もうこんな手合いと関わるの、よしましょう。

 2025年11月26日に“長谷川カオナシ”が初のソロアルバム『お面の向こうは伽藍堂』をリリースしました。アルバムには、先日自身の誕生日でもある9月23日(火・祝)に先行配信された「金木犀」を含む全12曲が収録され、長谷川が全曲の作詞作曲に挑戦しております。
 
 さて、今日のうたではそんな“長谷川カオナシ”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、収録曲「恋する千羽鶴」にまつわるお話です。私達ってまるで千羽鶴みたい。長谷川がそう綴る理由は…。今回は音声版もございます。本人の朗読でも、エッセイをお楽しみください。


長谷川カオナシの朗読を聞く


冷笑屋さんは一人勝ちしがち、という風潮。
これ錯覚です。
「冷笑屋さん」の間合いからだと小石をいくら投げたところで誰にも届かないんですよね。
 
憎しみというのは実に燃焼効率が良いものです。
カッとなった分だけすぐやる気に繋がりますからね。
ただ、副産物として有毒な成分が発生するそうなので注意が必要です。
 
さて憎しみを禁じ手として封印するならどうしましょうか。どうしますか?
嘘。嘘吐けます? けっこう技術要りますよ。
結局のところ、これっていくらかは生命力比べのゲームなんです。
着飾ることも有効ですが、それが過ぎると却って不安そうに見えちゃうんですよね。
服装というよりは武装のような。
キンキンよく吠えるのに、いざ近寄るとシュンと縮こまる小型犬のような。
 
ウミガメってたくさん卵産むじゃありませんか。
一度に百個も産むそうですよ。
でもその中で大人になれるのって、ほんのひと握りなんですって。
先祖代々伝わる人海戦術。
だからですかね。
ウミガメが産卵の時に泣くのって。
これ私達で言うとどんな状態ですかね。
 
こんなのどうですか?
「歯を食いしばって苦笑い」。
 
人間、呼吸しているだけで錆びていくんですって。
どうせなら命を燃やしたいものじゃありませんか。
錆びたらどうしても、商業的な、製品的な価値が損なわれていきますから。
ただしご自身の愚かさの自覚が他者からの評価に直結するわけではありませんからね。
これは無自覚なのか、デートのお土産って使用済みのゴムみたいじゃありませんか。
まあ何であれ誰かが喜ぶなら結構ですけれども。
 
ところで夢の国では幸せが降って来るものなのでしょうか。
降って来ないことを「好きな人のせいにするのがラク」っていう方、一定数居ますよね。
本来幸せってご自身の手で掴むべきものだと思いますけれども。
その、好きな人って正確にはこうじゃありませんか?
「少なくとも今は好きな人」。
 
ともあれ恋のエネルギーとはまあまあ強烈です。
だってほらやっぱり、ちょっとのすれ違いから相手の不幸を願うようになるでしょう。
初めからご自身の欲求を優先していただけなんですよ。
鏡をご覧になったことはありますか?
とっくに割れていましたか。
 
こうしてみると私達ってまるで千羽鶴みたいですよね。
恋する千羽鶴。
今日の絶望にメロディを乗せて。
一行一行、一羽一羽と折り連ねて。
明日を希望でラッピングして。
誰かが喜べば良いなって。
喜ばなくても見てくれたら嬉しいなって。
あなたまだ恋に酔っぱらっているんですね。
どうせすぐに相手の起源を呪ったりして、それでも足りなくなるっていうのに。
 
やめた。
もうこんな手合いと関わるの、よしましょう。
同じ錆びゆくならロボットよろしくやってた方がいくらか懸命でしょう。
って思ってたのにちくしょう、涙はまだ出るのかよ。
 
まあそんな日もあるけど明日も生きていきましょうよ。
ふらふらグロッキー。
せっかくなんでその足さばき活かして踊っちゃったりして。
泣いたならその涙使って顔洗っちゃったりして。
 
<長谷川カオナシ>


◆ソロアルバム『お面の向こうは伽藍堂』
2025年11月26日発売
 
<収録曲>
01. ねんねんころり
02. かくれんぼの達人
03. 刹那の夏
04. 恋する千羽鶴
05. あなたはきっと
06. ハエ記念日
07. 金木犀
08. かの森のペンフレンド
09. 僕の居ない明日に吠え面かきやがれ
10. 鶏姫様を食べられない
11. ウサギとオオカミ
12. 馬の骨に候