須澤紀信

君が選んだことなら、抉れた痛みも愛せるかな

 2019年10月23日に“須澤紀信”が新曲「アソート」をリリースしました。まず、曲タイトルの【アソート】とは、主に様々な種類のモノの【詰め合わせ】を意味する言葉であり、歌詞にはまさに、大切な<君>にまつわるたくさんの感情や景色、ワンシーンが詰め合わされているんです。今日のうたコラムでは、そんなラブソングをご紹介いたします。

滝のような雨に打たれ 冷え切った身体を投げ出し
指先から 溶けて消えてしまえばいい
それで終わりなんだ
「アソート」/須澤紀信


 こうして幕を開ける歌。冒頭で描かれているのは<君>を失った、その日の記憶でしょう。泣きわめきたいほどの哀しみを象徴する<滝のような雨>が降り注ぐ日。そこで主人公の<僕>は傘も差さず<冷え切った身体を投げ出し>途方に暮れています。おそらく身体以上に“心”が冷え切っている状態であるがゆえ、濡れようがどうでもいいのです。
 
 傘を差す気力もない。人の目だって気にならない。ただただ<指先から 溶けて消えてしまえばいい>と自分の物語の<終わり>を望んでおります。もはや“消えてしまいたい”という能動的な思いですらありません。伝わってくるのは、どうにでもしてくれ、どうにでもなれ、もう何もかも終わりなんだから…、という無気力な絶望。真っ暗な未来。

君と買った服を着て 君のいない街を歩く
変わり果てた ありふれた日常を
少しずつ馴染ませていく

消せない履歴 雪の降る空に
ただ疑うことも忘れ 同じ未来を望んだ

君が選んだことなら 抉れた痛みも愛せるかな
失って気付くことばかりだ 僕の世界は君で出来ていた

うだるような真夏日に
消えて無くなった まるでカゲロウ
こだわったスパイス
チケットの切れ端 合鍵はポストの中
「アソート」/須澤紀信

 しかし、どんなに<終わり>を望んだところで、日常は続いていくんですよね。あの<滝のような雨に打たれ>た日から、月日は経ち、なんとか<僕>は生きている模様。そして現在と過去の記憶の間を行ったり来たり。きっと頭では<変わり果てた ありふれた日常を 少しずつ馴染ませて>いかなきゃならないこともわかっているし、<君が選んだことなら 抉れた痛みも愛せる>ような自分で在りたいと思っているはず。
 
 それでも<君と買った服>を捨てられないことや<消せない履歴>には“忘れられない、忘れたくない”心模様が表れています。さらに<こだわったスパイス>や<チケットの切れ端>やポストの中の<合鍵>といった記憶の「アソート」が胸の内を満たしているのです。当たり前に<僕の世界>は、喜怒哀楽も衣食住も<君で出来ていた>からこそ、まだまだ<君のいない街>で過ごすのは簡単なことではなさそうですね。

僕の全てを 君の全てを 持ち寄って ひとつにした
もう戻らない アソート アソート
「アソート」/須澤紀信

 ちなみに「アソート」という言葉には【詰め合わせ】以外にも【(種類などが)一致する】や【(他のものと)調和する】という意味もあるそう。すると、二人はかつて<僕の全てを 君の全てを 持ち寄って>想いを一致させ、上手くお互いに調和しながら過ごせていた幸せな時期もあったのだと想像できます。ただ、それゆえに<もう戻らない>という現実の切なさがいっそう際立つのです…。

君が選んだことなら 抉れた痛みも愛せるかな
失って気付くことばかりだ 僕の世界は君で出来ていた
いつか望んだ姿に きっとまだなれてはいないけど
時間と共に形を変えた この街のように進んでいかなきゃ
僕なりの答え 今 君はどう?
「アソート」/須澤紀信


 歌はこのように幕を閉じてゆきます。冒頭では、びしょ濡れになりながら<指先から 溶けて消えてしまえばいい>と絶望のなかにいた主人公。でも、最後では<時間と共に形を変えた この街のように進んでいかなきゃ>と、なんとか未来を見据えています。なんとか<僕なりの答え>を出せています。そして、もう別々の道にいることを受け止めながら<今 君はどう?>と、相手のことを思えているのではないでしょうか。
 
 最近、失恋をしてしまったあなた。なかなか立ち直ることができないあなた。是非、そのやり場のない想いを重ねながら、須澤紀信「アソート」を聴いてみてください。いつか“あなたなりの答え”にたどり着けるその日が、やってきますように。

◆紹介曲「アソート
2019年10月23日配信リリース
作詞:須澤紀信
作曲:須澤紀信
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