エスプレッソのダブルに砂糖を4~5杯くらい入れたのがあれば…。

居場所をきれいに整えることは
居心地をよくしてその場所を
味方につけるようなものだ。
(宮下奈都『スコーレNo.4』より引用)


 作家・宮下奈都さんの小説『スコーレNo.4』の一節です。みなさんも勉強をするときや仕事をするときに【居場所をきれいに整えること】ってありませんか? それは必ずしも整理整頓するということではなく、あくまで“自分にとって【居心地】がよい場所”を作り上げるということでしょう。するとその場の空気が作業の【味方】になるのです。

 同様に“作詞”をする際にも、アーティストにとって【その場所を味方につける】ことは大切。さて、これまで歌ネットのインタビューや人気コーナー『言葉の達人』では、プロたちがどのように環境づくりをし【居心地をよく】作詞をしているのかお伺いしてきました。それぞれに必須な仕事道具や環境、場所とは…? 今日のうたコラムで一挙ご紹介!

<Sally#Cinnamon>
よほど大きなBGMが流れている場所でなければ、ある程度騒がしくても静かでもどこでも書けます。手書きではなく、ほとんどスマホで書きます。場所を選ばないし、無機質な文字ほど集中できるので。

<水野良樹(いきものがかり)>
MacOSの標準アプリなのですが、スティッキーズというメモ用ソフトがあって。それをいつも使って作詞しています。作詞は手書きから始めて、ある程度まとまったところでスティッキーズに打ち込んでみる流れです。同じ色のメモ用紙に、同じフォントの同じサイズで、どの楽曲の歌詞も書きます。それはなぜかというと、前に書いた歌詞と比較するためです。同じフォーマットですべてを書いていれば、フォント自体が持っているイメージとかに左右されず、微細な雰囲気の違いなどを比べやすいんですね。画面上に何曲も歌詞を並べて、見比べるときもあります。

<平義隆>
毎朝、モーニングのあるお店を巡回して2時間位、詞を書いています。

<michico>
仕事道具は携帯電話。 いつでもどこでも書けるので、拘りはありません。マイクには拘っています。機内で作った曲も多いです。

<玉井健二>
甘めのコーヒーとちょっと不自由な環境です。エスプレッソのダブルに砂糖を4~5杯くらい入れたのがあれば最高です。それを持って決してベストではない環境で軽くストレスを感じるくらいの方がはかどります。すぐ近くでわりと大声で打ち合わせをされている、とか。

<高橋優>
喫茶店で知らない人たちの会話を聞きながら書くのが最近は好きでした。

<志倉千代丸>
背もたれ付きのベッドとPC。あとはデジタルではなく紙で出来た、いくつかの辞典です。作詞はもちろんシナリオ執筆などもするので必須なんです。今の時代とてもユニークな発想から作られた辞典も多く、逆引きのように言葉を探し、突き当たった言葉をそのまま使うのではなく、そこからさらにヒントを得て一手間考えて落とし込んで行く感じでしょうか。

<大宮エリー>

コーヒーを豆から挽いていれるのが儀式のようになっています。喫茶店を転々として書くことが多いのですが、歌詞は実は、飛行機の中がいちばん、はかどります。なぜか。あとは移動中の電車とか。移動と集中により歌詞が生まれますね。

<さだまさし>
場所も時間も道具もこだわりはありません。飛行機や新幹線の移動中、また、仲間と呑んでいても歌詞やメロディが浮かぶことがあります。そういうときには頭の中にメモるだけで、何かに書き留めることはしません。後で思い出せないものは「きっとつまらないもの」と思うことにしています。

【後編】に続く!