体温を測るように愛を測れたら、恋愛はどれほど楽になるだろう。

 2022年6月15日に“黒木渚”が新曲「さかさまの雨」を配信リリースしました。今作は、ファンの数々の報われない恋エピソードを黒木渚自身が聞き、制作。ジャケット写真の唇もファンの中からモデルが募集され、撮影されました。また同日には、4月に発売されたベストアルバムと同タイトルの長編小説『予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる』が刊行!ぜひ、併せてチェックしてみてください。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“黒木渚”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、今作「さかさまの雨」にまつわるお話です。愛は測れないからこそ、バランスを崩し、あがいてもがくけれど…。報われない恋をしているすべてのひとへ、この歌詞とエッセイが届きますように。


体温を測るように愛を測れたら、恋愛はどれほど楽になるだろう。
 
あなたから私への愛情と、私からあなたへの愛情を数値化して、きちんと平等に愛し合う。釣り合わないときにはちょっと調整したりしながら。
 
愛などという不明瞭で気障なものに我々がどれほど振り回されて生きていることか。抽象的だからこそ美しいという意見もあるだろう。けれど、往々にして世は悲しい恋愛に溢れている。
 
もらえる愛と与える愛のバランスが崩れたとき、ひたひたと不穏な影が寄り添ってくるのを感じるだろう。言いようのない不安と、焦り。どこかに挽回のチャンスはないかと不必要な世話を焼いたり、感情的になったり、ヤケクソになって他の人と寝てみたりする。
 
でもあなたは知っている。もう何をしたって取り戻せないということを。あがけばあがくほど恋人は遠ざかってゆく。
 
そんな報われない恋をしている子達の代わりに泣いてあげたいと思った。恋人にすがりついて、大声で泣けない子達。暴発しそうな悲しみを押し殺して、「物分かりのいい女・男」でいなければならない辛さは理解できる。
 
さかさまの雨」の歌詞は、ファンから集めた膨大な恋愛話から私が抽出した最も普遍的であり個人的なアンハッピーエンドだ。
 
人を愛する自由があるように、人を愛さない自由だってある。そのうえで傷ついてでも愛することを選んだ美しい人々のために。

<黒木渚>



◆紹介曲「さかさまの雨
作詞:黒木渚
作曲:黒木渚

<ライブ情報>
黒木渚 ONEMAN LIVE 2022「予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる」~100周年記念ワンマン~
 
7月08日(金)【東京】国際フォーラム ホールC
18:00 open / 19:00 start / ¥6,500
 
7月10日(日)【福岡】DRUM LOGOS
1公演目…15:30 open / 16:00 start / ¥5,500+1 drink order
2公演目…19:00 open / 19:30 start / ¥5,500+1 drink order
 
チケット一般発売中
https://eplus.jp/kurokinagisa2022/