突然、気づいた、私も迷子だって。

林部智史
突然、気づいた、私も迷子だって。
2018年1月10日に“林部智史”が、待望の1stアルバム『Ⅰ』をリリースしました!今作には「あいたい」「晴れた日に、空を見上げて」「だきしめたい」など彼の代表曲も収録。林部智史入門編にしてベスト・アルバムとも言える内容となっているんです。さて、今日のうたコラムではその収録曲から新曲「迷子のお知らせ」をご紹介いたします。みなさんも幼い頃、迷子になり、大きな声で泣き喚いた経験はありませんか…? 人混みの真ん中で 迷子が泣いてるよ 大きな声で名前呼んで 涙も止めないで 突然、気づいた 私も迷子だって だけどあんなに強くまっすぐ 泣くことさえ出来ないまま 生きてる 「迷子のお知らせ」/林部智史 でも、この歌の主人公が突然<私も迷子だ>と気づいたように、迷子になるのは子どもだけではないんですよね。共に生きてゆくはずだった大切な人の手を、うっかり離してしまったり。ある目的地に到達するはずが、いつのまにか自分の今いる場所がわからなくなっていたり。何がしたいのか、どこに行きたいのか、意志さえ見失ってしまったり…。人生という道の途中で“迷子”になってしまうことは多々あるのでしょう。 しかも大人の迷子はやっかいです。素直な子どものように<強くまっすぐ 泣くことさえ出来ないまま>生きてしまえるからこそ、作り笑いしてしまえるからこそ、誰にも自分が迷子であることに気づいてもらえないのではないでしょうか。というより、いい大人であるがゆえに、自分が迷子だなんてバレたくない気持ちが強いのだと思います。見栄やプライドや強がりが<涙>を閉じ込めてしまうのです。 迷子がいます 此処にもうひとり おうちが何処か分かりません 泣きたいのに 泣けなくなったのは 言うこと聞かない 悪い子だったから 「迷子のお知らせ」/林部智史 もし、あの子のように泣いてしまえば 愛しい人は迎えに来てくれますか? 私の名を呼んでくれるその声で 抱きしめてくれますか? 「迷子のお知らせ」/林部智史 そんな誰にも言えない迷子の大人の“声にできない叫び”が綴られているのが、この「迷子のお知らせ」という楽曲です。おそらく、ここでいう<おうち>とは、自分の居場所のことでしょう。自宅にいても迷子。誰かといても迷子。何をしていても迷子。仕事でも恋愛でも『私はここにいていいんだ』と思える確かな場所がない、漠然とした不安が伝わってきます。 また、迷子なのに泣けない理由を<私>は<言うこと聞かない 悪い子だったから>と歌っていますね。これは誰の<言うこと>なのでしょうか。もしかしたら、かつて「夢より現実を見なさい」と言った家族なのかもしれませんし、「そんな恋はやめたほうがいい」と忠告してくれた友達なのかもしれませんし、もっと大切なことを教えてくれた<愛しい人>なのかもしれません。 いずれにせよ<私>はその声を聞き入れなかったからこそ、今さら素直になんてなれずにいるのでしょう。だけど、本当の本当は<あの子のように泣いて>しまいたい。愛しい人に<迎えに来て>ほしい。そして<私の名を呼んでくれるその声で 抱きしめて>ほしい…。痛切な本音が、叶わない<もし>の中に込められておりますね…。 街は夕暮れ 家路急ぐ人 あなたは迷子じゃないですか? 迷子がいます 此処にもうひとり おうちが何処か分かりません どうかその手を 離さないで下さい 大切な人を 大切にして 「迷子のお知らせ」/林部智史 さて、ここまで<私>の心情を吐露してきた歌ですが、ラストではメッセージが<あなた>に届けられます。とくに最後の<どうかその手を 離さないで下さい 大切な人を 大切にして>というフレーズ。これは、同じ後悔をしてほしくないからこそ、私たちに伝えてくれているようでもあり。手を離してしまった<愛しい人>に向けての祈りのようでもあり。もしくは、自分自身が改めて大切なことを痛感しているようにも思えます。 あなたは迷子じゃないですか? ちゃんと見ていたはずの未来地図を失っていませんか? 繋いでいたはずの手を離していませんか? 寂しく切ない新曲「迷子のお知らせ」ですが、同時に、迷子になる前に大切なことに気づかせてくれる温かさも含んでおります。是非、歌詞をじっくり読んでみてください。また、心の耳を澄ますと、意外と近くで<迷子がいます>と、小さな声が聴こえてくるかもしれません。迷子の大人の声が、誰か一人にでも、届きますように…! ◆ニューアルバム『Ⅰ』 2018年1月10日発売 【AL】 AVCD-93801 ¥3,000+税 【AL+DVD】 AVCD-93800/B ¥4,500+税 <収録曲> 1 晴れた日に、空を見上げて 2 この道 3 誓い 4 憂いうた 5 迷子のお知らせ 6 光へ 7 この街 8 オレンジ 9 ほころび 10 運命の人 11 僕はここにいる 12 だきしめたい 13 あいたい