10年前の自分が未来へ託した想いを、今という未来で受け取った。

 2020年6月10日に“SUPER BEAVER”がニューシングル『ハイライト / ひとりで生きていたならば』をリリースしました。今年4月1日で結成15周年を迎え、4月8日にメジャー再契約を表明した彼らの今作は、疾走感あるロックサウンドに強い意志が込められた「ハイライト」と壮大なミディアムバラード「ひとりで生きていたならば」の両A面シングル。

 さらに、約10年前のメジャー在籍時最後にリリースしたアルバム収録曲「まわる、まわる」のセルフカバーも収録されております。さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放つ“SUPER BEAVER”の柳沢亮太による歌詞エッセイを3日連続でお届け!今回は第1弾第2弾に続く最終回をお届け!綴っていただいたのは、今作に再録される楽曲「まわる、まわる」についてのお話。かつて、潰えたとさえ思った未来。それはどんな“今という未来”として存在しているのでしょうか。3日連続エッセイのラストに綴られた想い、受け取ってください。

~歌詞エッセイ最終回:「まわる、まわる」~

拝啓
数年前の僕は何を 描きもがき笑ってるの?
終わりの見えた日常 新しい生活の足音
大好きな人に歌うメロディ 冗談ばかりで濁してた未来
わかったつもりで知らなかった 社会 世間 現実の世界


「大きくなったら〇〇になる」「将来の夢は△△」そんな、いつまでも来ないような気がしていた「いつか」の入り口が半ば強制的に目の前に現れ始めるような、17歳~22歳頃というのは人生において重要な分岐点の一つだと思う。

願いや夢、それらは叶うか・叶わないかの二択であると気がついてしまったときの恐怖は言葉にならない。「人はいつか必ず死ぬ」を自分に当てはめて、深く考え込んで眠れなくなったあの感じに似ている。

かつて在籍していたメジャーレーベルから最後にリリースした『SUPER BEAVER』というアルバムがある。同レーベルを離れることが概ね決定していた中で、一枚好きなように作りな、と厚意により制作させてもらった。「まわる、まわる」という曲はその作品に収録されていて、つまり今回は再録だ。

2010年当時は、自分たちで自分たちを取り戻す、みたいな所があったと思う。原点回帰、歌も楽器もせーので一発録り、多重録音も極力避けた。曲も詞も手直しはほとんど無かったはずだ。バンドを結成した学生時代に持っていた気がする大事な何かを必死で手繰り寄せるように、とにかく「今表現したいこと」だけを純粋に作品にしていった。久しぶりの感覚だった。

正直なことを言えば、メジャー契約終了が議題に上がった時、自分のバンドマンとしての未来は潰えたと本気で思った。“メジャーデビュー=プロ”だと勝手に思っていた20~21歳の自分にとって、メジャー契約終了は即ちプロじゃなくなることと同義で、「バンドで飯を食ってやる!」と夢を抱いていた自分が、飯を食えないままプロじゃなくなることは、「あなたの夢は叶わないという結果になりました」と通告されたようなものだった。

その後の人生が怖くなったし、寂しくて辛かった。この先どうしていくべきなのか、考えて、考えて…その中で“バンドであることの心強さ”に改めて気がついたようにも思う。ひとりじゃなく、共にこの感覚を分かち合えるメンバーがいる歓び。良いことも悪いことも、共有していく、それを鳴らす、これがバンドなんだ、と再確認していった。

もう一度4人で、4人が納得いくことをやろう。そうして題されたセルフタイトル『SUPER BEAVER』だった。

拝啓
数年先の僕は何を手にして、また無くしてるの?
今の生活の先に 一体何が待っているの?
大切な人に捧ぐメロディ 冗談みたいな僕の願いは
どんな形でそこにある? 遠い遠い 現実の未来


2020年現在。潰えたとさえ思った未来、願いや夢。叶うか・叶わないかの二択だと思っていたそれらを、叶えるか・ 叶えないかという視点を加えて捉えられるようになっている。僕だけの明日を望んでいたはずが、僕だけじゃない今日に強く歓びを感じるようになった。

そういった変化や変化のきっかけを、メロディに乗せて歌い続けていきたいと思う今日こそが、いつまでも来ないような気がしていた「いつか」で、あの日の自分が知りたかった現実の未来だ。

良いか悪いか、満足か不満足か。きっと今日は一つの応えであり、答えではない。

それでも確かな気持ちとして「10年前の自分が未来へ託した想いを、今という未来で受け取った」この事実にどうしようもなくロマンを感じてしまう。繋いでいく。続いていく。SUPER BEAVERが歌うのは、そういう歌たちだ。意味や形、捉え方を少しずつ変えながら、これからも歌い続けていく。今日の自分たちから過去と未来に向けて、今度はあなたと一緒に。

この歌に結びの言葉がなくて良かったな、と思っている。

<SUPER BEAVER・柳沢亮太>

◆紹介曲「まわる、まわる
作詞:柳沢亮太
作曲:柳沢亮太

◆New Single
『ハイライト / ひとりで生きていたならば』
2020年6月10日発売
初回生産限定盤 SRCL-11496~7 ¥1,727+税
通常盤 SRCL-11498 \1,182+税

<収録曲>
01. ハイライト
02. ひとりで生きていたならば
03. まわる、まわる