの感情があふれたって君には、 遠い国の名も知らない歌みたいに意味がないな。 どうしたって好きになれる気がしない、君が忘れてった薄荷煙草も、 だらしなく生き延びそうな明日の日も、 もういらないや。 窓を開け放して、 この手から投げ出せば、 きれいな放物線を描いてぜんぶ落ちていくのに、 どうしてあたしは踏み出せずに呼吸を繋いでいるのかな。 明けそうで明けなくて深い夜の底に沈んでるあたしを、 いまでもたしかに月は照らしてる。 いつだってどこだって、死にたいくらいあたしはあたしで、 だから結局あたしは君を愛してしまうって、 わかってるよ。 |
HopeFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | Five years to know a bit of your warmth and your weight If it took another five to know the rest, I'd gladly wait To eyes behind the shutter, You'd be spring and I'd be summer Shine right through me When it gets too dark to see |
水と眠るFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 夢を見ていた。君によく似た誰かが笑う。他愛もない愛。 目覚めたときは水のただなか。透明な人が残した海だ。 静かすぎてため息さえもかき消された、白夜のあと。 いつかの君が求めたこの手が冷え切るまでどれくらいだろうな。 なくしたあとも、思い描いていた目映い未来に焦がれたままでいても、 浮かべそうにもない水と眠るだけだ。 花を閉ざした琥珀が揺れたその耳元の白さを想う。 幼いままで振りかざしていた僕の心の黒さを想う。 気づかぬ間に傷つけた日を巻き戻して悔やんでみたり、 叶いそうもない仮定の話を綴り出した、映画のあと。 いつかの君がほどいた言葉を捨て切れるまでどれくらいだろうな。 なくしたあとで、煩い続けたしなやかな体温を懐かしんでもきっと、 浮かべそうにもない水と眠るだけだ。 |
ミルキーウェイの岸辺からエイプリルブルー | エイプリルブルー | 船底春希 | 管梓 | | 昨日まで憎んでた顔さえ忘れちゃうし そのくせに残された痛みは消えないし あきらめた将来は今でも覚えてるし 欲しかった今日だって平気で捨てちゃうし つまるところそうか、どこまでもわたしだ 誰を思っても何を歌っても 海を渡る星もいつか空を昇っていくんだなって 君はただ水平線を見てた その目があまりにも綺麗で同じ夢見てみたくなったよ 言葉にしたら消えちゃいそうで言えないけどね ここじゃないどこかまで行きたいと君は言う 「一緒ならどこにでも」なんて、柄じゃないけど 強がりも後悔ももうやめてこっちへおいで もう一度進むにもまだ遅くないから 「こんなはずない」って何を願ってたの? 思いがけないくらいがいいんじゃない そうでもない? 海を渡る星もいつか空を昇っていくんだなって 君はただ水平線を見てた その目にいつか宿る影もこれからは晴らしてみせるから 終わりまで一番近くで見ててほしいよ ずっと前から決まっていたって思ってもいいかな 君の息が見えなくなって春が来たって知る 何度だって 海を渡る星にいつか僕たちもなれるだろうかって君はまだ水平線を見てる やさしくなんてない世界で性懲りもなく夢を描くさ 約束の旗を掲げようか この場所で今 「どこか」はここだった 「誰か」は君だったんだ! ミルキーウェイの岸辺からあの日の青に愛を込めて |
MilkshakeFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 水泡とありふれるものすべて 空想のシュガー・ハイで美化して、 滞る指で、歪んだ唇で、 ふれる季節は否定の向こうで瞬いている。 偶像とたわむれて踊るだけ。 空洞をその白夜で満たして。 ただ凍る罪で、淀んだ祝福で、 ゆれる季節は既定の向こうで輝いている。 意味なんて一切もない、 信じたって実体もない、 つながらない言葉だけ。 狂気だって実感もない、 正気なんて存在しない。 ふさがらない想いだけ。 滞る指で、歪んだ唇で、 ぬれる季節の未定の向こうで欺いてやる。 |
麦の海に沈む果実For Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 「最低」ってじゃれ合って、過ぎ去って安心して、 drifting, falling, drifting and falling and laughing. 偽った愛憎とくすぶった感傷で、 dreaming, scheming, dreaming and scheming and sighing. 背伸びしてねだる日射しに爪弾いて歌う君以外に、 no one else! チョコレートを頬張って、退屈を投げ合って、 drifting, falling, drifting and falling and laughing. いつだって愛そうとうそぶいた反動で、 dreaming, scheming, dreaming and scheming and sighing. 口紅を引いて、振り向きざまに微笑んで。いまは君以外に、 no one else! 背伸びしてねだる日射しに爪弾いて歌う君は、 ずっともう薄れないでいてくれよ。 血迷えば幸せと見まごいそうなそれは、 いちど沈めば取り戻せはしないから。 水のない海で見つけた青さが煩わせるままに、 no one else! no one else! |
Leica DaydreamFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 過ぎゆく瞬間が「いま」を都合のいい幻に変えてゆく。 誰もが気づかぬうちに手にしてた、そんなありふれた魔法。 砕けたしゃぼんが音も立てずネイヴィーのブラウスを濡らした、風の日。 ありのままの退屈さえなぜか美しい色になって、 頼りない陽の光のなか、君は記憶の世界で呼吸をする。 ねえ、小さな過去を重ねてやっと巡り会えた愛しい人。 何千の色を束ねた君の光がやがて白になる。 瞬きの狭間で捉えたしぐさ――ときめきはいつも君のそばにある。 「好きな花を選び取っても、そこには永遠はないの」と笑う、 そんな君を永遠にしたくて、僕はファインダーの向こうを覗いて見るよ。 ライカ・デイドリーム……。 |
Radio DaysFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 三文詩人が起き出すのはいつも日の出過ぎのスケート・パークで、 ドーナッツ・ショップでコーヒーを買って家路を辿る気ままな生活。 店内で耳にしたあれはPavement。 そういえば髪でも切ろうか、なんて思ったり。 早朝のシフトを切り上げてウェンディはバスに乗り、大学へ。 イヤフォンに響く高らかなヒット・ソング―― 聴いちゃいないし、すぐに忘れる。 「気分よくやり過ごすことが大事」 そんなことを思う彼女もきっと、誰かが見てる。 興味ないようなふりをしてても、忘れられなくなる日々のことを 期待していた。 損はない、けれど得もしないような、ありきたりな特別に捧ぐ、 偉大なレイディオ・デイズ。 テレパスのケイティは恋の結末もプロローグもお見通しだ。 盗み出した電波で熱を上げながら追い越してゆくアイスクリーム・カー。 シネプレックス通いの回数で現実逃避指数を計っては、夏を待った。 どうしたいなんて考えてるとき、街の雑踏も移ろいゆくサウンドトラック。 正気じゃいられなくなるくらいに日差しが焼きつけてゆくのは、 あの眼差しだ。 「恋の記憶をかき集めたらこの国になる」と誰かが言ったらしい。 夕方になってジャクソンはジェーンとベースボールへ出かけて行った。 ポケットに隠した指輪の行方をホームの勝利に託してるのはここだけの話 。 そうはない美しい瞬間や、絵になるような日々のことを期待したいんだ。 しょうがないほどに輝いてるのは、ありきたりな特別に捧ぐ、 偉大なレイディオ・デイズ。 「アイスクリーム・カーを打ち捨ててあいつは西へ旅に出たぜ」 |
LungsFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | 映写室で少女は死んだ――名前がないまま。 許されたバイスタンダー、夢見るテクニカラー。 厭世観は天性だった。肺を満たした論理。 ヒロインだってひとりになって、最期は這ってロンリー。 水のなかで見つけたエデンのラダー。 揺れる光に溶けるだけの縁の花。 愛や憎悪のすべても、幕の裏側のおとぎ話。 プールサイドの乱反射は意味に影をかざした。 立ちすくんだバイスタンダー、褪せていくテクニカラー。 正気だって狂気だった恋の季節のように、 救われたって、行く当てなんて切り捨て去ってロンリー。 巻き戻したら蘇る気がした、触れる未来に透けるだけの頬の赤。 点と線で繋がっていた言葉もサラウンドを回るだけ。 水のなかを沈み続けるフィルム。 眩む視界に愛や憎悪も歪む。 そして最期は静寂の深みで、 名前がないままのあの子に口づける。 |
Leave The PlanetFor Tracy Hyde | For Tracy Hyde | 管梓 | 管梓 | | テーブルの上に星図を広げて、意味ありげに線を引いていくだけ。 途方もない夜をまさぐる指で、ほんとうの嘘を暴いてやろうぜ。 資料館に収まる運命でさえも今日は、 どうだっていいよ、もう知らないよ。 錠剤ひとつの、孤独の革命。 すべてを置き去りにして、水晶の船はただ行く。 航跡を追ってほどける闇へ、電子の雨が降り注いでゆく。 紙屑になったレポートを捨てて、流れに任せて消失点まで。 飽きるほどの退屈が死ぬまで続いていったって、 どうだっていいよ、もう寝てたいよ。 毛布のなかの孤独の発明。 明日を置き去りにして、昨日のただなかを進む。 揺らいだスープに浮かべた未来でいつか、 すさんだルールがふやけて生まれ変わる。 どうだっていいよ、もう知らないよ。 錠剤ひとつの、孤独の革命。 すべてを置き去りにして、水晶の船はただ行くのさ。 どうだっていいよ、もう寝てたいよ。 毛布のなかの孤独の発明。 明日を置き去りにして、昨日のただなかを進む。 |