でたらめが起こすマジックを今も信じている。馬鹿みたいに。

 2021年3月3日に“Panorama Panama Town”が新曲「SO YOUNG」をリリースしました。ライブでの風景が見える、爽やかで心地いいロックナンバー。コロナにより、なかなか思うような活動ができず、活力はあるのに、それを表に出せない、上手くいかない、そんなもどかしさのなか、もがき続けた経験を歌った1曲となっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“Panorama Panama Town”の岩渕想太(Vo.)による歌詞エッセイをお届けいたします。綴っていただいたのは、新曲「SO YOUNG」のお話。悶々としていたコロナ禍の夏、よく見た夢によってとある記憶が呼び起こされたという彼。そこで得た気づきとは。改めて実感した“変わらないもの”とは。是非、歌詞と併せてこのエッセイを受け取ってください…!

~歌詞エッセイ:「SO YOUNG」~

思えば、去年の夏は悶々としていた。

バンドとしてはスタジオもいい調子で、曲もできつつあるのに、ライブができない。やりたいことは沢山あっても、思うように動けない。そんなもどかしさをずっと抱えていた。同じように、あの時期を過ごした人も多いと思うけど、思い返すだけであれはとてもおかしな体験だったな。「zoom飲み」ってのも流行ってたけど、すごく空虚だった。お酒も回り、話も盛り上がってゲラゲラ笑うんだけど、退出ボタンを押すと、突如一人の部屋に取り残される。結局、バーチャルの中では生きられない。そんなことを痛感したな。

心が逃げ出したくなったのか、この頃やけに昔の夢を見た。子供の頃の夢から、バンドを組んだ頃の夢まで。

無意識の繋がりと呼ぶべきか、この頃見た夢はどれも、当時の状況に根付いたもののように思えた。バンドを組むんだけど思うように曲ができずに、戸惑ってるバンドの夢。これは、やりたいことはあるんだけど思うように動けない状況に類似していた。窓の外の風景に憧れながら、部屋に篭って曲を作り、コロナが落ち着いたらあれをやろうこれをやろうとイメージを膨らませていた2020年夏の俺は、バンドを組んだばかりの俺にとても似ていた。そんなことを、夢によって気づかされたんだ。本当に変な体験だった。変な夏だったよ。

どうやって乗り越えたっけな、あの頃。曲がどうしてもできなかった頃、4人のエネルギーだけはあって、そんなスタジオからどうやって前に進めたっけな。思い返しても、ろくな技術とか、方法論とかは、そこになかった。もちろん、技術と方法論の大切さは分かるようになってきたつもりだけど、あの時、俺らを突き動かしたのはそんなもんじゃなかった。ただ、音を鳴らし続けたこと、そしてそれを根拠もなく信じ続けたこと、それだけじゃないだろうか。

そうして、2020年夏の俺たちは、「SO YOUNG」という曲を作った。何も変わらないかもしれない世界に向けて、いつ終わるかも分からない時代に向けて。曲を作り、ビデオを作り、ライブを配信した。悶々としながら、でも前に進みたかった。

そんな曲の中で、<でたらめも信じ抜いてみりゃそれが答えだろう>と歌詞が書けた。スコーンと、何も考えずに書いた割には、自分たちを肯定するかのような言葉だった。何年も前のでたらめを信じたから今がある。それは、過去から今を包み込むような生温い言葉じゃなくて、俺たちの未来に向けて放射されていた。

変な夏が終わり、気づけば変な春になった。あの頃作った曲をやっとリリースできる。バンドを組んだばかりの俺たちと、2020年夏の俺たちと、2021年3月の俺たち、色んなものが変わったけど、変わらないものもある。でたらめが起こすマジックを今も信じている。馬鹿みたいに。ありとあらゆる人間がSO YOUNG。本当にそう思っている。

<パノラマパナマタウン・岩渕想太>

◆紹介曲「SO YOUNG
作詞:岩渕想太
作曲:岩渕想太