言葉に乗せきれない想いを胸の内に留めるしかないあなたへ。

そういうことだけじゃないの。
口に出すとそういうことだけになるけど
そういうことだけじゃないの。
(ドラマ『Woman』より)

 2013年に放送された満島ひかり主演ドラマ『Woman』のセリフです。シンプルで抽象的な言葉ですが、なんだかわかるような気がしませんか…? 自分が抱えている悩みや、体験した出来事を誰かにわかってほしくて伝えてみる。でも口にしてしまうとなにか本当に言いたいことと違うような気がする。<そういうことだけじゃない>、言葉には乗せきれないことがある。そうして心と言葉がズレていってしまう感覚が嫌で、結局すべてを自分の胸の内だけに留めてしまうときってありますよね。
 
 今日のうたコラムでは、そのような経験が多い方に是非、聴いていただきたい新曲をご紹介いたします。“BUMP OF CHICKEN”が8月17日に配信リリースした新曲「アリア」です。尚、この曲は現在放送中のTBS系日曜ドラマ『仰げば尊し』の主題歌。ちなみに“アリア”とは“叙情的、旋律的な特徴の強い独唱曲”を意味する言葉だそう。まさにそのタイトル通り、「アリア」は、感情が次々と溢れ出てくるようなサウンド、メロディー、歌声、歌詞に強く心打たれる名曲です…。

あの日の些細なため息は 
ざわめきに飲まれ 迷子になったよ
ありふれた類だったから 
どこに転がったって その景色の日常

言葉は上手に使ったら 
気持ちの側まで 近付けるけれど
同じものにはなれない 
抱えているうちに 迷子になったよ

僕らはお揃いの服を着た 別々の呼吸 違う生き物

見つけたら 鏡のように 見つけてくれた事
触ったら 応えるように 触ってくれた事

何も言えなかった 何を言えなかった
「アリア」/BUMP OF CHICKEN

 ありふれた類に思えた“あの日の些細なため息”の正体とは、冒頭でご紹介した<口に出すとそういうことだけになるけど、そういうことだけじゃない>何かではないでしょうか。そして、その何かは結局“ため息”にすることしかできず、迷子になってしまったのです。だからこそ「アリア」では、言葉を使わない方法で誰かと通じ合える感覚を描いているような気がします。それが<見つけたら 鏡のように 見つけてくれた事>や<触ったら 応えるように 触ってくれた事>であるのです。もしかしたら彼は<何も言えなかった>のではなく、ひとつの言葉も必要なかったのかもしれません。

笑うから 鏡のように 涙がこぼれたよ
一度でも 心の奥が 繋がった気がしたよ
冷えた手が 離れたあとも まだずっと熱い事
見つけたら 鏡のように 見つけてくれた事

あの日 君がいた あの日 君といた
何も言えなかった 忘れたくなかった
「アリア」/BUMP OF CHICKEN

 全歌詞を読んでみると、どうやら僕と君には“さよなら”が待ち受けていたようです。<笑うから 鏡のように 涙がこぼれた 一度でも 心の奥が 繋がった気がしたよ>…きっとこの“涙”には、通じ合えた君への感謝、愛しさ、切なさ、淋しさ、いろんな感情が込められているのでしょう。しかし、たとえどんな理由で別れてしまったとしても、誰かと心の奥が繋がったという感覚は、これから“僕”の生きる力になっていくのだと思います。きっとそんな存在の人が、この曲を聴くあなたのそばにもいてくれるハズ。そして、自分自身もその人にとって同じような存在でありたいですね…!