また明日ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 松本素生 | | みみず嫌い 気持ち悪い なんで君は平気なのか ほらもうまた パンツ出てる 早く直せ 少し女らしくしなよ ちょい待って 鐘が鳴ってる ほらね「赤とんぼ」のメロディー聴こえる もう帰らなくちゃ じゃあね まだ遊んでたいけど また明日 赤い夕焼け どうしたのさ 帰らないの? なんでなんで泣いてるのさ どうしたのさ こりゃまいったな カラスも鳴く そうだ 僕んち来るかい? いやなの? じゃあどうしよう どうしよう 空が暗くなってきたな とぼとぼ 歩き出す君 僕もとりあえずついてく そわそわ なんだこの気持ち 古いアパートが見えて来た「ありがと」君が笑った 僕は照れてそっぽを向く また明日 淡い星空 また明日 さあ走れ僕よ |
I am not a motherミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 心当たりは確かにあって できても当然な暮らしな訳で 育てていく自信は無いけど おろすなんてありえない 彼はどうせ逃げるだろうし どうしよう どうしよう こない こない アレがこない 誰かに相談できる訳ない 私一人で抱え込むしかない 気付けばお腹 擦ってる自分 検査薬は買ったけど 怖くて まだ開けてもいない どうしよう どうしよう こない こない アレがこない 説明書を何度も読み返す 私はどうやらmotherじゃないらしい 安堵のため息が漏れ同時にどうしようもない寂しさが私を襲った ほんの少し幸せだったから いつもと同じ朝 揺れるバスの中 無理に軽い調子で彼に打ち明けた 「何だよ早く言えば良かったのに」そう彼は笑うけど 絶対ウソ 絶対逃げるくせに 女って孤独だ 校門の前で彼と 手を振って別れる 遠ざかる彼の背中 いなかったね二人のbaby 一時限目は英語だな |
はじめての合コンミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 明日合コンに行く事になった 一人面子が足らなくなったとかで 急遽私に白羽の矢が立てられた 頗る憂鬱だ だったら断れば良い なのに私は承諾してしまった 学生の分際で合コンにも出た事がないなんて 田舎の両親に申し訳ないと思ったからだ ……というのは嘘で 彼女が出席すると知ったからだ 一年程前から 私は密かに 彼女への想いを滾らせている だけど彼女を我が物にしたいとか そんな事はちくとも思っていない 彼女は彼女 誰の物でもないのだ 一緒にプールやお風呂に入りたいなとかは思うが あんな清楚でおしとやかな彼女が合コンだと!? きっと誰かに騙されたに違いない 何かの間違いだ 私がこの手で守ってあげなくては そんな思いから 決意を固めたのだ だけど早速後悔しまくってる 頗る憂鬱だ マジ断れば良かった 何故なら私はべらぼうな酒飲み 一旦飲み始めたら自制できなくなるのだ そうして歌うのだ 浜田省吾を歌ってしまうのだ お嬢様な彼女の前で赤ら顔のロックンロール 全ておしまいだ 彼女を守るどころの話じゃない 危害を加えてしまうかもしれない 今からでも遅くはないと思うのだ 断りのメールを打つべく携帯開く 「Eメール受信 1件」と表示されていた ヘッドフォンでSHOGOを聴いていたから気付かなかった ……なんだあいつか 体を重ね合うためだけの女 「明日暇か?」と訊かれたので「忙しい」と返信した やっぱり私は合コンへ行く こんなふしだらな生活から抜け出すためにも 合コンへ行く 合コンへ行く |
こちょばしっこミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 同じたんぽぽ組のノッポで 目が細い明るい女の子だった 僕は彼女といつも2人で こちょばし こちょばされ キャーキャー遊んだ たまにお尻や太ももに触れてしまうときがあり そんな時はいつも甘い目眩が 彼女は顔を真っ赤にして笑っていた 子供には似つかわしくない淫靡な笑いだった 僕も同じような顔をしていた事だろう 疲れた僕らは遊戯室の隅 並んで座ってみんなを眺めた しばらくすると彼女は復活 こちょばし こちょばされ ゴロゴロ転がった エスカレートして気がつくと彼女の白いタイツの 中に僕はいつも手を入れていた 彼女は顔を真っ赤にして笑っていた 子供には似つかわしくない淫靡な笑いだった 僕も同じような顔をしていた事だろう 今考えると何故先生が 止めに来なかったのか 不思議でしょうがない 彼女は顔を真っ赤にして笑っていた 子供には似つかわしくない淫靡な笑いだった 僕も同じような顔をしていた あの時から 僕の好色な人生の道筋は決まってた 3度の離婚を繰り返し えらく貧乏だ 隣で20も下の俺の女が眠ってる |
魔法にかけて!ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 松本素生 | | 先輩と今日は久しぶりに街で遊んだ 私は終始ソワソワして落ち着かなかった 先輩は何か前よりもずっと綺麗になってた 大学という場所にはそんな魔法があるのか 迷っていたけど 悩んでいたけど 私は決めた 動機不純かもね いや不純じゃないよ だって 私 一応目標あるもの 私も先輩と同じ大学に行く 理由はただひとつだけ 愛しい先輩のそばで 魔法にかかって綺麗になるんだもん パパとママがうるさいから 机に向かう ノートいっぱいに吐き出された 私のストレス どうせ受かるもの 私賢いもの 将来の夢 ボンヤリしてるから 少し怖いけど やるよ! 私 今日も せっせとお勉強 私も先輩と一緒に合コンに出て イケメンGETしちゃうぜ 愛しい先輩のそばで 夢と魔法の 嗚呼キャンパスライフ 私も先輩と同じ大学に行く 不安は山積みだけど 愛しい先輩のそばで 魔法にかかって綺麗になるんだもん |
片想われミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | アーケードの入り口 いつもの通学路 今朝も彼女は立っていた 恥ずかしそうに立っていた 目が合うとぶるっと震えてた ひとつ年下で バレー部の彼女 いったい帰宅部の俺のどこに惚れたというのだろう すれ違う時なんか言ってたが 聞こえないフリをした やりたいときに好きなだけ やれる関係でいいなら 考えたっていいけど 付き合ってもいいけど やりたいときに好きなだけ やれる関係がいいけど… そんな都合のいい話 ある訳ないよな わかってる 手紙もメールも ずっと全部無視 かれこれもう一年だな よくもまあ懲りないもんで 修行かな さてはドMかな 乳は結構あると思われる 平凡なルックスだけど なんか可愛く見えてくる それでもやはり 俺はどうしても 好きにはなれないのだよ やりたいときに好きなだけ やれる関係でいいなら 考えたっていいけど 付き合ってもいいけど やりたいときに好きなだけ やれる関係がいいけど… そんな都合のいい話 ある訳ないよな わかってる もうすぐ卒業だから こいつらともおさらばだ 昼休みの喧騒 抜け出して廊下に出ると 彼女が立ってたんだ 思い詰めた表情 図書室に連れて行かれて 面と向かって言われた 彼女の告白に俺は 慌ててつい口が滑った 「やりたいときに、好きなだけやれる関係でいいなら、 考えたっていいけど、付き合ってもいいけど」 「それでも私構いません。先輩のそばにいたいです」 彼女はそう答えたのだ なんて最低なんだろ俺 彼女がホッとしたように 微笑んだ とりあえず放課後うちに来てもらう約束をした |
君は僕のものだったミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 小倉しんこう | | 髪を短く切ったばかりの 君が笑う 天ぷらそばを啜りながら 眼鏡が曇って真っ白け 強い日差しの下で水着の 君が笑う 子供のような体つきが 海へ走って行く いくつもの君を閉じ込めた このビデオカメラ 死ぬまで僕は 君を撮り続けるつもりだったのに 真っ暗な部屋 膝を抱えて テレビの中の君を観てる 梅酒のグラス 君が持ち上げ 缶ビールで僕も乾杯する 井の頭公園 池の畔 君が笑う ボートには乗らなかったのに 何でだよ神様 いくつもの君を閉じ込めた つもりでいたけど 本物の君は 僕を捨てて消えてしまったんだなあ 真っ暗な部屋 膝を抱えて テレビの中の君を観てる 結婚式の 真似事をした このシーンで僕は毎回泣く いくつもの君を閉じ込めた このビデオカメラ 死ぬまで僕は 君を撮り続けるつもりだったのに 真っ暗な部屋 膝を抱えて テレビの中の君を観てる 裸の君が恥ずかしそうに 僕を見上げて 舌を出した 君が揺れてる 揺さぶられてる 僕は今夜もズボン下ろす 君が叫んだ 僕の名前を 確かに君は僕のものだったんだ |
銭湯の思い出ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 湯船で僕らが騒いでいると いつもおじさんに怒鳴られた 「うるせーなガキども!」坊主頭でプロレスラーみたいだったおじさん おじさんのでっかい背中には綺麗なカッコいい絵が書いてあって それはお尻にまで届く程の 大きな大きなものだったんだ ある時「おじさんの背中綺麗だね」と言ったら 「バカヤロー綺麗なもんか」と照れるように背中を隠した それが刺青というものだったという事を 知るのはだいぶ後になって おじさんには娘さんがいて いつも一人外で待っていた 僕らは湯上がりの体を冷ましつつ 女の子の様子を観察した おじさんが出て来ると女の子は コーラを一気に飲み干して おじさんのぶっとい腕に掴った 母子家庭の僕は羨むばかり あんなお父さんがいたらなあ 二人を見ながらいつも思った 女の子の手を引きながらダミ声で歌ってた歌が 「人生を語らず」という歌だったという事を 知るのはだいぶ後になって 中学生になって僕らは 銭湯に行かなくなってしまった そしてあの女の子と同じ学校になるとは まさか思ってなかった そもそも同い年だったとは 何だか大人っぽく見えたから テレビに出て来る女優さんのような 彼女に僕は夢中になった 僕は想いを打ち明けて 運よく付き合う事が出来た 「あんなお父さんがいたらなあ」というあの頃の夢が 23になる春に叶うんだっていう事を 知るのはだいぶ後になって 今でもお義父さんとはたまに 銭湯に行く事がある 背中の絵は少し萎んでしまったが やさしい笑顔とダミ声ははあの頃のまま |
グッドモーニングミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 同じ制服 同じような背格好 バスの中 私だけ誰とも喋らない いじめられてる訳じゃないんだけど 友達はほぼいない みんな馬鹿だから お日様が脳天直撃 今日も暑くなりそうだ バス停で最後に降りると 先生がいた 私の恋人 背中に体当たり よろける先生 怖い顔で私を睨む 眼鏡がずれてるよ スカート翻し 私は小走り 先生!先生!先生! 今日も大好き 同じ制服 同じような背格好 教室で 私だけ明らかに浮いてる 孤立しないよう みんな必死なんだ こんな狭い世界なのに ご苦労な事です 窓際でひとり考え事 早く卒業したいなあ いつの間にチャイム鳴ったんだろ 先生が来た 私の恋人 あんな不細工の どこがいいんだろ? 私基本面食いなんだよ それなのに何なの? 名前を呼ばれて 元気にお返事 先生!先生!先生! 今日も大好き 一緒に暮らすんだ 来年の春に パパやママに反対されても 私は負けません 若気の至りなんて 絶対言わせない 先生!先生!先生!ずっと大好き |
スカイツリーミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 毎日大きな橋を渡って 駅まで十分歩きます 呆れる程に見晴らしが良くて 正直田舎くさいです スカイツリーが見えるのは少し いやだいぶ嬉しかった 二人で一緒に見に行ったのは 九月の暑い日でした たくさんの人を裏切って たくさんの人を失望させて 流れ流れて この街に来ました 全てを一から やり直すために 今は一人だけど いつか いつか いつか あなたと一緒になりたいです なりたい 電車はいつも空いてます 読書と昼寝がすすみます どこへ行くにしても大体 一時間くらいかかるんで スカイツリーは近いはずです 路線図で見てもなんとなく そりゃそうだ こっから見えるんだもん 今日も真っ直ぐに立ってます たくさんの物を失って たくさんの傷を心に負って どうにかこうにか この街に来ました 一からあなたとやり直すために 泣いてみたいけど 出ない 涙 出ない でっかい川の流れ 日は沈む 晩メシは何にしよう 今は一人だけど いつか いつか いつか あなたと一緒になりたいです なりたい 幸せになりたい |
人間応援歌ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 悲しくないのに悲しいふりをしなきゃいけない 怒ってないのに怒ってるふりをしなきゃいけない 嬉しくないのに嬉しいふりをしなきゃいけない 面白くないのに面白いふりをしなきゃいけない 目をつむる事 耳をふさぐ事 捨てる事 忘れる事 それだけが生きるという事 大丈夫だって なんとかなるって 思うしかないよね 言うしかない 自分に 大丈夫 俺は なんとかなる 俺は まだまだやれるさ 人生これから 具合悪いのに愉快なふりをしなきゃいけない 楽しくないのに愉快なふりをしなきゃいけない 死んじまいたいのに愉快なふりをしなきゃいけない ふりふりふりふりで ホントの自分がもうわからん 目をつむる事 耳をふさぐ事 捨てる事 忘れる事 それがなかなか至難の業 大丈夫だって なんとかなるって 思うしかないよね 言うしかない 自分に 大丈夫 俺は なんとかなる 俺は まだまだやれるさ 人生これから 大丈夫だって なんとかなるって 思うしかないよね 言うしかない 自分に 大丈夫 俺は なんとかなる 俺は まだまだやれるさ 人生これから メタボに負けるな 人生これから |
旧江戸川ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 学校をさぼった いつもの道を左にそれて なんとなくここまでやって来た 土手を降りてみると 犬の散歩をしてるジジイ いぶかしげにこっちを見てるけど 知るか 傾斜に寝転ぶ 空が青い 草の匂い 水の音 ウケる ウケる あーあ この年で現実叩きつけられるかね しかし 舌打ち混じり 「クズが」とつぶやく 何度も何度も クズが クズが 親父のリストラで うちん中がおかしくなった お袋がパートに出はじめた 引っ越しするようだ 昨日そんな話をしてた マンションのローンが払えなくなったらしい 何処へ行くにも お先真っ暗 この川ともさよならか ウケる ウケる あーあ この年で現実叩きつけられるかね しかし 舌打ち混じり 「クズが」とつぶやく 何度も何度も クズが クズが 立ち上がり 歩き出す あてもなく 俺はお前らとは違う 俺は俺の道を行く 俺はお前らとは違う あーあ この年で現実叩きつけられるかね しかし 舌打ち混じり 「クズが」とつぶやく 何度も何度も クズが クズが |
むなしいミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | ああ 貧乏は嫌だなあ 破れた網戸 みすぼらしい ムカつく ああ 貧乏は辛いなあ 金さえあれば全てケリがつくのに なんでなんで うちは貧乏なんだろう 父ちゃん母ちゃん あんなに働きっぱなしなのに 不公平にも程がある 銀行強盗とか マジで考えてしまうのさ今日も 怖いよ怖いよ そんな自分が貧乏が みんな言うけど 「金で愛は買えない」なんて 金持ちのたわごとじゃねえか 買えるよ買えるよ 俺の愛ならなんぼでも なんでなんで 俺なんか生まれたんだろう 父ちゃん母ちゃん 3人もいらんだろうにまったく 冷たい笑いこみ上げる 銀行強盗とか マジで考えてしまうのさ今日も 怖いよ怖いよ そんな自分が貧乏が みんな言うけど 「金で愛は買えない」なんて 金持ちのたわごとじゃねえか 買えるよ買えるよ 俺の愛ならなんぼでも どうせこの先 いくら頑張ったって 高が知れてる 高が知れてるっつーの アホらし むなしい むなしい |
ババアは嫌いさミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 昨夜 君を抱いた 楽しい思い出が 頭から 離れなくて 仕事にならないよ 昨夜 君は言った 「あなたが最後の人」 「綺麗だよ」 耳元で 僕は囁いたのさ 死ぬまで 僕は君を抱いていたい ジジイになっても 僕は君を抱きたいよ でもそうすると君も 同じようにババアだね ババアは嫌いさ ババアは嫌いさ やっと お昼休み ケータイ握りしめ んふふふ んふふふ ニヤニヤ噛み殺す しかし みんなブスだ ったくよーどいつもこいつも それに比べ なんて君は 可愛いのかしらねえ 死ぬまで 僕は君を抱いていたい ジジイになっても 僕は君を抱きたいよ でもそうすると君も 同じようにババアだね いやいや そんなはずない! 君は永久にガールさ ババアは嫌いさ ババアは嫌いさ |
戻れないから 仕方ないからミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 戻れないからここにいる 仕方ないからここにいる ここで会ったが運の尽き どうぞよろしくマイダーリン 全部投げ捨ててやってきたけど 毎日けらけら笑って楽しいけど 私は欲張りなのかなあ ルルルルー 時々 こんなはずじゃ なんて思ってしまう でも 戻れないからここにいる 仕方ないからここにいる ここで会ったが運の尽き どうぞよろしくマイダーリン わからなくなるよ あの人の事が 毎日ゴロゴロ 何もしないんだもん 預金残高に溜息 ルルルルー 時々なんだこいつは なんて思ってしまう でも 戻れないからここにいる 仕方ないからここにいる ここで会ったが運の尽き そうよそうよねそうなのよ 戻れないからここにいる 仕方ないからここにいる ドンルッバックで突き進め どうぞよろしくマイダーリン 早くお嫁にしてください |
花火大会ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 去年もこうして自転車またがり お前と二人 川っぺりの公園へ 暑さはそれほど厳しくはなく 人の流れに くっついて進んだっけ ビニールシート マズい広島焼き ビールを片手に その時を待って待って 次々と打ち上がる 猛り狂う火の花 寄り添い見上げた 優しい記憶 はらはらと舞い落ちる 幸せの火の花 二人で見上げた 最高の夏 今年もこうして自転車またがり のこのこ一人 川っぺりの公園へ なんで来たんだよ なんで来てんだよ 自分に問い掛け 引きつった自嘲笑い ガードレールに 軽く寄りかかり ビールを片手に その時を待って待って 次々と打ち上がる 猛り狂う火の花 一人で見上げる 辛い現実 いつまでも終わらないで 幸せの火の花 一人で見上げる にじんで揺れる 次々と打ち上がる 猛り狂う火の花 一人で見上げる 辛い現実 いつまでも終わらないで 幸せの火の花 一人で見上げる にじんで揺れる ただただ綺麗で 最低の夏 |
すごいきらいミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | ムカつくとか 死んでほしいとか いつも思う いつもいつも バカにすんな 何様のつもり? いつも思う いつもいつも あいつのデカい手 右だけ長い爪 あいつのクセっ毛 こびりついて消えてくれない きらいきらい すごいきらい なんであんな男なんか きらいきらい もうこりごり さよならしたい 早く もう若くない 遊んでられない いつもつらい 夜になると そんな余裕 ある訳ないじゃない 今夜も飲む 飲むよ 飲むの それでもやっぱり 喋ると笑っちゃう 甘えているのは もしかして私なのかな きらいきらい すごいきらい なんであんなクソガキと きらいきらい もううんざり さよならさせてお願い ケータイ見ちゃったから 知らんぷりはできない いやだいやだ もう無理です 私の中から早く消えて いやだいやだ こんな現実 もうたえられない きらいきらい すごいきらい ホントだもん ホントだもん きらいきらい ウソじゃないもん これ以上泣かせないで きらいきらい すごいきらい なんであんな男なんか きらいきらい もう限界 さよならできるのかな 私 |
エッチばっかミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 会ったらエッチばっかりするの 遠距離恋愛ってこんなものなのかしら だってさ だってだってだってだって 離ればなれなんだもん しょーがないじゃない 私本来は こんなにお盛んな女じゃない 彼のせいだわ 彼がどスケベだからなの といってもカラダ目当てでは無いはず だって初めての時 彼できなかったもの 私 チョー落ち込んだもの 会ったらエッチばかりするの 猿じゃあるまいしって我ながら呆れてる まったく 若くないんだからさ 腰がもたんわよ えへへのへ 一緒になっても こんなにかまってくれるかしら まあ大丈夫よ 彼はどスケベ野郎だもの といってもカラダ目当てでは無いはず だって初めての時 彼できなかったもの 私 チョー落ち込んだもの 死ぬまで言ってやる 勃たなかったもの ふざけんな お前 勃たなかっただろ |
トーキョーミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 我関せずな この空気感 性に合ってる 最近思う トーキョー 地下鉄の中 眼鏡はしない 手には読み物 ひとりの世界 トーキョー 歩き煙草は 条例違反 恥を知りなさい ここはみんなの トーキョー お酒を飲んで ラーメン食べて 夜の公園 二人で大笑い トーキョー |
夢なんてゆるめるモ! | ゆるめるモ! | 緑川伸一 | 緑川伸一 | ハシダカズマ(箱庭の室内楽) | 夢なんてひとつもないよ 何が悪いの? 今がすべてだもん なんとなく 毎日が過ぎ とはいえそれなりに必死でさ 朝っぱら 電車に乗って 学校に行くだけでも 一大事 ヘットヘトよ なんて世界だろ ヘットへトよ 今を乗り切るので精一杯だ 夢なんてひとつもないよ 強いて言うなら お金持ちの奥さん ゴロゴロして なーんにもしない 家政婦さんが全部やるんだもん なんでだろ なんで生きてる? そんな事考えても 時間の無駄 楽しいとか 美味しいとかを 集めましょ 辛いこと 全部無視 とはいえ ヘットヘトだ なんて世界だろ ヘットへトだ 大人になれば楽になるかな 夢なんてひとつもないよ 強いて言うなら お金持ちの奥さん お父さんとお母さんに 立派なお家 建ててあげるんだもん こんなに私まだ若いのに 頭がこんがらかりたくないよ 人生とかなんとか 語ってんじゃねー お寒いよ お寒いってば 夢なんてひとつもないよ 何が悪いの? 何が? 何が? 夢 夢 夢 うるせーなもう 恋はしてるもん それでもう充分じゃん さあやりましょ 目の前の事 まずはお昼寝 今がすべてだもん |
帰路ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 東銀座駅に向かう地下道 地べたにうなだれてるの寝てるの 死んでるようにしか見えない人もいて そんな人らを僕らは極当たり前に やり過ごす やり過ごす 全く見えてないという風に すたすた歩く そうさ 見ず知らずの他人の命なんかより 出来るだけ早く地下鉄に乗る事の方が大事 そうやって生きてきた そうやって生きている 明日も仕事だ 早く風呂に入って ビールが飲みたい なんか ムカつくあの野郎の顔が頭の中から消えないよ 消えてくれ オンオフ上手くなりたい ガラスに映る俺の顔 案外悪くない 明日も仕事だ あと2日で休み なんで俺はここにいるんだろうか なんで君らはここにいるんだろね まあ色々あるさね なんとなく生きている なんとなく生きていこう 明日も仕事だ 早く風呂に入って ビールが飲みたい |
笑ってあなたにグッド・バイミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | この子ももう6年生 あなたのその畜生ぶりは 充分理解しています 顔も見たくないとの事です 私も今まで耐えに耐えて 耐えてきましたけど さすがに もういいでしょう この子のためにも さようなら さようなら 惨めな私たち 笑って俺について来い 笑っていたら大丈夫だとか あなたはよく仰ってましたね この子がまだ小さかった頃 笑えと言われたって あんなのどうやってどのように 笑えば良かったのでしょう まだ間に合うはず さようなら さようなら 惨めな私たち これからこの子男の人を 好きになれる気がしないって それは私も同じですけど この子はあまりにかわいそすぎる では あとは弁護士さんとどうぞ 大丈夫 笑っていたら あはは 何とかなるんでしょ? 笑ってあなたに さようなら さようなら 惨めな私たち 最大限の憎しみを込めて |
恋の都営新宿線ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 彼女はいつも菊川から乗ってくる 水色のイヤホンをして あまりにも真っ直ぐな前髪 見た目は学生さん なるべく近くにいれる位置を僕は陣取る 運が良い時は隣にいれる事もあって その時の幸せな気分と言ったらない そうして彼女は市ヶ谷で降りて行く 帰りは流石に一緒にはなれない だけど今日はなんと! 飲み会か何かの帰りらしい彼女に遭遇した いつもの水色のイヤホンはしていなくて 軽くうなだれて 前髪がそよそよと揺れて 泣いてるの?泣いてるのかい? うーん どうなんだろ…… そうして彼女は菊川で降りてった 彼女の夢はあんまり見ない 見たとしてもいつもそこは地下鉄の中 そこでも僕はそっと彼女の事を 盗み見るだけ 彼女はいつも菊川から乗ってくる あれあれ? どうした? あれ? 水色のイヤホンはそのままだったけど 金髪だ! 化粧も濃い! まっすぐ前を見る眼差しはとても鋭く この世の全て呪うとでも言いたげなオーラ どうしたの? どうしたのさ? 一体どうしたのさ…… 訊きたい訊きたい でも 訊けない訊けない どうした?どうした?おい君!どうしたのさ!? |
今はまだ恋愛がわからずミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 誰かを好きになるという感情が わからない 親しみじゃなくて いわゆる恋というやつが もう少し大人になればわかるんだろうか つっても私 23歳 華の新入社員です 彼氏がいた事も なんか流れでね まああったけどさ どれもすぐに ああ 終わった このまま独りで生きていくのかなあと ぼんやり ぼんやり思うけど なんだか 全然 寂しくはないんだよなあ 私は多趣味で 美人ですものね 調べたら 私みたいな人間って 多いみたい ほらこんなにもよ 案外コレが普通かも 「好き」がわからない 人だらけになって 各々の子孫は途絶えて マジ人類滅亡っすか? でも近い将来 人間なんてさ もっと簡単に 作れるでしょう そうなるでしょう このまま独りで死んでいくのかなあと ぼんやり ぼんやり思うけど それが何?何なの? 別にどうって事ないじゃん 私は一生 猫と暮らします あん お猫様 このまま独りで生きていくのかなあと ぼんやり ぼんやり思うけど なんだか 全然 寂しくはないんだよなあ さあ 休憩 終わりです 午後からもひとつ がんばりましょう |
昼キャバミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 彼女のもうひとつのアルバイトって もしかして いつも大体眠たそうにしてるし もしかして 「飲食店」としか教えてくれないし もしかして ごっついマンションに住んでるっていうし もしかして だとしても俺にはどうする事もできない 俺はただの友達 好きだという事さえできない 仮に俺の彼女になったとして そのぶんのマネーを 俺は彼女に与えられない 俺にはどうする事も むなしさに殺される むなしさが突き刺さる むなしさに むなしさが 彼女のもうひとつのアルバイトって もしかして 実家への仕送りは欠かさないっていうし もしかして アクセサリーがどんどん派手になっていくし もしかして あの写真…… やっぱりあの写真って もしかして だとしても俺にはどうする事もできない 俺はただの友達 いやもしかしたらそれ以下かも 仮に俺の彼女になったとして そのぶんのマネーを 俺は彼女に与えられない 俺にはどうする事も むなしさに殺される むなしさが突き刺さる むなしさに むなしさが |
もつやき 玄ちゃんミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 今日もおつかれさまでした 夕陽がなんだか沁みますよね 看板と暖簾を外に出し さあ開店 もつやき玄ちゃん 恋の悩みかお兄さん んなものサワーで飲み干しな やめろよ そんな暗い顔 またまたガールにふられるぜ ってあららら 彼女のご登場 あんた恋人いるんじゃないの 今日もおつかれさまでした やあいらっしゃい もつやき 玄ちゃん 今日もおつかれさまでした まったく嫌なニュースばかりです はいはい もつ煮とお新香ね OK了解 もつやき 玄ちゃん 見かけぬ顔だね親父さん 最近越して来たのかい? それとも誰かの葬式かい? つっても俺もヨソの人間 バイクで通勤してるのさ 川の向こうのあの街から 今日もおつかれさまでした やあいらっしゃい もつやき 玄ちゃん 今日もおつかれさまでした 毎度ありがとうございます もつやき 玄ちゃん |
観覧車ミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | ゆっくりと空に近づく 街が遠ざかる 缶ビールもどき開けて 一気に半分飲んだ 広がるパノラマ あくびをしたら 涙で視界がゆらゆら はーあ 明日の朝には俺は空港 故郷に帰る飛行機へ 明日の朝には俺は空港 山と雪のあの街へ 「今の時代どこにいたって一緒だよ」なんて そんなの本心じゃない そりゃここがいい ビールがないよ ビール飲みたいよ 惨めだ ったくよー 消えたい はーあ 明日の朝には俺は空港 故郷に帰る飛行機へ 明日の朝には俺は空港 最期を待つあの街へ 明日の朝には俺は空港 故郷に帰る飛行機へ 明日の朝には俺は空港 山と雪のあの街へ ゆっくりと地上に近づく なんだもう終わりか 最後まで俺の片思いだったね はーあ じゃあね |
ホームセンターミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 毎日といってもいいくらい ここに来てる 大好き めまいがする程広くって 何でもかんでも売ってる ベンチがたくさんあるから 何時間でもいられる あれもこれも どれもこれも欲しくなる もし私のおうちに猫がいたら もし私に孫がいたら そんな事考えて 楽しむの 現実は出来るだけ 遠ざけて 思い出も出来るだけ カートを押してる若い夫婦 そのそばに小さな女の子 私にもあんな時があった あの頃は当然だった日常 今みたいな小さな古い アパートなんかじゃなくて 広い庭も 車も 笑い声も あった頃 もしあの時あの人と出会わなかったら もっと私が聡明だったら なんて 詮ない回想はおしまい 帰りましょう もう夕方 また来ます もし私のおうちに猫がいたら もし私に孫がいたら そんな事考えて 楽しむの 現実は出来るだけ 遠ざけて 思い出も出来るだけ 遠ざけて |
のれんの向こうミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | あの黒いのれんの向こうには 俺たちの夢がつまっている 日常 虚しさ ぶっ飛ばして…… 駅から吐き出される大勢の人ら 今日も1日おつかれさまです 左に行く人 右に行く人 俺はこっち 目指すはあの店 同僚たちは ネットでイイじゃんって言うけれど 俺は画質にこだわりたい そして 何より課金したいじゃない そのためにさ 働いてるんだもの あの黒いのれんの向こうには 俺たちの夢がつまっている 日常 虚しさ ぶっ飛ばしておくれよ 優しく癒やしてくれる 桃色の世界へ飛び込もう 男に生まれて本当に良かったな 俺の故郷にふらっとやってきてた 正体不明の謎のガラクタ屋 怪しい品物が並ぶ中 それは 眩しすぎる程に輝いていた パッケージも映像もなんとも質が悪く とても正規のものじゃない だけど 田舎の人間にとっては とてつもなくありがたかったよなあ あの黒いのれんの向こうには 俺たちの夢がつまっている 忌まわしいモヤモヤ 忘れさせておくれよ 今夜はどんな出会いがあるだろうか 胸が高鳴る 大人の男の特権だ さあ行こう 黒いのれんの向こうには 俺たちの夢がつまっている 日常 虚しさ ぶっ飛ばしておくれよ 優しく癒やしてくれる 桃色の世界へ飛び込もう 男に生まれて本当に良かったな |
あけましてミドリカワ書房 | ミドリカワ書房 | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | やだよ おみくじやらんって やっておいでよホラ ここで待ってるからさ 君は ひらひら駆け出す 僕は空を見る なんなんだこの時間 先月僕はフラれたんだ それなのにまた呼び出された 断れば良かったんだろうけど まあ そんな事できませんよ 待ってるよ いつまでも 君じゃなきゃダメなのよ 誰よりも君を好きなのは僕さ 待ってるよ いつまでも 苦しいが仕方ない こんなに近くにいるのにな あーあ なによ なになになんです? 小吉 はあそう つうか近いって近い 昔の歌の世界みたい ダサすぎるのは承知の上 嫌いになれるもんならなりたい まあ そんな事できませんよ 待ってるよ とはいえね つまみ食いはあるだろう そりゃそうさ 僕も健全なヤング 待ってるよ いつまでも 奴隷でもなんでもいいさ こんなに好きなのに 好きなのに! 待ってるよ いつまでも 君じゃなきゃダメなのよ 誰よりも君を好きなのは僕さ いきましょか どこいこか? 帰ります? なんだよもう NO! こんなに近くにいるのにな あーあ 今年もヨロシクお願いします |
ごろごろ物思いゆるめるモ! | ゆるめるモ! | 緑川伸一 | 緑川伸一 | | 悲しい事 悔しい事 特に無かった 今日も1日 嬉しい事 楽しい事 なんも無かった 今日も今日とて そんなはずは無いんだろうけど 今パッと出てこない つかなんか おなか減ったよね でも おふとん出るのおっくうだ 歯みがいちゃったし はーあ 寝れるかな 寝れるかな 寝れるかな 明日もお仕事だもの 早く寝たい 早く寝たい 早く寝たい だりーな お仕事行きたくねー 孤独だなあ この世界で 私ひとりが生存者かね いやいやいや 私も実は 死んでるのかも はは なんてね 寝返りとため息のループが 永遠に続きそう つかやっぱ おなか減ったよね でも もうこんな時間じゃないの ブタになっちゃう はーあ 寝れないな 寝れないな 寝れないな 明日もお仕事なのに 早く寝たい 早く寝たい 早く寝たい どうしよ 明日マジどうしましょ もう あきらめた ダメだこりゃ 腹へった カップ麺 たしかあったはず おや 邪念きた 邪念です なんだこりゃ 落ち着け 深呼吸しましょ テレビつけ 眩しさに 目を細め どうしよ 明日マジどうしましょ 私は恋をしてるのかしら |