そのキャラクターと、自分の高校生活を重ね合わせて歌詞を書いた。

 2021年7月16日に“Panorama Panama Town”が新曲「Strange Days」を配信リリース!80年代ポストパンク~New Waveを踏襲した、彼らにしか出せないOne&Onlyなギターロック。10代の未体験な蒼く切ない衝動と葛藤の日々=Strange Days。同曲はドラマ『ギヴン』の主題歌にも決定しております。さらに。劇中バンド“the seasons”が演奏する楽曲も岩渕想太(Vo.)が作詞曲・アレンジで担当。是非、ドラマと併せてお楽しみください。

 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放つ“Panorama Panama Town”の岩渕想太による歌詞エッセイをお届けします。綴っていただいたのは、新曲「Strange Days」に通ずるお話です。音楽を聴くことが貴重な楽しみだったという彼の高校時代。今の“Panorama Panama Town”にも繋がっているであろう、当時の記憶や想いを明かしてくださいました…!

~歌詞エッセイ:「Strange Days」~

高校の頃は、やり場のないエネルギーに溢れていた。

福岡北九州の街から外れた住宅地の中にあった我が母校は、校則がとても厳しく、周りから「監獄」のように恐れられていた学校だった。頭髪検査、持ち物検査は当たり前に存在し、登下校時には制帽を被ることが定められていた。入学してすぐには、山奥に泊まり込みで集団行動をやり続ける「克己心育成のための合宿」なるものがあって、ひたすらに行進や「右向け右」の練習だけをし続ける。そしてその「右向け右」の号令は、卒業するまでずっと耳元で鳴り響いた。自分にとっての高校生活とは、いかに教師達の言う「右向け右」を無視し続けられるか、「右向け」と言われた時に、どれだけ違う方向を向くことができるか、を考え続ける日々だった。

高校生活における楽しみは、音楽を聴くことだった。帰宅部だった自分は、放課後になるとすぐに自転車を飛ばし、学校から20分ほどのショッピングセンターの中にあるタワーレコードに向かう。または、帰り道にあるレンタルビデオショップでCDを借りる。それを家で聴いている時が、何よりの楽しみだった。当時は、サブスクリプションなんかなくて、CDを一枚一枚パソコンに取り込んでいく。最初は、PSPに、ウォークマンに、iPodに、自分だけのライブラリを作っていった。友達付き合いは下手な方ではなかったけど、学校で音楽の話をすることはほとんどなかった。当時、クラスで流行っていた音楽が全然好きじゃなかったし、なんとなく伝わる気がしなかったからだ。

そんな学校の中にも、何人かは音楽の話ができる友人がいた。まるで、禁止されている宗教を告白し合うように、教室の隅で、会話の断片をヒントに、「もしかしてあのバンド好きなのか?」「お前もか!」と分かり合った友人だ。学校終わりのタワーレコードも、レンタルビデオショップも、友人と行くようになり、授業の合間の休み時間や、掃除の間、好きなバンドの話をする。携帯や音楽プレイヤーなどあらゆる持ち込みが禁止の学校の中で、その時間だけがオアシスだった。囚人同士が、牢屋の中で捕まる前の生活を懐かしむように、会話は白熱してとめどなかった。あのアルバムのあの曲がいい、あのライブ映像観た?そんな会話がいつまでも。

新曲「Strange Days」は、ドラマの主題歌に書き下ろした曲で、そのドラマの中には過去に音楽を志したが、ひょんなことから諦めてしまった高校生の少年が登場する。クラスの友人には、音楽の話を一切語らず、常にどこか退屈そうだ。「Strange Days」はそのキャラクターと、自分の高校生活を重ね合わせて歌詞を書いた。自分の場合、高校の時にバンドは組めなかったが、紛れもなくその友人たちのお陰で、学校が楽しめたんだと思う。そんな話ができることを諦めかけていたあの頃、好きなものについて分かち合えた瞬間は、今でも宝物だ。

あと、その時バンドを組まなかった代わりに、大学に入って最高のバンドが組めた。音楽を好きでいることを繋ぎ止め、音楽への憧れを大きなものにしてくれたという意味でも、当時の友人には感謝している。

<Panorama Panama Town・岩渕想太>

◆紹介曲「Strange Days
作詞:岩渕想太
作曲:岩渕想太