愛してる、愛してる、もっと言えば良かった。

きみがいた座席見るたび目をつむり
何でもいいから、居てって、願う

 こちらは、歌人・伴風花さんの短歌です。ほんの少しの言葉から、様々な情景や感情が伝わってきますね…。空っぽの座席を何度も見つめてしまう癖。「きみがいた」という確かな過去。でも“今はもういない”という現実に目をつむってしまいたい気持ち。そして「何でもいいから、居て」という痛切な願い…。今日のうたコラムでは、そんな短歌に通ずる想いが込められている新曲をご紹介いたします。

今どこにいますか?
この声が聞こえますか?
二人共に過ごした
日々は幸せでしたか?
「アリアケノツキ」/Uru

 この歌は、2017年12月20日に“Uru”がリリースした1stアルバム『モノクローム』に収録されている「アリアケノツキ」という楽曲。綴られているのは、二度と会えなくなってしまった人へのメッセージです。もう二度と会えない。その理由は、人それぞれにあると思いますが、たとえば<あなた>がこの世を去ってしまった…という場合も考えられますよね。

 だからといって、自分のなかからその存在が消え去るわけではありません。むしろ、逆です。たとえ<二人共に過ごした日々>は過去になってしまっても、もう思い出が増えてゆくことはなくても、心の中に<あなた>はいるのです。身体は不在だからこそ一層、その存在を色濃く感じるのです。それゆえに「アリアケノツキ」では、まるで目の前にいる人に伝えるかのように、大切な想いが歌われております。

もしも、いなくなると
わかっていても
きっと 私は
あなたを選ぶでしょう

いつも座っていた場所
服も靴も ここにあるのに
「アリアケノツキ」/Uru

今年も咲いていた
あなたの好きな
赤い花も今日は
泣いていました

覚めない夢の中で
何度も何度も祈っていたのに
「アリアケノツキ」/Uru

 また、冒頭の短歌に綴られていた「きみがいた座席」が、この歌の<私>にとっての<いつも座っていた場所>であり、服や靴であり、<今年も咲いていた あなたの好きな 赤い花>なのでしょう。そして、大切な人の思い出が刻まれているそれらを見るたび、同じように<私>も目をつむり「何でもいいから、居て」と、何度も何度も祈ったのではないでしょうか。

もう二度と会えなくて
ぬくもりも消えそうで
泣いている私を
どこかで見ていますか?

愛してる 愛してる
もっと言えば良かった
悔しくて 苦しいのは
あなたも 同じだから…
「アリアケノツキ」/Uru

 尚、タイトルの【有明の月(アリアケノツキ)】とは、夜が明けてもなお、空に残っている月のこと。そんな月のように<あなた>の持っていた物も、<あなた>がいた場所も、<あなた>の存在も、<私>の想いも、ポッカリと“今ココ”に残っているイメージが伝わってきますね…。さらに、空の向こう側で<泣いている私を>見ているであろう<あなた>の姿もまた【有明の月】に重なります。

今どこにいますか?
この声が聞こえますか?
二人共に過ごした
日々は幸せでしたか?

今どこにいますか?
この声が聞こえますか?
あなたと共に過ごした
日々は幸せでした
「アリアケノツキ」/Uru

 もちろん<愛してる 愛してる もっと言えば良かった>という後悔はなかなか消えることはないでしょう。それでも、歌の最後の最後には<あなたと共に過ごした 日々は幸せでした>と、きっと最も<私>が伝えたかった言葉、きっと最も<あなた>が聞きたかった言葉を、空へ捧げているのです。その想いは【有明の月】のようになって<私>を見ている<あなた>に届いているはず…。

 愛してる相手が、ちゃんとそばにいる方。隣にいるのが当たり前だと感じている方。どうか、もっともっと“あなたと共に過ごしている今は幸せです”という想いをたくさん言葉にできますように。大切なことは“今”伝えないと…!そんな気持ちにさせてくれるのが、Uruの「アリアケノツキ」なんです。是非、かけがえのない<あなた>を思い浮かべながら、聴いてみてください。

◆Uru 1st ALBUM「モノクローム」
2017年12月20日Release
初回生産限定A(映像盤) AICL-3454~5 ¥4,630(税別)
初回生産限定B(カバー盤) AICL-3456~7 ¥3,704(税別)
通常盤 AICL-3458 ¥2,778(税別)