歩いた分だけ出会う、歩いた分だけ見つかる。

槇原敬之
歩いた分だけ出会う、歩いた分だけ見つかる。
何もない駅に降りた。 何もなかった。 何もないところには 行けない大人になっていた。 何も生まれそうにない人とは やっていけなくなった。 (映画『正しく忘れる』より) 皆さんは、何の用事もなく、何もない場所に行ってみたことはありますか? 今はこんなに“SNS”が普及している時代ですので、わざわざ足を運ばなくとも、間接的にいろんな景色を見ることが出来ます。実際に会ったことが無い人とも文字のやりとりができ“友だち”にもなれます。でも、だからこそ冒頭でご紹介したセリフが刺さって痛いのです。私たちは、自ら歩き、出会うことをしなくなったことで<何もないところにはいけない><何も生まれそうにない人とはやっていけない>大人になり、本物の“景色”を失っているのかもしれません…。 そこで今日のうたコラムでは、槇原敬之が8月24日にリリースしたニューシングル『理由』に収録されている「一歩一会」という楽曲をご紹介いたします。この歌は、テレビ朝日で放送中の散歩番組『じゅん散歩』のテーマソングです。タイトルや歌詞の中に登場する“一歩一会”という言葉は、番組がテーマに掲げているキーワード。ここには一体どんな想いが込められているのでしょうか。 いつもただ車に乗って 通り過ぎていただけでは 気付けなかった景色や 出会いがあると気付いた 時が止まったような路地裏 コーヒーの良い香りのカフェ しかもこんな可愛い子が 注文をとってくれる 「一歩一会」/槇原敬之 マッキーは、この楽曲について「今回は、“見ようと思わなければ、物事は見えてこない”をテーマに歌詞を書いたのですが、僕は最近のSNSなどに代表される間接的な人とのつながりに、皆しんどくなってきているのではないか、と感じていて…。本当に大事なのは実際に自分が歩いて、誰かと出会って、そこでどんな言葉を交わすかということ。そんな時代に“一歩一会”は、とてもよい言葉だなと思いました」とコメント。この歌詞に出てくる路地裏の<コーヒーの良い香りのカフェ>もまた、自ら歩いて初めて気づけた場所なんですね。 見ようと思わなければ 見ていないのと同じ どんな人や景色も見えてない 誰かの心もきっとそうだ 顔も見ずに返事したり 上の空で相づち打ったり ため息の理由も尋ねない 寂しい思いにさせたね 苦いコーヒー飲んで思う 「今度は君も誘ってみよう」 歩いた分だけ出会う 歩いた分だけ見つかる これはただの散歩じゃない 謂わば一歩一会の小さな旅だ 物足りないと思ってた 何かを二人で探そう 宝の地図はない方がいい 一歩一会の散歩にいこう 「一歩一会」/槇原敬之 そして、そのはじめての場所で主人公は苦いコーヒーを飲みながら思うのです。「今度は君も誘ってみよう」と。自ら体験した新たな“気づき”は、今ある“大切な人との関係”をさらに良いものへと更新していくことができるのでしょう。また一見、何もないと思う場所にも<見よう>と思えば見つかるものがあるのかもしれません。何も生まれそうにない人とも、思わぬところで繋がっていくのかもしれません。ゆっくり散歩をして本物の景色に出会うことは、じっくり人の心と向き合い想いを知ることにも似ている気がしますね。 夏の暑さも徐々に和らいでゆき、だんだん過ごしやすくなっております。気持ちの良い天気の日には是非、いつも何気なく通り過ぎてしまうような場所を、「一歩一会」を聴きながらゆっくりと歩いてみてください! ◆紹介曲「 一歩一会 」 作詞:槇原敬之 作曲:槇原敬之 ◆ニューシングル『理由』 2016年8月24日発売 BUP-50006 ¥1.200(税別) <収録曲> 1.理由 2.一歩一会 3.理由(Backing Track) 4.一歩一会(Backing Track)