誰がどうみても大人ではなかった頃の私はダンスに夢中だった。

安田レイ
誰がどうみても大人ではなかった頃の私はダンスに夢中だった。
2022年8月24日に“安田レイ”がニューシングル「風の中」をリリースしました。タイトル曲は、TVアニメ『ラブオールプレー』の第2クールエンディングテーマに起用。今作の青空をバックに撮影されたアートワークは、疾走感溢れる楽曲のイメージやTVアニメ『ラブオールプレー』の新キービジュアルともリンクする、夏を感じる爽やかなポートレートとなっております。 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“安田レイ”による歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回は第1弾。綴っていただいたのは、今作のタイトル曲「 風の中 」のお話です。自身の学生時代を思い出しながら書いたという歌詞。中学生の頃の安田レイは、どんな日常を過ごし、何を考えていたのか、その軌跡を明かしてくださいました。ぜひ、歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください。 新曲「風の中」は自分の学生時代を思い出しながら歌詞を書いてみた。 意外にも色んなことを鮮明に覚えてて、なんだか1人エモーショナルな気持ちになってしまった。 考えてみたら、普段の生活の中で、学生時代のことをしっかり思い出す瞬間というのはほとんどないような気がする。 そして、あったとしてもそれは年々減っている。 ちょっぴり寂しい。 今、目の前にある自分の仕事だったり、生活のことだったりで、大人は頭がいっぱいだから、仕方がないことなのかもしれない。 あ、そうか。 私もしっかり大人だったんだ。 なぜかたまに忘れてしまう。 でもよく、 “大人のひとにこう言われた” みたいな感じで私は“大人”というワードを使ってしまう。 私も大人なのに。 そろそろこの皮肉まじりな表現をやめなくてはと思うが、きっとこれを使わなくなったタイミングが、本物の大人になれる時なのかもしれない。 まだまだ先は長そうだ。 中学生の、誰がどうみても大人ではなかった頃の私はダンスに夢中だった。 歌うことがもちろん今と変わらず一番好きだったけど、歌って踊れるアーティストにとにかく強い憧れを抱いていた。 その影響もあって、中学はダンス部に入った。 ダンス部って聞くと、なんだかかっこいい大会に出場している部活を思い浮かべる方が多いかもしれないが、人数も少なかったし、割と地味な存在だった気がする。 年に数回みんなで作ったフリを学校で披露するステージはあったけど、大会に出るとかダンスバトルでトロフィーをとったとか、そんなイケイケな部活ではなかった。 そして、ジャズダンスが好きな子もいれば、ヒップホップが好きな子もいたし、ただただ体操をしたい子もいた。 具が多すぎて味が決まらない、私がたまに作る名前のない料理みたいだった。 みんなのやりたいことなんていつもバラバラ。 使いたい曲、フリのジャンル、衣装やメイク。 我が道を行く子達が集まったこの部活は、結局フリースタイルが1番みんなイキイキしていた。 そんなまとまりのない部活だったけど、学校の授業だけでは教えてくれない大事なことをたくさん教えてくれた。 どうやったら先輩に愛される後輩になれるか、どうやったら後輩に嫌われずに指示ができるか、どうやったら先生を説得できるか。 まだまだ書ききれない程あったけど、人生で役立つ事を私は部活を通してたくさん知れた気がする。 私が特に印象に残っているのは夏休み中の部活動。 与えられた練習場は、柔道部が使っていない時にのみ使える柔道場。 鏡張りになっていたおかげで振付の確認はしやすかったけど、クーラーはなく、毎日絞れるような汗をかいた。 そして、その学校は、ほぼ山の中みたいな自然に溢れた場所にあったので、蝉の大合唱との戦いだった。 「ビヨンセ」や、「グエン・ステファニー」のボリュームをいくら上げても、セミに負けてしまうのだ。 “ミンミンミンミンミー”の奥に微かに聞こえる歌姫たちの声と、曖昧なビートを頼りに練習した。 ヘトヘトになった練習の後はいつもみんなでご褒美を買った。 お店なんて全くない地域だったから、パン屋か焼き鳥屋の二択だった。 私は焼き鳥屋の豚バラ串が一番のご褒美だった。 とにかくしょっぱくて、汗で流れていった塩分を補給してるあの感じがたまらなく好きだった。 最後に“また明日も頑張ろう”と仲間と約束して、それぞれの家へ帰って行った。 そんな私の青春を詰め込んだのが新曲の「風の中」です。 久しぶりに、中学生の自分に会えたような制作期間でした。 たまにはこうやって思い出してみるのも悪くないですよ。 みんなも自分の中に眠る昔の自分に会ってみては? 忘れてた大事なことを思い出せるかも知れないですね。 <安田レイ> ◆紹介曲「 風の中 」 作詞:安田レイ 作曲:THE CHARM PARK ◆ニューシングル「風の中」 2022年8月24日発売 <収録曲> 1. 「風の中」 2. 「each day each night」 3. 「風の中」 -Instrumental- 4. 「 each day each night 」 -Instrumental-