拝啓、本当につらくなってしまったあなたへ。

スロウハイツと太陽
拝啓、本当につらくなってしまったあなたへ。
いないみたいにされた毎日も 死んでしまいたいような夜も 気づいてあげられなくってごめんね 話してよ もういいんだよ 君は君以外の人にならなくていい 教えてよ 全部は分からないけど 言葉じゃなくても もういいから 「ラストシーン」/スロウハイツと太陽 2018年7月11日に“スロウハイツと太陽”が初の全国流通盤1stミニアルバム『視えないカタチ』をリリースしました。彼らは、名古屋を拠点に活動する4人組バンドです。今作のアルバムコンセプトは【心の中にある目には視えない感情の具現化】であり【苦しさや悲しさ、痛み、愛しさや尊さなど、ものさしでは測れないけれど確かにそこにあるものを詰め込みました】とシミズフウマ(Vo.)がコメント。 誰にも言えなかった<いないみたいにされた毎日>の悲しみ。誰にも見せなかった<死んでしまいたいような夜>の苦しみ。そんな『視えないカタチ』を抱えていた方、今も抱えている方、多いのではないでしょうか。だけど、やっと<気づいてあげられなくってごめんね>と、あなたを見つめてくれる歌たちがここにあるのです。さらに、今日のうたコラムでは今作の収録曲から「本当につらくなってしまったあなたへ」をご紹介! 拝啓 僕のことなんてちっとも知らない遠い誰かへ あなたの生きてる世界なら この僕の言葉が聴こえるでしょうか 別に分かってもらいたい訳ではないけど それでもここなら誰かに僕の姿がみえると思うから 「本当につらくなってしまったあなたへ」 冒頭でご紹介した「ラストシーン」を聴いて<話してよ もういいんだよ>と、<教えてよ 全部は分からないけど>と、声を受け取った主人公が、閉じた心をちょっとだけ開いてポツリポツリ語り始めるような歌の始まり。でも、友達だとか家族だとか先生だとか、身近な人になんて分かってもらえるとは思えないため<拝啓 僕のことなんてちっとも知らない遠い誰かへ>と、匿名メッセージを綴っているのです。 では<あなたの生きてる世界>であり<ここなら誰かに僕の姿がみえると思う>場所である“ここ”とはどこなのか…。それはおそらくネットの世界でしょう。誰も<僕>の顔も本名も年齢も性別すらもわからないからこそ、何を言ったって大丈夫な気がする。言葉しかないから、言葉だけで<僕の姿>を見てもらえる気がする。何の先入観もなく。そんな想いから<僕>は自分の『視えないカタチ』を呟き始めたのではないでしょうか。 居場所なんてどこにもないこと 目を合わせてはいけないこと 痛くても痛いと言わないこと 親や先生には話さないこと 後ろから指をさされること それに気づかないふりをすること 教科書のページが減っていくこと 大切な何かと共に 言葉がぼろぼろこぼれていくこと 喉の奥につっかえて出てこないこと それを笑われることと 明日がくるのが怖いこと それでも頑張っていたこと 精一杯笑おうとしたこと でももう生きていけないと思ったこと もう生きてちゃいけないと思ったこと 「本当につらくなってしまったあなたへ」 今まで話さなかった、話せなかった、痛いほどの“本当のこと”が次々と吐き出されてゆく歌。その一方で、悲しいとか、苦しいとか、淋しいとか、空しいとか、ツライとか、具体的な感情の名前はほとんど登場しません。きっと<僕>自身、居場所なんてどこにもない空間のなかで、いろんなことに耐えながら息をすることが精一杯で、自分の胸の内に生じている気持ちに一つ一つ名前をつける余裕さえなかったのだと思います。 ただし<僕>は唯一<明日がくるのが怖い>という感情を伝えていますね。それほどに、他の感情に比べて<怖い>という気持ちが<僕>が満たし切っていたということでしょう。怖い、怖い、怖い…。そんな夜と名づけられない気持ちにまみれて、その結果<僕>は思考する力も生きる力も弱ってしまい<もう生きていけない><もう生きてちゃいけない>という最悪の結論にたどり着くしかなかったのです。 拝啓 本当につらくなってしまったあなたへ 名前も顔も知らないわたしの言葉は届くでしょうか 別に何もかもわかった訳ではないけれど それでも少しだけ 「本当につらくなってしまったあなたへ」 でも、ネット上では<名前も顔も知らないわたし>からまた匿名メッセージが<僕>宛てに届けられます。この<わたし>が綴る言葉は是非、歌詞の全文を読んでみてください。だけど最初の<拝啓 本当につらくなってしまったあなたへ>という、このたったひと言を受け取っただけでも<僕>は、少し救われた気持ちになったのではないでしょうか。自分は<本当につらくなってしまった>んだと、ちゃんと実感できて。自分が<本当につらくなってしまった>んだと、初めて誰かに少しでもわかってもらえて…。 拝啓 僕のことなんてちっとも知らない遠い誰かへ あなたの生きてる世界なら この僕の言葉が聴こえるでしょうか 別に分かってもらいたい訳ではないけど それでもここなら誰かに僕の姿がみえると思うから 「本当につらくなってしまったあなたへ」/スロウハイツと太陽 そして、ラストは冒頭と同じフレーズで幕を閉じるのですが、おそらくどこか響き方が違って聴こえるはず。それはやはり<名前も顔も知らないわたしの言葉>の力でしょう。尚、この歌はすでにMVが公開されているのですが「涙が出た」「欲しかった言葉ってこの事なんだな」「自分が辛かった時、この曲に出会っていればよかった」と、そんなコメントがリスナーのみなさんから多く寄せられております。これこそ<本当につらくなってしまったあなたへ>言葉が届いていることの証ですよね。 居場所なんてどこにもない。明日がくるのが怖い。もう生きてちゃいけない。今、独りきりでそんなふうに思っているあなたへ、スロウハイツと太陽のアルバム『視えないカタチ』が届きますように。そしてどうかあなたの“視えないカタチ”が歌によって、そっと救われますように…! ◆全国流通盤1stミニアルバム『視えないカタチ』 2018年7月11日発売 <収録曲> 1.光の中で 2.エキストラ 3.本当につらくなってしまったあなたへ 4.それでも生きていくあなたへ 5.1960 6.ラストシーン
























