五十嵐ハル
好きじゃない
2025年11月19日に“五十嵐ハル”が新曲「白い結晶」をリリースしました。満員御礼で迎えた11月13日・渋谷WWWでの1st LIVE「NO TITLE」にて初披露された楽曲です。MVは、mito氏がディレクションを担当。シンプルな構成のなか、冬の冷たく張り詰めた空気が息づいており、その空気に乗せて紡がれる歌詞のひとつひとつから、季節の情景と切なさがダイレクトに伝わってくる作品となっております。
さて、今日のうたでは“五十嵐ハル”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、新曲「 結晶 」にまつわるお話です。あまり好きではないけれど、魅力的な季節である、冬。大きなため息をつきながら制作した歌に描いたものは…。ぜひ、歌詞とあわせて、エッセイを受け取ってください。
冬はあまり好きじゃない。
なぜか冬の匂いがするだけで少し胸が痛くなる。
あとシンプルに顔とか手が痛い(福島県の冬は特に)。
サンタクロースに夢を託していた頃はもっと好きだった気がするが、いつからか悲しいイメージが擦りついてしまった。
人の温かさを一番感じやすい季節なのに、しばらく心は凍えたままな気がしている。
とはいえ素敵な季節であることは間違いない。
下ばかり見るこの時代でも雪が降れば空を見上げたくなるし、誰かを思い出すきっかけになるのも確かだ。
寒い中にも良さを感じつつ、なんとなく切なくなってなんとなく感傷的に毎年なっている。
なんとも不思議な季節だ。
もこもこのダウンを着たあの子を思いながら、感情を曲に落とした。
思い出は美化されるというが、どう見ても美しい思い出しか見つからなかった。
多分いつまで経っても変わらないであろうこの記憶を形にしてみたかった。
作ってくうちにどんどん妄想が膨らんで、
一人でどデカいため息をつきながら制作を進めた印象がある。
曲を作るだけでため息がこぼれてしまうのだから、
やはり冬は好きになれそうにない。
もし好きになれる日が来るとしたら、
サンタが叶いそうにない願いを叶えてくれた時くらいだ。
<五十嵐ハル> ◆紹介曲「 結晶 」 作詞:五十嵐ハル 作曲:五十嵐ハル