止まらないのは二人の恋だ
今年の夏よ 終わらないでよ。
「君と夏フェス」/SHISHAMO
いつだって君に触りたい
こんな暑い夜はとくに
「熱帯夜」/SHISHAMO
夏の恋人に手を振って 私からさよならするよ
幸せな二人だけど あなたも私もきっと
このままじゃどこにもいけないから
きっと泣くのは私の方だけど さよならするよ
だめね、私
「夏の恋人」/SHISHAMO
こうして3曲並べてみると、まるで一つの物語のよう。「君と夏フェス」で登場するのは、付き合う直前、もしくは付き合ったばかりの初々しい二人。「熱帯夜」では、好きすぎるがゆえの不安もあるものの、幸せの真っ只中である心情が描かれております。しかし「夏の恋人」は一転。お互いに<こんな関係いつまでも きっとしょうもないよね だけど夏が終わるまで>という想いを抱きながら、じめじめな部屋でずるずる一緒にいるのですが、ついに彼女が“さよなら”を決意するのです…。
空調の効かない 私の部屋
腐りかけたこの部屋の空気は
私の心まで悲しい記憶に引きずり込む
またいつもと同じ 君のせいにしてる
君がもうどこかで笑ってるなんて
信じられないし 信じたくもない
身動き取れないフリしてる
もう体は動くのに
内緒にしてたけど実は私
この広い空だって飛べるのに
「BYE BYE」/SHISHAMO
さて、そんな夏物語の最終章とも言えるのが、新曲「BYE BYE」です。描かれているのは、失恋したその後を生きている主人公。空調が効かず<腐りかけたこの部屋の空気>は、どこか「夏の恋人」のじめじめした部屋を思い起こさせます。その忘れられない空気感が<私の心まで悲しい記憶に引きずり込む>のではないでしょうか。そして彼女は“あの夏”からだいぶ時間が経っているのに、まだ思い出迷子になっているのです。というより、<身動き取れないフリしてる>のです。
別れ際に君に言われたあの言葉
いつまでも こびりついて
情けなくて カッコ悪くて
君の中で私とのことがもう終わってるのかとか
一番仕様もないこと 考えてる
あーあ 最後まで君はね
あーあ 知らないままだったよ
本当の私 知った気でいたでしょう?
本当はいつも寂しかったし
本当はもっと私笑えるし
空を飛んでる姿だって知らないでしょ?
なにも、知らないでしょ?
「BYE BYE」/SHISHAMO
彼女が<身動き取れないフリしてる>のは、それだけ<別れ際に君に言われたあの言葉>がこびりついて離れないから。おそらく、それに対して言い返したいことが山ほどあったのに、当時はうまく伝えられないままサヨナラをしてしまったのでしょう。でももう行き場のなくなってしまった“本当の気持ち”が、成仏できない亡霊のようになっているのだと思います。だから<もう体は動くのに>、心のほうが動けずにいるんですね。
あーあ 今年の夏も私
あーあ 抜け出せないままなの?
そんなのヤダ 絶対ヤダけど
考えすぎて 汗掻いちゃってる
あーあ 今年の夏は違う
あーあ きっと違うんだから
君のことでいつも泣いてた
あの私とはもうバイバイ
「BYE BYE」/SHISHAMO
ただ、サビには、今年の夏こそ<あの私とはもうバイバイ>したい、変わりたいという彼女の気持ちが綴られているんです。抜け出せないままなのは<絶対ヤダけど>と、“けど”がついてしまうところや、今年の夏はこれまでとは<きっと違うんだから>と、“絶対”とは言い切れないところから、まだ完全に前を向けたわけではないことも伝わってきます。それでも、前を向こう、顔を上げよう、という自覚を持てたことが、変化の第一歩なのだと思います。
なんだか「BYE BYE」の歌詞を読むと、失恋には2回“バイバイ”があることがわかりますね。1回目は、恋人と別れるときのバイバイ。そして2回目は、過去の恋人を忘れられない自分に手を振るときのバイバイです。それができたとき、やっと前へ進むことができるのでしょう。今年の夏、まさに失恋後のじめじめから抜け出せずにいるという方は是非、SHISHAMO「BYE BYE」を聴いてみてください。そして2回目のバイバイの一歩を踏み出せますように!