さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“Panorama Panama Town”の岩渕想太による歌詞エッセイをお届け!今回は【後編】です。綴っていただいたのは、今作の収録曲「100yen coffee」に通ずるお話。夜闇のなかを漂流しているかのような歌詞とサウンドが印象的なこの曲。なぜ、ひとは時々、あてどなく夜を漂流したくなるのでしょうか…。是非、歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください。
ジム・ジャームッシュの映画『パーマネント・バケーション』の冒頭、16歳の男アリーは、女友達のリーラに向かってこう話す。
「みな孤独さ。だから僕は漂流する。イかれてると言われても漂流してれば孤独でないと思うことができる。本当に孤独と感じるよりマシだ」
ニューヨークの街並みを眠らないまま漂流し続ける彼の言葉を聞いて、私は「わかる、わかるぞ!」と大声を上げた。
よく、夜を漂流する。そう言うと聞こえがいいが、ただの散歩だ。目的のない散歩。いつもの店に入るのを堪えて、知り合いに連絡するのも堪えて、ただひたすらに歩き続ける。誰かに会いたいけど、待ち合わせたくない。
今は夜22時の新宿で、電話すればあいつがやってくるけど、そんなことして何になるって言うんだ。できれば、知らない人に会いたい。知ってる人に会うにしても、衝撃的な出会い方でもって、出くわしたい。出くわしたい、そう私は今誰かに出くわしたいのかもしれない。
アメリカを東へ西へ行き、また東へ行って西へいくだけの小説、ジャック・ケルアックの『路上』の解説で見つけた言葉がある。
遠心性の誘惑
作家トマス・ピンチョンは、『路上』の持つ「遠心性の誘惑」に惹かれたらしい。トマス・ピンチョンを読んだことないけど、私はここでもう一度「わかる、わかるぞ!」と唸る。
【遠心】
意味 : 中心から遠ざかろうとすること。
あてどなく、夜を漂流する。「ここも違う」「ここも違う」を繰り返しながら。多くの場合、何にも出くわさないことを知っていながら、今いる場所から逃れていく。漂流するように生きている。あてがなくても、足は何故だか進んでいく。
<Panorama Panama Town・岩渕想太>
◆紹介曲「100yen coffee」
作詞:岩渕想太
作曲:岩渕想太
◆Mini Album『Faces』
2021年11月24日発売
<収録曲>
1.King's Eyes
2.Strange Days
3.100yen coffee
4.Faceless
5.Seagull Weather
6.Algorithm
7.Melody Lane
◆Panorama Panama Town One-man Live 2021-2022 "Face to Face"・2021年12月11日(土)
兵庫・クラブ月世界
開場17:15 / 開演18:00
・2022年1月14日(金)
東京・東京キネマ倶楽部
開場17:15 / 開演18:00