毎朝二人の目を覚ました隣の工事はもう終わったかい。

Shout it Out
毎朝二人の目を覚ました隣の工事はもう終わったかい。
髪を切ってもう終わりにしよう 嫌いになれないままでいいの 私は私を生きていく 新しい日々を歩いていくの 髪を切って 髪を切って 「髪を切って」/Shout it Out 2018年7月18日に“Shout it Out”が最新ミニアルバム『また今夜も眠れない僕らは』をリリースしました。今年8月をもって解散する彼らのラスト作。尚、ボーカルの山内彰馬は「僕のわがままで散々振り回してきたShout it Outというバンドを、僕のわがままで終わらせることにしました」とコメント。メンバー・細川千弘によるとこれからはそれぞれの音楽人生へ進む、とのことです。さて、冒頭でご紹介した今作の収録曲は、そんな“Shout it Out”の終わりと始まりにもリンクするような女性目線のラブソング。 恋は終わったのに<伸びすぎた前髪で気づけないフリ>をして、自分の心に終止符を打つことから逃げていた主人公の<私>…。でも、人は悲しみ尽くすと少しずつ前へ進もうという意志が生まれるもの。彼女もまた、たとえ相手を<嫌いになれないまま>でも、とにかく気持ちの切り替えの証として<髪を切って>自分自身を、新しい日々を、<歩いていくの>と決意しているのです。女性の凛とした強さが表れている1曲でもありますね。 ねえ今、誰のこと考えてた? 浮かべた君は天井に溶けていった 毎朝二人の目を覚ました隣の工事は もう終わったかい すっかり街は眠りから覚めていた 人々はそれぞれの生活へ向かった まるで時間が止まったように ただ僕だけ残されてしまったみたい 「さよならBABY BLUE」/Shout it Out 一方「髪を切って」の次に収録されている新曲「さよならBABY BLUE」も同じく失恋ソング。ただし、先ほど<髪を切って>前向きになろうとしていた<私>とは反対に、失くした恋の残像に囚われて動けずにいるのが<僕>です。この歌は、不在の<君>に対する<ねえ今、誰のこと考えてた?>というひと言で幕を開けます。それは同時に、自分自身が今<君>のことを考えていたということ。 いえ、今だけに限らず、彼はきっと別れてからずっと、朝を迎えるたび<毎朝二人の目を覚ました隣の工事>の音や「今日もうるさいね」って苦笑いし合った“あの生活”を思い出しているのでしょう。そして<隣の工事はもう終わったかい>と“あの生活”の続きさえ想像してしまうのでしょう。自分の生活だけはまるで<時間が止まったよう>になったまま…。君はいない。工事の音もない。そんな部屋のなかで独り、現実に目を覚ますことが出来ずにいるのだと思います。 二人を乗せたシングルベッドは空も飛べなくて 僕らはどこへも行けなかった どこへも行けないはずだった 「さよならBABY BLUE」/Shout it Out ねえ今、思い出すんだ 僕が読まなくなった本をめくる君を 目の前に用意された結末を知りながら ずっと気付かぬフリして生きていた 二人で暮らした部屋はたった六畳の天国で 僕らの日々は永遠だった そう永遠のはずだったんだ 「さよならBABY BLUE」/Shout it Out さらに、歌詞の中では“あの生活”の回想が描かれてゆきます。<二人を乗せたシングルベッド>や<二人で暮らした>たった六畳の部屋。お金も余裕もなく、安定した将来なんて見えないけれど、ただただ愛だけに満たされていた時間が伝わってきますね。しかしその天国のような生活に見切りをつけたのは<僕>なのかもしれません。つまり<僕が読まなくなった本>とは“僕が想像しなくなった未来”なのではないでしょうか。 <僕らはどこへも行けなかった どこへも行けないはずだった>と、<目の前に用意された結末>=“別れ”は変えられない運命だと、思い込んでいた。だけど<君>を失うのは怖いから<ずっと気付かぬフリして>何も変えようとはしなかった。その結果、本当なら<永遠のはずだった>日々は<僕>が信じていた<用意された結末>通りに、終わりを迎えてしまったような気がします…。 さよならBABY BLUE 君の瞳の奥 見えたあの輝きが今でも目の前にあるようで さよならBABY BLUE 今年も夏が来る 陽が沈む海岸線は君の髪を赤く染めていた BABY BLUE 僕は BABY BLUE 今日も BABY BLUE ずっと 君のことを考えていた 「さよならBABY BLUE」/Shout it Out そして、サビで放たれるのは<BABY BLUE>=“青く輝いていた愛おしい時代”への別れの言葉。でも<さよなら>と言いながらも、最後の最後に<BABY BLUE>というフレーズが繰り返され、なおかつ“僕は今日もずっと君のことを考えていた”という本音が零れていることで、心はまだ全然<さよなら>なんてできていないことは明らかです。それでも、いつかは彼も「髪を切って」の<私>のように、とことん悲しみ尽くして、前に進もうと思える日がやってくるはず…。 最近、失恋してしまったというあなたも。Shout it Outというバンドとの<さよなら>が淋しくて仕方ないというあなたも。是非『また今夜も眠れない僕らは』に収録されている1曲1曲の歌詞をじっくりと聴いてみてください。彼らからの最後のメッセージが多くの方の心に届きますように。 ◆ミニアルバム『また今夜も眠れない僕らは』 2018年7月18日発売 PCCA-04681 ¥2,000(税込)