汗が伝う太ももに、暑いよロングスカート…。

ヒグチアイ
汗が伝う太ももに、暑いよロングスカート…。
11月29日は「11(いい)29(ふく)」の語呂合わせから<いい服の日>と呼ばれております。良い服とは何か、良い服を作るのに必要なものは何か、考える日なんだそう。生きていく上で欠かせない“洋服”には、着る人それぞれの記憶が染み込んでいるものですよね…。そこで今日のうたコラムでは、歌詞に登場する<服>がどんな物語を語ってくれるのかいろんなアーティストの楽曲をご紹介しようかと思ったのですが、とあるニューアルバムは、収録曲全11曲中7曲もの歌詞に“衣服”に関するワードが登場することに気がつきました。 それは、“ヒグチアイ”が11月23日にリリースしたメジャーアルバム『百六十度』です!彼女は、歌声とピアノで聴くものをスーッと惹き込み、生身の心をさらけだした歌詞を届ける鍵盤シンガーソングライター。尚、アルバムタイトルは、人間の視野が200度だということに由来しており、「その見えていない残りの160度を大切にしたい。」というヒグチアイの想いが込められております。そんな作品の収録曲の歌詞を読んでみると… 新しく買ってくれた服よりも あなたのほつれたセーターが好き 知らない街へ旅をするよりも 編み物するあなたの横が好き 「ぼくとおばあさん」/ヒグチアイ 慣れない服と席と匂い 大人びた彼の隣にいるのは背の高い綺麗な人 さっちゃんはね ずっと言えなかった 大好きです、と 言えなかった 「さっちゃん」/ヒグチアイ 帰ってきてよ なんて言えない 一人きりのこの部屋は しみついた君のにおい消えない 紛れてる 一つしかない君の靴下 「アイカギ」/ヒグチアイ <ほつれたセーター>、<慣れない服>、<一つしかない君の靴下>、…いずれも忘れられない“記憶”と共にある衣服であることが伝わってきますね。さらに、「霙(みぞれ)」には<眩しい光に喪服が映えるわ>、<慣れないヒールで剥がれた絆創膏>というフレーズ。「ハダノアレ」には、<ローファーじゃ足りないよ 制服のスカート 折り込んで>、<想い続けることが大事 ラッキーアイテムは黄色いバンダナ>というフレーズ。「シンプル」には、<僕はいつも何かに迷っていた 朝着る服も食べるものも>というフレーズ。“ヒグチアイ”にとって、ファッションアイテムというのは歌詞を描く上での大切な一要素なのかもしれませんね! 「なにしてんの?」 「お風呂入ってるの」 「なら写真送ってよ」 「なにバカなこと言っちゃってんの」 「会いたいな」 「わたしも、会いたい」 大人になっても キラキラ恋してた エレベーターで こっそりキスをする 人に言えない 秘密の夜を 過ごしたり 別れたあとで すぐ電話しても しゃべりたりない ランラン恋してた 「猛暑です」/ヒグチアイ また、大人のリアルな恋愛模様を描いたこの曲にも洋服が登場します。冒頭ではキラキラ、ドキドキ、ワクワク…恋しあう二人のやり取りにキュンキュンしてしまいますねぇ。さらに歌詞の中には<たまの休みは お弁当作って 卵焼きは甘いの シュウマイは絶対絶対 たまの出張は ご褒美みたい 二人好き同士なら 全然 恋のスパイス>なんて幸せな回想シーンも。しかし実はこのラブソング、そのまま“ハッピーエンド”には連れていってくれないのです…。 “12時過ぎてから何回も 電話してるけど繋がんない ひっくり返してる iPhoneを想像して胸ぎゅっとなる 扇風機返してよ 車で返しに来てよ エアコン高いよ 絶対 7月乗り越えたいよ 汗が伝う 太ももに 暑いよロングスカート 30度超えたらもう猛暑です 猛暑です ハッピーエンドはドラマの中だけ 中だけ” 「猛暑です」/ヒグチアイ “君を想ってたら ツンとする鼻の奥 こころがあるのかな 窓開けたら夏 お祭りだって行こう 約束指切った 扇風機返してよ 返さなくたっていいよ 会えたらなんだっていいよ とりあえず話しがしたいよ 無視してる連絡はそのまま無視していいよ 30度超えたらもう猛暑です 猛暑です 君に会えないまま 猛暑です 猛暑です ハッピーエンドはドラマの中だけ 中だけ” 「猛暑です」/ヒグチアイ 7月、本格的な夏がやって来る頃、彼の心は<あたし>から離れていってしまったのです。彼女の<扇風機>を借りたまま…。そして、エアコンもつけない部屋で、ただただ彼を想って、連絡を待ち続けている彼女が履いているのが<ロングスカート>。太ももに伝った汗はまるで涙のように、そのスカートへと染み込んでいくようにも感じられます。彼女は<扇風機>を口実に、彼と再び会えることを望んでおりますが、猛暑のような“恋心”が報われることはあるのでしょうか…。聴けば聴くほど、鼻の奥がツンとしてしまう切ない歌詞ですが…オススメの名曲です。 さて、ここまでご紹介した“衣服”に関するワードが登場する7曲に加え、「誰かの幸せは僕の不幸せ」、「衝動」、「恋人よ」、「備忘録」の全11曲が詰まった“ヒグチアイ”の『百六十度』。是非、1曲1曲じっくりと歌詞を味わいながら聴いてみてください…! ◆メジャーデビューアルバム「百六十度」 2016年11月23日発売 TECG-25116 ¥2,500 <収録曲> 1:誰かの幸せは僕の不幸せ 2:猛暑です 3:ぼくとおばあさん 4:さっちゃん 5:衝動 6:恋人よ 7:霙 (ヨミ:みぞれ) 8:ハダノアレ 9:アイカギ 10:シンプル 11:備忘録
























