さとうもか
ボーナス
2026年9月30日に“さとうもか”がニューアルバム『shilly shally』をリリースしました。今作には、リード曲「ダンスホール」、切ない恋を題材にしたミドルナンバー「恋の顔」、珠玉のバラード「今を抱きしめて」、ドラマ『夫よ、死んでくれないか』エンディングテーマ「愛は罠」他、全14曲が収録されております。
今日のうたではそんな“さとうもか”による歌詞エッセイを3週連続でお届けします。第2弾は収録曲「 中華ランチ 」にまつわるお話です。大人になるにつれて変わっていく、味覚や価値観、そして他者との関係。積み重ねた時間があるからこそ、見えてきたものとは…。
学生の頃、なんで大人はあんなにも高いお寿司を食べたがるんだろうと思っていた。
100円のお寿司となにが違うのかよく分からなかった。回転寿司なんてあんなに楽しくておいしくて安くて、最高でしかないじゃん!と思っていた。
焼肉にいっても、子供な私は出来るだけたくさん食べたかった。でも両親は「いいお肉を少しだけでいいんだよなぁ」と言っていた。私はその気持ちが分からなすぎて頭に大量のハテナが浮かんだ。
そこから随分時が経ったある日、旅行先で食べた新鮮なお寿司が本当に美味しくて衝撃を受けた。これは少し高くても食べたい。なぜならものすごく美味しいから!
なんとなく気付いてはいけない事に気付いてしまったような気がした。
私は大人になってしまったのか?
前置きがほんのり炭火海鮮風味になってしまったけれど、「中華ランチ」もそんな変わりゆく心境を描いた楽曲。
例えば、同じ人と10年一緒に過ごしたとして、お互いの目の前にいる最新の君と私は、10年前と同じ人間だと言えるのかな。
きっと人は日々いろんなものと触れ合って、感じて、思考して、価値観も変わって、同じではいられない生き物だと思う。
ふたりで適当に入った中華屋さんで食べた謎の唐揚げ定食が、当時は幸せの頂点だったりしたんだけど、今はもっと美味しいお店を知っちゃった。
メガネを雑に扱うところがなんか面白くて好きだったけど、今は物を大切にするほうが素敵だと思う。
流れに抗ってみたり、自分らしく生きるって、本当に素晴らしいことなのか? はたまたルールに沿って真面目に生きることだけが正しさ?
本当はそんなの全部知らなくてよかった。ただただあの午後2時のランチ終了ギリギリの中華屋で笑っているだけでよかった。
最新の価値観が全てという事にならないのは、きっと積み上げた時間がくれたボーナスみたいなもので、たぶんそのボーナスで人間関係はやりくりされているような気がする。
全部使い切る前に、どうにかしなきゃあいけなかったんだな。
大人になるって、面白くてちょっと悲しい。ボーナスなんていらないから、絶対的な変わらないなにかが欲しいのかも、と思ってしまった2026年秋であった。そんなのないんだけれど。
<さとうもか>
◆紹介曲「 中華ランチ 」 作詞:さとうもか 作曲:さとうもか ◆ニューアルバム『shilly shally』 2026年9月30日発売 <収録曲>
1 人生は退屈だ!
2 サマーソングを聴きながら
3 恋の顔
4 喫茶ドエル
5 ダンスホール
6 スワンボート
7 中華ランチ
8 For myself
9 Fortune teller
10 今を抱きしめて
11 愛は罠
12 ゆうとむ
13 shilly shally
14 タイムマシン