さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“須澤紀信”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回はその第1弾。綴っていただいたのは、今作の収録曲「希望のうた」のお話です。この歌詞のワンフレーズに、ご自身の中でなんとなく「譲れない気持ち」と「むず痒さ」を感じていたという彼。それは一体、どんなものだったのでしょうか。是非、歌に込めた想いと併せて、歌詞をお楽しみください…!
~歌詞エッセイ第1弾:「希望のうた」~
この街は野良ネコが多いんだ 捨てたもんじゃないよ
って歌詞が、自分の中でずっと異質なものに見えていて、自分で書いた歌詞なのに何言ってんだって話なんですが、曲の中ですごく浮いていた。でも、頭で理解できないけどフィットしているから変えたくない歌詞ってあるんですよ。譲れないところ。まさにこの箇所はその感覚で。そして今回のこのエッセイのお話をいただいた時に、そのむず痒さをそのままにしていたら書けないなと思って、改めて歌詞とにらめっこしてみました。
そしたらハッとして、これは自分の中の“THE BLUE HEARTS”的な部分なんじゃないかと。「TRAIN-TRAIN」に<いい奴ばかりじゃないけど 悪い奴ばかりでもない>って歌詞があるんですが、それを僕なりの言葉にすると<この街は野良ネコが多いんだ 捨てたもんじゃないよ>になるんじゃなかろうかと。
残念ながら猫や動物を自分の都合で捨てる人はいる。でも、その反面拾う人や大切にする人もいる。そうやってこの街で、人は自分にできることを不器用ながらも考えて生きている。<TRAIN-TRAIN 走って行け TRAIN-TRAIN どこまでも>なんじゃなかろうかと。今回のエッセイのお話をいただいたおかげで、自分の中に“THE BLUE HEARTS”的な部分があることを知れました。
この歌はまず、間違いなく僕一人では書けませんでした。それは何故かというと、この歌がTBSラジオでコーナーを持たせていただいていた時に、あるテーマに沿ってリスナーの皆さんから頂いたメッセージを元に書いた歌だから。そのテーマというのが「コロナ禍の中で、したいけど、出来ないこと」です。
メッセージはどれも皆さんの我慢が綴られていました。「息子が生まれ、久しぶりに実家に帰って顔を見せたい」「学校に行けない」「友達に会えない」「リモートの仕事に慣れない」ラジオ内で紹介しきれなかったものも含め、様々な痛みや不安がありました。それらのメッセージに触れ、自分なりに書き上げたのが今回の「希望のうた」でした。
僕自身、この1年間で開催できたライブは片手で数えられるほどでした。ワンマンライブを延期し、延期した日程も中止になり、悔しい思いもしました。こんな今だからこそ、希望を持って生きていたい。いつか「コロナで大変だったよね」なんて笑える日まで、僕はこの歌を歌い続けていきたいと思います。
<須澤紀信>
◆紹介曲「希望のうた」
作詞:須澤紀信
作曲:須澤紀信
◆『遠近法 -Reconstruction of perspective-』
2021年7月21日発売
YCCW-10387 ¥1,650(税込)/¥1,500(税抜)
<収録曲>
1.ドライフラワー
2.パセリ
3.希望のうた
4.一匙の魔法
5.アソート -remix-