あふれそうな言葉を、慌ててたばこに火をつけ塞いだ。

ハルレオ
あふれそうな言葉を、慌ててたばこに火をつけ塞いだ。
2019年5月22日に“ハルレオ”がEP『さよならくちびる』をリリースしました。彼女たちは、5月31日から公開の映画『さよならくちびる』の劇中ギターデュオ。門脇麦が演じる“ハル”と、小松菜奈が演じる“レオ”による女性2人組であり、現実でも奇跡のデビューを果したのです。タイトル曲の作詞・作曲・プロデュースは“秦基博”が担当! この映画は、インディーズで人気のハルレオ(門脇麦×小松菜奈)と、ふたりの付き人・シマ(成田凌)の青春音楽ストーリー。物語は、なんと【解散】から幕を開けます。さよならツアーに出発する、ハル、レオ、シマ。強い絆で結ばれていたふたりに一体、何があったのか。旅を重ねるうちに、明らかになってゆく本音とは。そしてツアーの結末は…? 体温の上昇が 伝わっている気がして 目蓋を開けるのを躊躇した 二秒後の私たち これが最後だとわかって 無理して ふたりとも ほほえんだ この棘は抜けないままでいい ずっと 忘れないでいるから 「さよならくちびる」/ハルレオ さて、今日のうたコラムでは、そんな物語にとって大切な1曲となるであろうこの歌をご紹介。まず、歌詞から伝わってくるのは<これが最後>の時間だということ。また、おそらくふたりは同じ気持ちを抱いているということです。感情の高揚、湧き上がってくる情熱、熱くなる目頭、愛、それらを含む<体温の上昇>がこの場を満たしてゆきます。 しかし、どうしてか<私たち>はお互い、自分の“<体温の上昇>=本当の気持ち”が伝わってしまうことを<躊躇>しているのです。だからこそ<二秒後>に<無理して ふたりとも ほほえんだ>のでしょう。これが“三秒”だとダメな気がします。ちなみに【見つめ合う】というのは、三秒以上目が合うことを意味するのですが、見つめ合ってしまえば、本音が届いてしまいそうで、本音に気づいてしまいそうで。 だから目が合って二秒後、本音が伝わる前に、誤魔化すように、吹っ切るように、無理して微笑んだのではないでしょうか。その秘めた本音を表すのは、胸の内に刺さっている<棘>でしょう。これまでの痛み、現在の痛み、これからの痛み、きっと<君>に関するすべての痛みが、大切なのです。どんなに痛みを伴っても、すべてを<ずっと 忘れないで>いたい。それこそがふたりの本音なのだと思います。 さよならくちびる 私は 今 誰に 別れを告げるの 君を見つめながら さよならくちびる 私は 今 はじめて ここにある痛みが 愛だと知ったよ 「さよならくちびる」/ハルレオ さよならくちびる それでも まだ 君に 心が叫ぶの 離れたくないよと さよならくちびる あふれそうな言葉を 慌てて たばこに火をつけ 塞いだ 自分の弱さを 重ねて ごまかして これ以上はもうダメだよね 「さよならくちびる」/ハルレオ そしてサビでは、歌のなかでだけ伝えられる本音がポロポロと溢れ出します。胸の内の<この棘>による<痛みが 愛だと知った>こと。本当はまだ<離れたくない>こと。それでも、自分のために、<君>のために、<私たち>のために、<あふれそうな言葉を 慌てて たばこに火をつけ 塞いだ>こと。様々な感情を噛み締めた上で<これ以上はもうダメだよね>と、お互い心で確かめ合って、終止符を打つのでしょう。 つめたいくちびる 君は 今 なんて 優しく 悲しい 眼差しをしてるの ほどけるくちびる 私は でも 確かに 救われてたんだ さよならくちびる 私は 今 誰に 別れを告げるの 君を見つめながら さよならくちびる 私は 今 私に 別れを告げるよ ありがとう さよなら 「さよならくちびる」/ハルレオ こうして幕を閉じてゆく歌。最後に別れを告げたのは、他の誰でもない<私>自身にです。ずっと<弱さを 重ねて ごまかして>いた自分に。まだ<君>への想いがあふれそうな自分に。また、同じ気持ちを抱き合っている<私>に似た<君>に。ちゃんと感謝と別れを告げ、新たな道へ進んでいくのです。 物語のなかで、この歌はどのように響くのでしょうか。ハル(門脇麦)とレオ(小松菜奈)の重なる歌声が、いっそう切なさを膨らませる、ハルレオ「さよならくちびる」を是非、劇場でご堪能ください。 ◆紹介曲「 さよならくちびる 」 作詞:秦基博 作曲:秦基博