あの夜の私と何が違うんだろう。

イチオシ!
あの夜の私と何が違うんだろう。
忘れじの行く末まではかたければ 今日を限りの命ともがな (儀同三司母『新古今和歌集』) こちらは、有名な百人一首で『“末永く愛は変わるまい”というあなたの誓いが、将来まで変わらないなんてわからないから、幸せな今日を限りとして死んでしまいたいなぁ』という想いが綴られております。みなさんも、今この瞬間の愛のピークを永遠にしてしまえたら、と願ったことありませんか? でもそれは、人の心の移ろいやすさを知っているからこその願いでもあるんですよね…。 こんな時思い出す事じゃないとは思うんだけど 一人にしないよってあれ実は嬉しかったよ あなたが勇気を出して初めて電話をくれた あの夜の私と何が違うんだろう 「ハッピーエンド」/back number たとえば、2017年の歌詞アクセス年間ランキングで1位に輝いたこの歴代人気曲もまた、愛の脆さが伝わってくる失恋ソングです。相手が<私>を好きでいてくれたあの頃は「一人にしないよ」だとか「別に君のままでいいのに」だとか言ってくれたくせに、結局は離れてゆく。でも自分では<あの夜の私と何が違うんだろう>と、失恋の理由もよくわからないから余計にツラい…。 では、どうして人は失恋してしまうのでしょうか。恋愛の寿命とはどれくらいのものなのでしょうか。今日のうたコラムでは、さらにいろんな失恋ソングをピックアップしながら、ハッピーエンドを迎えることができなかった主人公たちに注目してみます。まずは【思っていたのと違った】と、フラれてしまったパターンです。 何もかもが超普通なあなたに ちょっと魔が差して恋した 付き合ってあげたのにさ 三ヶ月だけで… どうして? どうして? あなたなんかに ふられなきゃ いけないの? 何が分かるの? 「どうしてどうして」/山本彩 山本彩「どうしてどうして」の主人公は、周りから<高嶺の花>だと思われているからこそ、クールぶって恋もせずに生きてきた強気な女性。ただし<超普通なあなた>だけは違って、そんな自分を好きになってくれて、やっと信頼できそうだったのです。いえ、すでに信頼していたのです。だけど<あなた>が好きになったのは<高嶺の花>である彼女。残念ながら“クール”な仮面を外した素の<私>を知って、醒めてしまったのでしょう。 また、この歌の<三ヶ月>というのもキーワードです。恋愛サイトを見てみると、恋愛に関して「3の倍数」の年月周期に、何かが起こるという説は有名なんだそう。3ヶ月、半年(6ヶ月)、1年(12ヶ月)、3年など。そして付き合って<三ヶ月>の時期というのは、どちらかの「何か違う」という違和感が不満に変わるタイミングだと言われております。まさに「どうしてどうして」の<あなた>はその説に当てはまってしまったわけですね。 “1年2ヶ月と20日” 本当にあっという間だった キミに会えて良かった 好きになって良かった 優しくしないで 「サヨナラ」ちゃんと言えなくなっちゃうから ゴメンなんて謝らないで だから ねぇ 早く… 泣いちゃう前に 「1年2ヶ月20日」/BRIGHT 終わっていく3年と8ヶ月 僕たちはお互いを見つけられない 目を閉じれば浮かぶのは君なのに 「8ミリメートル」/スキマスイッチ こちらは、付き合って1年目と、3年目を超えた恋人たちの終わりの歌。歌詞を読んでみると、両曲ともまだ相手にあたたかい想いが残っていることが伝わってきます。しかしおそらくそれはもう“愛情”ではなく“情”に近いのでしょう。いわゆる【マンネリ化・倦怠期】が修復できず、別れに繋がってしまったパターンです。もしかしたら、もうどちらかに新しい好きな人がいるのかもしれません。いずれにせよ、一緒に重ねた年月の分だけ失恋の傷が回復するのにも時間がかかりそうですね…。 あなたとの二年二ヶ月 私の中で決して「後悔」じゃない あなたのいない「明日」と言う日を 無理してみても「希望」とは呼べない 「Remember Me」/アンジェラ・アキ 2年経って 何か変わって 好きだけど気持ちすれ違って 毎日の当たり前に慣れて 優しさに甘えて こんな日が目の前に来るなんて 思いもしなかった 離れるなんて 「もう一度… feat.BENI」/童子-T 風が急に冷たくなった 冬をそっと運んできた 出会ってから2年の時 夏の終わり 失いかけてた事なんて気づかないで 歩いてたみたいだね バカな僕だよ 「ごめん」/川嶋あい 寄り道みたいな始まりが 二年も続いたあの恋 初めてお前抱いた夜ほら 俺の方が震えてたね 「シングルベッド」/シャ乱Q そして、失恋ソングを検索しているなかで意外と多かったのがこの<二年>というキーワード。前述した「3の倍数」に何か起こる説は有名ですが、実はカップルには【魔の2年目】という壁も存在するんだそうです。一通りクリスマスやお互いの誕生日なども経験し、長く一緒にいる中で相手のことも大体はわかってきた“つもり”になってしまうのがこの時期なのではないでしょうか。 でも実際は、まだまだ知らないこともたくさんあるのです。それゆえに<好きだけど気持ちすれ違って>しまったり、<失いかけてた事なんて気づかないで 歩いて>しまったりといった【気持ちの理解不足】が原因で、離れることになってしまうのだと思います。こうしていろんな失恋ソングの歌詞を読んでみると、冒頭でご紹介した百人一首が尚更、刺さるような気がしませんか…? 忘れじの行く末まではかたければ 今日を限りの命ともがな 【思っていたのと違った】と感じたとき、【マンネリ化・倦怠期】が訪れたとき、【魔の2年目】の壁にぶつかったとき、【気持ちの理解不足】に気づいたとき、そんなときにこそ“末永く愛は変わるまい”と誓ったあの日のことを思い出さないといけないのかもしれません。今、あなたが大切にしている愛がどうか末永く続いていきますように…!