その約束の日には、「不要不急」という名前がついた。

 2021年8月25日に“ハルカトミユキ”がニューアルバム『明日は晴れるよ』をリリース!約4年2カ月ぶりとなる今作。日本テレビ系『NNNストレイトニュース』のウェザーテーマ曲「夏にだまされて」を含む全8曲が収録。新作についてハルカ(Vo, G)は「『わかんないけど、晴れるよ、大丈夫』このアルバムを通して、自信満々にそう言いたい」、ミユキ(Key, Cho)は「“ラブソング"と“応援歌”がテーマの今作、ど真ん中に勝負を挑む気持ちで曲を作りました」とそれぞれコメントしております。

 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“ハルカトミユキ”のハルカによる歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回は最終回。綴っていただいたのは、アルバムのラストを飾る「約束」に通ずる想いです。今も、大切な「約束の日」を待ち続けながら、日々を過ごしているあなたへ。この歌詞とエッセイが届きますように。

~歌詞エッセイ最終回:「約束」~

人を待つことの心細さを、「長い待ち合わせ」という曲に書いたことがある。約束の時間になっても、一人ぼっち、待ちぼうけしているという歌だ。

“待つ”というのは本当に疲れる。連絡の返ってこないスマートフォンを握りしめながら、背格好の似た人が歩いてくるととっさに目で追いかけ、次の瞬間には赤の他人だと気がついて肩を落とす。その繰り返し。不安、心配、怒り、寂しさ、そのすべてが一気に押し寄せてきて、さっきまで胸の中でパンパンに膨らんでいた期待という名の風船が、しょぼしょぼとしぼんでいくのを感じる。

昔、恋人を長時間待ち過ぎて、やっと現れた相手に泣きそうになりながら近づいて行ったら、杖をついたおばあさんだったことがある。どこも似てないじゃないか。

それくらい、待つということは、心がすっかり疲れ果てるのだ。あの曲を書いた頃は今より若くて幼かったけれど、人を待つことを異常に心細く感じてしまうのは今も変わらない。

待つのは「人」ばかりではない。私たちは大なり少なり、予定された次の約束の日を心待ちにしながら生きている。友達とランチに行く日を。趣味の一人旅に出かける日を。遠くに住んでいる恋人と久しぶりに会える日を。大切な大会の日を。最後の修学旅行の日を。そして、大好きなアーティストのライブの日を。

丸印をつけたカレンダーを眺めながら、あと何週間、あと何日、あともう少し頑張れば約束の日が来ると信じて、その日のために準備をしながら。

そんな、ささやかでもかけがえのない「約束の日」を、奪われてしまった一年半だった。

その約束の日には、「不要不急」という名前がついた。一体どれだけの人が、自分にとっての大切な約束の日に「不要不急」のハンコを押し、歯を食いしばりながら仕事に向かったのだろうか。予定のなくなった週末に向かって、どんな気持ちで日々を過ごしたのだろうか。一人ぼっち、来ない誰かを信じて待ち続けるように、そのはち切れそうな心を一体どこに押し込めたのだろうか。

カレンダーに上書きされたバツ印は、その日一日だけのバツではない。その人にとってみたら、それまで指折り数えて頑張ってきたすべての日々に付けられたいくつものバツ印だ。

遠距離恋愛とライブは、どこか似ている。やっとその日を迎えても、楽しい時間は瞬く間に過ぎ去ってしまう。幸せな余韻と切なさに包まれながら歩く帰り道で、ゆっくりと元の日常に引き戻されていく。

そんな時、次の約束があったら、どれだけ心強いだろうか。だから、約束をしよう。もしも叶わなかったらまた約束をしよう。それも叶わなかったら、また、何度でも何度でも約束をしよう。



<ハルカトミユキ・ハルカ>

◆紹介曲「約束
作詞:ハルカ
作曲:ミユキ

◆4thアルバム『明日は晴れるよ』
2021年8月25日発売
QAIR-10178 ¥3,000(税込)

<収録曲>
1. RAINY
2. 鳴らない電話
3. 夏にだまされて
4. 言えたらいのに
5. TIME
6. 君に幸あれ
7. あの場所で
8. 約束