Womanとして

 2022年7月27日に“坂口有望”がNew EP『XL』をリリースしました。今作には、浮遊感あるオルタナティブなサウンドに失恋の想いを乗せた表題曲「XL」に加えて、ボカロP・すりぃが初めて共作詞で参加した「ティーンエイジダイバー」、コロナ禍の心境を歌った「#ボクナツ」、マカロニえんぴつの人気曲「恋人ごっこ」カバー、自身の代表曲「好-じょし-」(2022 ver.)や、表題曲「XL」のAcoustic ver.を収録し、シンガーソングライター、表現者として新しい魅力を打ち出す作品が完成。
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“坂口有望”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回が最終回。第1弾「WomanとXL」第2弾「Womanと天才」に続き、最後に綴っていただいたのは「Womanとして」のお話。なぜ、歌を歌ってきたのか、そして、なぜ、歌を歌っていくのか。その思いを明かしてくださいました。今作と併せて、受け取ってください。



「WomanとXL」「Womanと天才」に続いて、今回はエッセイ最終回。ということで、改めて私にとっての音楽について綴っていきたい。珍しく素直に。
 
小さい頃から、孤独という感覚がある。大好きな友達・家族はいるし、誰とでも通じ合えるのに、誰とも繋がっていない感じ。歌詞っぽくなっちゃったけど本当に。私はどこまでも独り。でもそのネガティブのおかげで、デビュー5周年を迎えました。
 
高校2年生の夏、坂口有望はメジャーデビューした。そしてその翌年、大学受験で音楽活動を自粛することになった。「音楽の専門学校?」とか「どうして大学行くの?」とよく聞かれるけど、進学したいと、当時何となく思っていたというのが正直なところだ。今になってわかるのは、どんな学問であれ、もっと世界を知りたかったということ。
 
文学部を選んだきっかけは、フィッツジェラルドの『グレイトギャツビー』だった。物語の中で、デイジー(めちゃめちゃモテ女)がこう語る。「綺麗で、少し馬鹿な女の子がこの世界では一番素晴らしいとされてるの」と。この台詞は、紛れもなく、私が興味津々だったリアルな世の中を映していた。
 
自分と世の中が切り離されていると思っていたからこそ、気になるし、あわよくば入りたい。そんなコンプレックスが創作活動の原動力だ。いわば、私の曲たちは「みんなもこう思います?よね?」の塊である。ネガティブ、有難う。もう二度と言わないよ。
 
学業と共にあった5年間。私の部屋には机が二つあって、通称「勉強机」と「音楽机」。最初は名前の通り使い分けていたものの、今や「インプット机」「アウトプット机」と化している。
 
世界を知って、世界と繋がる。大学を卒業したって、それの繰り返しだと思う。よく、曲作りが好きで、誰にも聞かせるつもりのない曲を作り溜めちゃう天才がいるけど、私はそっち側ではない。音楽家としての前に、一人の人間として、Womanとして、ひとりぼっちにならないために歌をうたう。これまでも、これからも。
 
さて、5周年記念日は、YouTube生配信という形でライブを届けた。大阪のホームのライブハウス、三国ヶ丘FUZZで奏でる音は、何だかギラギラしている気がした。幸せだったなぁ。画面越しに見てくれた一人一人に、今度はちゃんと目を見て伝えたい。私は、あなたと繋がりたいと思って、音楽を発信しています。どうか、受け取ってくれたらいいな。まずは、全国ツアーで待ってるよ!

<坂口有望>


◆New EP『XL』
2022年7月27日発売
初回生産限定盤 [CD+Blu-ray]  ESCL-5693~4 ¥5,000(税込)
通常盤 [CD]  ESCL-5695 ¥2,000(税込)
 
<収録曲>
 
01.XL
02.ティーンエイジダイバー
03.#ボクナツ
04.恋人ごっこ
05.好-じょし-(2022 ver.)
06.XL(Acoustic ver.)