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THE BACK HORN ライヴレポート

THE BACK HORN ライヴレポート

【THE BACK HORN ライヴレポート】 『「KYO-MEIストリングスツアー」 feat.リヴスコール』 2021年6月11日 at Zepp Haneda(TOKYO)

2021年06月11日@

撮影:Rui Hashimoto[SOUND SHOOTER]/取材:田山雄士

2021.06.17

ストリングスをバックに従えたTHE BACK HORNのスペシャルなツアー『「KYO-MEIストリングスツアー」feat.リヴスコール』。初日のZepp DiverCity(TOKYO)に続く2度目の東京公演が、6月11日(金)にZepp Haneda(TOKYO)で行なわれた。

THE BACK HORNがストリングス隊とツアーを回るのは約4年半振りで、“あの編成でもう一度観てみたい”という声が多かった中、東日本大震災から10年の節目に、バンドにとっても大きな意味を持つアルバム『リヴスコール』(震災後の2012年6月に発表)の収録曲を軸としたライヴが決定。本公演は政府および各自治体のガイドラインに沿った有観客での開催に加え、会場へ来られないリスナーに向けてオンラインでの生配信も実施された。

このツアーのために山田将司(Vo)が作ったという神秘的なムードを湛えたSEが流れる中、メンバーがステージに登場。THE BACK HORNの4人に、キーボードの曽我淳一、めかるストリングス(1stバイオリン:銘苅麻野、2ndバイオリン:雨宮麻未子、ビオラ:須原杏、チェロ:松尾佳奈)を加えた計9人の編成で、『リヴスコール』のオープニングを飾る「トロイメライ」からライヴがスタートした。情感たっぷりに響くストリングス、そして聴き手を希望の光へと導いていくような曲調がドラマチックすぎて、早くも心を揺さぶられる幕開けだ。続く「シリウス」では命のありさまを叫ぶ歌と弦カルテットが熱く交差し、照明も鮮やかなブルーやレッドに輝き出す。銃声の如きキメがバーンと轟く「ブラックホールバースデイ」にしても、音の混ざり合いがとにかく新鮮で、その美しい共鳴に引っ張られて、場内は座席指定とは思えないほどの盛り上がりを見せる。

ひとつ目のMCでは、この日が彼らにとってZepp Haneda(TOKYO)での初パフォーマンスであることに触れつつ、“ストリングスとキーボードを交えた編成で、新たなTHE BACK HORNのライヴを楽しんでほしい”“声が出せない環境だったりしますけど、今日しかない夜をいっしょに作っていきましょう”と松田晋二(Dr)が挨拶した。

岡峰光舟(Ba)の野太いリフが唸る「超常現象」からは、曽我とめかるストリングスがいったん捌けて、メンバー4人だけで真骨頂のバンドサウンドをガツンと鳴らす。菅波栄純(Gu)のプレイもどんどんロックに切っ先鋭くなり、人間が秘し隠すドス黒い狂気を白日の下に晒すように山田が激情をぶちまける「ジョーカー」、内面に抱えたモヤモヤが解消されていくカタルシスのある「自由」へとつなぐ流れは見事。東日本大震災10年の節目に届ける『リヴスコール』をフィーチャーしたライヴとはいえ、3.11を思い返したりして感傷的になるのではなく、自信を持って作り上げてきた楽曲を全力でブレずに歌い奏でる。そうやって行き場のない想いや心の隙間を埋めようとする愚直な姿が、なんともTHE BACK HORNらしい。

人間の欲深さ、愚かさ、哀しさ、愛しさが混然一体となって迫り来るような「グレイゾーン」、《失ったその瞬間に愛しくなる そのくり返し 無いものねだりばかりで全てを失くしてしまった》と歌う「いつものドアを」...再び9人編成に戻った中盤ではストリングスカルテットが時におどろおどろしい音色を奏でたりと、曲が内包する複雑な感情をジワッと際立たせるアンサンブルで魅せた。さらに、ブルース調の切ないエレジー「シュプレヒコールの片隅で」、住野よるとのコラボ小説『この気持ちもいつか忘れる』の付属CDにも収録された名バラード「君を隠してあげよう」と、新旧のナンバーを織り交ぜて披露。このツアーならではのアレンジがさまざまな情景を映し出す。

サポートの面々を紹介したあとは、THE BACK HORNの4人がゆるいトークを繰り広げるシーンも。菅波と岡峰が本公演の楽しさを語っていたかと思えば、表現の仕方は人それぞれというテーマから、松田はバンド合宿の際にジャージのポケットを出しっぱなしにしているとか、山田は美味しいものを食べた時になぜか箸を掲げるとか、知らず知らずのうちにメンバーの癖スゴ話に脱線したりと、曲のイメージとは打って変わって、こうした何気ない素の部分を見せてくれるところも彼らの魅力と言えよう。そして、次はストリングス隊が抜けて曽我を残した5人編成で、ジャジーなピアノがしっとりと効いた「夢の花」、南国チックなアレンジや菅波⇔岡峰によるソロの応酬も冴えわたった「星降る夜のビート」を聴かせ、いよいよライヴはクライマックスへ。

オールキャストが揃った「コバルトブルー」からの畳みかけは超ド級のインパクト。“生きた証を刻め!”と訴えかけてくる何回聴いても血湧き肉躍るキラーチューンが、バンドアレンジを活かして色付けした弦カルテットのアンサンブルによって大化けしていて、その刺激はシンガロングできない劣勢を十二分に埋めていた。絶望的な状況に光が差すような「シンフォニア」のAメロ部分で、松田とともにめかるストリングスが笑顔で弓を突き上げてハンドクラップを煽るという一体感も最高でしかない。「戦う君よ」のイントロも哀愁を添えて神々しく担い、このブロックは主役ばりの輝きを見せた彼女たち。THE BACK HORNの楽曲が持つ奥深さを巧みに引き出し、桁違いの興奮度でオーディエンスを歓喜の渦に包んでくれた。

最後のMCタイムを迎え、この日は電車で来たとおもむろに話し始める山田。会場へ向かう道すがら、THE BACK HORNのグッズをたくさん身に着けたふたり組のファンが目に入り、嬉しくてしばらくついていってしまったのだという。そんな和やかなエピソードを交えながら、“当たり前だけど、みんな自分の住んでるところから一歩一歩足を運んでくれててさ。今のご時世なかなか難しいことだと思うので、そのワクワクしている姿を見た時にとても元気をもらいました”と観客に改めて感謝を伝えた。本編ラストは“まだまだこれから何年も歌っていきたい”と語って届けた「世界中に花束を」。照明がひときわキラキラと光る中、生命の讃美歌と言えるロッカバラードが降り注ぐように尊く、どこまでも力強く鳴り響いたのだった。

アンコールでは“ライヴというのは僕らにとっても大事な場所ですし、みんなにとっても絶対になくしちゃいけない場所だと思います。音楽の力を借りて、どんなことがあっても生きましょう”と想いを吐露した松田の言葉から「ミュージック」、“一歩ずつ、一歩ずつ。各々のやれることをやっていこう。生き続けようね”と山田がやさしく告げて始まった「ラピスラズリ」をメンバー4人で演奏。その2曲にバンドの覚悟が強く滲んでいたのは言うまでもない。

曽我とめかるストリングスを呼び込んで、最後の最後は全員で颯爽と駆け抜ける「刃」。祭囃子調のフレーズを菅波のギター&弦カルテットのかけ合いでよりエモーショナルに聴かせたりと、残り一滴まで魂を振り絞るようなパフォーマンスでZepp Haneda(TOKYO)を大いに揺らし、2時間に及ぶライヴは幕を閉じた。“また生きて会おうぜ!”――そんな山田の言葉がいつも以上にグッときたオーディエンスも多かったのではないだろうか。

絶望から希望を、闇から光を見出すような深いやさしさ、凄まじい熱量をもって、そしてストリングスとのタッグで聴き手を鼓舞し、また前を向いて生きていくモードにさせてくれたTHE BACK HORN。満身創痍の今みたいな状況でこそ、彼らの音楽はきっとしなやかに輝く。アルバム『リヴスコール』の強度と合わせて、そんなことも再確認できるライヴだったと思う。

なお、今回のZepp Haneda(TOKYO)公演の模様はアーカイブ配信もされているので、この機会にぜひTHE BACK HORNの貴重なストリングスライヴを体感してみてほしい。そして、緊急事態宣言期間延長に伴って延期となった大阪公演は、6月27日(日)に大阪・Zepp Namba(OSAKA)で振替公演が開催される。

撮影:Rui Hashimoto[SOUND SHOOTER]/取材:田山雄士

THE BACK HORN

ザ・バックホーン:1998年結成。“KYO-MEI”という言葉をテーマに、聴く人の心を震わせる音楽を届けている。01年にシングル「サニー」をメジャーリリース。17年には宇多田ヒカルとの共同プロデュース曲「あなたが待ってる」が話題に。結成20周年となる18年、3月にメジャーでは初となるミニアルバム『情景泥棒』を、10月にはインディーズ時代の楽曲を再録した新作アルバム『ALL INDIES THE BACK HORN』を発表。また、ベストセラー作家・住野よるとのコラボレーション企画もスタートし、注目を集めている。

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