おんな船頭唄三橋美智也 | 三橋美智也 | 藤間哲郎 | 山口俊郎 | | 嬉しがらせて 泣かせて消えた 憎いあの夜の 旅の風 思い出すさえ ざんざら真菰(まこも) 鳴るなうつろな この胸に 所詮かなわぬ 縁(えにし)の恋が なぜにこうまで 身を責める 呼んでみたとて はるかなあかり 濡れた水棹(みさお)が 手に重い 利根で生まれて 十三、七つ 月よわたしも 同じ年 かわいそうなは みなし子同士 きょうもおまえと つなぐ舟 |
哀愁列車三橋美智也 | 三橋美智也 | 横井弘 | 鎌多俊与 | | 惚れて 惚れて 惚れていながら 行く俺に 旅をせかせる ベルの音 つらいホームに 来は来たが 未練心に つまづいて 落す涙の 哀愁列車 燃えて 燃えて 燃えて過ごした 湯の宿に うしろ髪ひく 灯(ひ)がひとつ こよい逢瀬(おうせ)を 待ちわびる 君のしあわせ 祈りつつ 旅にのがれる 哀愁列車 泣いて 泣いて 泣いているのを 知らぬげに 窓はふたりを 遠くする こらえきれずに 見返れば すがるせつない 瞳(め)のような 星が飛ぶ飛ぶ 哀愁列車 |
古城三橋美智也 | 三橋美智也 | 高橋掬太郎 | 細川潤一 | | 松風騒ぐ 丘の上 古城よ独(ひと)り 何偲(しの)ぶ 栄華の夢を 胸に追い あゝ 仰げば佗(わ)びし 天守閣 崩れしままの 石垣に 哀れを誘う 病葉(わくらば)や 矢弾(やだま)のあとの ここかしこ あゝ 往古(むかし)を語る 大手門 甍(いらか)は青く 苔(こけ)むして 古城よ独り 何偲ぶ たたずみおれば 身にしみて あゝ 空行く雁(かり)の 声悲し |
夕焼とんび三橋美智也 | 三橋美智也 | 矢野亮 | 吉田矢健治 | | 夕焼け空が マッカッカ とんびがくるりと 輪を描(か)いた ホーイのホイ そこから東京が 見えるかい 見えたらここまで 降りて来な 火傷(やけど)をせぬうち 早くこヨ ホーイホイ 上りの汽車が ピーポッポ とんびもつられて 笛吹いた ホーイのホイ 兄(あん)ちゃはどうして いるんだい ちょっぴり教えて くんないか 油揚げ一丁 進上(しんじょう)ヨ ホーイホイ 一番星が チーカチカ とんびは意地悪 知らぬ顔 ホーイのホイ 祭りにゃ必ず 帰るって 俺らをだまして 置いてった 兄ちゃもおまえも ばかっちょヨ ホーイホイ |
あの娘が泣いてる波止場三橋美智也 | 三橋美智也 | 高野公男 | 船村徹 | | 思い出したんだとさ 逢(あ)いたくなったんだとさ いくらすれても 女はおんな 男心にゃ わかるもんかと 沖のけむりを 見ながら あゝ あの娘(こ)が泣いてる 波止場(はとば) 呼んでみたんだとさ 淋しくなったんだとさ どうせカーゴの マドロスさんは 一夜(いちや)泊りの 旅の鴎(かもめ)と 遠い汽笛を しょんぼり あゝ あの娘は聞いてる 波止場 涙捨てたんだとさ 待つ気になったんだとさ 海の鳥でも 月夜にゃきっと 飛んで来るだろ 夢ではろばろ それをたよりに いつまで あゝ あの娘がたたずむ 波止場 |
リンゴ村から三橋美智也 | 三橋美智也 | 矢野亮 | 林伊佐緒 | 川上英一 | おぼえているかい 故郷の村を たよりもとだえて 幾年(いくとせ)過ぎた 都へ積み出す まっかなリンゴ 見るたびつらいよ 俺(おい)らのナ 俺らの胸が おぼえているかい 別れたあの夜 泣き泣き走った 小雨のホーム 上りの夜汽車の にじんだ汽笛 せつなく揺するよ 俺らのナ 俺らの胸を おぼえているかい 子供の頃に 二人で遊んだ あの山・小川 昔とちっとも 変わっちゃいない 帰っておくれよ 俺らのナ 俺らの胸に |
君は海鳥渡り鳥三橋美智也 | 三橋美智也 | 矢野亮 | 真木陽 | | 海の鳥だと 承知で好いたにヨー なまじ翼が うらめしい いって聞かせてヨー いって聞かせてヨー 銅鑼(ドラ)にせかれりゃ また泣ける 波に身をもむ 波止場(はとば)の浮標(ブイ)ならヨー 残る未練の 灯(ひ)をともす 忘れしゃんすなヨー 忘れしゃんすなヨー 一夜(ひとよ)泊りの 情けとて きまり文句で 必ず帰るとヨー 風の変わりが 気にかかる ちぎれテープにヨー ちぎれテープにヨー かけた生命(いのち)の 恋もある |
おさげと花と地蔵さんと三橋美智也 | 三橋美智也 | 東條寿三郎 | 細川潤一 | 細川潤一 | 指をまるめて のぞいたら 黙ってみんな 泣いていた 日昏(ひぐ)れの空の その向こう さようなら 呼べば遠くで さようなら おさげと 花と 地蔵さんと あれから三年 もう三月 変らず今も あのままで 空見て立って いるのやら さようなら 耳をすませば さようなら おさげと 花と 地蔵さんと なんにもいわずに 手を上げて 爪(つま)立ちながら 見てたっけ 思いはめぐる 茜(あかね)空 さようなら 呼べばどこかで さようなら おさげと 花と 地蔵さんと |
達者でナ三橋美智也 | 三橋美智也 | 横井弘 | 中野忠晴 | | わらにまみれてヨー 育てた栗毛 今日は買われてヨー 町へ行くアーアー オーラ オーラ 達者(たっしゃ)でナ オーラ オーラ かぜひくな あゝかぜひくな 離す手綱が ふるえふるえるぜ 俺が泣くときゃヨー お前も泣いて ともに走ったヨー 丘の道アーアー オーラ オーラ 達者でナ オーラ オーラ 忘れるな あゝ忘れるな 月の河原を 思い思い出を 町のお人はヨー よい人だろが 変わる暮らしがヨー 気にかかるアーアー オーラ オーラ 達者でナ オーラ オーラ また逢おな あゝまた逢おな かわいたてがみ なでてなでてやろ |
星屑の町三橋美智也 | 三橋美智也 | 東条寿三郎 | 安部芳明 | 安部芳明 | 両手を回して 帰ろ 揺れながら 涙の中を たったひとりで やさしかった 夢にはぐれず 瞼(まぶた)を閉じて 帰ろ まだ遠い 赤いともしび 指笛吹いて 帰ろ 揺れながら 星屑(ほしくず)わけて 町を離れて 忘れない 花のかずかず 瞼を閉じて 帰ろ 思い出の 道をひとすじ 両手を回して 帰ろ 揺れながら 涙の中を たったひとりで |
母恋吹雪三橋美智也 | 三橋美智也 | 矢野亮 | 林伊佐緒 | 川上英一 | 酔ってくだまく 父(とと)さの声を 逃げて飛び出しゃ 吹雪(ふぶき)の夜道 つらい気持は わかっちゃいるが 俺らばかりに あゝ なぜあたる こんなときには 母(かか)さが恋し なんで俺らを 残して死んだ 呼んでみたって ちぎれて消える 星のかけらも あゝ 見えぬ空 徳利(とくり)かこった 凍(しば)れる指に 岩手おろしが じんじとしみる たったふたりの 親子であれば 涙ぬぐって あゝ もどる道 |
あゝ新撰組三橋美智也 | 三橋美智也 | 横井弘 | 中野忠晴 | | 加茂の河原(かわら)に 千鳥が騒ぐ またも血の雨 涙雨 武士という名に 生命(いのち)をかけて 新撰組は きょうも行く 恋も情けも 矢弾(やだま)に捨てて 軍(いくさ)重ねる 烏羽伏見 ともに白刃(しらは)を 淋しくかざし 新撰組は 月に泣く 菊のかおりに 葵(あおい)が枯れる 枯れて散る散る 風の中 変わる時勢に 背中を向けて 新撰組よ どこへ行く |
男涙の子守唄〜詩吟「棄児行」入り〜三橋美智也 | 三橋美智也 | 高橋掬太郎 | 細川潤一 | | 木枯し寒く 夜は更(ふ)けて 月はさゆれど 身は悲し 坊やよい子だ ねんねこしゃんせ 声も涙の 貰い乳 斯身(このみ)飢(うゅ)れば斯児(このこ)育(そだ)たず 斯児(このこ)棄(すて)ざれば斯身(このみ)飢(う)ゆ 捨(すつ)るが是(ぜ)か捨(すて)ざるが非(ひ)か 人間(にんげん)の恩愛(おんあい)斯心(このこころ)に迷(まよ)う しあわせ薄く 生まれ来て なにを夢むか いとし子よ 坊やよい子だ ねんねこしゃんせ 泣けば心も 乱るるに 世に亡き妻の 名を呼べば 胸にしみ入る 鐘の音 坊やよい子だ ねんねこしゃんせ 男涙の 子守唄 |
石狩川悲歌三橋美智也 | 三橋美智也 | 高橋掬太郎 | 江口浩司 | | 君と歩いた 石狩の 流れの岸の 幾曲り 思い出ばかり 心につづく あゝ 初恋の 遠い日よ ひとり仰げば ただわびし 木立の丘の 日昏(ひぐ)れ雲 くろかみ清く 瞼(まぶた)に消えぬ あゝ 初恋の 面影よ 君を思えば 身にしみる 石狩川の 夕風よ 二度とは逢(あ)えぬ この道なれば あゝ 初恋の 日が恋し |
サイパン小唄三橋美智也 | 三橋美智也 | 加藤日出男 | 三橋美智也 | | 来たぜサイパン 珊瑚の島よ あふれる涙 なぜさわぐ 海が碧くて 泣けるのか 砂の白さが つらくて泣ける 愛をささやく ハイビスカスは くれない染めて 今日も咲く 春だ秋だと いいません ここは常夏 南の国よ しのぶ昔は マリアナ一の 繁栄ほこる 町並みも 戦火のはてに 華と散る いとしロマンも 荒野の下に 死ぬと覚悟で 夢みた故郷の 鎮守の祭り 母恋し 波よはこべよ この想い はるか故郷 椰子の葉ゆれる どんな気持で 波間に消えた 時代は遠く はなれても なんでむなしく 忘らりょか 風も泣きます バンザイ・クリフ |
鳴門海峡三橋美智也 | 三橋美智也 | 木下龍太郎 | 猪俣公章 | | いのち捨てても 悔いないほどに 惚れていちずに 惚れさせた 憎いあの娘は ああ 鳴門海峡の 潮の花 乱れ乱れて 胸に咲く 叱りつけても 女のこころ 向けてみせたい 男なら 無理と云うなよ ああ 鳴門海峡の かもめ鳥 そうさ俺にも 意地がある 思い切ろうか いつものように 口じゃ云えない うわべだけ みれん渦巻く ああ 鳴門海峡の もどり波 向けた男の 背を濡らす |
さすらい船三橋美智也 | 三橋美智也 | 横井弘 | 船村徹 | | 赤い夕陽が 侘びしじゃないか つらい掟に 追われる汐路 海の男にゃ 海が総ての 生き甲斐なのに 網も乾いて 見るは他国の 波ばかり 旅の果てなさ 望みの遠さ ままにならない 暮しが憎い 耐(た)える女に もっと待てよと どうして言える 男泣きすりゃ 船の汽笛も 風に泣く 便り書いては 波間に捨てる 帰るあてない さすらい船よ ひとりデッキで 故?(くに)を偲んで 眠れぬ夜は せめてまたたけ 家の灯のよな ひとつ星 |
冬の花火三橋美智也 | 三橋美智也 | 横井弘 | 鎌多俊与 | | 夜汽車夜汽車を 乗りつぎながら 逢いに来た町 山あいの町 湯の香せせらぎ 変わりはないが あの娘(こ)ひとりが 見えない道に 冬の祭りの 笛が鳴る 橋のたもとの あの娘(こ)の部屋を せめて訪ねりゃ 陽(ひ)ざしも薄い 待って疲れて 流れて行った つらい気持ちを 知らせるように 窓で揺れてる 蛍篭(ほたるかご) 夢を失(な)くして 湯の町捨てて どこをさすらう 浮草人形 贈るあてない 指輪を抱いて うしろ姿の あの娘(こ)を思や 雪に散る散る 遠花火(とうはなび) |