「ひたむき」とは結果の言葉ではなく、その道すがらの様を表す言葉。

SUPER BEAVER
「ひたむき」とは結果の言葉ではなく、その道すがらの様を表す言葉。
2022年11月30日に“SUPER BEAVER”がニューシングル「ひたむき」をリリースしました。同曲はTVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第6期のオープニングテーマ。激動を描くアニメの世界観とバンド自身の歩みや姿勢が強くリンクした、<一生懸命に生きるひたむきさ>を肯定する力強いメッセージが込められたロックチューンに仕上がっております。 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“SUPER BEAVER”の柳沢亮太による歌詞エッセイをお届け!綴っていただいたのは、新曲「 ひたむき 」に通ずるお話です。<自分は自分だからってのはさ 言い訳の そのための 決意じゃなかったろう>と幕を開ける歌。自分は自分だから。みなさんはこの言葉を今、どんな気持ちで口にしますか…? 歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。 “自分は自分だから” それをどんな気持ちで想うか、捉えるか、口にするのか。 個、自我、アイデンティティ。 どれだけ世情が変化しようと、トレンドが移り変わろうと、生きる以上は無意識にも意識し続けるであろうこと。その上で、それぞれに抱える価値観は、自分自身が大切にしたいと思う事柄の一つの基準でありながら、他者との関わり合いの積み重ねの上で形成されている、と最近改めて感じる。 どんな自分でありたいか、どんな自分になりたいか。 それを考える最初のきっかけの多くは<憧れ>な気がするし、「大きくなったら何になりたい?」っていう、あそこから繋がっていることは多いように思う。TVの中のあの人やスポーツ選手、家族を見て思ったかもしれないし、友人や近所の兄ちゃん姉ちゃん、はたまた歴史上の偉人に感化されたかもしれない(…同時に反面教師がきっかけになり得るのも事実)。 自分が何者か、など考えもしなかったニュートラルな頃。 そこから保育園や幼稚園で、意地悪をしたとかされたとか、ごめんねとか仲直りを知って、小学校を卒業する頃には小さくも確かな社会を経験して、少しずつ、他者と自分を比べて気がつく<違い>に触れていく。中学・高校と進学する頃には、その<違い>こそが当時の全ての思考の根元になっていたようにさえ思える。 自分にできること、自分にはできないこと。あの人はできること、あの人にはできないこと。自分にあって、あの人にないもの。あの人にあって、自分にないもの。自分にはできないこと、自分にはないもの、自分は手にしていないもの… 歳を重ねるにつれ<憧れ>もキラキラした表情を見せる方が減って、むしろ悩みの理由にすり替わって。無いものばかりあるように感じて、圧倒的な不安に襲われた時、思わず口にしてしまう。 “自分なんて” 期待することをやめれば、憧れることをやめれば、いつかはきっと、と思うことをやめれば。楽になるかもしれない。楽になるかもしれないけど…楽しくもなかった。これは…経験談も、含む。むしろ辛かった。どうしたって覆ることのない自分が自分であること。それを諦めの理由にしようとした虚しさが、どうしようもなく苦しかった。 本当は。 一見終わりのように見える何かも、自分が生き続ける限り終わりきってはいない。諦めなければ必ず辿り着く、とかって事ではなく、辿り着きたいなら辿り着くまで歩く以外に術はない。叶えたいなら叶うまでやり続ける以外に術はない。誰かではなく、自分自身が、だ。 「ひたむき」とは結果の言葉ではなく、その道すがらの様を表す言葉。「直向き」って書くんだって。ああ、なるほど。 個、自我、アイデンティティ。 自分、が、他者との関わり合いの積み重ねの上で形成されていくのであれば、<違い>もまた自分であることの一つの証。羨んだり、悔しく思う気持ちが、自身の心に火をつけることだってある。けど飲まれないようにしたい。不安な時に人を嗤って安心しようなんて、それこそ惨めだ。 “自分なんて” そんな言葉で諦めようとしたとき、ぎゅっとなるあれが、心の叫びだと思う。 人は人、自分は自分。それでいいし、それがいい。だから想い遣って想像する。 “自分は自分だから” それをどんな気持ちで想うか、捉えるか、口にするのか。 意志を持って笑いたいと思う。 <SUPER BEAVER・柳沢亮太> ◆紹介曲「 ひたむき 」 作詞:柳沢亮太 作曲:柳沢亮太 ◆New Single『ひたむき』 2022年11月30日発売 <収録曲> 01. ひたむき 02. 秘密 -Acoustic ver.-