「気の済むまでぶっていいよ」なんて最後の最後までずるい人。

SHISHAMO
「気の済むまでぶっていいよ」なんて最後の最後までずるい人。
2019年4月24日に“SHISHAMO”がニューシングル『OH!』をリリースしました。今日のうたコラムでは、カップリングとして収録されている新曲「許してあげるから」をご紹介いたします。疾走感&開放感が溢れるこの歌。ただ、サウンドの明るさに反し、歌詞に描かれているのは胸がギューッと痛むような、どうしようもない恋心なんです。 電話に出ない理由も 既読がつかない理由も 馬鹿なふりして見ないふりした いっそのこと本当の馬鹿になれればよかったのに やめてよ、そんな顔しないでよ やだなあ、終わりみたいなそんな… 謝って欲しくなんかないよ 「許してあげるから」/SHISHAMO 本当はとっくに気づいていた<電話に出ない理由>や<既読がつかない理由>が何かは、みなさんなんとなく想像できますね。とにかく相手の気持ちが<私>から離れていたことは確かです。それを<馬鹿なふりして見ないふり>し続けてきたのは、この恋の延命処置のため。だけどそんな“ふり”にも限界が来たことが、歌詞の余白からわかります。 <いっそのこと本当の馬鹿になれればよかったのに>…この“のに”のあとには、言葉にはされてない様々なシーンと感情が含まれているのです。葛藤の末、やっぱり<見ないふり>はできないという想いが勝ったときの決心。相手に伝えたときの覚悟と不安。すると思いがけず“終わりみたいな顔”で呆気なく謝罪をされたときのショックと後悔。 さらに<そんな…>の“…”の余白からも「そんな反応が欲しかったんじゃないのに…」「そんなのないよ…」というような、言葉にならない淋しさ、悲しさ、空しさ、怒りの入り混じった感情が伝わってきます。そして<やめてよ>、<やだなあ>と、その場を取り繕おうとしている<私>がいるのです。どうしても“終わり”にしたくないから。 「気の済むまでぶっていいよ」なんて 最後の最後までずるい人 かわりに力一杯抱きしめるから ぎゅっと抱きしめ返してよ それだけで全部チャラにしたげるから 「許してあげるから」/SHISHAMO だけど結局、相手の気持ちは<私>から離れているのです。延命処置が終われば、この恋は終わりだったのです。ゆえに相手は「気の済むまでぶっていいよ」と、すべてを<私>に委ねて“気が済んだら”別れようとしております。タイトルの「許してあげるから」とは、<私>の気持ちを表しているようで、実は、ぶつことを「許してあげるから」別れてほしいという<君>側の“ずるさ”も表しているのではないでしょうか。 もちろん<私>だって、もう今この瞬間が<最後の最後>だとわかっているはず。それでも<全部チャラにしたげるから>と、また<馬鹿なふり>をし直して…。そんな痛ましいフレーズが明るい曲調と相まって、一層“空元気”感が際立ちます。しかし、歌が進むにつれ歌詞も、歌声も、馬鹿なふりをする余裕なく、剥き出しになってゆくのです。 君って、いつもそうだ しょうもないプライド掲げてさ 許しを乞うなんてみっともない真似して見せてよ 「気の済むまでぶっていいよ」なんて 最後の最後までひどい人 そんなことできないの分かってるくせに 最低ね 「許してあげるから」/SHISHAMO 歌の終盤。本当の<私>の気持ちがボロボロと溢れます。せめて<許しを乞う>て、私と同じくらい必死になって、やり直そうとしてほしかった。「気の済むまでぶっていいよ」なんて、気が済むわけない。終わらせたくない。「気の済むまでぶっていいよ」なんて、<そんなことできない>ほど、まだ愛していることを再確認してしまって苦しい。ずるくて、しょうもなくて、ひどくて、最低、なのに、愛している。 「気の済むまでぶっていいよ」なんて 最後の最後までずるい人 かわりに力一杯抱きしめるから 全部嘘だと言ってキスしてよ それだけで全部チャラにしたげるから 君のために私 馬鹿になってあげる 「許してあげるから」/SHISHAMO 歌の最後の最後まで<君のために私 馬鹿になってあげる>とすがってしまう、どうしようもない恋心が切ないですね。とはいえ一体、この恋の正解とは何なのでしょうか…。どうかいつかは、SHISHAMO「許してあげるから」の<私>や<私>のような恋をしている方が報われる日が訪れますように…! ◆紹介曲「 許してあげるから 」 作詞:宮崎朝子 作曲:宮崎朝子 ◆ニューシングル『OH!』 2019年4月24日発売 UPCM-1419 ¥1,200(税込) <収録曲> 1. OH! 2. ハネノバシ 3. 許してあげるから