ここらでおしまいで、なんて甘えてちゃお前にも嫌われちゃうのかな。

米津玄師
ここらでおしまいで、なんて甘えてちゃお前にも嫌われちゃうのかな。
いつだって目を腫らした君が二度と 悲しまないように笑える そんなヒーローになるための歌 さらば掲げろピースサイン 転がっていくストーリーを 「ピースサイン」/米津玄師 “米津玄師”が2017年6月21日にニューシングル「ピースサイン」をリリースしました。今作はTVアニメ『僕のヒーローアカデミア』のオープニングテーマ。彼自身の幼少期の気持ちと深く向き合い、あの頃の自分へ、そしてアニメを観た子供たちへ届くよう、書き下ろされた楽曲です。尚、タイトル曲は歌ネットのデイリー歌詞ランキングで初登場3位を記録!リアルタイムランキングでも上位を独走し続けており、さらなる人気上昇が期待できるでしょう。 この頃ひどい夢を見る 子供の頃の風景 煙草の煙で満ちた 白い食卓だ 腐りかけの幸せ 一日一切れずつ 続く絶え間ないヒステリー あとは怠惰だけ 平和も平和で反吐が出た 遠く聞こえるバーバラアレン 「Neighbourhood」/米津玄師 さて、今日のうたコラムではさらに、ニューシングルのカップリング曲「Neighbourhood」をご紹介。この歌もまた<子供の頃>がキーワードになっておりますが、「ピースサイン」のように幼い頃のエネルギーが描かれているわけではなさそうです。部屋中に満ちた淀んだ空気と、その風景のなかで浮いている<白い食卓>の違和感…。きっと毎日、どこか居心地の悪かったであろう“小さな僕”の姿が見えてくるかのようです。 ちなみに、幼い頃の夢を見るのには、いくつかの理由があるそう。昔が懐かしくて戻りたかったり、今の環境から逃げ出したかったり、子供の頃のトラウマがずっと心に引っかかっており、前に進めないでいたり、そういった心の状態を表しているんだとか。では、「Neighbourhood」の主人公が<この頃ひどい夢を見る>のはどうしてなのでしょうか。 どうしたんだいなあ兄弟 俺がわかるかい? お前が許せるくらいの 大人になれたかな もういいかいなあ兄弟 ここらでおしまいで なんて甘えてちゃお前にも 嫌われちゃうのかな 「Neighbourhood」/米津玄師 タイトルの「Neighbourhood」は隣人や近所の人を意味する言葉ですが、この歌に綴られている<兄弟>や<お前>とは、おそらく幼少期の自分自身。つまり、大人になった“俺”が“小さな僕”へ語りかけているのだと思います。最近、イヤな記憶が蘇るようなひどい夢をよく見るのは“小さな僕”の何らかの声が、心に引っかかっているからかもしれない…。だからこそ<どうしたんだい>と、“小さな僕”に問いかけているのでしょう。 生きられないなって トイレの鏡の前で泣いてた 逃げ出せその街を 飛ばせ飛ばせ飛ばせ 笑え笑え笑え 定期を買うくらいの まとまった金すらなくて 毎日切符で済まして むしろ金かかる きっと夢は叶うなんて嘘を 初めから信じちゃいなかった それでもなおここまでこれた お前はどうしたい? どうしたんだいなあ兄弟 俺がわかるかい? お前が許せるくらいの 大人になれたかな もういいかいなあ兄弟 ここらでおしまいで なんて甘えてちゃお前にも 嫌われちゃうのかな 「Neighbourhood」/米津玄師 綴られているメッセージは全て<生きられないなって トイレの鏡の前で泣いてた>“小さな僕”へ向けたものだと考えられます。<それでもなおここまでこれた>“俺”はきっともう、あの頃の呪縛から解き放たれたいのです。過去と決別したいのです。それゆえに、まだ夢に出てくる亡霊のようなかつての自分を、ある意味“成仏”させるかのような気持ちで、この歌を捧げているのではないでしょうか。 だけど一方で、最後の最後に<お前にも 嫌われちゃうのかな>とも感じる主人公。“お前にも”ということは、他にも誰かに嫌われているということですよね。逆に言えば“お前”だけはまだ自分の味方でいてくれているということ。そう思うと、忘れてしまいたい記憶が刻まれている“小さな僕”だとしても、愛おしく思ってしまう気持ちもわかります。疎むのではなく、過去の自分とも心の“隣人”としてうまく生きていけたら…そんな思いもこの「Neighbourhood」には込められているのかもしれません。 ◆New Single『ピースサイン』 2017年6月21日発売 ピース盤 SRCL-9454~9456 ¥1,900+税 ヒーロー盤 SRCL-9457 ¥1,500+税 通常盤 SRCL-9458 ¥1,200+税 <CD収録曲> 1. ピースサイン 2. Neighbourhood 3. ゆめくいしょうじょ 4. ピースサイン(Instrumental)