亡霊の歌を聴く

黒木渚
亡霊の歌を聴く
2025年9月3日に“黒木渚”がニューアルバム『ゴーストノート』をリリースしました。「亡霊」というテーマで作品をつくり続けてきた2025年。亡霊とは、失われた面影のことかもしれないし、あるいは果たされなかった約束や、過去の恋愛、青春の残像のことかもしれません。目には見えないけれど、確かにそこに存在している亡霊たちの“声”を音楽としてすくい上げた今作をご堪能ください。 さて、今日のうたではそんな“黒木渚”による歌詞エッセイをお届け。黒木渚の人生にとって、今年のテーマは“亡霊”。このテーマを紐解き、導き出された“亡霊たち”とはどんなものなのか…。ぜひ今作とあわせて、エッセイを受け取ってください。 亡霊のことばかり考えている。 私の人生は1年ごとにコンセプトが変わる。 一昨年は「ロックンロールと量子力学」去年は「耽美」、そして今年は「亡霊」。 正月に掲げたテーマを1年かけてじっくり紐解き、作品にしてゆく。 それが音楽になることもあれば、小説になることもあるし、映像作品やグッズのデザインになることもある。今年、私が集めた亡霊たちは『ゴーストノート』と題したフルアルバムになった。 亡霊とは 初恋であり、 果たせなかった約束であり、 トラウマであり、 自死を選んだ友人であり、 単なる妄想であり、 羨ましいあの子であり、 見つからない無くし物であり、 飢えであり、 白いブラウスであり、 諦めた夢であり、 アナログシンセの揺らぎであり、 忘れられない痛みであり、 原体験であり、 二度と戻らない青春であり、 底のない穴である。 私が導き出した亡霊たちは音や詞に変換され、歌へと生まれ変わった。 これから全国を回って亡霊の歌を歌う。透明で何の音も持たなかった亡霊の物語を私の肉声で歌い聞かせるのだ。 歌を聴いた人の心のなかをすうっと通り抜けて亡霊たちは成仏するかもしれないし、その人の側に留まって寂しさを癒すかもしれない。もしかすると、その人を亡霊そのものにしてしまうかもしれない。 <黒木渚> ◆ニューアルバム『ゴーストノート』 2025年9月3日発売 <収録曲> 1.アンモナイト 2.ゴーストノート 3.カタルシスかく語りき 4.ONE 5.かたつむりとダリア 6.ブラウスと亡霊 7.Magnolia 8.死んだ文豪に恋をした 9.分裂