Ten

BRADIO
Ten
2025年7月16日に“BRADIO”がメジャー5thアルバム『FUNK FIRE』をリリースしました。今作には全10曲が収録。メジャー通算5枚目のオリジナル・アルバムとなり、初回限定盤と通常盤の2形態で発売されます。初回限定盤には、2025年1月22日にLINE CUBE SHIBUYAにて行われた"BRADIO 15th Anniversary 「FUNKY SET」"のライヴ映像が収録! さて、今日のうたではそんな“BRADIO”の真行寺貴秋による歌詞エッセイを3週連続でお届け。最終回は収録曲「 Ten 」にまつわるお話です。自身の基本キャラとは少し違う“ファイト人格”で書き上げたというこの歌。その軌跡と歌詞に込めた様々なこだわりを明かしてくださいました。ぜひ歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください。 タイトル「Ten」にはいろんな思いを持たせた。数字の10。てっぺん、天井という意味で「天」、目標の到達点という感じ。その流れで「点」という意味も、点の積み重ねで線を描いていく人生というニュアンス。 「1に努力 2に努力 3 4がなくて5に努力」なんて言葉もあったりするけれど、自分の中で「Ten」は、葛藤を1から10までの数字に置き換えたメーターみたいな感じ。10は目標の到達点。1から9までは例えば、迷い、他者や情報の影響、思い込み、環境などからの葛藤。1から9までの過程、状況がある。でも最終的に(10を)決めるのは、その最後の1歩、10を踏み出すのは自分自身だよ、という思いを曲に込めた。 曲中に1から9までのカウントアップがあり、ここは後に話すイメージからインスピレーションを受けたのと、聴いてくれた方々に対する、「1から9まではBRADIOが歌うから最後の10はキミ自身でキミの声で歌ってくれ」という思いから制作した。 こういったタイプの曲は“ファイト系”の歌詞と呼んでいる。基本的に自分の歌詞は、ふざけててちょっぴりエッチで、でもたまにはいいこと言うヤツで、詩的よりも口語的で、みたいな、自分の中の基本キャラ的な人格で書くことが多い。けれど、「Ten」みたいな“ファイト系”の歌詞では、自分の中の“ファイト人格”が目覚める。 自分が思うBRADIOの“ファイト系”の歌詞として、過去にも「ケツイ」や「夢見るEnergy」なんかがあった。そういった“ファイト系”では決まって、「誰かと比べることの虚しさ」だったり、「最大の敵は自分」という己との闘い・葛藤だったりを書いてきた。 「Ten」は、最初にサウンドがあり、そこにメロと歌詞をのせるスタイルでの制作だったが、デモのインスト段階ですでに仕上がっているハイレベルなサウンド世界があった。いい意味で、歌はいらないんじゃないか、と思うぐらいのクオリティ。サウンドがとても骨太で強い印象だったので、最初に聴いた時から“ファイト系”を書きたいなと思った。 まず、メロや歌詞を入れる前にいちリスナーとして、インストとして、この曲のデモを聴き込んだ。筋の通ったサウンドを聴きながら、程なくしてこの曲が自分に、ある歌詞世界を見せてくれるようになった。 主人公は、10代後半から20代前半のダンサー志望の女性。その葛藤を書いた。1番はオーディション会場。2番はオーディションに受かってバックダンサーデビュー。最終的な歌詞は、更に自分の想いや言葉と交差させながら、行間に余白が生まれるように、あえてそのストーリーを薄めながら普遍的になるよう作っていくことに努めた。 夢ひとつ、叶えてまたひとつ。Tenをとらえてもまた1からで次のTenが現れる、みたいことも表現したかった。それは自分が、結果より過程が好きだから。制作ひとつとっても。終わりのない連続的な夢。それが辛くもなる時だってあるだろうけど、結局そういう夢を追いかけていく人生ってのが、自分の生きる理想でもある。 曲中のカウントアップは、ダンスレッスンなどで先生が手を叩きながらカウントするというシーンからのインスピレーションもあった。 当初、歌詞を書く前から、心の中の葛藤、“ファイト系”を書きたいというイメージもあったし、インストデモを聴きながら、メロ入れをしながら、なんとなく女性の声がほしいなと思った瞬間があった。曲に合うパワフルな声が欲しかったし、“ファイト系”の歌詞はパワフルでなきゃという単純な思考もあって、人選はまったく悩まなかった。 デュエット相手は中ノ森文子さん。自分の歌の先生でもある。唯一、人選で悩んだとすれば師弟関係でデュエットとは緊張するな、ぐらいか。Bメロのカッコ内は中ノ森さん(心の声)で他ラインは自分という掛け合いもミュージカルっぽくて好きなポイントだ。全体を通して心の葛藤と隣り合わせというものが表現できた。 こういう“ファイト系”の歌詞と勝手に呼んでいるものを書くと、身近なファンが声をかけてくれる。ギターの聡一だ。「Ten」についても、普段はふざけている自分のこういったタイプの歌詞が好きだと言ってくれた。もっとふざけたいんだが。 そして、この曲の歌詞はもうひとつ、こだわった。これは“余計なこだわり”であり最悪誰にも知られずに終わるだろう。このこだわりをやったがために時間はかかったが、ある程度の制約の中での自由が、よりこの歌詞をエンタメへ押し上げたと自負している。 ユーモアとは自分の作詞に対する向き合い方のひとつでもあるし、歌詞カードを見ながらも楽しんでほしいという思いから、ただ聴いてるだけではわからない、歌詞を全体的に見てようやく視覚的に仕掛けがわかるような遊びを施した。よーく見てみると、とても不自然なこの歌詞の仕掛けを是非、見つけてほしい。 最後に、3曲分の歌詞エッセイをお願いします、というお話をいただいたにも関わらず、もう1曲分書かせてくれとわがままを申し出て、貴重な枠をひとつ私に作ってくださった歌ネットの担当者様には御礼申し上げます。歌詞は語るもんじゃないとも言いますが、歌詞制作での数々の思いが彷徨う亡霊にならずに済みました。ありがとうございました。 <BRADIO・真行寺貴秋> ◆紹介曲「 Ten 」 作詞:真行寺貴秋 作曲:BRADIO ◆メジャー5thアルバム『FUNK FIRE』 2025年7月16日発売 <収録曲> 1.未来サイダー 2.生存フラグのサタデーナイト 3.Ten 4.Say Cheese! 5.あったかい涙 6.On Fire 7.大人たちのPOPS 8.GABA 9.My Fantasy 10.バッカナーレ